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福祉の支援者になりたい方へ ”はじめに”発達障害支援の現場から 第1章

2017年8月26日

福祉の支援者になるのは簡単です。利用者からのニーズは日に日に増えているにもかかわらず、人気はあまりない業界だからです。インターネットやハローワークで探せば、明日からでも働いてほしいという求人をいくつも探せるでしょう。

ただ現場はいつも大変です。上司からの指示も曖昧で、マニュアルが有ることは少なく、すべきことは混沌としています。そのうえ支援の仕事ばかりではなく、忙しさの理由が支援の準備や記録といったペーパーワークということは一般的です。給与も他業界に比べると低めなのはすでにご存知かもしれませんし、医療ドラマや警察ドラマなどのようにかっこよく取り上げられる機会もまずありません。つまり目立たないしカッコよくはない仕事です。利用者から嫌われたり疎まれたりすることも珍しくはありません。純粋なタイプの支援者ほど、良いことをしたくて福祉の世界を目指したはずなのにと、涙を流す人もいるでしょう。

更に追い打ちをかけるように一人前になるには5年10年はかかります。資格を取れば良いと思われるかもしれませんが、資格はやる気を示すための証明程度であり、頭の中の知識を現場の動きに活かすには年月がかかります。センスの良い人は初めからある程度価値のある仕事ができる場合もあるのは確かです。それでも納得する支援の割合を高めるには経験が必要です。多くの場合、半年一年は使い物にならないことを覚悟しておいた方が良いでしょう。福祉はいわば職人の世界であり、誰しも悩みながら、自分でも気づかないほどのゆっくりしたペースで成長していきます。この世界のプロになるには近道・抜け道は無いということです。

また勤務する会社・団体がまともな経営をしていないことも多いでしょう。法令違反は論外としても、戦略を持ちながら、中長期を見据えた経営をしている事業体が福祉の世界でどれほどいるでしょうか。福祉の現場で働きたい人が経営・管理をしたくなることは稀ですし、希望があったとしても現場の職人が経営の素質があることは少ないでしょう。(とはいっても経営者向けのコラムで書きますが、福祉の世界で現場はしたくないけれども経営だけをしたいという人にはあまり来てほしくはありませんが・・・) このため人事や経理や総務が機能していなかったり、サービスの一貫性がなかったり、マーケティングが上手でなかったりと、働きづらさがより一層高まることもあるでしょう。

では、福祉の世界で働くメリットはあるのでしょうか?ここまで書いておいてなんですが、上に書いたマイナス点を打ち消すぐらいに沢山あるというのが答えです。まず仕事の目的が善良だということが最大のメリットでしょう。人がより良く生きるためのお手伝いをするというところに後ろめたい気持ちを持つ人はいないでしょうから、正直に自分の時間・エネルギーを費やすことができる仕事です。また教育業界などと重なりますが、人の変化・成長を間近で見られるのは興味深いものです。もちろんそれが自分の支援が一つの力となっていたらこれ以上はない満足感を得られる瞬間でしょう。また福祉というのは社会から阻害されやすい人の支援をしますので難しいケースが多い分、奥が深く、極めようとすればいつまでも興味関心を得られる分野というのもあげられます。5・10年で飽きてしまうような業界ではなく、働けば働くほど自分のためにもなる仕事といえます。変化の激しい他業界に比べると、一度つけた知識や経験が長年使えるという側面もありましょう。

福祉は多くの人を惹き付けることができる業界であることも実は魅力の一つです。つまり対人サービスですので、様々なタイプの人が求められるということです。あるカウンセラーの方の話では、利用者と波長が合う可能性は2・3割。つまり7・8割の人とは支援の波長が合いにくいわけです。多様な利用者に対応するためには支援者の方もきつめの人から優しい人、知識で押すタイプ、経験を持ち出す人、のんびりしている人やテキパキした人など、多くのタイプを集める必要があります。自分は福祉に向かないと思っている人ほどぜひ来てほしい分野でもあります。

このシリーズでは、当社での発達障害の子どもや大人への支援を念頭に置きながら、福祉の支援者になるための心構えや準備についてまとめていきます。予定しているラインナップは以下のとおりです。

  1. はじめに
  2. 発達障害の魅力
  3. 支援者になるための心構え
    第1節「二人分泳ぐ」「小異を捨てて大同につく」
    第2節「共感・傾聴は必要か?」
    第3節「資格を持つ意味」
  4. 知識と技術
    1. 事前に必要な知識
    2. 現場で活かせる技術
  5. バックグラウンド
    1. 業界未経験の方へ/医療福祉で支援経験のある方へ
    2. 40歳以上の方へ/新卒の方へ
    3. 当事者/家族で福祉職を目指す方へ

なお、同時に福祉の経営者・管理者を目指す人向けにも別シリーズでコラムを書いていきます。興味のある方はぜひご一読下さい。

(文:Kaien代表取締役 鈴木慶太 2017年8月)

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