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福祉の支援者になりたい方へ ”支援者としての心構え” – 共感・傾聴は必要か?発達障害支援の現場から 第3章 第2節

2017年9月18日

前回(二人分泳ぐ 小異を捨てて大同につく)は福祉によくある話を考えながら、福祉の支援者を目指す方に心構えとして持っておいてほしい、気にかけておいてほしいことをまとめました。今回は当社の事業分野である発達障害支援について掘り下げていきたいと思います。

共感・傾聴と発達障害の相性

この点については誤解を生じやすいと思いますので、丁寧にお伝えしていきます。まずもって、私が「共感・傾聴が不要」と思っているわけではないということはご理解ください。でも巷で言われているような「共感・傾聴が第一」だったり、「共感・傾聴の姿勢を見せろ」というような文脈での「共感・傾聴」は、発達障害の支援では間違う可能性がありますよということです。

サービスを提供するということは「結果を出す」ことが目的だと私は思っています。福祉の中で「共感・傾聴」をしてほしい、つまりそれ自体が目的だという利用者がいないわけではないと思います。実際、福祉や心理学に頼ってくる人には、自分の苦しみや悩みを共有してほしい、わかってほしいということを強く感じている人がいるのも確かだと思います。でもそれが全てではないと思うわけです。例外の筆頭にあげられるのが発達障害だと思われます。

発達障害の人と支援者として接し始めて、まず感じたのが、具体的な回答を求めてくるところでした。まるで世の中には、質問・疑問があったら必ず答えがあるというような前提で、ただお話をするということに価値を見出しづらいようなのです。話す目的ははっきりしていて、答えがあるのか無いのか、あるならどういうものが答えなのかを知りたい性分に駆られた人が多いと言いましょうか。そういう発達障害傾向の大人と会う一方で、福祉分野の人から「共感・傾聴」というキーワードを聞いたわけです。その時の私の結論が、「もちろん共感・傾聴も広い意味では必要だけれども、この人達はただ単に聞いてほしいわけではない。答えを求めている」と言うものでした。

違う言い方をすると、「話を聞いてもらうだけで半分ぐらい問題が解決する」可能性がないのが発達障害的な悩みだと思われますし、「話している中で自分の中から答えが見つかる」というようなものでもないのが発達障害の人向けの支援だと思われます。そうではなくて、支援の中でその人の状況(現在位置)とゴールと道筋と次のステップを伝えるのが発達障害支援で必要な技ですし、そのような「カーナビゲーション的な支援がはまる」という心構えを持っていてほしいということになります。

車の運転は疑似発達障害!?

車の運転というのは、同時並行が多く、瞬時に判断することが多く、感覚で理解しないといけないことが多く、発達障害の人が特に苦手とするところです。実は、いわゆる”健常者”も、同時並行や即時対応のために、普段よりも運転時は注意力を上げる必要があり、発達障害を擬似体験しているとも言えます。その時に、「運転の時って前後左右に注意したりしないといけないから大変ですよねぇ、共感できます」とか、「次に何が起こるか予想がつかなくてお辛そうですね、もっとその苦しみをお話してくれますか?」と言われても、「そんなのどうでも良いから、次右行けばよいか、道なりでよいかを教えてくれ!」となると思います。

上記の例は極端ですけれども、発達障害の人は共感や傾聴だけでは駄目で、カーナビのように、今どこにいるか、どこが目標地点なのか、ルートはどういうものがあって、どう理由でそのルートが推奨され、そのルートを選んだ場合次はどうすれば良いか(スモールステップ)、を伝えてあげることがハマりやすいのは、なんとなくお分かりいただけたのではないでしょうか。

当社の別の言い方をすると、「発達障害は心の病ではなく、情報の混乱状態」ですので、心の底に共感・傾聴するよりも、情報を紐解いてあげることが支援になるというわけです。もちろん、当社に登録している大人の発達障害の半分程度の方が、二次障害として心の病を抱えていますので、現実の支援の現場では「カーナビ」的支援だけではなく、「共感・傾聴」も当然必要になってきます。が、発達障害の支援現場に入る時に「共感・傾聴」は万能ではなく、場合によっては空振りすることは、支援のベースとして十分に理解していただきたいと思います。

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さてさて、それなりの文量になりましたので、前回予告していた内容で書ききれない部分は次回に回します。「支援者の心構え」の章はだいぶ長くなりそうです…。

【次回】資格を持つ意味

【リンク】福祉の支援者になりたい方へ シリーズ目次

(文:Kaien代表取締役 鈴木慶太 2017年9月)

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