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福祉の経営者を目指す方へ ”はじめに”発達障害支援会社の創業・経営を通じて学んだこと 第1章

2017年8月26日

ちょうど10年前の8月に息子が発達障害の診断を受けました。MBA(経営学修士)のため2年間留学をするために渡米する直前のことでした。なかなか受け止めが出来ず頭も心も大分混乱しました。それから2年後の2009年に帰国とともにKaienを起業しました。自分が経営者になるとは渡米前は思っていなかったですし、働く業界もまさか福祉になろうとは思っていませんでした。(MBAの後に一般的である経営コンサルタントになるのが目標でした。)

マンションの一室で一人始めた会社。まったく知らない業界で、知識も経験も人脈もない状態からのスタートです。特に初めの2・3年は本当に苦しみました。自分への給与も全く出せないほどで、家族や知人に世話をしてもらいながら食いつなぎました。経営が軌道に乗り始めた今でも、経営に失敗して会社のお金が底をつくことへの恐怖心は変わらず続いています。私が修めたMBAは経営学の修士号ですが、MBAを持っているからといって優れた経営者になれるわけではありません。経営の分析は後付けではできますが、未来に起こることを予想しながら社員を活用していく力はMBAで学べるものではありません。実際自分自身も経営については取引先の企業の方々や周囲でサポートしてくれる先輩方から実地で学んだ気がします。

このように相変わらずビクビクとした経営であることは確かなのですが、周りを見渡すと、自分は恵まれた方であることに気付かされます。単純な知識不足で経営がうまく行っていない例や、経営者が孤立無援で心理的に苦しい思いをしている例にたくさん出くわすようになりました。また福祉分野で起業したいという人も多く出会いましたが、思いが形になっている例がなかなか見当たりません。せっかく面白く価値のある福祉業界でありながら、また現場への思いがありながら、それを経営する力が弱いために事業を立ち上げられなかったり、組織が崩れていってしまったり、あるいは思いの外発展させられない例が多いのは残念なことです。

実は福祉のアキレス腱は経営ノウハウ、経営者や管理者の育成ではないかというのはここ数年感じてきたところです。どこの福祉の組織でも現場にいるスタッフはあまり変わらないものです。みんな思いがあるし、一方でみんなスーパーマンでもありませんので限界もあります。その有限の力を上手に使うのが経営ですが、その肝心要な部分が福祉業界はどうやら弱いようなのです。これには経営者は労働者を搾取するものだというような先入観(つまり経営は無ければ無いほうが良いという理想)を持つ人が福祉の世界には多いと思われることや、そもそも福祉を目指そうという人はリーダーシップをとることに不慣れだったり消極的な人が多いこと、また福祉業界が○×がはっきりつくサービスではないため過剰な時間やエネルギーを費やしやすい点もあるように思います。

自分がどこまで有益なものが書けるかまだわかりません。またKaienという発達障害の支援しかしていませんので偏りがあります。しかしある程度、経営のイロハのようなものは分かりますし、8年間で福祉業界の経営が他の業界と違う点、特殊性も色々と感じています。税金をたくさん使っている業界ではありますが、厚労省や文科省が、福祉経営についてレクチャーをしてくれることはありません。非効率で効果の薄いサービスの要因が経営・管理だとしたらやはりそこに資するものは残しておきたいという風に思い始めました。

本シリーズでは下記について触れていきたいと思っています。

  1. はじめに
  2. 福祉事業の特殊性 お金まわり 事業規模 行政・制度との関係 働く人の特徴 イノベーション
  3. 福祉は儲けてよいのか? 福祉事業を経営する際の心構え
  4. 福祉における経営者とは? 戦略/人事教育(ヒト)/サービス(モノ)/財務(カネ)/マーケティング・オペレーション(チエ)/行政対応
  5. 社長の人間性 出来ないことだらけの自分の見つめ方・活かし方
  6. 管理職 組織・インパクトを大きくする方法

なお、同時に福祉の現場スタッフを目指す人向けにも別シリーズでコラムを書いていきます。そちらもぜひ覗いてみて下さい。

(文:Kaien代表取締役 鈴木慶太 2017年8月)

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