発達障害丁々発止5 『新大阪市長・橋下さんの障害者雇用施策について』
僕はNHK時代から選挙報道が大好きだった。特に事務所中継は本当に疲れるが、その分とてもエキサイティングだった。報道から離れた今も選挙は大注目。
今唯一の趣味がアメリカ大統領選挙のフォローなのだが(※共和党候補の争いは、民主党オバマに対抗できる候補として、ロムニーとギングリッチ、ペリー、ケインあたりで日に日に情勢が変わりおもしろい)、昨日の大阪W選挙もテレビが無いのでネット(Ustream)で見届けた。
僕自身大阪には縁もゆかりもないので、今回の分析の元となる情報の大部分は伝聞の情報だったり、Wikipedia経由なので少し客観的ではないかも知れない。が、橋下さんは知事時代に、ハートフル条例という障害者雇用促進条例を制定させているので、実はこの障害者雇用という小さな「業界」では知られた政治家である。
その橋下さんの発言を今回の選挙を機会にネット記事で読んでいくうち、少し疑問に感じる所があった。もちろんそんなことへの反論は橋下さんは色々な所で話していたり書いたりしているかも知れない。なので、知っている方に教えてもらいたくて、このブログを書いている。
以下橋下さんの<A>ニートに対する考え方と<B>障害者雇用についての考え方である。
<A>テレビ番組の中なので政治的な意味合いを持たないと思うが、かつて橋下さんはニート対策については「拘留の上、労役を課す」と発言している。その他にも「今の世の中は、自己責任がまず原則ですよ。誰も救ってくれない」とか、「競争の土俵に上がれる者に対しては徹底的に競争を促す」としている。当然競争で敗れる人もいるのだが、それについては「生活保護」が最終的な砦としている。
まあこれはこれでOKである。労役を課すという部分は繰り返しになるがテレビ受けする発言だからなのだろうが、それ以外は多くの人の本音だと思う。
<B>一方で、障害者雇用については超がつくほどの推進派。ちょっとしたインタビューでも重点課題として話に出てくるほどである。力を入れているのは、競争の土俵に上がれない者に対しては特に手厚い支援を推進する、との理由だとのことである。詳しくはこの条例の本文(※)をご一読いただきたい。障害者雇用率未達成の企業に対するものとしては、至極まっとうな条例で、これが全国に広がってほしいと僕も切に思う。特に『知事は、ハートフル条例の規定により氏名等を公表された事業主に対して、1年(極めて悪質な事由等の場合は2年)を超えない範囲で契約等を制限することができる』ところは重要だ。入札の際に点数が若干落ちるとかではなく、障害者雇用未達成企業は、契約そのものができない可能性があるという方法。数ある障害者雇用の促進案の中でも最も効果が上がりやすい方策だと思う。
※要旨・・・府の調達契約や補助金交付の相手方など、府と関係がある雇用率未達成事業主には「雇入れ計画」を提出させ、一定期間内に計画的に達成するよう誘導や支援を行い、改善が見られない場合には、「事業主名の公表」などの雇用率達成に向けたルールを設ける。
とまあ、<A>も<B>もいいのではないか、論理的だ、という話になりそうなのだが、実は発達障害という視点を入れるとそうも言えないのである。
実はニートの少なくとも4分の1は発達障害の疑いがあるというデータが5年ほど前に厚労省から出されている。他にも色々データはあるのだが、つまり、好きで仕事ができないわけではなく、実は先天的な理由に本人も周囲も気づかずただただ苦しんでいるニートの人たちも結構いるわけである。
しかも発達障害の特性として客観視が弱いケースが多いので、自分がどれだけ苦しんでいるのか分からず、「障害者手帳」の申請や「障害者雇用」なんて、自分にはとても関係ないと思っているケースが多い。もちろん有名高校や有名大学を出ている人も非常に多いので、「普通だ」と本人も周囲も思うケースが多いからなのだが、そのこだわりが、より一層の苦しみを生んでいるケースを何件も見てきた。
案外うっすらとした程度の発達障害の特徴しか無い人が、「制度を活用させてもらって就職する」という理由で障害者手帳をとったり、障害者雇用で就労を果たすケースも見られる。なので、手帳をとっているから障害の程度が重い、手帳がないから程度が軽い、と一概に言えないのが発達障害なのである。
僕も資本主義の権化であるビジネススクールを出た身なので、「自己責任」とか「競争原理」というのはやはり効率的、効果的な結果をもたらす事が多く、納得している。でも<A>と<B>の間にいる人達で、本人の努力にもかかわらず、競争からいつの間に取り残されてしまっている層もいる。それが発達障害という先天的な、そして実は遺伝的な問題があるということを橋下さんは考慮に入れているのだろうか?と思うわけである。
知っていたらその対策を聞いてみたいと思うし、まだあまり知らないとしたら対策をぜひ練って頂きたいと思う。「対案はあるのか!!」と言われそうだが、うーん、それがじつは難しい。。。早期発見の徹底、(国にはないが地方としては試みとしてありかも知れない)発達障害手帳の導入、そしてイチゼロで障害者と健常者をわけがちな今の法体系ではなく段階的にその人の機能の制約によって福祉的な恩恵を受けられるような虹色のサポート体制、が必要かなと思う。