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発達障害丁々発止4 『発達障害に気づかない医師・臨床心理士・精神保健福祉士たち』

2011年9月9日

(冒頭にお断り。医師や臨床心理士、精神保健福祉士の皆さんに喧嘩をうっているわけではありません。)

発達障害は医療・福祉の分野では「新しい」。

ある精神科医によると「今40才以上の医者は発達障害について当時は、学生時代に学ぶ機会が少なかったので、それ以降に自分で勉強していないと診断できないのでは」といっていた。事実、発達障害を診断できる医師は今でも少ない。発達障害に詳しい医師のところはいつも予約で満員。初診まで数ヶ月待ちはざらで、半年待ちもあるという。

(※ただし、「繁盛」しているわけではない。先天的なものであり、基本的に薬で治るものではないので、薬をつけると医療報酬がつきやすく、医者の経営も安定するというエコノミクスからは、真逆のところにあるのが発達障害であり、医療の世界では語弊がある言葉だと思うが「儲かる」専門では決して無い。なので、予約がいっぱいでも「この医者儲かりやがって、、、」とは思うだけでもバチが当たるかもしれない。発達障害の専門医は半分ボランティアのような思いでされている方がほとんどだと思う)

外科のようなクリアカットではない
曖昧な領域を扱う心療内科や精神科
発達障害専門は儲からないという二重苦でもある

また臨床心理士は「心の専門家」ではあるが、ある臨床心理士によると「発達障害に取り組んでいる臨床心理士はほとんど知っている」ほどのまだ狭いコミュニティである。実際、Kaienに見学に来る方の中でも臨床心理士の方は多い。人口の1%(※米国の子供の調査、自閉症のみ)程度はいるといわれてはいるが、それでもまだ「出会い」が少ないからだと思う。

実際、臨床心理士の資格試験の内容を見ても「精神疾患、臨床心理学、心理査定法、心理面接法、心理療法、地域援助法、研究法、調査法、統計学、心理学全般、法律・法令、倫理、姿勢・態度、事例対応などの専門知識が問われる。」(ウィキペディア)とのことで、あまりに幅広く、大学院を出るかで出ないかの24、5歳の場面では専門性を、例えば発達障害の分野に求めるのは酷であろう。

精神保健福祉士の世界も、ある精神保健福祉士によると「うつや統合失調症への対応が進んでいたが、発達障害はこれから」で、精神保健福祉士の団体も発達障害の対応に向けて取り組んでいるところだということである。

言いたいのは、当たり前のことで、資格を持っていればわかるわけではなく、専門性がないと対応が難しいということである。とかく自閉症スペクトラムの方は見える情報にとらわれやすく、資格があると信じすぎてしまう傾向が正直あると思うので、老婆心ながら注意していただきたいなぁと思う。

と、ここまでは割合スムーズに書けるのだが、ここからは苦しんでいる方も多いので筆が進みにくい。誤診の話である。

発達障害の、しかも成人が、診断されるケースはごくごく最近になって「一般的」になってきている。先天的なので、これまでも全人口比で見ると同じ確率で診断されていていいはずである。今までは発達障害の人はどこにいたのか?

ひとつは、今と同じような苦しみ・ズレを抱えている人が居ながらも、社会全体が受け入れる余裕があったため顕在化しなかったケース。もう一つは、他の精神疾患と診断されてしまっていたケースだと僕は考えている。

よく言われるケースは、統合失調症、人格障害、そしてうつ。実際に両者、つまり発達障害とそれらの精神疾患が重なるケースは少なくないので、誤診とも言い切れない。ただ、医者の中でも「発達障害と診断されるべきなのに、統合失調症と明らかに誤診されている」と憤る方もいらっしゃるぐらいの状況なので、明らかにミスというのもあると思う。明らかになっているのは氷山の一角なのかもしれない。

統合失調症のメカニズムはあまりわかっていないが(※以前こちらに書いた)、平均発症年齢は男性で18才ぐらい、女性は25才ぐらい(※メルクマニュアルより)。遺伝的な関係も言われているが、実際に症状が出るのはおとなになってからである。遺伝的であり、かつ3歳児には傾向が明確になる自閉症スペクトラムなど発達障害とは大きく異なるところである。

また、治療には服薬が行われる事が多いのも統合失調症の特徴。同じくメルクマニュアルのウェブサイトによると「米国では、統合失調症は能力障害に対する社会保障給付日数の約5分の1、医療費全体の2.5%を占めています。統合失調症はアルツハイマー病や多発性硬化症より多くみられる病気です。」とのこと。発達障害と診断されるべき人が、統合失調症の薬を処方されていたとしたら??これはかなり大きな問題で、そういった患者グループもできている。

ある方によると統合失調症の数割程度は誤診されているのではないか、ということだった。今の段階ではその説を確認する手段はないかもしれないが、少なくとも一人ひとりにとっては大きな問題。精神科医は悪意で見逃したわけではないと思われるし、そもそも血液検査などでも測れない疾病を診断し、治療するというのがとても難しいので、できるのは診断を受ける側が医者だということですべてを信用するのではなく、きちんと相対してサービスを受けるべきだとは思う。(※こういうと医者を執拗に責めて人もいてバランスが難しいのだが。。。)

診断名は何?

ちょっと長くなりすぎたのでそろそろラップアップするが、うつも誤診が多い領域の気がする。そもそもうつと職場には伝えたほうが通りが良いので、発達障害ではなくうつと伝えているというケースも、実はかなりあると思うし、実際にKaienでも10とは言わないが複数そういったケースを聞いている。

僕はこの会社を設立して以降、発達障害の人に合わない日のほうが少ない、というよりも殆ど無いのだが、このエントリーを書いていて、一般の人に発達障害を説明するのが難しいんだなぁというのを再認識している。そもそも資格を持っている人でも気づきにくいのだから。。。

(※なお、ほとんどの方はお気づきだと思いますが、本エントリーの題名は『発達障害に気づかない大人たち』にヒントを得ています。)

追記: とはいえ、最近は逆の現象も起こっている。発達障害の成人外来があることで知られる昭和大学付属烏山病院。院長の加藤先生は、最近発達障害とおもって来る人が多くなったけれども、思い違いの人が多くって困るのですよ、と話されていた。まあ、これも気づきにくいというか、定義しにくい発達障害の特徴なのかもしれない。

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