放課後等デイサービスは失敗した制度だったのか?
当社も制度整備後まもない2013年から運営している、障害のある子ども向けの「放課後等デイサービス」(以下放デイ)。今年の報酬改定で大きく手を入れられたばかりですが、”法改正も視野に”、再編が検討されることになりました。9月に報告書がまとまるらしいです。
【参考】放課後デイサービスを再編へ 厚労省が検討会を発足(福祉新聞)
https://news.yahoo.co.jp/articles/6d420a385034d20b2c0e852fa684cf5db5a5bd9f
厚労省のウェブサイトからわかる情報は下記のとおりです。
【参考】障害児通所支援の在り方に関する検討会 主な検討事項
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000791516.pdf
総論賛成です
放デイはこれまで様々な批判にさらされてきた制度です。例えば専門性が足りない、報酬が高すぎる、(公費を計上しているだけの)効果があるか疑問、ニーズに追いついていない、等々。
私も放デイの制度の不思議さについてはこれまでも再三再四、本ブログで取り上げてきましたので、問題意識は高いです。
という文脈で考えると、何らかの手は打たないといけないのはとても理解できます。遅すぎたぐらいです。
具体的には、①放課後児童クラブ(学童保育)とのすみ分けや併用も、②費用面の膨張を抑制する視点も、③子どもの人口1000人当たりの事業所数に都道府県格差があることにも着目し事業所指定の在り方も検討、という方向性に意義はありません。
「法改正も視野に入れる」という文言で本気度がわかりますので、規則変更以上の激変が必要なことも納得です。
つまり総論賛成ですので、今後の具体的な議論を見守りたいと思います。
経営者として、親として
一方で経営者として、親としては、制度の変更があるなら出来るだけ早く教えてほしいと思います。次の報酬改定が3年後ですので、2024年から制度が変わるとしたら1年以上前には制度の建付けを知っておきたいなと思います。
また、現行の放デイは効果検証をせずに制度設計をしたのかと思うほど「ザル」な制度だったのは確かだと思います。誰も得をしない制度だったと思います。
次こそはきちんとエビデンスに基づいたうえに、修正修正を求められることのない制度設計にしていただきたい。それが現場としての願いです。
悪い業者がいる、公費からの出費が大きい、という議論だけで、実際にニーズがある人たちや多くのまじめな業者までもが罰せられるような変更は止してほしいと思います。(とはいえ、おそらく直前に詳細がわかり、みんなが右往左往するのだろうな…。)
公助に期待しすぎないために
公費に依存するとどうしても制度の改正のたびに大きく影響を受けます。
当社はすでに今のように、いびつな制度設計を隠すために補強を方針無く?されるなかで「放デイ」というサービスではまともな療育が出しづらいと感じていて、放デイと合わせて使っていただくサービスを100%自己負担の形態で今年から提供しています(参考:TEENSについて)。
制度外でのサービスを立ち上げたり、そもそも障害児とくくらなくてもナチュラルにサポートできる地域(学校、学童など)を作っていくのが本筋だなと感じます。
文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス「TEENS」、大学生向けの就活サークル「ガクプロ」、就労移行支援および自立訓練(生活訓練)「Kaien」 の立ち上げを通じて、これまで2,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴