明神下診療所所長「アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか?」を読んで
発達障害の専門医を増やすためにも、業界の核(?)にいる米田先生の著書の売上に貢献すべく、さっそく出版されたばかりの本を読みました。『アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか?』 (講談社) 1,470円。とは言ってもものすごく読み飛ばしたので、またゆっくり読むつもり。
基本的に最初からざっと読む形が良いと思うけれども、一度読んだら自分の気になるところを繰り返し読みやすい(後でつまみ食いしやすい)構成になっている。
第1章 「アスペルガーとはどんな人達なのか?」
やはり具体例がないとわかりにくいので、どんな本でも実際の例が書かれているもの。米田先生の本が違うのは、読者の視点から診ているのではなくて、本人の視点、上司・同僚・家族の視点、そして医師の視点で多角的に(でも平易な言葉で)書かれている点。この視点の違いによって発達障害の人は苦労するので、当事者にもわかりやすいと思うし、支援者と言われる人も往々にして自分の視点にこだわるのでとても参考になると思う。
第2章 「アスペルガー障害の本質」
Kaienは職場での視点からみたアセスメントをすることがメイン。なので今回の米田先生の切り口がすっと入ってきたわけではないのだが、少なくともKaienがなんとか考え始めたものを大きく包含する概念だと思う。つまり生活面なども配慮された概念。いわゆる「三つ組みの障害」(1)社会性、(2)コミュニケーション、(3)想像力、というわかりやすい、でも実際の場面では理解していてもどう振舞っていいか分からない理論ではなく、より現場感のある定義になっていると思う。中核的特性と周辺的特性にわかれている。発達障害の人は十人十色だというが、たしかに中核的特性はほぼ全員があるのだろう。なので実際の支援や、適応方法も中核的特性をまずは理解し行動すべきということだろう。
第3章 「さまざまな症状とそれが生じる理由」
当たり前のことばかりなのだが、この当たり前のことが「三つ組の障害」の理解だけでとどまっていると実際よくわかっていないことが多いので、いわゆる支援初心者にとっては必読のところであろう。可愛げがない、には参った。。。可愛げはKaienのテーマでもあるし、実際に明神下診療所の勉強会でも出る話題である。
第4章 「個人差と環境による適応の違い」
僕の程度と思われる発達障害中級者にとっては、大変に分かりやすく整理されたお話。実際、違いが微妙に見られ、それに対して対策を変えていくのであるが、それは多くの場合、属人的になりやすく、なかなか般化できるものではない。それをこの章では体系化しているのだと思う。僕としてはIQの凸凹具合による差を考えるのでとても参考になりそう。
第5章 「さまざまな不適応とその対策」
ここは、実際に発達障害と診断されて、でも自分はどうすれば良いのか分からない、という人が読むと効果を発揮すると思う。Kaienのキャリアカウンセリングでは、これの仕事版を、個人の状況にあわせて体系的に、でもストーリーで語ることをしているのだなぁと思った。いわゆる支援者にとっては、数十例の具体例が頭の中に入り始めると特に威力を発揮すると思うし、前述のとおり当事者にとっては、自分そのままの場合があると思うので、そこを念入りに読むと良いかと思う。
第6章 「アスペルガー者をどう支援するのか」
5章に加えてより支援者目線での話し。明神下診療所でもデイケアはされているので、そこから得られた知見がまとめられていると思う。最後にある「働かない選択肢もある」というのは強く同意。働くことが現代社会では自己実現とほぼ同義になっているが、そうじゃないばあいもあって全然構わないと思う。働きたい人は頑張ればよいし、そもそも意欲がない場合はそれは違う生き方があるはず。
第7章 「アスペルガー障害を生きのびるということ」
ここまで淡々と当事者、家族、支援者、特に医師の立場から視点を上手に変えて客観的に組み上げられてきた本書だが、最後に米田先生の発達障害への考え方、愛着がシャイではあるが語られているところだと理解しました。
てな感じなので、大変面白いと思います!!
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