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”コミュニケーションが苦手” な指揮者

2014年1月21日

クラウディオ・アバドが亡くなった。80歳。最も好きな指揮者だった。

ほとんどこのブログのテーマと関係ない話題だが、どうしても凄い指揮者なので記事にしたかったのと、コミュニケーションという点で彼の特異性があると思うので、取り上げてようと思った。例えば、アバドの追悼記事のうちFinancial Timesに次のような一節があった。

アバドのパラドックスは、リハーサルや私生活ではコミュニケーションが少ない人物なのに、コンサートになるとパワフルな演奏を解き放つところ。The great paradox about Claudio Abbado was how someone so uncommunicative in rehearsal and in private could open up such powerful lines of communication in performance

たしかにアバドの数少ないインタビューを見ると、本当にこの人が稀代の名指揮者なのか、と疑いたくなるほどである。カラヤンやバーンスタイン、クライバーなどに比べるとあまりに”発信”が少なく弱い。イタリアの笑みの絶えないおじさんに話を聞いているような感じである。

一方で、彼は”受信”が優れており、またメンバー同士の横の”発信”と”受信”をかなり促した。Listen、Listenとオーケストラに他のメンバーに意識するように伝えるのがアバドの真骨頂というのが以下の動画である。

指揮官からの命令ではなく、メンバー同士の横のつながりを愚直に伝えているのであろう。このスタイルによって、動画の最後でヴァイオリニストが言っているように「一人ひとり好きに弾いて良いという錯覚に陥らせる点で他の指揮者とぜんぜん違う」結果を出している。しかも「好き勝手にやっていながら音楽としては整っている」というのだから、驚きである。。。

コミュニケーションというとどうしても”発信”の強さに向かうが、実は受信が大事だったり、自分からではなく他人同士の発信や受信を促すというのも立派なファシリテーターなのだと思う。

最後に、僕がアバドが好きな理由は、いつも本当に楽しそうに指揮を振っていたところである。コミュニケーションも発信受信云々の前に、楽しむ、というのが最も大事なのだろう。ドヴォルザーク8番の演奏。フルートのソロの前の表情が良い。

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