初の単年マイナスに…コロナ禍での2020年「社会的価値」リポート社長ブログ
Kaien社長の鈴木です。毎年年末に行っている社会的価値のレポート。今年もお伝えしていきます。
なお、当社の就労移行支援・自立訓練(生活訓練)やガクプロを通じて就職をした人たちを中心に、600人に就業実態調査を行っています。そのデータも入れながらこの社会的価値リポートは書いています。細かな分析が見たい方はぜひ下記の記事をクリックしてください。
計算方法はKaienオリジナル
Kaienの社会的価値の計算方法は下記のとおりです。創業以来この式で計算し続けています。
会社納税額+社員納税額+Kaien経由就職者納税額(未来分も含む現在価値)+生活保護減少額(未来分も含む現在価値)ー当社に投下された税金=社会的価値
つまり、
- 誰かがKaien経由で就職すると、その人が税金を払うので、社会的価値はUP。なお、これから働き続けることを前提に未来の納税分も現在価値に戻して計算
- 一方で就職した人が離職すると、また社会への経済的な貢献が薄れるので、その分はDOWN。つまり、定着率を毎年確認し、1から相当分を減額)
- また生活保護受給者が就職すると、その減額分が社会的にプラスなので、相当分を算入。
- 当社が、社員の所得税・住民税・消費税で納税したり、当社が法人税などで納税した分は、国庫への返金となるので、社会的価値はUP
- 最後に、当社は障がい福祉サービスで税金を元に運営している事業が多いので、その分を減額。(順番で言うと5があって、1~4が始まるのですが、ここでは計算式の流れで説明)
ということです。
昨年末時点で累積13億円の価値創出 今年は初のマイナスに
結論から申し上げますと今年は280万円のマイナスでした。ですので累積価値はほとんど変わらず、約13億円です。
マイナスになった理由は…❶コロナ禍での就職禍、❷「自立訓練(生活訓練)」の立ち上げ の二つが主要因です。
❶コロナ禍での就職禍
コロナ禍で4~6月の就職活動がほぼ止まったことがあります。その後、著しい挽回を見せていますが…(下記ブログ参照)、年全体でみると2019年に比べて微減にとどまりました。就職者が増えることが社会的価値を押し上げる最大要素であるので、ここの停滞が大きかったです。
❷就職に “ダイレクトには” 結びつかない新サービス「自立訓練(生活訓練)」の立ち上げ
今年は就労移行支援事業所を増やさず、自立訓練(生活訓練)事業所を新設しました。その理由は様々ありますが、現場にいると必要性を痛感したからということがあります。(下記リンク) つまり引きこもり予備軍を減らすためにも、また総合的に見て公費を減らして就職や生産活動に結びつけるためにも必要なサポートだと、当社では考えています。
とはいえ、❶の裏返しで、就職をしないサービスを増やすことは社会的価値にはネガティブに働きます。公費をもらっておきながら、明確なゴールを社会にお約束できないサービスですので…。これはTEENS(発達障害の小中校生向け放デイ)が社会的価値をいまだにポジティブに測定できない=事業で使わせていただいた公費をコストとしてしか計算できないのと同じ状況です。
必要なはずだけれども、納得感ある数字を見せて事業の必要性を見せられないのは、財政がひっ迫(というよりも無秩序化…)している状況で、あかん!! と思いますので…。どなたかと一緒に数値化していきたいと思います。こういうのに興味ある先生方いらっしゃいませんでしょうか?
社会的価値を構成する要素のご紹介
数値に反映している主な指標をもとに、今年の成果を振り返りたいと思います。
利用データ
- 就労移行支援(大人の発達障害者向け) 約160人/日(累計 1,719人)
- 自立訓練(生活訓練)(〃) 約20人/日(累計 31人)
- ガクプロ(大学・専門学校生向けプログラム) 約200人/月 (累計 1,096人)
- TEENS(小中高生向け 放課後等デイサービス) 約600人/月(累計 1,255人)
就職データ
- 年間就職者 202人(累計 1,434人)
- 定着率 約95%(1年後)
- 平均年収 約240万円
従業員データ
- 人数 301人(常勤 106人)
- 年齢 22~67歳(常勤のみ)
社会的価値
- 累計分 13億5,071万円(創業~2020年末)
- 2020年分 ▼280万円
ちなみに、子ども向けサービスを除き、大人向けサービスだけで見ると累計分は23億7575万円のプラス、今年だけでも2億5361万円は社会的価値を増している計算になっています。
2021年は、マイナス幅が拡大する見込み
2021年はマイナス幅がより大きくなると思います。理由は簡単で…❶社会には必要だと思っているがこの社会的価値の指標ではプラスにならずマイナスにしかならない自立訓練(生活訓練)を4~5拠点新規に開設するため、❷同じく数値的にはネガティブ要素の放課後等デイサービスを新規に開設するためです。
もちろんTEENSや自立訓練(生活訓練)の数値をポジティブに納得感のある社会価値化の式が出来れば、話は別ですが、それは残念ながら1年では発見できないということで話を進めます。
Aだけでなく、BとCでも社会に貢献する
一方で、公費に頼らないサービスを立ち上げるための打ち手も行っています。実はそのために2020年は特許を2つ申請しました。特許で儲けるというよりも、特許を取れるような技術や考えを使ったサービスで、財政に負担をかけずに企業や個人からお金をもらって就職に結びつける仕組みを作っていこうということです。
新サービスは「ミッテル」というサービス名にするところまでは決まっています。2021年夏のサービスローンチを目指しています。
またミッテルより前に、緊急事態宣言下で試行錯誤して行った支援を、新しいサービスとして提供することも決定しています。来月にも発表して、PRを始める予定です。サービス名は「ウェブTEENS」。「ミッテル」と違って「ウェブTEENS」は名前を見ればどんなサービスなのか想像できますよね。ご期待ください。
当社では、B to B(事業者向け)、B to C(個人向け)という言葉に合わせて、B to A(公費に頼った障害福祉)という3分類をしていますが、B to A ではなく、BやCで社会に貢献しようという動きを2021年は加速していきます。割合としてはA:B&C=50:50にするのが当座の目標です。
コロナの谷を乗り越えて
公費に頼らない事業で就職につなげることができれば、徐々に社会的価値はプラスに転じていくと思っています。それまで2~3年はかかるでしょうか。臥薪嘗胆です…。
コロナ禍に見舞われた3・4月。社員には、コロナを乗り越えた後に、以前のKaienに戻ることはしない。コロナの谷を乗り越えたら、違うKaienになれるはず、というメッセージを伝えて、この1年を乗り切ってきました。(下記ブログ参照)
新しいことを始めると、社員も悲鳴を上げますし、お客様にも迷惑がかかることもあります。そして黒字を出すのも難しい。かつ社会的に尊敬を集める組織に成長するのはもっと難しいです。
この年末も課題は山積していますが、一つ一つ問題を解決して、次のステージにたどり着きたいと思います。
バックナンバー(過去の社会的価値リポート)
2015年、2016年、2017年、2018年、2019年のリポートです。
上述の通り来年は大幅にマイナスになると思いますが、凝りずに書き続けたいと思います。
また1年後。この振り返りがポジティブに迎えられるように頑張ります。
福祉に税金を使うと経済的に無駄になるどころか得をする (2015年 今年のKaienの就職支援実績・社会的価値など計算しました)
文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS、大学生向けの就活サークル ガクプロ、就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴・社長ブログ一覧