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発達障害の人のための「働くインフラ」作り、「ニューロ・ダイバーシティ経営」を広めたい 他今日はKaien創業12周年です

2021年9月18日

今日(2021年9月18日)で株式会社Kaienは創業12年です。リーマンショックの影響が残る2009年の創業です。

健常者を凌ぐ仕事を目的に

2009年当時は、IT企業として、自社で発達障害の人を、ソフトウェアエンジニアとして雇うビジネスモデルを目指していました。自閉症の特徴の細部へのこだわりやルール順守を活かして健常者を凌駕する業務を行い、その活躍自体が「発達障害の人が仕事ができない」という世の中のイメージを変えると信じていました。(創業前のビジネスプランコンペティション用の動画(英語)が出てきましたのでご覧ください。)

無名戦士が等身大の強みを活かして

それから12年が経ちました。IT企業にする力は自分にはなく、またリーマンショックの余波が残るところでは新入りのIT企業に、かつ発達障害の人に業務を任せようという会社はなく、早々に「自社雇用 IT企業」を諦め、「他社雇用 職業訓練+人材紹介」に切り替えて今に至ります。

その過程で、一部の尖がりのある人を目立たせるというよりも、誰もが特性として持つ強みを活かせるように。つまり等身大の強さを認めてくれる職場を探しそのためのスキルを付け、一方で特性上の苦手を目立たないように対策したうえで職場にも配慮してもらう、という万人に当てはめるモデルに変換していきました。

強みの活かし方が、理想的だったものが現実的になった一方で、弱みへの向き合いを伝えることも増えました。もともと考えていたように一部の人が健常者を凌駕するというような分かりやすさはないかもしれません。しかし、Kaienの修了生たちは強みを活かす好事例として様々な職場・現場で日々と働いてくれています。いわば「無名戦士」として社会の役に立つことで、周囲の人の発達障害のイメージをじわりじわりと変えていけていると思います。当社を通じて就職した人は1,500人を超えました。

多くが障害者雇用という現実

一方で、Kaienの就労移行支援の修了生の実に9割は障害者雇用で働いています。実は障害者雇用でも一般雇用でも給与はさほど変わらないのですが、それでも一般雇用に比べると職種が狭く、また企業や求人の選択肢も少ないのは事実です。(ちなみに学生向けのガクプロ出身者は、日本の新卒信仰が高い影響で、一般枠で働き始めることが多いです。)

一般雇用か障害者雇用かそれとも…4択で考える発達障害の人の就活事情

もちろんご本人やご家族が満足し納得したキャリア・人生を歩めればそれで良いでしょう。しかし創業12年。もう少し違う動きが出来ないかと模索を始めています。以下、創業記念日を機に、これから目指す方向性を社内外に発信したいと思います。

① 発達障害の人のための「働くインフラ」を作りたい

まずは働くインフラ作りです。今までも「障害者雇用」や「首都圏・大阪」に限定した地域ではそれなりの活動は出来てきたと思います。しかし一般雇用(既に働いている人、一般雇用でバリバリ働きたい人)や、地方に住む人にも、Kaienがこれまで培ったノウハウをサービスという形に落としていきたいと思います。

具体的には現在準備を進めている「ミッテル」。これをインフラに出来ないかというのが今年からの勝負事となります。

ミッテル

ミッテルでは、

  • 人生を通じた支援情報を”カルテ”に保存でき、
  • 日々の体調や気分や出来事を”バイタル”に記録でき、
  • ライフスキルや職業スキルについての教材は”サプリ”で学べ、
  • 連携が叫ばれる支援者と本人・親については個人情報をお互いに開示しなくてもやり取りできる”チャット”を

用意しています。

特にこれまでリーチしづらかった(一般枠を含めた)在職者や地方の人たちにもアプローチが出来そうです。システム開発の例にもれず、リリースが送れていますが12月にはお披露目できるのではないかと思っています。これをもって「インフラ作り」を進めていきたいです。

② 「ニューロ・ダイバーシティ経営」を広めたい

新語ではなく創業以来「ユニバーサルな管理法」と言っていた内容と一緒です。昨今のダイバーシティ・マネジメントの普及にあやかって、またニューロ・ダイバーシティという言葉が人口に膾炙し始めたこともあり、ユニバーサルな管理法=ニューロ・ダイバーシティ経営を広めていきたいと思います。

SDGsやESG投資が広まって、単なる障害者雇用でお茶を濁していた「多様な人が活躍する」ことへの取り組みが、一段加速し始めていると思います。例えば、The Valuable 500は障害を価値に変える大企業が世界的に連携し始めました。その他にもDE&I、つまりこれまでのダイバーシティ・インクルージョン(多様性と包摂)だけではなく、エクイティ(公正・公平さ)まで踏み込まないと、真の意味のD&I経営が出来ないという事だと思います。

このエクイティの概念は発達障害の人だと日々感じる部分です。「普通」に合わせるためにエネルギーを使い、実力を発揮できていなかった発達障害の人を活躍させる方法が、全社員に響くはず。そういう意思で、顧客企業に「ニューロ・ダイバーシティ経営」を広めていきたいと思います。

ニューロ・ダイバーシティ経営は、一般枠・グレーゾーンなどを全部ひっくるめた包括的な、社員への接し方だと思います。これまで当社が企業に関わる時は、障害者雇用の達成率という、いわばコンプライアンスに基づいた守りの経営への支援でした。それが発達障害やニューロダイバーシティという概念をてこに、全社的な攻めの人材戦略につながるかもしれない。そういう期待です。

いやいや、それは理想でしょう。そういう声も聞こえてきそうで、私もまだ半信半疑の部分はあります。しかし既に少なくない企業が、障害者雇用というよりも、「本業での戦力化」「DE&I」「人的資本経営」という旗印で動き始め、当社も輪の中に入れ始めてもらっています。しっかりとショーウインドウのように事例を作り世の中に刺激を与えたいと思います。

③ 「勘からデータへ」 AI・機械学習を福祉の世界に

3つ目は少し長期の目標になります。

これまで福祉は勘に頼るところが多く、その職人技を頼ってKaienを利用していただく方が多かったと思います。ただし5年・10年・15年先は今と同じ福祉があるとは思えません。特にデータで分析しやすい発達障害の世界は、AI・機械学習で出来る部分は機械に任せ、人はより福祉っぽいことをしていくことが求められていくと思います。

例えば次の支援の提案が出てきたり、適職診断をして職業マッチングをしやすくしたりするなど、アセスメントから就活そして定着までの勘をデータ化できる部分があると思っています。そうすればもっと自信をもって支援者がアドバイスできるかもしれませんし、1対1での相談業務などに時間をさけるかもしれません。(もちろん、当社の支援者からは「事務作業が多い」「PCカタカタさせていることが多い」という不満が聞こえますので、まずはRPAなどをより広く導入することが先かもしれませんが…。)

1年後に明確な成果が上がるわけでもないと思います。しかし①の社会インフラを作るためにも、勘のデータ化は絶対重要です。自分もまったく知らない領域ですが、だからこそ挑戦していきたいです。

④ YouTuberになる

最後に急に、些末な目標ですが、今年からYouTuberになろうかなと思っています。元々NHKアナウンサーでしたし、①・②では伝えたいことが色々と出てきそうですし、Kaien YouTubeチャンネル も少しずつ視聴者が増えていますので、平日は毎日動画UPを目標にしていきたいと思います。まずは自分のアバター作りからですかね…。

その他…

②・③については本当は博士課程で研究したいところ…。実際、2020年に博士課程の試験を受けようとした途端、コロナでTOEICなど試験が中止になり、計画が一度頓挫してしまいました。その後、やる気が復活せず、有言不実行になってフラストレーションがたまるところです。しかし今どこに時間を使うのが良いのか、どこにお金を使うのが良いのか、しっかり考えていきたいと思います。特に今年は社外取締役も新たに就任していただく予定です。新しい視座からご意見をいただきながら考え動きたいです。

個人的にこの1年は、父が亡くなり、一方で子どもが新たに生まれ、自分の人生の折り返し感が強く感じられました。明日は無いかもしれない我が身。今できることをしっかり毎日やり切る365日を積み重ねて、13周年を迎えたいと思います。

 

 

文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス「TEENS」
大学生向けの就活サークル「ガクプロ」就労移行支援および自立訓練(生活訓練)「Kaien」 の立ち上げを通じて、これまで2,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴

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