利益の量ではなく質が問われる時代へKaien社長ブログ
Kaien社長の鈴木です。
社会起業からSDGsへ そして・・・
2009年の創業時。Kaienは社会起業(ソーシャルアントレプレナー)と言われました。その言葉は時代とともにかき消されていったように思います。成功事例は出ていたと思いますが、言葉の流行り廃りはある。同じようなものは以前もあったし、ブーム後もしっかりあると思います。
他方、より広い概念で広まってきたのがSDGs(エズ・ディー・ジーズ)。2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」。大企業がこぞってコミットを表明していて、徐々に日本でも認知度が高まっているかもしれません。実は当社も2018年から、『KaienはSDGs達成に参画しています』ということで、(やや見境もなく・・・)9ゴールにコミットさせていただいています。実際、発達障害の大人や子どもの支援と言うと様々なものが重なりやすいので、ひねり出した9というよりも最低限の9という感じかもしれません。
社会的投資の波がKaienにも・・・あるいは当社が波を起こしているのか?
そのSDGsとほぼ時を同じくして広まってきたのが、「社会的責任投資(SRI)」「ESG投資(Environment、Social、Governance)」「インパクト投資」といった社会的な投資活動です。「公的年金、ESGに3.5兆円投資 18年度末: 日本経済新聞」というニュースにもある通り、日本の公的年金を運用する運用法人(GPIF)が環境や企業統治などを考慮した「ESG投資」を増やしていて、今後利益の量ではなく質がより問われる時代になっていくのでしょう。
Kaienは創業当初から理解のある株主(ほとんどが鈴木の先輩や友人・後輩)に恵まれたことで、利益の量を求められやすいVC(ベンチャーキャピタル)とは一切取引をせず、利益の質を考えられる体制を取ってきています。そういった背景も有り、2年ほど前にはGSG国内諮問委員会の分科会提言としてまとめた『社会的インパクト時代の資本主義のあり方』(PDF 無料ダウンロード可)にもヒアリング対象として名前を載せていただいていました。
実は今回、GSCと内閣府が、上記の提言をより進めるため「社会性認証・評価実証事業」を行うということになりました。そしてなんと・・・当社を対象の一つとして選んでいただき、プロジェクトがスタートしています。
具体的には当社の組織体制をB Impact Assessmentという米国でスタンダードになりつつあるツールで評価していただいたり、国内外の様々な指標を組み合わせて事業評価をしていただいたりすることになります。
実証事業は来年3月頃まで続く予定です。そこでの検証内容は当社にもフィードバックされますし、内閣府やGSCのお金を使うので一般にも公開されます。
競争激化の障害福祉の中で「支援とお金のバランス」を考えるよい機会に
2006年の障害者自立支援法(現障害者総合支援法)で障害福祉が民間企業にも開放。それ以来、競争環境が育まれ、利用者に選ばれる事業者が生き残るという流れができました。例えば就労移行支援では就職と定着がしっかりできないと選ばれないという流れです。
一方で、競争が過熱することで、創意工夫の範囲を遥かに越えた効率主義(利用者を取り残した運営)や、ギリギリセーフ(アウト?)の営業がまかり通り、悪貨が良貨を駆逐しかねない状況だと思っています。当社も良いサービスを出しているだけでは人は集まってこず、きちんとアピールする必要性を強く感じています。
そういう意味でも、会社としては程よい黒字を作りながら、どんどんと良いサービスを作っていく、他に真似してもらうサービスを作っていく、支援の面でもレベルを上げていくという、組織(つまり経営の仕方が、法的にも、従業員目線でも、環境的にも、地域社会にも健全か?)・事業(つまりお金と支援の実績は、株主や利用者、行政などが求めるものを出せているのか?)の健康診断をしていくにはとても良い機会だと思っています。
当社の共同創業者(現・社外取締役)の徐が言っているように「世の中には良い利益と悪い利益がある。悪い利益はジャンクフードで作った脂肪のよう。でも良い利益はエネルギーに変換する良い脂肪のよう。ミッション達成のために良質な脂肪をつけよう。」というのが当社のお金への考え方。言うは易く行うは難しなのですが、自分たち目線だけではなく、他者の視点も入れながら、恥ずかしくない経営と支援を続けていきたいと思います。
文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS、大学生向けの就活サークル ガクプロ、就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴・社長ブログ一覧