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誰もが知るべき日本の恥部 ETV特集「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」を見て

2021年8月1日

コロナの話…だけではなかった

昨夜23時からのNHK ETV特集。凄いドキュメンタリーでした。

「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」(再放送あります。2021年8月5日(木)午前0:00。NHKプラスという見逃し配信もあります。)

東京都中から精神疾患のあるコロナ陽性患者を受け入れている都立松沢病院のコロナ専門病棟。次々とクラスターが発生し、精神疾患があるが故に一般の病院での受け入れが困難とされた人たちが運び込まれる。ここにカメラを据えると、病院にしか居場所のない患者、受け入れを拒む家族、ひっ迫する医療体制の中で葛藤する医療者たち、行き届かない行政の指導の実態が見えてきた。コロナがあぶり出した日本の精神医療、その実態の記録。(番組案内から)

東京にいて障害関係の仕事をしていたら知らない人はいない松沢病院。実は私自体は訪問したことは無いのですが、通院している/いた人はたくさんいます。またお世話になっている先生方も松沢病院で修業した人はたくさんいます。なので身近な存在です。

そうか、統合失調症の患者を中心にコロナ対策をどうしているのか、それは見てみたいと思ったのですが…、見るにつれてその予想以上の展開を見せた番組でした。軽い気持ち(というほどではなかったのですが結果的に…)で見たからでしょうか。見終わった後のショックが強烈すぎました。

NHKサイトからのスクリーンショット

畳の部屋に雑魚寝する「病床」 真ん中に仕切りなく置かれたトイレ

番組では、松沢病院などに入院する、統合失調症、認知症、うつ患者が、新型コロナウイルスに感染した時に、どういう苦労があるかという、私が予想したストーリーから始まりました。そこに視点をあてただけでも「さすがNHK」という感じ。「一般の人と同じ医療を」という院長先生をはじめとしたスタッフの真摯な姿が印象でした。が、ドキュメンタリーは静かに、しかし遠慮なく、私たちが「目を背けている」、あるいは「知ろうとしようともしなかった」現実をつまびらかにしていきます。

松沢病院は綺麗なのです。しかしそういう病院に入院している人は幸運なのだという事が徐々にわかります。番組が進むにつれて、前近代的な施設で入院し、コロナ感染していく患者たちの肉声が聞こえてきます。

もはやほとんど人権がないというような環境といえるでしょう。それは大正や昭和初期はこうだったのかもしれないという病院の姿。畳に布団が敷かれ、トイレは部屋の中央に置かれて、音も何もすべてが聞こえる中で排泄をしないといけない状況…。そんなのがこの令和の時代に残っているのが驚きでした。本当に何で許されているのでしょうか?

刑務所でもこれよりまともなのでは?統合失調症や認知症の人は何か法を犯したのでしょうか?だれでも起こりえる症状なのですが…。

さらに印象としては確信犯的に、コロナにかかっても積極的な治療もされず置き去りにされている精神障害の患者たちがいることもわかってきます。南京錠で入り口をしめ、水も飲めずに叫び続ける入院患者も紹介されていました。ある病棟では60数名全員が罹患。看護師などのスタッフも多数が発症していて、この世の終わりともいえる状態に思えました。

さらにさらに、厚労省も、都も、保健所も、指導や対策に及び腰に見えた点は、信じられないの一言です。NHKからの取材に無回答のオンパレード。酷いというのを通り越す現状です。おかしすぎませんか?

コロナで突き付けられる「不都合な真実」

もちろん問題は関係者にあると考えるのは簡単です。病院や行政を叩くのも手かもしれません。

しかし問題は悪意の連鎖だとは思いません。残念ながら日本が精神病に対してきちんと向き合ってこなかった歴史が、コロナによって表出されただけに過ぎないと思います。(番組でも取り上げられていますが、精神科の病床はいまだに世界の2割が日本がしめ、日本は他国に逆行して統合失調症などの患者を病院に閉じ込めてきた歴史があります。)

私も以前NHKで取材者の端くれで、ハンセン病の施設に何度か取材に行きました。今回のドキュメンタリーによる「告発」は、まだまだハンセン病のような恥部が日本にはあり、解決しないといけないと訴えているように感じました。

昨日書いたばかりの自分のブログ記事(平野啓一郎さんの「本心」を読んで)も思い出しました。昨日は、日本が衰退していけば、今のように豊富な資金を医療や福祉に回せず、必ず社会から置き去りにされる、見なかったことにされてしまう人たちが出てくると書きました。しかし、そうした課題は既に起こっていたのかもしれません。行政すら立法すら積極的に関わろうとしない弱者があるんだということです。

日本はコロナ対策で世界2番目に対策費を計上していると聞きます。既に余裕のない国がさらに借金を抱えることになるわけです。不都合な真実として、行政・立法・社会からもいなかったことにされるのは精神科病院の患者だけではなく、今後はより広範な弱者に広がるのかもしれない。そういう恐ろしさを感じさせた番組でした。

ない袖は振れぬのは確か。もう豊かな国ではありません。豊かにする施策も懸命に取りながら、なけなしの予算をどう賢く使ったら、人間らしい生活をすべての人にいきわたらせることができるのか。ファッション的にSDGsを語るだけではとても解決しない、誰も取り残さない社会を本気で作るには、コロナであぶりだされた不都合な真実から目を背けることは許されません。一方ですべてを一気に解決は出来ないのも確か。まさに番組内でも松沢病院の病院長が言っていたように「出来ることから一つ一つ」対策をしていくしかないと思いました。

取材者を称えたい

最後のクレジットを見たら、Kaienでもお世話になっている某ディレクターの取材でした。精神科病院は私にとっても職業柄、近い存在でそこそこ知っているつもりですが、あまりに無知でした。NHKには、すごい取材者がまだまだいるなと感じました。

文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス「TEENS」
大学生向けの就活サークル「ガクプロ」就労移行支援および自立訓練(生活訓練)「Kaien」 の立ち上げを通じて、これまで2,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴

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