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就労移行支援はオワコンか? 福祉ではない「医療型」の就労支援の実力とは?許嫁(いいなずけ)型か、恋愛型か

2022年1月12日

今日は吉祥寺病院で「医療型就労支援」を行われている清澤康伸さんがKaien新宿にいらっしゃいました。先月の「就労支援フォーラム NIPPON 2021」で一緒に登壇させていただいてからのご縁です。

福祉型が席巻する 今の障害者就労支援業界

今障害のある方の就労支援は、厚労省が管轄する障害福祉サービスの中の一つのサービス「就労移行支援」で行われています。

実際、障害のある方で就職を考えるほとんどの人が「就労移行支援」を検討されているでしょう。

2006年の自立支援法の時に制度化され、今や全国に3000ヶ所以上。

障害者雇用が前進する一翼を担っており大きな成果をあげていると言えます。(詳しくは下の動画をご覧ください。)

吉祥寺病院の、あらゆる面でKaienの上を行く就労支援実績

そんな中、清澤さんは福祉ではなく、医療の世界で就労支援の仕組みを作ろうと尽力されている中心人物です。

そしてこの「医療型就労支援」は、就職率(全国平均や東京都平均の2倍)や定着率(こちらも離職率の低さでは平均の数倍)が全国有数に高いKaienの、更に上を行っています。なんと悔しいことか!!

具体的には、半年ほどで就職(これは当社よりもやや早い)し、しかも脱落者はほとんどなく(当社は10%強ぐらいが中退される)、その後の定着も100%(定着率の高い当社でも1年後90~95%)という感じです。

当社よりも成果が上がっている障碍者向けの就労支援機関はまずないので、今日は同席した当社スタッフが焦っていたというか、先方の荒を探そうとしてしまっていたというか、度肝を抜かれていたほどです。そりゃたまげますよね…。

まだ制度化されていない「医療型就労支援」 

通常、精神科の病院・クリニックは「診察」(状態を見てお薬を出す等)や「デイケア」(週に何度か通う治療的な居場所)を行っています。そしてその主たる目的は「治療」です。

清澤さんが行うデイケアは、地域生活での安定を治療の一環で目指すこれまでのデイケアとは違って、精神科に通う失業者が就職し定着するまでをサポートする就労支援が出来るデイケアです。

実は就労系のデイケアは、既に復職を目指すリワークプログラムや、仕事終わりに通う夜間のナイトケアがありますが、清澤さんが行う「医療型就労支援」はまだ制度化されていません。

というのも、リワークなどあくまで働くことをサポートする治療的要素の強いデイケアと違い、就職支援や定着支援をデイケアのメインに据えるのは、医療の根幹である「治療」の範囲を超えているのではないかなどの指摘がまだまだ根強い、など超えるべき部分があるとのことなのですね…。

それでも、まだ理解が広がらない中で清澤さんは制度化を目指され、まずは国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)で「医療型就労支援」の成果を残されました。

今は通常の民間病院・クリニックでも再現できるかを確認するため、吉祥寺病院でその取り組みを加速されているというわけです。その様子はウェブの記事でも読むことが出来ます。

障がい者雇用のいま(2)「医療型就労支援」が導く光明(ダイヤモンド・オンライン)

医療型と福祉型の違いをまとめてみた

医療型と福祉型。何が違うのか。今日の清澤さんとのお話しで結構明確になりました。表にまとめてみます。ここからはあくまで鈴木の私見です。

「医療型(デイケア ただし制度化は未実現)」「福祉型(就労移行支援事業)」の違い

ポイントとしては

  • A)「医師や看護師がいる」が大きいと思います。通常の福祉の就労移行では医師はいません。看護師もまずいないでしょう。そのほか、福祉では1人いればよい国家資格保有者がほぼ全員というのも医療型の特徴。スタッフへの安心感は圧倒的に医療型に軍配が上がります。
  • B)医療型は「就活支援がほぼない」ということが大きいようです。②や⑤の部分です。逆に言うと就労移行支援は面接のノウハウや書類の書き方など就活という特殊ゲームに対処するスキルを教わりますが、医療型はハローワークの障害福祉担当者と密接に結びつくことで企業を開拓。その企業を「就労支援士」が分析し、利用者にぴったりの仕事場を創り上げてマッチングする形です。 一方で福祉型の場合は⑤ハローワークやエージェントなどを使って複数社を受けていく形になり、本人が様々な選択肢の中から自己決定していくことが出来ます。また②自分のスキルアップが図れるところも大きいですね。
  • Bの続き)ここで重要なのが①の「就労支援士」。この仕事だけは国家資格ではなく、今清澤さんが資格化・マニュアル化しようとされている部分です。医療型はほとんどのスタッフが医療村で育ってきている人たちなので、企業や職場の常識がわからない。その架け橋を担う役割が「就労支援士」であり、この育成がカギを握るとも言えます。
  • C)そのほか、費用は個々人の状態(生活保護かどうかなど)によって違いますが無料~月1万円未満で大きくは変わらないですし、頻度や就職までの期間も人によってやや違うところと言える…

となるでしょう。

許嫁(いいなずけ)型か、恋愛型か

究極的に言うと、清澤さんが今されている「医療型」は許嫁型やお見合い型に近いなと。

半年の間でご本人の特徴を医療チームがしっかりアセスメント。それをプログラムの中で本人に落とし込む。仕事は就労支援士がぴったりなものを丁度よい時に持ってきてくれる。そういうプログラムです。

これまで仕事の経験があるなど「集団で動く力」「グループワークをする力」が既にあり、「仕事のスキル」もご本人が納得するまで高められていて(あるいは現状以上は期待されていなくて)、いろいろと右往左往して時間やエネルギーを浪費するよりも信頼できる人の「お勧めに従える」ことが出来る人にフィットしそうです。

一方で、福祉型は恋愛型に近いなと思います。

具体的には「集団スキル」を練習しつつ、PCやIT・デザインなどの「職業スキル」も高め、かつ様々な就活という名の”恋愛”もしていくのでそのために必要な「特殊スキル(求人探しスキル・面接スキル・書類作成スキル)」も習得できるようになっています。

まだ働いたことが無いとか、グループワークが苦手とか、将来に向けてスキルを今のうちに高めておきたいとか、就職先は自分が決めたいとか、そういう人向けなのが「恋愛型」となります。

実はKaienも元々は許嫁(いいなずけ)型だった

許嫁が良いか、恋愛が良いか…。ここは難しいところです。

実はKaienも元々は許嫁(いいなずけ)型でした。というよりも10年ほど前は発達障害というのは障害者雇用でも一番相手にされない分類だったので、なんとか企業を獲得してきてその会社にみんなが就職するに近い形からスタートしているからです。その人たちが選択肢が無いから不幸だったかというとそうでもなく、選択肢が少ないからこそ、安心して納得して就職する人も数多いことを知っています。

しかしいろいろと発達障害の方を採用したいという企業が増えて、かつ私自身が「自分の押し付けではないか?」「レールやベルトコンベヤーに載せているだけではないか?」というような自己否定の気持ちも出てきて、「幅広い選択肢」から「自己決定」をしてもらいたいという支援者としての欲?から、今の恋愛型に近い形になってきたのです。

すなわち体験できる職業訓練を100以上に増やし、就職先も独自求人を数百を常に抱え、さらに様々なエージェントも活用していくようなスタイルになっています。今や障害者雇用は就職先で絶対ではなく、一般雇用で就職する例も数多くなっています。Kaienは支援者としては様々なメニューを用意し、様々なニーズに対応しないといけないので大変です。

そんな中の今日、清澤さんのお話…。しっかりとポリシーをもって、参加者の理解を得た上であれば、許嫁型も、シンプルなスタイルもメリットがあると、かつての自分を認めたような不思議な気持ちになりました。

圧倒的ポテンシャル(!?)の「医療型就労支援」を前に、福祉の就労移行支援はどうするのか?

専門家集団の「医療型就労支援」が制度化されると、障害者の就労支援業界は大きく変わる可能性があります。

まず、病院やクリニックなど医療機関も、これまで就職支援をしようと思っても福祉型を使うしかありませんでした。それが医療型という得意分野を活かした展開が出来るようになります。ビジネスチャンスとなりますし、これによって救われる当事者も多いでしょう。

一方で、既存の福祉事業所は利用者が激減する可能性もあります。より個性が求められるようになるでしょう。また個性だけではなく、医療型と比較してもそん色ない実績も求められると思います。

当社の場合は、❶専門学校のようにIT・デザインなどスキルアップできる講座をより増やす、❷仕事の未経験者でも集団で働ける力が身に付く体験型の職業訓練を充実させる、という今までの特徴を存分に活用するとともに、❸AIなどを使って支援データを活用して就職に結びつける(本人の特徴を入れれば自動でお勧めの就職先が出て来るとか!?)など付加価値を高めたり、❹医療型のように❶・❷を不要とするタイプには数ヵ月で就職に結びつける「即決コース」を設けたり、などが必要になるかなと思います。(まあ、❶~❹は医療型が制度化されるされないに関わらず、今取り組んでいることだなぁと思うのですが…。)

医療型にも課題はたくさんある(はず?)

もちろんまだ数か所でしか行われていない「医療型就労支援」を過大評価する危険性もありそうです。

1拠点だけでしていた時の支援の手厚さ・質が、全国に広がったときに保たれるかというと、大きな疑問ですよね。もしかしたら清澤さんの個人技が大きいということなのかもしれないからです。もちろんそうならないように様々なマニュアル化・資格化を進められていると理解していますが、制度化され全国でされるときには福祉型と成果レベルでは変わらなくなる可能性もあります。

それに何より抵抗勢力がいろいろありそうですよね…。それこそ福祉型の就労移行支援組織が抵抗勢力になってほしくないのですが…。個人的には結果が出ればよいと思いますし、税金を使う医療や福祉である以上はより少ないコストで出来ることが良いに決まっています。ぜひ制度化に向けて関係各所が一丸になっていただきたいところですし、当社もなんらかアドボケートできればと思っています。でもこういうのって10年単位で時間がかかるのでしょうね…。頭が下がります。

なにより新たな発想でぐいぐい実績を残される吉祥寺病院×清澤さんには刺激を受け、当社としてもいろいろと連携させていただきたいな、勉強させていただきたいなと思った次第です。皆さんも一緒に障害者の就労支援を盛り上げていきましょう!!

文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS大学生向けの就活サークル ガクプロ就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴社長ブログ一覧

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