Kaienの社会的価値 ~就労支援は税金を2倍にして社会に返している 子どもの支援は?~
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昨日で今年の当社の営業はほぼ終了。朝から飛行機で移動。機上でのアナウンス。「火山活動のため硫黄の臭いがしますがご了承ください。。。」とのこと。 自衛隊機で移動しているかのような錯覚に襲われましたが、飛行機は無事鹿児島空港へ。年越しを鹿児島で過ごすのは5年ぶりぐらいです。桜島は今日は穏やかに見えます。
鹿児島中央駅からさらに南へ |
主に移動中に普段はできない仕事を今日はしました。それが、社会的価値の再計算。
これまで当社ではウェブサイトの右端に、社会的価値ということで数字を入れてきました。今月で4千万円超になっています。多いといえば多いのですが、税金を1億円単位で投入していただいている事業としては何というか申し訳ない気持ちがどこかにありました。社会的価値が少なすぎるということです。多額の税金を使わせていただいていながらそれに見合うリターンを社会に返していないという後ろめたさが常にありました。
とはいえ、この数字はどこか納得がいかない数字でもありました。就職した人(当社の職業訓練を経て就職した発達障害の人)が払ったであろう過去分の税金しか反映していなかったということです。ほかにも計算式に含まれるべき項目があるはずだと思っていました。
例えば、当社が会社として納めた法人税とか(しかも結構多いのです。中小企業の実効税率が、海外のタックスヘイブンなどを利用してギリギリの節税をしている大企業の実効税率よりもはるかに高いことが納得いかないのですが、それはまた次回以降に議論するとして・・・)、当社のスタッフが払う所得税とか消費税とか、当社で就職した人が今後納めるであろう税金の予想とかが、計算から欠けていたからです。未来のことを言うなと言われるかもしれませんが、投入した税金への回収分はやはり未来分も含めた現在価値で比べないと”投資”の成否がわかりません。
ファイナンス基礎理論 第11回「割引率ってなに?」
http://www.yuichiro-itakura.com/essay/partner_essay/by/by_11.html
で、計算した結果は、1億円税金をつかって当社が就労支援事業をすると、2億円にして社会に返すことができる、つまり2倍にしているということがわかりました。
もちろんいろいろな仮定を置いています。が、それも、かなり保守的に計算していました。仮定としておくのは、当社経由の場合の就職率(約85%)、それに基づく就職者数(毎年100人以上)、平均月給約18万円、定着率(1年後で約95%)、訓練生に占める生活保護の率(数%のみ)などですが、特に生活保護のところなど、現実の数字よりもかなり控えめに計算しています。
当社納税額(今期分)+当社スタッフ納税額(今期分)+当社経由就職者納税額(未来分も含む現在価値)+訓練生生活保護減少額(未来分も含む現在価値)ー当社に投下された税金=社会的価値
今回の数字で一番貢献していたのは、当社経由で就職した人たちの納税額です。要素としては(これまでの障害者雇用としては)高い月給、高い就職率、高い定着率の3つの数字が寄与しています。また、生活保護の人に働いてもらうと、そうでない人(例:親に養ってもらっていた人)を就職させる場合よりも4~5倍ぐらい経済視点からは価値があるということです。貧困層を働ける存在にすることは経済的なインパクトが非常に大きいことがわかりました、
税金投下1億円の時に2倍の価値を社会に返しているということは、上の式でいうと『2億円ー1億円=1億円』という感じです。そこそこ誇るべき数字ではないでしょうか。これまで税金で食わせてもらっている仕事、という肩身の狭い思いをしていましたが来年からは胸を張って倍にして返しています!!といいたいと思います。税金無駄遣い全然していませんし、むしろ増やしていますよ、ということです。
1年ぐらい納得できる計算方法はないかなぁと考えていた結果出てきたものであり、今考え直すと当たり前なのですが、他の就労系の組織の社会的価値にも使ってもらえるかもしれません。あるいはもう使っているものを僕が今日気付いただけなのかもしれませんが。。。
注釈も必要です。一人が就職するためには当社だけの力でなりえることは少ないです。もちろん親御さんの力もあると思いますし、同じ医療・福祉の仲間としても、発達障害者支援センターとか、就労・生活支援センターとか、若者サポートステーションとか、ハローワークとか、 クリニックとか、カウンセリングルームとか、その人たち・組織の成果も全部もらって2倍にしているという計算です。なのですべてを自分たちの手柄にはできません。
一方で、ただ単に発達障害の人を資本主義の歯車として機械的に働かせているだけではなく、夢と希望を与えているとか、ふわっとしたところがもしかしたらあるかもしれず、実際Kaienで訓練をした人や、就職後に充実感もって働き続けている人、そしてそのご家族の表情を見ると、(お世辞も多分にあるのはわかりますが「Kaienがあったから今がある」ということを言ってもらえることを考えると)、数字以上に良いことをしているのかもなぁと、思ったりもします。
いろいろとプラスマイナス考えても、税金を2倍ぐらいにして返している、資本主義としても市民社会としてもきちんと役割を果たしている会社になりつつあるなぁと感じました。
と、ここまでがきょう午前までに計算した話です。そこからが難しかった。というかまだ解けていません。大人以上に計算が難しいものが、子どもの支援の社会的価値の数値化です。午後はそれをずっと考えています。
夜になってもその課題が頭にありながら、ふと、いつもの部屋にはないテレビに久しぶりに接してみたところ、気づきに近いものがありました。番組名は、NHKスペシャル「子どもの未来を救え~貧困の連鎖を断ち切るために~」。横浜の当社事業でお世話になった鈴木晶子さんがコメンテーターとしてスタジオ出演していたこともあり、「おーっ」と見始めました。番組の中で、きょうの僕課題を言葉にしてもらったのが、『子どもの貧困対策は長い目で見た投資』というフレーズ。「そうだよね」と感じたのでした。
当社のTEENS(発達障害児向けの学習支援・お仕事体験)は、貧困層の子ども、貧困世帯の世代連鎖というストーリーからは若干はずれるのですが、将来しっかりと社会で働く力になってもらうために他の多くの子たちとは違うアプローチが必要であるために、長い目で見た投資と考えないといけないということは世代を超えた貧困対策と一緒です。発達障害児をどこかの私立中学・高校・大学に受からせるだけ、つまり受験だけで物事が解決するなら数年間ぐらいの短期間の視点でよいですし、何がゴールかもわかりやすいですが、将来、税金を投下せず、むしろしっかりと払ってもらう存在になるために今何をすべきかという大きな視点だと、その社会的な投資をどの程度発達障害の子どもにすべきかというのは本当に難しいです。
個人的には、当社のTEENSに通った子どもがはつらつと将来働くことが何よりも証明になるのだと思います。しかし、難しい計算になるからこそ、「しっかりとこれだけ今のうちに税金投下したほうが良いよ」、という社会に説明する必要があります。そうじゃないと、ますます社会保障費増額へのプレッシャーが高まる中で削られる予算となってしまいます。『長い目で見た投資』として、こねくり回した数字ではなく、感覚として納得してもらうためにはどうしたらよいのか。。。
正直5年は猶予が欲しいなと思います。TEENSのセッションを見ると、とても普段学校で心の翼を広げられていないとは思えないぐらいのびのびと発言したり行動していたりする子たちに会えます。5年後10年後にはしっかりと働く力になれているのではないかと思います。当社だけの力ではないかもしれませんが、当社での経験や支えが核となって本人が納得して楽しめる就職できるケースを増やしていきたいと思います。
今の時点での数値化もできるかもしれません。例えば(1)親御さんが負担が精神的だけではなく時間的にも減る(時間=お金の換算はできます)というご家族支援の効果、(2)学校の先生や職員の人たちがその子へのアプローチが上手になる、負担が減るという効果、などです。(1)にしても(2)にしても、発達障害児の進学や就職、その子ごとの長所や短所への個別のアプローチについての情報は世の中に少なく、そのあたりに適切で的確な支援をできることで間接的に社会に効果を感じてもらうことをTEENSとう事業でまず示したいと思います。
大人の社会的価値は近々ウェブサイトに反映できそうですが、子どものほうは来年の年末年始の宿題になりそうです。今回は他にもプログラム開発やビデオ撮影などのほかに、来年のビジネスプランを書き直す作業など、宿題を溜めすぎて、早くも終わらなそうです。できる限り消化していきたいと思います。
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