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2019年社会的価値リポート 累計13億5,552万円(創業~2019年末)に Kaien社長ブログ

Kaien社長の鈴木です。毎年年末に行っている社会的価値のレポート。今年もこちらでお伝えしていきます。

なお、当社の就労移行支援ガクプロを通じて就職をした人たちを中心に、500人に就業実態調査を行っています。そのデータも入れながらこの社会的価値リポートは書いています。細かな分析が見たい方はぜひ下記の記事をクリックしてください。

2019年版 発達障害 就業実態調査から① 診断・告知・気づきのタイミングは世代と性別で異なる

計算方法はKaienオリジナル

これまで当社のブログを丹念に見ていただいている人ならば、Kaienの社会的価値の計算方法はご存知かもしれません。しかしそういう方は稀有だと思いますので、改めて計算方法を下に記します。

会社納税額+社員納税額+Kaien経由就職者納税額(未来分も含む現在価値)+生活保護減少額(未来分も含む現在価値)ー当社に投下された税金=社会的価値

つまり、

  1. 誰かがKaien経由で就職すると、その人が税金を払うので、社会的価値はUP。なお、これから働き続けることを前提に未来の納税分も現在価値に戻して計算
  2. 一方で就職した人が離職すると、また社会への経済的な貢献が薄れるので、その分はDOWN。つまり、定着率を毎年確認し、1から相当分を減額)
  3. また生活保護受給者が就職すると、その減額分が社会的にプラスなので、相当分を算入。
  4. 当社が、社員の所得税・住民税・消費税で納税したり、当社が法人税などで納税した分は、国庫への返金となるので、社会的価値はUP
  5. 最後に、当社は障がい福祉サービスで税金を元に運営している事業が多いので、その分を減額。(順番で言うと5があって、1~4が始まるのですが、ここでは計算式の流れで説明)

ということです。

昨年末時点で累積12億円の価値創出 今年末は…

2009年に創業した当社。ちょうど10年経ったわけです。設立以来10年間で積み上げた価値が今年計算されました。

結論から言うと、今年は約9,300万円を上積みし、約13億5千万円の社会的価値になりました。(上記の1~5の途中式にある変数が一部変わったので、例えば消費税ですね…、過去分含めて少し数字が変わったところがあります。)

13億という数字が多いか少ないかと言うと、わかりません。多寡よりも、ただ単にお金を稼げば良い、ただ単に就職に結びつければ良い、という風に株式会社だと思われがちですので、当社は違うのですよ!ということをアピールするためにも、またパートタイムも含めると既に250人を越える人が働いている会社なので創業当時からの大切にしていることを忘れないためにも、数字を取り続けることが何より重要だと思っています。

少し脱線しますが、今年から来年にかけて内閣府とGSC(G8を母体にする社会インパクト投資推進組織)が進める「社会性認証・評価実証事業」の対象に当社を選んでいただいています。このため、実はこの年末は、Kaienが社会的価値に体制的に事業的にどれだけコミットし、そして実際社会的価値を出せているのかをB Impact Assessmentという米国でスタンダードになりつつあるツールで評価・分析も行っています。(下の記事を参照)

利益の量ではなく質が問われる時代へ

社会的価値を構成する要素(就職者数、定着率など)のご紹介

ではおよそ1億円を積み上げた今年の成果を振り返りたいと思います。

利用データ
  • 就労移行支援(大人の発達障害者向け) 約180人/日(累計 1,517人)
  • ガクプロ(大学・専門学校生向けプログラム) 約200人/月 (累計 940人)
  • TEENS(小中高生向け 放課後等デイサービス) 約600人/月(累計 1,191人)
就職データ
  • 就職者 221人(創業~2019年末の累計 1,232人)
  • 定着率 95%(1年後)
  • 給与平均 240万円(年収) 
従業員データ
  • 人数 275人(常勤換算 約130人)
  • 年齢 21~74歳
社会的価値
  • 累計分 13億5,552万円(創業~2019年末)
  • 19年分 9,384万円

変わらず積み残しの課題 子ども向け事業の社会的価値計算

いつものとおりですが、子ども向けサービスの価値をどう出すか、つまり就職にまだつながらない子どもたちを放課後等デイサービスという障がい福祉サービスを活用することで行う社会的、経済的な価値をどう計算するかは考慮中です…。つまり子ども向けの教育事業(TEENS)は社会的価値はマイナスということで今のところ計算しています。

そのマイナス分が7億7千万円ぐらい累積であるので、就労部門だけで見ると今年で20億円を超える価値を出したことになります。

バックナンバー(過去の社会的価値リポート)

上から2015年、2016年、2017年、2018年のリポートです。毎年このリポートを計算し、ブログに書くと1年が終わるなぁと思います。また来年(2020年)もKaienをよろしくお願いいたします。

福祉に税金を使うと経済的に無駄になるどころか得をする (2015年 今年のKaienの就職支援実績・社会的価値など計算しました)

年末のKaien通信簿 今年は赤点すれすれです

社会的価値が10億円の大台へ

発達障害は最も就職支援が簡単な障害になったのか? 2018年社会的価値リポート

 

 

文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS大学生向けの就活サークル ガクプロ就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴社長ブログ一覧

発達障害は最も就職支援が簡単な障害になったのか? 2018年社会的価値リポート Kaien社長ブログ

 

年末です。30日は早めに年末年始の休暇を消化し、大晦日ではありますが仕事始め的な印象です。2019年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、当社ではその設立背景もあり、ウェブサイトでこれまでの社会的価値を掲載(「会社概要」の下部)しています。そして毎年年末年始の時期に、当社が社会にとってどの程度の経済的な価値をもたらしているかをデータと共にまとめています。本ブログはその2018年版です。

【参考】昨年のレポート → 社会的価値が10億円の大台へKaien社会的価値 ~2017年を振り返る~

年間2.2億円を社会に還元

結論から言いますと、2018年は2.2億ほどの価値を生み出した計算となります。これまでの9年間を合計すると12.7億円になります。下記がファクターです。

  • 今年も200人以上(220人 ※就労移行支援だけではなく大学生支援のガクプロ含む)を就職に導けたこと。
  • 就職者が1,100人を越えた「納税者」となった人たちが増えていること。そして定着率が1年後でも95%程度と高いこと。 
  • 給与が全体的に上がっていること
    • 修了生が順調にキャリアを積んで平均給与が上がってきていること。全体で1万円/月の昇給がデータで確認できていること。
    • 半数が給料1ヶ月分程度(20万円程度)の賞与も受け取り始めていること。
  • 一部の人は就職することで生活保護から抜け出している人も引き続き多いこと。(親に生活を頼っている人が就職する経済的価値に比べて、5~10倍も生活保護(つまり国)に頼っている人が就職する経済的価値は高いのです)
  • Kaienが法人として法人税や従業員の給与を通じて社会に還元していること。(今年も無事に納税ができました)

これらを合算することで今年は2億円、そして総額は12億円超を、グロスではなくネットで返納している(つまり当社は障害福祉事業者なので税金を使って支援活動をしているのですが、その分を考慮に入れても過去10億円を優に超える額を国庫に返納していることに等しい)ことになります。

定着率NO.1 「1年後も70%」の衝撃

ではこの2億や12億という数字をどう評価するか。高いのか低いのか、意味があるのか無いのか。(実は同業他社の数字も入れてみたことがあるのですが、多くはマイナスになります。なのでプラスの数字が出ている事自体に意味があるかもしれませんが、その先を考えたいというわけです。)

ある統計をご紹介したいと思います。それが今年前半に私が知ることになった「障害者の就業状況などに関する調査研究 」(2017年 JEED)です。それによると当社で支援した人たちの定着率よりも低いものの、発達障害というのは障害者雇用の中ではもっとも定着が期待できる、語弊を恐れずに言うと最も支援が簡単な障害ということになります。人事ご担当者様向け 障害者雇用無料セミナーでもご案内しているとおり、”発達障害推し”じゃなくても、これから雇用するならば身体障害でも知的障害でも他の精神障害でもなく発達障害が良いというのはデータから読み取れる結論となります。

1年後定着率 研究結果(2017年 JEED)

  • 発達障害 71.5%(参考Kaien実績:95%)
  • 知的障害 68.0%
  • 身体障害 60.8%
  • 精神障害 49.3%

当社が創業した2009年は「最も難しい障害と言われた」のが発達障害です。それが10年もしないうちに最も簡単になるというのは嬉しいことでもありますし、一流の支援ではなくてもそれなりに就職や定着の支援ができるようになったということでもあると思います。今回の文脈で言うと、いくら2億円、12億円という数字を出そうが、それはどの業者でも簡単に出せるのではないかと思われかねないということです。

社会的価値を更に向上させるため Kaienの2019年

ですので、今後は当社はもう少し数字に現れないところを強化しないといけないと思っています。具体的には下記のことを考えています。そして実際に手をうち始めています。

①さらなる月給UPを果たす

現在は当社の場合3割程度である月給20万円以上の人の数が多くなることです。

一般枠のほうが高いことが多いですので、今は10%程度の一般雇用の比率を高めることも一つの手でしょう。実際、今年開設した、当社ではじめての首都圏以外の拠点であるKaien大阪天六では5人の就職者のうち4人までもが一般雇用での就職でした。あくまで通っている人の希望に沿ってナビゲートはしていきますが、首都圏でもこの方向性が強くなると予想しています。

あるいは障害者雇用でもIT・ウェブ・デザインなどの専門職がより求められるようになっている時流に逆らわないことも重要だと思っています。当社もクリエイティブコースでITやデザイン、マーケティングなどの創造性が求められる部分を強化していこうと思っています。

②就職を目指す人を増やす

現在障害者雇用率は上がっているものの、障害者のある人(障害者手帳がある人と定義)で18~64歳の「現役世代」は400万人ほど。しかし働いているのは50万人ほどです。(参考 厚労省 障害者の状況

相当数がクローズド(障害者手帳を持ちながらも一般枠で障害を告げずに働く)と考えても、2割程度しか働いていない状況であり、この課題に寄与することは重要でしょう。

つまり空前の人手不足、特に障害者雇用はその傾向が強くなっています。今まで働けないなと思っている人も、実は能力的には十分。足りないのは、これまでの失敗経験で働く意欲が出てこないメンタル面という、なんとももったいない状況が今の日本では頻繁に出会う光景です。二次障害で苦しむ発達障害の人にも希望を感じてもらえるような雇用事例、あるいはそういう人をスモールステップで支援する専門性、このあたりを当社がつけていきたいと思っています。

③そもそも二次障害になる人を減らす

が、本来は二次障害で苦しむ人が少なくなれば②の問題も減少する(つまり大人になって働く意欲が出ないほどまでにならない)はずです。そこで考えたいのが子ども時代の療育です。

先日、当社取締役で教育部門の責任者である飯島が、TEENS(当社の放デイ)のブログで言及している通り、実は2億円や12億円という数字には、まだ教育事業は貢献していません。というよりもコストとしてしか計算できていません。というのも、納税者になるということで直接に国庫に還元できる大人向け事業と違い、子ども向け事業の社会的な価値はあいまいで今のところ算出をしていないからです。

違う言い方をすると子ども向け事業がなければ、今年だけで4億、累計ですと20億円近い数字になっていたはずですが、子ども向けのポジティブな側面を数値化出来ていないために、それぞれ2億、12億という数字に落ち着いてしまっているのです。つまり、2018年の数字では2億円は子ども事業をするうえでの負債になっています。逆に言うと、2億円の価値があればTEENSの事業は社会的に存続させることが合理的になります。

仮説を重ねる形になりますが、簡単な計算で2億円の価値があるかを考えてみましょう。下の飯島によるまとめでは、「TEENSに通うと二次障害の発生率が80%も減少する(42%の発症率が9%未満になる)」となっています。

【参考】 二次障害発生率に5倍の差!子どもの発達障害 支援の社会的価値は?

TEENSに今年通い始めたお子さんを120人とすると(大体600人ぐらいが今通っていて、平均5年間通っているとすると今年通い始めた数は理論的に120人になります)、120人のうち33%(42-9で33)のお子さんの、将来的な二次障害発生を抑えられたとすると、120×33%=40人分が2億円と釣り合う必要があります。一人500万円ですね。

大人になって二次障害が出ず働ける人が純粋に40人増えるわけではないのですが、一定数はまったく働けないのが働けるになったり、働いている人も医療費や福祉の費用が低くなったり、を考えますと、将来の価値の毀損を未然に防ぐということは計算値として出しても良い気がしてきます。このあたりの計算式である程度納得できるものが作れれば、2019年の当社発表の社会的価値は大きく跳ね上がるかもしれません。

④雇用増に繋がる仕組みを提案 企業をエンパワメントする

もちろん本人向けのサポートだけではなく、企業の取組のサポートも必要です。雇え雇えと言っても戦力にならなかったり、あるいは二次障害をひどくするばかりで自尊心を落としてしまうような雇用ならばしないほうがましといえます。(※官公庁の にわか障害者雇用 がそうなるのではないかと恐れています)

80%ほどとも思われる、障害者手帳を持つけれども働いていない「現役世代」を減らしていくためには、企業の雇い方の分野でも間口を広げる必要があります。本業で忙しく、なかなか障害者雇用を安定させられていない会社でも、比較的容易に導入できる仕組みを提案することで、当社の社会的な価値も高まると思っています。ここはまだ発表できないですが、動き始めている部分であり、良い成果をご報告したい部分です。

ちなみに、学校へのサポートも2019年にスタートさせる予定です。これによって、放デイの中だけではなく、学校の中(そしてそこが多くの場合、二次障害を発生させる場所になっているのですが)での居心地の良さに繋がっていくと思います。

2019年はどんな年に

2019年。Kaienは10周年を迎えます。

Kaienは3歳だった息子の診断をきっかけにはじめました。彼もなんと受験生。時の経つのは速いものです。

発達障害界隈の動きも非常に速い。当社も価値を更に高め、斬新な視点で業界を引っ張る一員となれるようがんばります。

2019年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS大学生向けの就活サークル ガクプロ就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA) 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴社長ブログ一覧

当社社員の最低賃金引き上げ 月給22万円+ボーナスへ

今日は当社のガクプロ(発達障害の傾向のある大学生・専門学校生向けの就活プログラム)に5年通い続けた大学院生が無事内定を取得したというニュースが入ってきました。院で学んでいる専門性も活かせるいわゆる一般雇用のようです。個人的に最も頻度高く個別相談をした男子学生だったので感慨もひとしおです。当初はやりとりが返ってくるまで1・2分を要することもあった、やや緘黙傾向の強い学生だったのですが、きちんと素材の良さを見てくれる会社さんはあるものですね。

年収300万円~に引き上げ & 消費増税を見越して

さて、本題。今月当社は従業員の給与に手を付けました。これまで新卒の場合は20万円~(当社内での障害者雇用の場合は18万円~)が下限だったところ、今月から給与を22万円~に変更しました。最大で4万円の月給UPになります。

当社はボーナスは1.5ヶ月分が標準です。このため13.5ヶ月分が年収となります。計算すると22×13.5=297万円が今後の最低年収となります。子ども向け事業(放課後等デイサービス TEENS)のスタッフは平日夜のシフトの場合は夕食代として夜間手当(5000円~1万円/月)を既に導入済み。このため新卒のほとんどはベースの部分で考えても300万円を超すことができました。もちろんこれらに残業代+その他手当が加算されます。

当社は2009年にできた会社です。そろそろフルタイムスタッフだけでも100人になります。とはいえ人事制度はまだまだ整備中。今回も1年半に導入した制度で改善すべき点を考えている中で、社内の最低賃金を引き上げよう、ということになりました。今月はじめの執行役員会で決め、即日導入しました。

今まで放置していた感が拭えません。やや機械的に給与テーブルを定めすぎていたと反省しています。これで若者がより元気よく働いてくれることを願います。

ちなみに皆さんなんとなく忘れているようですが、来年(2019年)10月には消費税率が上がります。その時も給与は2%は難しいかもしれませんが、上げていくつもりです。このまま事業が順調に進めばですが…。

福祉+αの難しさ

現在当社はほぼ純粋な福祉企業。制度に頼った公費で運営されています。「介護職員や保育士の月給が10万円台で暮らせない」というニュースが度々入るように、当社も同じような報酬制度で運営していますので、無い袖は振れないところはあるのです。

しかも今年度から障害福祉サービスの報酬単価は落ちています。今までどおりだと1割程度売上が減ることが予想されています。幸いなことに当社は上場企業ではありません。市場にさらされる良さもあるとは思うのですが、こういった決断は非上場の良さを活かして利益水準を見ながら正しいと思えることをしていきたいです。

障害のある方を就職させることは下の記事に以前書いたとおり、むしろ国の財布という観点からは経済合理性があることです。ですので当社のように実績を残しているところはもう少し給与を上げる手当をしてほしいと国に訴えていきたいと思いますし、それが社長の役割の一つかもしれません。

【参考】社会的価値が10億円の大台へ Kaien社会的価値

ただ国に頼ってばかりでもいけません。公費に頼らなくても、お客様に納得感のある、つまりお金を払っていただけるサービスを提供すべく、いろいろチャレンジしていく必要があります。例えば今年度も、発達障害のある方の転職サイト「マイナーリーグ」や、発達障害のある子ども向けの専門塾「まなびTEENS」を立ち上げています。

先行投資のためにも利益が必要ですし、そのためにも良いスタッフを集めないといけません。僅かな給与増ですが、これが少しでも採用活動にプラスになればなと考えています。

Kaien・TEENS 採用関連情報

毎年2千億円の公費を計上 発達障害児支援の社会的価値はどれほどか? 英国”インパクトレポート”から見つめ直す放課後等デイサービスの意義

 2018年1月前半、イギリスで就労支援を行う企業・団体の視察研修に当社から2人が参加しました。この視察研修は、J.P. モルガン協賛で特定非営利活動法人ETIC.が運営している就労・自立支援に取り組むリーダーを対象としたプログラム「IMPACT Lab.」の一環で、IMPACT Lab.には当社を含め日本で就労支援を行っている8団体が参加しています。

 支援者インタビュー『懸け橋』。今回は英国視察を終えたばかりの教育事業部担当 取締役・執行役員の飯島さなえに、”発達障害のある子どものための公的補助の価値をどのように評価していくか”に聞きました。

イギリス視察研修から学んだ”社会的価値の評価”の重要性

聞き手)ロンドンで色々刺激を受けられたと思うのですが、研修で最も印象的だったことは何ですか?

飯島)いきなり核心に入りますが、英のプロボノ企業である運送会社HCTが毎年発表する「インパクトレポート」にみられるような、社会的価値の算出と公表に対する考え方でした。

ざっくり言ってしまうと、イギリスでは社会事業運営のための公的補助や投資を獲得し続けるために、社会的インパクトの測定を盛んに行います。社会的課題の解決に繋がっているか、というだけでなく行政コストの削減されているかも評価され、その結果次第では資金援助を受けることができなくなります。そのため、多くの団体が社会的な価値を証明すべく、事業の価値を定量的・定性的両方の側面から評価・公表をしています。

HCTという団体のレポート。読みやすいよう見せ方もとても工夫されています。

【参考】HCT group impact report

 

当社は就労支援事業で社会的価値を算出済 一方障害児向け事業は未着手

聞き手)企業が社会的価値を算出し発表するという行為は、日本ではまだまだ盛んとは言えませんね。

飯島)実はKaienは毎年の年末に社会的価値の計測を行っているんです。

Kaienは発達障害のある方の就労支援・キャリア教育のサービスを提供しており、利用料の多くは行政が負担をしています。そのため、税金を投入するだけの価値があったかというのを示すためにKaienの就労移行支援を通じて就職した人数や定着した期間などを公表するとともに、増加した納税額や減少すると見込まれる生活保護費の金額から当社に投入された税金の額を差し引き、どれくらいの金額を国庫に返しているのか…つまり消費した税金をどれくらいプラスにかえているかを発表しています。

日本では非常に珍しい例で視察先でも大変ポジティブな評価をしていただけました。

【参考】Kaien社会的価値 ~2017年を振り返る~

ただ、残念ながらこの計算には、私の担当である障害児支援の部門はコストとしてしか入れられていません。就労よりも進学・就学に進んでいく子どもたちが多いTEENSでは、その価値を金銭的に換算しづらいのです。

聞き手)けれど研修を通じて障害児支援部門の社会的価値算出の重要性に気づかれた、というわけですね。

発達障害児向け放課後デイサービスの社会的意義

飯島)はい、その通りです。子ども向けのサービスこそ社会的価値の算出が求められると感じました。

今放課後等デイサービスの利用者数・施設数が急増していて、財政を圧迫していることが問題視されています。これに伴い障害児通所支援にかかわる報酬基準が見直されているわけですが、見直しに当たって、障害児の行動症状の軽重に伴う支援者サイドにかかる手間の多寡や、支援内容の適不適だけしか考慮されていないような気がするのです。

聞き手)もう少し詳しく障害児通所支援にかかわる報酬基準見直しの背景を教えて下さい。

飯島)放課後等デイサービスの総費用額(平成28年度)は1,940億円で、障害児支援全体の68.5%を占めています。この制度が始まった平成24年4月以降、大幅な増加を続けています。また、一部施設ではアンパンマンのビデオを見せるだけ、といったように支援内容が不十分であることが指摘されています。

障害児通所支援に係る報酬・基準について 資料より放課後等デイサービスに関する情報

この問題に対応すべく今年度より人員体制の基準等が見直されたのですが、障害児通所支援に係る報酬・基準に関する会議では支援対象についても下記のように言及をしています。

【参考】障害児通所支援に係る報酬・基準について

聞き手)軽度障害児のみを受け入れ、重症障害児の受け入れを拒否する施設の存在が問題になっていますね。

飯島)そうなんです。現行の報酬区分は、重症心身障害児とそれ以外に分けられていて、軽度の発達障害と強度行動障害の状態にある重度の知的障害であっても同じ報酬単価となっているのです。より簡単に運営して利益を出そうという事業者が多くなることで、障害が軽い子のみ受け入れたり、重度障害児の受け入れを拒否したりという事態につながっていると考えられます。

私も放課後等デイサービスが事業全体としてより重度のお子様も受け入れやすくなる施策の導入に反対しているわけではありません。例えばより手厚い支援体制が必要になる強度行動障害のある子を受け入れた場合に報酬単価を高く設定すること等は重要で、そうあるべきだと思います。

ただし、軽度の障害児の支援に対して批判的であることには疑問が残ります。発達障害のある子どもの支援の必要性は、行動障害の重篤さだけでは判断できません。また、強度行動障害のある発達障害児への支援と普通級にいる発達障害児への支援では、支援者に求められる専門性が大きく異なります。行動障害の程度が”軽度”だからといって、支援が不要なわけでもなければ、アプローチが容易なわけでもありません。強度行動障害のあるお子さんの支援の拡充の問題と、行動障害のないお子さんへの支援の重要度は全くの別のものとして語っていく必要があります。

行動障害はないけれど、通常の教育環境では将来の自立に向けた能力の獲得が難しい子どもたちに必要な支援は何か。それにはどんな効果があるのか。「軽度のみの受け入れ」が施設側の怠惰であるという風潮にはならないよう、これらを明確に示していく必要があります。

IMPACT Lab.の視察の様子 前列右から6人目が飯島

放デイとしての社会的価値を示すには

聞き手)そのためにこそ、発達障害児支援をひとくくりせずに、その中のどんな状態のお子さんに、どういう支援を提供していて、それぞれの支援がどのような社会的価値を持っているか、きちんと算出して示す必要がある、ということですね。

飯島)そうです。やはりオリンピックにせよ市場の移転問題にせよ、税金を使う時はどのぐらいの効果があるか金額で根拠を示さないとなかなか世論は納得してくれません。

発達障害のあるお子さんの将来に向けた教育・支援の必要性を訴える時も、その社会的価値を証明していかなければいけないと今回イギリスに行って強く感じました。TEENSはそれこそ”軽度”の発達障害のあるお子さんが多いため、投下された税金額以上に、社会の発展に繋がるような価値があることを示す方法を模索していきたいです。

いずれ利用中や利用待機中の保護者の方々にアンケートなどのご協力をお願いする可能性もありますので、その時には読者の皆様にもご協力をお願いしたいと思います。

聞き手)社会的価値や成果をわかりやすい形で客観的に表そうとすることで、抜け落ちてしまう視点というものもありそうですが?

飯島)そうですね。定量的に見える部分だけでなく、定性的な分析も必要だと思います。仮にそれほど金銭的なメリットは見えなかったとしても社会全体として人として受け入れる意義はあると思うわけです。ただ今の所は放課後等デイサービスの評判は印象や感情に振り回されやすい状態ですので、数字で示せる意義をまず明確にすることで、示しづらいけれどもしっかり認めてもらいたい意義もくっきり見えて来るのではないかと思っています。

またそもそも公費に頼らない民間サービスの展開も考えています。規制が少ない中でより自由な発想で発達障害のある子どもたちの今を育て将来の可能性を広げていくようなプログラムを提供していきたいです。こちらについては近いうちに情報を公開しますので、今しばらくお待ちください。

聞き手)ありがとうございました。TEENSも含めKaienの手がける様々なサービスの社会的価値を公表する”Kaienレポート”のようなものが刊行される日を楽しみにしています。

 

【参考】放課後等デイサービス TEENSとは
【参考】就労移行支援サービス Kaienとは
【参考】Kaien/TEENS で働く

社会的価値が10億円の大台へ Kaien社会的価値 ~2017年を振り返る~

毎年この時期にお伝えしている社会的価値の計算です。多くの売上を税金に頼っている当社のような福祉事業者がどれだけ価値のあることをしているか数字で年末に検証しています。

【参考】福祉に税金を使うと経済的に無駄になるどころか得をする (2015年 今年のKaienの就職支援実績・社会的価値など計算しました)
【参考】年末のKaien通信簿 今年は赤点すれすれです Kaienの社会的価値 ~2016年を振り返る 前編~

さて、今年はどうだったでしょうか?就労移行支援を始めて5年。利用者が1000人を超え、就職者も700人を超えました。

【参考】発達障害支援に特化して5年 就労移行利用者が1,000人・就職者は700人を突破 同業他社との比較や利用者・修了者のアンケートで見る5年間の実績

結論から言うと昨年より持ち直して、また昨年は計算方法を間違っていた…ということにも気づき、よりプラスの結果になっています。

① Kaien経由の就職者数 172人→233人/年 

233人は発達凸凹のある大学生支援のガクプロを含む数字ですが、就労移行支援だけでも1年で200人を超えました。

今年は7月にKaien代々木をオープンしたため、年間で見ると6.5拠点の稼働という感じです。ですので、1拠点平均は30人超え。(半年で16人という新設のKaien代々木を除くと)もっとも就職者数が少ない拠点でも20人台の後半ですので、あまり拠点によるばらつきはありません。

【参考】Kaien代々木 内定者続々! 半年で16人働いたことがある方もない方も自分の「輝き」をみつけられる訓練プログラム

Kaienの就労移行支援のページでもご紹介していますが、1拠点あたり20人の定員で、そのうち何人が受かったかというのが就労移行支援業界の就職率と言われる数字です。当社は下でも見る通り1年以内に就職する人が大半ですので、公表は135%(つまり1拠点あたり年間27人の就職者)なのですが、今年に限って言うと、155%の就職率で他社の2~4倍ぐらい、全国平均の7倍という結果でした。

素直に良い数字だと思います。

② 修了生の定着率 100%!?

当社はこれまで半年後の定着率が高すぎて、あまり意味が無いので1年後の定着率を伝えていたのですが、業界全体が半年で比べていますので、当社も半年後の定着率を出してみました。それによると・・・100%なのですよね。つまり離職率は数百人単位で就職してゼロ。幾つかまだ当社社員がデータ化していないものもあるかもしれませんが、いつにもまして良かったのは確かです。

ちなみに全国平均や他社の数字を見ても定着率は80%前後(つまり離職率は約20%)なので、当社の修了生が非常に安定していることがわかります。

③ 平均月給は16万円台へ 微減

平均月給は16万円台へ下がってしまいました。就職は非常な売り手市場ですので、あまり月給が下がるというイメージは持ちづらいのですが、軽作業に興味関心があったり、軽度知的障害がある人の割合が増えてきたことと関係があると思います。かなり当社のことを応援していただいている方の中にも、「Kaienは勉強のできる発達障害の人が行く場所」「ITとかパソコンとかを使いこなす人が多い」という印象をお持ちの方がいるのですが、それは4・5年前の話。今はいろいろな求人があって、いろいろな人が来ていることがわかります。

グラフは月給ごとの分布です。また数日後にまとめますが、正社員登用されたり、ボーナスが出たりしている人もいますので、月給×12ヶ月以上の給与をもらっている人も多くいます。

ちなみに職種は以下のとおりです。事務が半分以上。残りは専門職と軽作業が同じぐらいです。

④ 就活期間は7ヶ月台に戻る

昨年はこの数字が10ヶ月近くにまで伸びてしまっていましたが、今年は平均利用月数が7ヶ月。内定から就労移行支援の訓練終了までは1ヶ月程度の方が多いので、内定までは概ね半年ぐらいと思われます。

グラフの見方は就労移行支援開始後、どのぐらいの速さで、どのぐらいの割合の人が就職していっているか(中退は除く)というグラフです。7・8ヶ月で半分の人が巣立っていっていることがわかりますし、1年を越す人は5人に一人もいないこともわかります。(福祉の世界では非常に速いと言われる就職までのスピードです。)

⑤ 中退率は15%へ 大きく戻す

昨年は中退率の計算の時に背筋が寒くなったのを覚えています。それから1年。2週間毎に全拠点でチェックをしていました。昨年も書いたとおりに、支援がほとんど必要じゃない人を選りすぐっていけば中退率は大きく下がるでしょうから、中退率自体は低くすることを狙うばかりではいけないとは思います。就職に遠く見える人を就職させるというのが一つの支援者の力の見せ所でもあるからです。お互い難しいと思って始めて、やっぱり難しかったね、少し支援方法を変えてみようかと違う支援機関をご紹介するという挑戦も絶えずすべきだと思っています。

それにしても去年は中退率が急に跳ね上がった印象があり、今年は支援力を合言葉に運営してきた社員の努力の成果が出たのかなぁと思います。(実際、中退率が下がる中で、他の数字も良くなっています。)

⑥ 今年の社会的価値は2.7億円/年 創業以来累計では10億円へ

昨年計算ミスした所がおそらくここです。(具体的に言うと、将来の価値をマルティプライで予測するのですが、その時の計算式が間違っていました。ファイナンシャルモデルにはMBAのときは日々触っていましたが今は1年にこの時期しか触らないので、やはり色々できなくなってきてしまっています…)

再度計算式を見直したところ、去年は1.1億円だった所が、今年は2.7億円ということになりました。これはどういうことかというと、当社は6億円ぐらい税金を使わせてもらっているのですが、当社経由で就職してもらうことで、税金を増やしたり生活保護を減らしたりしている額がこの1年で総額8.7億円にのぼるのです。つまり税金で6億投下してもらって、差し引き2.7億円の価値を国庫に返納しているのと同じ計算になります。

最近は、障害福祉を株式会社で行っているところが増えましたが、(まあ当社もそうなのですが…)、時々新聞を見ても、ネットの発言を見ても「社会貢献もしていてカネも稼いで良い事業だね」という論調を見ます。

でも当社のように定員を大きく超える数を就職させない限り、実はその事業単体としては税金をやはり食っていることにはかわりないです。当社の計算式では、定員×60%(つまり1拠点あたり12人)で就職させても、まだ社会的には赤字です。

そもそも単体だけで見るのはややおこがましい(一人就職するのに就労移行支援だけが偉いわけではないです。相談支援期間や地域の福祉機関、若者支援機関ハローワーク、学校やもちろんご家庭などが力になっているので…)ですが、本当にその事業って社会全体に価値があるのかなというのは、出来る限り事実で語るような必要があると思っています。

そうそう、創業以来は10億円の価値を国庫に返している計算になりました。それなりの部分が法人税なのですけれどもね・・・。

ウェブサイトにも新しい数字を既にアップしました。会社概要のページです。
https://corp.kaien-lab.com/company/profile

⑦ 児童の部分の計算はまたまた翌年に持ち越し

明日の本ブログで触れるであろう障害児の支援の話題です。今は1兆円を超えた障害福祉の中でも20%を占めるほど大きな予算になっているのが放課後等デイサービスです。当社もTEENSというサービスを6拠点(来年早々7拠点目が出来ます)で運営していて、それなりの税金を投入いただいています。

放デイは発達の傾向のある子どもたちのまだ10%ぐらいしか使っていないと言われていますが、それでも数千億円が使われているわけです。いったい全員が使ったらどうなってしまうのか…。トホホという感じの制度です。放課後等デイサービスが、どういう価値を社会に与えているのか、本当に数千億円の価値があるのかというのは、これからきちんと検証されないといけないでしょう。

実際⑥であげた当社の社会的価値には、障害児支援の部門はコストとしてしか入れられていません。当社全体で見るとそれでも3億円近い価値を出せているのですが、それは就労部分が非常に強いからです。児童の部分の価値が可視化されるとより価値を社会に還元できていることになりますし、可視化しないと公共事業としては潰されかねない運命になってしまう気がしています。

今年当社は「Kaien発達総合研究所」というシンクタンクをささやかながら立ち上げましたので、こういうところできちんと政策提言なり、社会発信なりをしていかないと行けないなと思います。色々と暗いことも書きましたが放デイには意味があると思って当社もしています。具体的にはTEENSのお仕事体験や学習支援は、将来に向けてきちんと価値を生み出していると思いますので、なんとか見える化して、多くの人にわかりやすい結果を出さないといけません。

【参考】Kaien発達総合研究所を開所 発達障害の可能性・長所を信じるシンクタンク

年末年始の特集!!

最後まで駄文にお付き合い頂きありがとうございました。会社が寝静まっている年末年始の間にまだまだ幾つか記事をあげていきますので、お時間あれば引き続きおつきあいください。

予定している記事は「2018年 発達障害を取り巻く教育・福祉・雇用の問題」をシリーズで分析?していこうと思っています。ラインナップは、☆放デイの今後/福祉と学校の連携 ☆発達障害学生の支援 全国へ ☆新制度 就労定着支援事業とは? ☆障害者雇用率が2.2%へ 精神障害者をどう活かすか? ☆増える発達障害専門の支援機関 何が起きているのか? ☆その他 当社話題 です。

TEENSは今まで以上に拠点を増やしていきます 厚労省方針 放課後等デイサービスの開設要件厳格化を受けて

 厚労省の話し合いの結果。「新規事業所は立てるな」という意味だと思います。まず報道をご紹介。

日経新聞 2017年1月6日 障害児向けデイサービス、開設要件厳しく 厚労省

(厚労省は)事業所の急増に伴い、テレビを見せるだけなど質の低い事業所が増えていることに対応する。同省は省令を改正し、放課後デイの事業所の指定を行う都道府県などに対し、4月から新基準で開設の適否を判断するよう求める。 新基準では、事業所に配置する職員を児童指導員や保育士、障害福祉サービスの経験者に限定する。そのうち半数以上は児童指導員か保育士とする。事業所の管理責任者の要件には、障害児などの支援で3年以上の実務経験を新たに加える。 厚労省によると、新基準は既存の事業所についても適用するが、人材確保のため経過措置を設ける方向で検討する。開設要件を満たさないまま運営している事業所に対しては、都道府県などが行政指導するとしている。

 

今回の厳格化のポイントは?

 ポイントを見ていきましょう。個人的な賛成度合いをあわせます。

(1)児童発達支援管理責任者の要件が厳格化される(※1)

 これについては大賛成です。そもそも、児童発達支援管理責任者の研修に行くと、まったく障害分野を知らない人、子どもに接したことがない人がたくさん来ていて、グループワークすらできない状態だそうです。というのも、高齢福祉の経験を持っているだけでも管理責任者になれてしまっている状況(※1)でしたので…。元々がおかしかったわけです。制度施行直後の4年ほど前は、放デイの事業所を一気に増やしたいという魂胆だったのかもしれませんが、今回の厳格化で分かる通り、予想以上に事業所は増えているはずなので、当初の目論見を達成したということでしょう。質の担保のためには遅すぎたぐらいです。

 ただ(2)のところとも絡みますが、経験年数である程度は専門性は高まるものの、本来は試験制度にするなど、長さではなく、実力勝負にしてほしいです。期間が短くても十分に責任者になれる人は多いはずだからです。ただ、資格制度・試験制度はとても面倒で出来ないのでしょうけれども…。

※1 2017年4月追記 東京都の説明を受けてきました。それによるとたしかに介護福祉の経験はカウントされづらくなったため厳格化という意味もありますが、一方で学校など教育関係での経験年数がカウントされることになったため、むしろ門戸が広くなったとも言えるようです。

(2)現場には素人は一切入れなくなる。(※2)

 今、指導員は各事業所に2人いるところが多いと思いますが、その2人のどちらも、何らかの経験か資格(児童指導員・保育士・障害福祉での経験)が必要になるということです。しかもそのうちの半分以上が児童指導員か保育士でないといけないということ。つまるところ素人は現場支援に入れないですね(※2)。2人の現場スタッフのうち1人は児童指導員か保育士でないといけないし、もう一人も児童指導員か保育士であることが望ましいし、最低限障害福祉の経験がないといけないということでしょうから。

 他の福祉事業に比べてのこの条件は非常に厳しいです。あまり賛成はできません。「1人は資格・経験者にしてね」という部分は賛成できますが、「全員が何らかの資格・経験が必要」は、新しい考え方が福祉に入りづらくなりますし、(1)で書いたとおり素人だって意欲があって能力がある人はいるはずなので、資格・経験だけで質が高まるというわけではないと思うからです。繰り返しですが、本来は試験制度にしてほしいのですがね…。

※2 2017年4月追記 東京都の説明を受けてきました。それによると①制度で求められている「最低基準人数」について上述の資格が必要で、②そのうちの半分以上が児童指導員か保育士ということ。換言すると定員を上回って配置する従業員はこれまで通り指導員(つまり資格保有なし)でも可能だ、とのことでした。訂正して修正いたします。

(3)4月からの新規事業所は新しい基準を満たす必要がある。

 これは当社を含め、事業所を増やそうとしている人には大変な事態です。おそらく4月からスタートさせるために人を採用して、オフィスを確保して、というところが多いと思うからです。すでにヒト・モノ・カネを注いで準備しているところが、「厳格化された要件を見対していないので設置できません」という状態に陥るということです。3ヶ月前というのはあまりにも急だと思います。1年伸ばして2018年度からもうちょっとなんとかならないのかなぁと思います。つまり個人的には反対です。が、1年程度告知期間を設けてしまうと、旧基準のうちに駆け込みで事業所を立ち上げるだろうという厚労省の予想なのでしょう。やや騙し討ち的にしないといけなかった厚労省の苦悩が見てとれます。

(4)既存事業所は経過措置がある。つまり新基準を満たすまで猶予期間がある。

 経過措置があるというのはこれは利用者側からすると当たり前ですね。急に要件が厳しくなって、放デイ難民が出てしまうと厚労省も対応に苦慮するでしょう。悪徳業者の退治を考えると既存事業所も新基準にしたいのでしょうが、1年か2年かわかりませんが、猶予はあるだろうというのは予想されました。なのでもちろんこの措置には賛成です。

 

厚労省の腹のうち

 ポイントでまとめたとおりの変更を決断した厚労省。そのご担当者とはお会いしたことはありませんが、以下のようなお考えだったのでしょう。

  • 公費を年間2000億円(障害福祉予算費では2割)も使っちゃっている…。このまま増やし続けることは出来ない。
  • そもそも2000億円の価値があればよいが、元々小中高生に向けた療育の効果は経済的な説明がつきづらい。
  • 説明がつきづらいどころか、アンパンマン放デイ(アンパンマンのビデオを見せて終わりのデイサービス)など明らかに療育の効果がないサービスが蔓延している。
  • そのうち、少数かもしれないが、悪徳業者は不正請求をし始めている。
  • これ以上事業所が増えると制度自体が崩壊する。
  • まずは入り口(新規事業所)を閉めて、そして既存事業所もレベルが低いところは自動的に退出するぐらいの、達成が難しい要件にしてしまおう。

 という感じだと思います。大切なのは「予算を絞らないといけない」というメッセージだと考えず、「制度を守ります」という厚労省の担当者からのメッセージだと信じ、受け取るべきだということです。

 個人的には、放デイのレベルの低さはなんとかならないのかなぁと問題意識は共有していたものの、以下にリンクを貼るように本当は自己負担の割合を高めるという手立てを打ってほしかったのですが…。

【参考】障害児向けのサービスの経済的価値をどう考えるか? Kaienの社会的価値 ~2016年を振り返る 後編~

【参考】障害児の就学支援 障害に合わせたガイドライン作成について ガイドラインよりも市場原理では?

 ただ、少し疑問なのが、放デイと似た制度であるものの、対象が未就学児向けである「児童発達支援事業」は今まで通りの設置基準だということです。こちらも質の問題が言われていると思いますし、不正請求の件も(おそらくですがどの事業でも出る問題だと思いますので)なくはないはずです。今後、放デイに引っ張られる形で児童発達支援事業も厳格化されるのかもしれません。

 それと、事業者ばかりにお叱りが来ているようにも見えますが、上のリンクの記事でも書いたとおり、利用者側のニーズが療育ではなく、単なるお預かりにある人も多いのではないかなぁと思います。つまり利用者側にも今回の厳格化で予想される激変(利用がしづらくなる、できなくなる)の責はゼロではないのかなと思います。

じゃあTEENSはどうするの?

 当社も3ヶ月前の2016年10月に5つ目の事業所を三鷹に作り、2017年も幾つか作っていく予定でした。まだオフィスの確保はしていませんでしたが、人材の採用はすでに行っています。なので今回のニュースで、「え、新規事業所立てられないかも」と思ったのは確かです。

 でも、結論から言うと、計画通りのペースかわかりませんが、コツコツと立てていく予定です。このためスタッフ採用も今までと同じように進めていきます。むしろ他の変な放デイが少なくなって、利用者の当社へのニーズは高まると予想されるので、計画以上の新拠点を立ち上げようかなと思っています。

 積極的に考えられている要因で最も大きいのが、当社の多くの既存スタッフが実は児童指導員の資格をすでに保有しているという事実です。また、就労移行支援事業所もあるので、「児童がやりたい」と思って入ってきたスタッフが、放デイで働く前に障害福祉の経験者になるための実践フィールドがあるというのもプラスに働きそうです。採用のときに児童指導員か保育士の資格保有者のほうが受かりやすくなるかなぁとは思うのですが、まあいい人だったら資格が入社時点でなくてもこれまで通り採用していきたいと思います。

 もちろん各自治体が新基準になったものの、事実上新規設置を認めないということを言う可能性もありますので、そこに左右されますが、当社としては新基準に十分に対応できるし、今回の厚労省の決定を前向きに受け止めていきます。

関連ページ

  • 就労移行支援 発達障害の人に特化した職業訓練・就活支援・職業紹介・定着支援
  • ガクプロ 発達障害(含・疑い)のある大学生・専門学校生向けの就活サークル
  • TEENS 発達障害のある小中高生向け 放課後等デイサービス 学習支援とお仕事体験
  • 当社の採用情報

障害児向けのサービスの経済的価値をどう考えるか? Kaienの社会的価値 ~2016年を振り返る 後編~

 前回の記事「年末のKaien通信簿 今年は赤点すれすれです」では当社Kaienの社会的な貢献度(社会的価値という貨幣に置き換えた物差し)について、2015年と2016年の実績をもとに振り返りました。年を越してしまいましたが、今回は後編として、子ども向けのサービスの社会的な貢献度を考えていきたいと思います。

子ども事業(TEENS)のみの社会的価値 ▲1.2億円/年

 最初に数字をご紹介しましょう。前回の記事にある通り、当社独自開発の(そして当社以外でも障害福祉や就労支援事業で使えるであろう)社会的価値は以下から算出できます。

計算方法:会社納税額+社員納税額+Kaien経由就職者納税額(未来分も含む現在価値)+生活保護減少額(未来分も含む現在価値)ー当社に投下された税金=社会的価値

 2016年にTEENSの事業で出したグロスの価値は4000万円程度。しかし4000万円の社会的価値を出すのに1.6億円程度の税金が投入されていますので、差し引き、つまりネットでは1.2億円以上の社会的”損失”を出してしまったということです。

 どうして子ども向けの事業は”損失”を出しやすいか?考えてみれば当たり前なのですが、子どもは就職をほとんどしないからです。

 つまりTEENSの場合、『Kaien経由就職者納税額』というのがどうしても少なめに出てしまいます。というのも、当社の放課後等デイサービスには400人ぐらいが通っていますが、学年は小学1年生から高校3年生まで12学年のすべてにわたります。つまり単純計算でも30人ぐらい(400人÷12学年≒30人)しか1年に修了していきませんし、以下で触れているように首都圏では大学全入時代のため経済的に厳しさがない場合、障害のある子どもも大学や専門学校に進学しますので、なおの事、18歳の段階で就職する子どもは少ないわけです。

【参考】発達障害のある方の進学進路 「高卒で就職か?大学・専門学校に進学か?」

よくある反論と考察

 もちろん、就職させるためだけではないのが子ども向けサービスです。経済的な価値だけに重きを置いたら、極論を言うと文科省の存在意義が問われてしまうでしょう。教育にどの程度の価値を置くかは人それぞれ、国それぞれですから。

 例えばGDP比で日本は国際的に教育への投資が少ない国であるといわれていますが、予算が多ければよいというわけではないと思いますし、そもそも人材を育てることでは優等生ドイツはGDP比の教育予算は実はそれほど高くないといった側面もあります。とはいえ、少なすぎても良いわけはないです。僕個人もずっと公立で税金を使って育てられましたし、何がベストなのかは難しいところです。

【参考】図録 学校教育費の対GDP比(国際比較)

 あるいは、引きこもりを防ぐ、将来、生活保護など国の支出を増やすのを減らす、つまり納税者になるという経済的にプラスの存在にならなくても、マイナスの存在にならなければよい、あるいはそのマイナスをできるだけ減らす、という視点もあると思います。本当にその通りですが、数値だけ見ると当社の指標だと5人の就職者を出すのと、1人の生活保護の人を働かせるのが、ほぼイコールでした。

 つまり生活保護という国の支出を減らすのは非常に大きな(経済的な)価値がありますが、それでも5人働くのと一緒です。これは鈴木自身の見解ではないですが10人働かせれば2人の生活保護を受ける人を出してもよいということにもなります。放課後等デイで、将来引きこもりや生活保護を出さないと大風呂敷を広げるにせよ、ある程度の経済合理性は意識している必要はあるかもしれません。

 繰り返しますが経済的な価値だけがすべてではないのですが、この記事では経済的に見える価値に着目しています。当社がまた鈴木自身が経済的な点だけを重視しているわけではないのは、ご承知おきください。

2000億円+/年がかかっている障害児政策

 ということで、障害児に対する予算は、①そもそも(障害があるなしにかかわらず)教育にどういう価値を置くのか、②また①のためにどの程度の予算を割くのか、③全体の教育の中で程度や状況の差が多い障害のある子どもにどういうサービスが適当で、④③のためにどういう制度設計があり得るのかが議論になると思います。

 特に③が今、世論としてはほとんどないというのが実際のところかなぁというのが僕の印象です。感情論はあると思うのですが、一人の障害のある子どもの親で、障害福祉の事業者の経営者である僕個人としても、どういうものが良いのかわからないです。

 特に放課後等デイサービスについては、例えばテレビを見させただけで、1・2時間お預かりをしただけで1万円の売り上げを得られるというお金を稼ぐという視点からは美味しさ・簡単さがあり、変な業者が多いという残念さはあります。

【参考】親としてできること 支援者としてできること 経営者としてできること

 少なくとも一つ言えるのは1年で2000億円の予算を使う価値はまだ制度としては出ていないと思います。そのために以下のような記事を書いているのですが…。

【参考】障害児の就学支援 障害に合わせたガイドライン作成について ガイドラインよりも市場原理では?

 本来は、「こういう価値が出ていないから、税金を使うのではなく、消費者が負担しよう(自己負担を増やそう)」ではなく、「価値が出しているから国も予算化してほしいです」と言えるようになりたいです。いや、少し自分のやっていることを正当化させてもらうと、おそらく正しいことをしている実感は現場を見るとあるんだけれども、それをまだ言語化・数値化できていないと思う。なのでもう少し時間をくださいということになるでしょうか。

 2017年末には「こういう感じで数値化できます」「こういうサービスが国として必要です」とお伝えすることを目標にしていきたいと思います。

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  • 就労移行支援 発達障害の人に特化した職業訓練・就活支援・職業紹介・定着支援
  • ガクプロ 発達障害(含・疑い)のある大学生・専門学校生向けの就活サークル
  • TEENS 発達障害のある小中高生向け 放課後等デイサービス 学習支援とお仕事体験
  • 当社の採用情報

年末のKaien通信簿 今年は赤点すれすれです Kaienの社会的価値 ~2016年を振り返る 前編~

 毎年恒例の社会的価値の計算です。年末の12月の最後の営業日やその次の日ぐらいに行っています。いつもは結構楽しい作業です。自分の会社の価値がある程度納得感のある指標で出ますので。ただし今年は良い面も引き続きしっかりあるのですが、一方で厳しさも見える結果が出ました。計算していて年末気分が(もともと無いものの)一層冷めましたし、新たな気づきもあって身の引き締まる思いです。

 改めて去年の記事を読み直すと、能天気というか、カイゼンの意欲が低かったなぁと反省しています。次回のために下に貼り付けておきます。

福祉に税金を使うと経済的に無駄になるどころか得をする (2015年 今年のKaienの就職支援実績・社会的価値など計算しました)

 去年と同じ方式で今年を振り返りましょう。

① 当社修了生の就職者数 161人→172人/年 にアップ

 拠点数が増えたこともあり、就職者数はアップしています。これは最低限必要なところをクリアしたというような印象です。就労移行支援事業所は当社は今6か所ありますので、1か所あたり20数人の計算です。(ただし大学生向けのガクプロや、高校生も通うTEENSといったサービスも含みますので、単純に割り算はできませんが、それでも多くは就労移行支援から就職していきます。)

【参考】発達障害者向けの独自求人あり適職に就ける 対人力がつく 職業訓練プログラム
【参考】ガクプロ 発達障害(含・疑い)のある大学生向け 就活と仲間づくりのコミュニティ
【参考】TEENS 発達障害児のための放課後等デイサービス首都圏で展開中

 一拠点当たり20数名の就職者数は多いか少ないかというと、めちゃくちゃ多いです。(全国平均に比べると10倍近いとは思います。)これだけの規模で、この質を保っているのは当社だけかもしれません。後述しますが定着率は鬼の高さが続いていますので、純粋に胸を張れる数字だと思っています。就労移行支援としての矜持は保てています。

② 当社修了生の定着率 90%超(1年)を維持

 定着率は就職した後、その職場にどの程度の人が残っているか、働き続けているかという数字です。定着率の反対が離職率ですね。

 去年は95%だった(半年後ではなく)1年後の定着率。今年も90%を優にクリアして、95%に迫る勢いでした。前回もお伝えしましたが、この業界では半年後の定着率を発表するところが多く、その数字はおおむね8割前後。つまり1年後は単純計算で8割の8割は0.8×0.8=7割弱と推測されます。それに比べると20%~30%も高い定着率で、ここは本当に当社の定着支援の強さですし、定着支援が上手というよりもしっかり育てて、企業に上手に理解して人材活用をしてもらっているということなのだと思います。まとめますと定着率は花丸といえましょう。

 定着率は100%が良いわけではないです。新しい挑戦をするために転職をするなどで離職する人もいますから90%ぐらいが一般枠では普通なのだと思いますが、障害者枠ではやはり転職がそれほど簡単ではないですからやはり定着率は高いほうが良いでしょう。ちなみに冗談でよくいうのですが、うちの修了生の定着率は、スタッフの定着率よりも高いです…。というか95%に勝つのはなかなか難しいです。でもスタッフの定着率も来年こそは、当社修了生の定着率を上回るようにしたいと思います。

③ 当社修了生の平均月給 17.5万円→17万円へ微減

 この辺りからです……やや雲行きが怪しくなるのは(泣)。給与の水準が少し落ちています。ここについてはグラフを作成していませんが、元のデータを見ると高い人は順調に障害者枠であっても月給20万円を超える給与のところに就職できている傾向は続いています。

 何が変わっているのかというと、当社を利用する人で若い人が増えてきたということ、軽作業など(通常給与が低い業務)を希望したりフィットしたりする人が増えてきたということ、そしてフルタイム(つまり7.5時間/日とか8時間/日勤務)ではなく、1日6時間程度の勤務でないと体調が維持できない人が増えてきたこと、などがあり、どうしても給与が下がっていっているのがわかります。

 当社も就労移行支援を始めた4年前は、すでに一般枠での就業経験があったり、学歴が高かったり、と給与が高くなりやすい人たちの受け入れが多かったのですが、本当に利用者が多様化してきていることの表れかなと思っています。

 とはいえ、言い訳は許されません。少しでもフィット感のある職場でありながら、給与も妥協してはいけないと思っています。最低賃金もここ数年うなぎ上りですし、当社としてもしっかりボトムアップをしていきたいと思いをあらたにしました。

④ 当社修了生の就活期間 6~7か月→9~10か月と伸びる

 ここから3つ厳しいニュースが続きます。あまりこういうのを公表する会社は少ないと思うのですが、しっかりと自分たちをさらけ出していきたいと思います。

 残念ながら就活期間が延びてしまいました。平均を見ると9か月をやや上回る数字です。③でも書いた通り、これまでよりも多様な人たちが当社を利用してくれるようになっているので、かつ通常2年かかるといわれる就労移行支援業界を考えると、9か月という数字をどう読むかは、解釈が分かれるところかもしれません。でも伸びているんだよね…というのが僕の感想です。

 ⑤にも関わりますが、困難ケースといわれる二次障害があるケースや、就業意欲が低い準備性がまだまだな人が入ってきている、というスタッフの訴えは概ね正しいのだなぁというのが数字を見て思うところです。

ADHD的な”就活先延ばし癖”にどう対応するか?

 一つだけチャートで解説します。ほぼ内部資料に近いものですが、業界全体として参考になればと思い、公開してしまいます。

 まず青い棒を見てください。就職したKaienの就労移行支援修了生が、どの程度当社を活用したかというものです。前述の通り平均の利用期間は9~10か月ですが、実は最頻値は7か月にあります。また2番目も8・9か月にあり、5・6か月という数字も高めです。これを見る限り実はある程度の人は半年少しぐらいで内定を勝ち得て就職していることがわかります。

 オレンジの折れ線に解説を移します。こちらは何パーセントの人が就職していっているかという累計です。50%を超すのが8・9か月。ただそのあともじりじりと就職が出て、オレンジの線がクイッと最後に上昇するのが1年6か月以降というのがわかります。就労移行支援の利用は最大2年間が原則です。このため、最後に尻に火がついて就活をして滑り込みセーフというようなケースが多いというわけです。

 当社の支援スタッフがギリギリまで支援をすることをさぼっているのか?それはないと思います。①~③で見る通り、利用者が多様化する中でも、就職者数・定着率そして給与面と全国トップレベルの働きをしているのは明らかです。それと、現在フルタイムの採用率は2%と驚くべき水準です。100人当社で働きたいと言ってくれて実際に働いているのは2人のみという精鋭です。いい気になってはいけませんが、そのぐらい当社で働きたいという人が多くいてくれてありがたいですし、気持ちと能力がある人が現場で力を発揮してくれていることはお伝えしたいと思います。

 ただし改善の余地があるのも明らかだといえましょう。特に3か月前後の超スピード就活を手助けする仕組みがまだ当社に弱いのではないか、7・8・9か月かかっている人たちを5・6・7か月など意識改革が必要でしょう。そのためには、早めに職業適性をアセスメントしてご本人に納得して就活モードに突入させる必要があるのだと思います。(もちろんゆっくり就活をしたほうが良い人もいます。昨日インテークをした人にも初めの6か月はとにかく就活を考えずに行きましょうとアドバイスしたばかりで、本当に人それぞれではあります。)

 改善の余地の最も大きいのは1年以上かかっている層、特に1年半以上かかっている層についてです。議論の簡略のために当社の力不足を棚に上げ、発達障害の特性的に説明すると、ADHDの先送り癖、やる気スイッチが入らない特性が出ていると考えられます。ここは発達障害の支援でも難関中の難関ではあります。が、課題が難しいからこそ当社の出番と思いたいです。簡単にはいかず、来年のこの場の報告でも苦戦を強いられていることをお伝えすることになってしまうかもしれません。それでも、支援者の個の力を上げて、就活意欲を高められる就労移行支援事業所を作っていきたいと思います。

 来年は7か月ぐらいに利用月数を下げることが目標です。

⑤ 中退率が20%を超えるという事態

 今回集計していて最も悲しかったのがこの中退率です。昨年までは計算していませんでした。(社会的な価値の指標ではこの数字は直接は用いないためです。)ただし元データをいじっていると「自主退所」の文字が目立つなと思い、調べ始めました。そしてため息を何度もしてしまう状態に気づきました。

 中退率の定義は、就労移行支援に入ったものの、就職に至らず、途中で当社の訓練をやめていく人の割合です。この”中退”の中には、就労継続A型・B型に移る人が含まれています。ですがそれはごくごくわずか(5人程度)で、中退率を数パーセント変える要因にすぎません。中退のほとんどの場合は、体調不良、精神的な不調、つまり二次障害やご家庭のトラブルによって、就労移行支援に来られなくなってしまう人です。

 就労移行支援事業の”中退率”は、当社以外ではまず見たことがなく、業界の人が語っていることも聞いたことがありません。経営上、公開するのはリスクがあるので(※この支援事業所は扱いがうまくないというメッセージを与えかねないので)ある意味タブーなのかもしれません。あるいは「障害者だから、それは難しい人もいるでしょう」ということで、一定程度の人はドロップアウトするのは常識だからあまり注目されていない数字なのかもしれません。

 でも、うちの場合は、今最低でも4か月、長いと半年以上待機して、ようやく就労移行支援に入ってきてもらっています。今後事業所は引き続き増やす計画をしています。ですので、待期の期間は縮まる予定ですし、それでも短期的には、かなりお待ちいただいた後、ようやく待ちかねて利用を始めていただく状態に大きく変わりはないでしょう。

 それが途中で辞めざるを得ないのはやはり忍びない、もう少し何かできないのかと思ってしまいます。以前はこの数字は15%を少し超えるぐらいでした。今年は25%です。4人に一人です。多いですよね。本当に申し訳ありません。個人的にとても残念で、悔しいです。

 言い訳をさせていただくと、中退率が0%というのもややおかしいと思うのです。挑戦させていないということですから。実際、発達障害の人の中には、「本当にこの人就職できるかなぁ」という人が少なくないのは事実です。また繰り返しになりますが、当社を頼ってくれる人が本当に多様化していて、以前よりも難しい応対が増えているのは確かです。

 なので確実に就職につなげられる人だけを支援していけばもちろん数字は改善するでしょう。でもそれでは福祉の意味がない。やはりしっかりと下支えをするという理念は保っていたいものです。ですので、厳しい戦いになることを理解したうえで就労移行支援で頑張っていこう、という姿勢は堅持していきたいと思います。

二次障害への対応力を高める Kaienとしてのコミットメント

 じゃあ、どうすんのよ、ということですが、まだわかりません。少し考えたいですし、当社内でほかのスタッフにも知恵を絞って、行動につなげてもらおうと思います。

 困難ケースへの対応は、この業界で5年・10年と重ねないと対応力がつかないという現実もあります。当社の現在の最大の経営テーマは現場の支援力の向上です。図らずも経営方針は正しいのが今回の中退率の上昇で浮き彫りになりました。5・10年を2・3年で学べないか、スタッフの成長速度と成長の深さを手助けする経営をしないといけません。

 当社は相談支援事業も持っています。事前にあるいは利用開始後に困難性が予想される利用者については、通常の体制だけではなく、経験豊富なスタッフがつく体制を整えているのですが、それもまだ不十分なのだと思います。一人一人が支援の力をつけていく必要が本当にあるなと思いますし、早めに本人の異変に気付き、介入の手段を当社のシステムにいくつか用意しておく必要があるのだと思います。

 この中退率は業界はどのぐらいなのでしょうか?そういえば某企業が一人就職すると2人利用者の呼びかけをすると聞いたことがあります。普通に考えるとその会社は50%の中退率を予想しているということになります。そのぐらいなのでしょうか?25%という今年の当社の数字はかなりまともと言えるのでしょうか?来年またご報告させてください。

⑥ 当社の今年の社会的価値 2.7億円/年→1,700万円/年

 さて、そもそもこのブログは当社の社会的価値がどのぐらいあったのかをお伝えするために書き始めたものでした。この社会的価値は当社オリジナルの計算方法です。当社や修了生、スタッフが税金などで収めたり、修了生が生活保護を脱して国庫の負担が減ったりして社会に貢献した額から、当社が税金を使わせてもらった部分(当社の主力は障害福祉事業でそれらの売り上げは自治体に請求している)を差し引いた額です。当社のウェブサイトにも掲載しています。

 計算方法:会社納税額+社員納税額+Kaien経由就職者納税額(未来分も含む現在価値)+生活保護減少額(未来分も含む現在価値)ー当社に投下された税金=社会的価値

 それがなんと10分の一以下になったのが今年です。理由は、①では就職者数が増えているとお伝えしましたが1拠点当たりの就職者数はわずかに落ちています。つまり効率が下がってしまったわけです。また、就職した人の給与が下がったのもわずかですが影響しています。こちらも彼らが払う税金の見込みが下がるからです。

 ただ何よりも大きなインパクトがあったのが、今年から子ども向けサービスの税金投下分も計算に入れたことがあります。自分で計算式を変えたというのが理由です。

 発達障害のある子どもへの支援である放課後等デイサービスは明確な成果をとらえづらいんです。具体的に言うと当社には400人余りの小中高生が通っていますが、そのうちこの1年で就職したのは10人ぐらいです。就職だけを成果とみる(今の当社の)社会的価値の算出方法だと、圧倒的に税金を食いつぶすサービスとなってしまっています。

 念のため付け加えると当社の創業以来の社会的価値の累計額6.1億円から5.6億円に下がりました。なんだかおかしく感じられるかもしれませんが、割引という将来にわたって就職した人が払うであろう税金などを割引率で現在価値で戻しているので過去の分も影響を受けてしまいます。非常にアカデミックというか数学的というかで申し訳ないですが、式に入れるとこのような結果となったわけです。

 ブログを書き始めてからおそらく2時間か3時間がたちました。この後は、2段落上に書いた子どものサービスの価値をどう捉えればよいかを書こうと思うのですが(放課後等デイサービスにこの勢いで税金を投入してよいのか、よいならばどういうことを放デイは目指すべきかのか、やはり税金の投入が過度ならばどのような政策をとってほしいかなど)、さすがにこの記事が重くなってきたので、いったん前編として切り、~2016年を振り返る 後編~として(元気があったら)明日続きとして書きたいと思います。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

関連ページ

福祉に税金を使うと経済的に無駄になるどころか得をする (2015年 今年のKaienの就職支援実績・社会的価値など計算しました)

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当社の営業は昨日で終了。お陰様で100人を超えるまでになった社員は年末年始休業で各地に散ってしまい、今日からは一人ぼっち。利用説明会や採用面接など自分一人で出来る部分を日々こなしていきます。

今日は年末恒例である、当社の実績のまとめをExcelで行いました。1年前にも記事を書いています。(Kaienの社会的価値 ~就労支援は税金を2倍にして社会に返している)昨年の計算シートが残っていたので、今年分の計算は数時間程度でサクッと終わりました。当社ウェブサイトにもアップしています。会社概要の最下部にある社会的価値がそれです。このブログにも画像で貼り付けます。

これを計算するためには、会社の納税額などはもちろん、主に就労移行支援に通っている人が、どれだけの確率で就職したか、どのぐらいの給与をもらっているのか、どのぐらい定着しているのか、などのデータが必要で、それを(論文が書けるほどには正確にはしていないですが)若干の誤差がある程度までは精度を高めて計算しています。以下ハイライトです。

 

■当社修了生の就職者数 161人/年

本当にこんなに就職したっけな…とデータを見直しましたが、正しいようです。今年1月の段階で4拠点、3月に池袋、12月に川崎を作って6拠点にはなりましたが、単純に割り算すると1拠点あたり30人程度にはなる計算です。

■当社修了生の定着率 90%超(1年)を維持

半年が95.2%、1年で見ると90.4%でした。ハローワークで聞いた世の中平均は75%ですので、だいぶ世間一般より高いでしょう。他社さんも80%とか数字だしていますが大体半年の数字ですので、その点、当社のOB/OGはみんな頑張って、そして楽しんで、就職後働いていることがわかります。

■当社修了生の平均月給 17.5万円を維持

今年は前年よりやや良くなって17.5万円/月でした。障害者枠の平均よりははるかに高いですが、まだ厳しい数字であることには変わりないと思っています。

■当社修了生の就活期間 6~7か月と短縮

内定が出て、当社の就労移行支援を終えるまでの日数です。(昨年と今年の加重平均で)208日でした。就活の期間がどんどん短くなっているようです。月数でいうと6~7か月ぐらいとなります。おそらくこの数字が他社と比べて驚異的に短いところです。具体的に言うと業界他社よりも2,3倍は短いと思います。定着支援が大変になってきていて、スタッフを増やすなどいろいろと工夫していますが、こういった数字で見ても1年で大きく変化があるなと感じます。

 

■当社の今年の社会的価値 2.7億円/年

で、今年当社が果たした社会的価値は 272,400千円という数字が出ました。当社や修了生、スタッフが税金などで収めたり、修了生が生活保護を脱して国庫の負担が減ったりして社会に貢献した額から、当社が税金を使わせてもらった部分(当社の主力は障害福祉事業でそれらの売り上げは自治体に請求している)を差し引いた額です。なお、創業以来の累計では6.1億円です。

いわゆるグロスではなくネットです。つまりもらった分から返した分は差し引きプラスの2.7億円というわけです。当社全体では税金を使わせてもらって、それの1.5~2倍ぐらいを国にお返ししているということになります。

■つまり福祉は社会の役に(経済的にも)たっていますよということ

投資銀行系で使うNPV(正味現在価値)で計算しているので、割引率なども含まれ、繰り返しですが、そこそこ正確な額だとは思います。ただ考慮しきれていない部分もあります。例えば、昨年も書いた通り、外部効果を入れるともっと大きな数字になる可能性がある一方で、他の支援団体との共同作業を考慮に入れていないためその点では小さな数字になる可能性もあるので、あくまで参考程度とお考えください。

それでも福祉にお金を使うと、社会的にはもちろん、実は経済的にもプラスになるんだよということを年に1回はしっかりお伝えしておきたいと思います。

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社会的価値等をアップデイト

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http://teensmoon.com
TEENS御茶ノ水 4月開校予定 
利用説明会でご登録・ご予約を承っています
     

昨日今日はガクプロ関係の相談が多く、合わせて15人ぐらいでした。相談時間だけで結構大変ではありますが、一人一人違うのでやっぱり大変です。何屋さんだか自分でわからなくなる時もありますし、満足いただけないこともあるわけですが、精いっぱいやった2日間だったと思います。若干いま放心状態です。

合間で、昨夜ニュースレター(Kaien,TEENS)を作成・配信し、今日はウェブサイトのリニューアル以降いったん実は掲載がなくなっていた『社会的価値』(Kaienの社会的価値 ~就労支援は税金を2倍にして社会に返している 子どもの支援は?~)を復活させました。

こちら(http://www.kaien-lab.com/company/profile/)のページです。

時々アップデイトしていきますので、時々覗いてみていただければ幸いです。

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Kaienの社会的価値 ~就労支援は税金を2倍にして社会に返している 子どもの支援は?~

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昨日で今年の当社の営業はほぼ終了。朝から飛行機で移動。機上でのアナウンス。「火山活動のため硫黄の臭いがしますがご了承ください。。。」とのこと。 自衛隊機で移動しているかのような錯覚に襲われましたが、飛行機は無事鹿児島空港へ。年越しを鹿児島で過ごすのは5年ぶりぐらいです。桜島は今日は穏やかに見えます。

鹿児島中央駅からさらに南へ

主に移動中に普段はできない仕事を今日はしました。それが、社会的価値の再計算。

これまで当社ではウェブサイトの右端に、社会的価値ということで数字を入れてきました。今月で4千万円超になっています。多いといえば多いのですが、税金を1億円単位で投入していただいている事業としては何というか申し訳ない気持ちがどこかにありました。社会的価値が少なすぎるということです。多額の税金を使わせていただいていながらそれに見合うリターンを社会に返していないという後ろめたさが常にありました。

とはいえ、この数字はどこか納得がいかない数字でもありました。就職した人(当社の職業訓練を経て就職した発達障害の人)が払ったであろう過去分の税金しか反映していなかったということです。ほかにも計算式に含まれるべき項目があるはずだと思っていました。

例えば、当社が会社として納めた法人税とか(しかも結構多いのです。中小企業の実効税率が、海外のタックスヘイブンなどを利用してギリギリの節税をしている大企業の実効税率よりもはるかに高いことが納得いかないのですが、それはまた次回以降に議論するとして・・・)、当社のスタッフが払う所得税とか消費税とか、当社で就職した人が今後納めるであろう税金の予想とかが、計算から欠けていたからです。未来のことを言うなと言われるかもしれませんが、投入した税金への回収分はやはり未来分も含めた現在価値で比べないと”投資”の成否がわかりません。

ファイナンス基礎理論 第11回「割引率ってなに?」
http://www.yuichiro-itakura.com/essay/partner_essay/by/by_11.html

で、計算した結果は、1億円税金をつかって当社が就労支援事業をすると、2億円にして社会に返すことができる、つまり2倍にしているということがわかりました。

もちろんいろいろな仮定を置いています。が、それも、かなり保守的に計算していました。仮定としておくのは、当社経由の場合の就職率(約85%)、それに基づく就職者数(毎年100人以上)、平均月給約18万円、定着率(1年後で約95%)、訓練生に占める生活保護の率(数%のみ)などですが、特に生活保護のところなど、現実の数字よりもかなり控えめに計算しています。

当社納税額(今期分)+当社スタッフ納税額(今期分)+当社経由就職者納税額(未来分も含む現在価値)+訓練生生活保護減少額(未来分も含む現在価値)ー当社に投下された税金=社会的価値

今回の数字で一番貢献していたのは、当社経由で就職した人たちの納税額です。要素としては(これまでの障害者雇用としては)高い月給、高い就職率、高い定着率の3つの数字が寄与しています。また、生活保護の人に働いてもらうと、そうでない人(例:親に養ってもらっていた人)を就職させる場合よりも4~5倍ぐらい経済視点からは価値があるということです。貧困層を働ける存在にすることは経済的なインパクトが非常に大きいことがわかりました、

税金投下1億円の時に2倍の価値を社会に返しているということは、上の式でいうと『2億円ー1億円=1億円』という感じです。そこそこ誇るべき数字ではないでしょうか。これまで税金で食わせてもらっている仕事、という肩身の狭い思いをしていましたが来年からは胸を張って倍にして返しています!!といいたいと思います。税金無駄遣い全然していませんし、むしろ増やしていますよ、ということです。

1年ぐらい納得できる計算方法はないかなぁと考えていた結果出てきたものであり、今考え直すと当たり前なのですが、他の就労系の組織の社会的価値にも使ってもらえるかもしれません。あるいはもう使っているものを僕が今日気付いただけなのかもしれませんが。。。

注釈も必要です。一人が就職するためには当社だけの力でなりえることは少ないです。もちろん親御さんの力もあると思いますし、同じ医療・福祉の仲間としても、発達障害者支援センターとか、就労・生活支援センターとか、若者サポートステーションとか、ハローワークとか、 クリニックとか、カウンセリングルームとか、その人たち・組織の成果も全部もらって2倍にしているという計算です。なのですべてを自分たちの手柄にはできません。

一方で、ただ単に発達障害の人を資本主義の歯車として機械的に働かせているだけではなく、夢と希望を与えているとか、ふわっとしたところがもしかしたらあるかもしれず、実際Kaienで訓練をした人や、就職後に充実感もって働き続けている人、そしてそのご家族の表情を見ると、(お世辞も多分にあるのはわかりますが「Kaienがあったから今がある」ということを言ってもらえることを考えると)、数字以上に良いことをしているのかもなぁと、思ったりもします。

いろいろとプラスマイナス考えても、税金を2倍ぐらいにして返している、資本主義としても市民社会としてもきちんと役割を果たしている会社になりつつあるなぁと感じました。

と、ここまでがきょう午前までに計算した話です。そこからが難しかった。というかまだ解けていません。大人以上に計算が難しいものが、子どもの支援の社会的価値の数値化です。午後はそれをずっと考えています。

夜になってもその課題が頭にありながら、ふと、いつもの部屋にはないテレビに久しぶりに接してみたところ、気づきに近いものがありました。番組名は、NHKスペシャル「子どもの未来を救え~貧困の連鎖を断ち切るために~」。横浜の当社事業でお世話になった鈴木晶子さんがコメンテーターとしてスタジオ出演していたこともあり、「おーっ」と見始めました。番組の中で、きょうの僕課題を言葉にしてもらったのが、『子どもの貧困対策は長い目で見た投資』というフレーズ。「そうだよね」と感じたのでした。

当社のTEENS(発達障害児向けの学習支援・お仕事体験)は、貧困層の子ども、貧困世帯の世代連鎖というストーリーからは若干はずれるのですが、将来しっかりと社会で働く力になってもらうために他の多くの子たちとは違うアプローチが必要であるために、長い目で見た投資と考えないといけないということは世代を超えた貧困対策と一緒です。発達障害児をどこかの私立中学・高校・大学に受からせるだけ、つまり受験だけで物事が解決するなら数年間ぐらいの短期間の視点でよいですし、何がゴールかもわかりやすいですが、将来、税金を投下せず、むしろしっかりと払ってもらう存在になるために今何をすべきかという大きな視点だと、その社会的な投資をどの程度発達障害の子どもにすべきかというのは本当に難しいです。

個人的には、当社のTEENSに通った子どもがはつらつと将来働くことが何よりも証明になるのだと思います。しかし、難しい計算になるからこそ、「しっかりとこれだけ今のうちに税金投下したほうが良いよ」、という社会に説明する必要があります。そうじゃないと、ますます社会保障費増額へのプレッシャーが高まる中で削られる予算となってしまいます。『長い目で見た投資』として、こねくり回した数字ではなく、感覚として納得してもらうためにはどうしたらよいのか。。。

正直5年は猶予が欲しいなと思います。TEENSのセッションを見ると、とても普段学校で心の翼を広げられていないとは思えないぐらいのびのびと発言したり行動していたりする子たちに会えます。5年後10年後にはしっかりと働く力になれているのではないかと思います。当社だけの力ではないかもしれませんが、当社での経験や支えが核となって本人が納得して楽しめる就職できるケースを増やしていきたいと思います。

今の時点での数値化もできるかもしれません。例えば(1)親御さんが負担が精神的だけではなく時間的にも減る(時間=お金の換算はできます)というご家族支援の効果、(2)学校の先生や職員の人たちがその子へのアプローチが上手になる、負担が減るという効果、などです。(1)にしても(2)にしても、発達障害児の進学や就職、その子ごとの長所や短所への個別のアプローチについての情報は世の中に少なく、そのあたりに適切で的確な支援をできることで間接的に社会に効果を感じてもらうことをTEENSとう事業でまず示したいと思います。

大人の社会的価値は近々ウェブサイトに反映できそうですが、子どものほうは来年の年末年始の宿題になりそうです。今回は他にもプログラム開発やビデオ撮影などのほかに、来年のビジネスプランを書き直す作業など、宿題を溜めすぎて、早くも終わらなそうです。できる限り消化していきたいと思います。

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発達障害の強みを活かした就職・活躍を!
Kaien新宿・横浜・秋葉原 (池袋計画中)
 
 
 
小中高生向け 学習支援&お仕事体験プログラム
TEENS新宿・横浜 (秋葉原計画中)
 
 
発達障害(含・疑い)の大学生向け 学習・就活支援
ガクプロ (秋葉原と新宿で開講中)
 
 
 

Specialisterneの社会的価値 5年で2.5億円

 

Kaienを創業するきっかけになったデンマークのSpecialisterne(スペシャリスタナ)。アスペルガーなど発達障害の人をソフトウェアのデバッガとして雇う営利企業である。2004年に創業後、世界の発達障害者に希望を与え続けている。

先日Specialisterneから送られてきたニュースレターに、社会的価値を定量的に計測したという記事があった。英語だがニュースはこちら。詳細のPDFはこちら

プラスの額は、9億円。一方で社会的な経費(トレーニング費など)を除く”ネット”価値は2.5億円だという。

もう一つ、どうやって計算しているのかわからなかったが、(年金など不要になったものを入れるとだと思うが)、Specialisterneの従業員に「1」経費をかけると、「2.2」になって社会に還元されると計算されるとの事だった。つまり税金を投入しても、2.2倍になって返してくれるとのことである。

2008年にSpecialisterneを知って3ヶ月後 
コペンハーゲンを訪問した 創業者Thorkil Sonneとの写真 

当社もウェブサイトでささやかに社会的価値を数字で示しているが、最初からこの定量化はしたかったところである。今の当社のビジネスが結構税金を投入して頂いているので、いつも心苦しい感じはあるのだが、Specialisterneの数字をみると、定量化をしっかりしないとな、と思うとともに、間違ったことはしていないだろう、という気持ちも強くなる。

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社会的価値という指標について

昨日、Twitter(KaienJpのアカウント)でご紹介したように、ウェブサイトで公開しているKaienの「社会的価値」の情報を更新した。たとえば、http://www.kaien-lab.com/company/activities/ のページ。

ほとんどのページの左中段にある3つの指標

11月に東アジアの社会起業家サミット(?)なるものに国際交流基金さんとブリティッシュ・カウンシルさんのお力で出席させてもらったときに再確認したのが、自分たちの事業を分かりやすく数字でお伝えしないといけないということ。もちろん売上とか利益が一番いいのだけれども、ビジネスに関わる部分で完全にオープンに出来ないという制約と、まだその数字だけではインパクトにかけるのと、そもそも曲がりなりにも「社会的企業」という側面は否定できずその部分は既存のボトムラインだけでは分かりにくいのとで、もうひとつの数字(ボトムライン)を、特に米国の社会起業家は一生懸命になって公表している。

実を言うと僕はそのあたりきちんと勉強したことがない。これまでその道のおそらく世界的な(?)研究者でもある、共同創業者の徐(通称:ちゅるさん)に任せてきていた。ただ彼も社外取締役という立場で日々の経営にはタッチしていないし、なんだかすごい会社で働いているので忙しくもあり、今回12月から公表している「社会的価値」の計算方法については僕がリーダーシップを取った。

色々考えたんだけれども、今のところは超シンプル。以下の二つの和。

(1)Kaienのサポートによって就職した人が払う所得税の増加分

  • 就職した人が増えれば増えるほど、
  • 就職した人のお給料が高くなれば高くなるほど(※つまりパフォーマンスが認められるほど)
  • 定着率が高まれば高まるほど、、、

高くなる数字である。

(2)就職によって国庫から支給されなくなる生活保護の減少分

  • 就職した人が増えれば増えるほど、
  • またその人が元々経済的に厳しい状況からのステップアップであればあるほど
高くなる数字である。
 
 
もちろん、これに賃金を加えることもできるけれども、税金のところとダウルカウントになるし、そもそも賃金ではなくって、その人が産み出した付加価値のほうを数字に入れるべきなのかなぁと悩んで手を付けていないところ。もちろん、生み出された賃金で消費をするわけで、消費者としてはマーケットを大きくしているわけで、社会的な価値かもしれないけれども、、、そこまで行くと僕の容量を超えているので、誰かの力を借りないといけない。(このへんの金は天下の回りもの、的なことを考えるのが苦手。。。)

それよりも、実は社会保障費が下がるんじゃないか、そちらの数字を取り入れるべきではないか、という話もある。これについてはたしかに早めに「社会的価値」に含めたいと思っている。ただ納得感のある計算方法というのを開発するには至っていないので、これも今のところ見送り。

さらには、自尊心の向上、という部分もとても大きいのだけれども、これはそもそも数値化をどうするか?という点があるので、今のところ見送り。。。もちろん、「自閉症のイメージが変わる」というKaienのミッションに少しでも近づくと何らかの社会的価値が起こりそうだが、そのあたりの定量化も見送り中。。。

そんな手探り状態で始めちゃったの?という感じの指標だが、たしかにその通り。まあ、こう言うことをやっている会社が少ないので、わかるところからでもやってみようかなぁと思ったわけである。もちろん今は数字が悲しいほどに小さいので逆効果では?という心配する声もあったが、これを見て「頼りない」と思われたら、それまで。ベンチャーがこの程度の数字であんまり怖がっていても仕方ない。少なくともマイナスの数字じゃないわけだし。

いずれにせよ、計算方法は今後ゆっくりと見なおしていきたい。なので、突然一桁増えた!!なんてことが起こるかもしれないが、それは計算方法が見直せて、より正確な数字が出せるようになったから、ということになりそうです。

こういうの卒研とか修研でやりたいという人がいましたらご協力しますので、お声がけください!!

Kaien会社ウェブサイト  http://www.kaien-lab.com
ニュースレター登録  http://bit.ly/awLJVz 
「自閉症スペクトラムの方向けのキャリア相談会」申し込み  http://bit.ly/985ume
 
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