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障害者雇用水増し問題 官公庁も特例子会社を導入すべきでは実質的に「チャレンジ雇用」が『特例子会社制度』に近いものに既になっているのです

2018年8月31日

前回のブログでは、数多くの中央省庁と都道府県を中心に長年行われていた『障害者雇用の水増し問題』について、いくつかの観点から考察しました。

前回の考慮ポイント

①障害者雇用は必要なのか?国別の考え
②障害者雇用促進法って良い法律?時代にあっている?
③「働くために障害のある人」の定義と「幸福追求の手法」の議論
④「障害者雇用水増し」問題というよりも「行政内部の都合の良い法令解釈」問題

です。【参考】官公庁 障害者雇用の水増し問題 ~発達障害 就労支援の現場からの考察~

特例子会社を官公庁にも!!

今回のブログでは、「官公庁も特例子会社を導入できるように法律を作る」ことを提起したいと思います。

まず結論を書くと、

「官公庁で上手に、今の職場で、正職員で雇えるなら雇って欲しい。でもそれができないから、つまり雇入れが現実問題難しい状況があるのではないか(だから水増しをせざるを得ないのではないか。)」
「官公庁は、民間に認められている特例子会社の制度が使えない。なので一気に雇用数を増やすことが難しいのはたしか。」
「だからこそ、”チャレンジ雇用”の有期雇用の制度があるともいえるが、それでは不十分だったことが今回なことで明らか。かつ”チャレンジ雇用”は、3年までの不安定な雇用を提供することになってしまっている。」
「それだったら官公庁でも特例子会社を作れるように法制度を改正すればよいのではないか。」

というものです。

行政は障害者雇用の“後進地帯”

障害者雇用率は通常の企業の場合2.2%です。官公庁はさらに上積みが期待されていて、国・地方公共団体等 2.5%、都道府県等の教育委員会 2.4% という定めになっています。

なぜ官公庁は高いのでしょうか?

今回の件ではまったく逆になっていて見る影もないですが、一般社会・企業の”模範”として障害の有る方の力を活用していく為、と個人的には考えています。

例えば10年以上前から、官公庁では(既述の通り)『チャンレンジ雇用』が行われています。民間に任せたままではなかなか雇われない障害程度の重い、仕事の経験が乏しい人たち(チャレンジド)を率先して雇い、力をつけることで、一般企業への就職につなげようというものです。

【資料抜粋】チャレンジ雇用とは、知的障害者等を、1年以内の期間を単位として、各府省・各自治体に おいて、非常勤職員として雇用し、1~3年の業務の経験を踏まえ、ハローワーク等を通じて 一般企業等への就職につなげる制度です。平成 19 年 12 月 25 日に策定された、新たな「重点施策実施5か年計画」(障害者施策推進本部決定)において、平成 20 年度から全府省で実施する こととされています。 なお、非常勤職員の雇用は、各府省の予算の範囲内において、それぞれの業務の必要性も考 慮しながら対応するため、チャレンジ雇用の期間も1~3年になります。

ただ、実際のところはチャレンジ雇用ではまったく充足していなかったということが今回明らかになりました。民間のお手本になるどころか、民間の方が障害者雇用は進んでいるという、福祉で働く人間としたら当たり前の現状が今回世の中に知られるようになったことからもおわかりいただけるでしょう。

正職員(普通の仕事を普通の環境で)は理想だが…

もちろん正職員の、通常ルートで障害のある人を採用するということが理想的です。

が、そもそも知的・精神障害の人が、例えば東京都の職員に応募ができるようになったのは、昨年(2017年)のことです。それまでは障害者枠といっても、正職員の場合は身体障害者しか受けられなかったわけで、それ以外はチャレンジ雇用に頼っていたのが行政です。しかもそもそも東京都の施策ですら行政では画期的な先駆事例でした。正職員の道でたくさんの職員が雇用されるのは時間が掛かるでしょう。

また、もちろん発達障害の方の就業支援をしている身からすると、障害のある人の正職員が増えるとそれは喜ばしいことなのですが、一市民としては、様々な予測不可能な環境の中で有能な職員になれる方が合格すべきであり、それが出来るかできないかは障害の有無にかかわらず、フェアに計られるべきです。通常ルートの正職員の障害者枠であれば、下駄を履かせる必要はないと思います。という原理原則論を考えると、発達障害・精神障害・知的障害の人に、通常の正職員の道が開かれても、これだけで法定雇用率が満たせるほどにならないでしょう。そもそも民間よりも雇用率は高いという壁もあり、より抜本的な対策が必要そうです。

【参考】知的・精神障害もついに応募可能に 東京都職員採用 ~公務員の障害者枠に風穴が開く!~

チャレンジ雇用は”有期雇用”であるところが残念 だけどヒントが有る

ではチャレンジ雇用を増やせばよいのではないか。答えはYES/NOです。もちろん、就業経験のない人のチャンスが増えることは良いかもしれませんが、その契約は有期契約。どんなパフォーマンスが高くても1年後や3年後にまた労働市場に戻る必要があるのが現状です。

そして1~3年の有期である上に、「チャレンジ雇用」は30時間/週を超える契約でないことも多く、手取りも少なめ…。このチャレンジ雇用で雇用数を拡大したところで、どの程度、社会的な意義があるのでしょうか。 

一方で「チャレンジ雇用」には別の意味でヒントがありそうです。それが今チャレンジ雇用で省庁が行っている業務内容です。チャレンジ雇用で働いている人が担当している仕事は、公務員(正職員)の周辺業務の業務を切り出していることが多いです。実は民間の特例子会社と一緒です。民間の特例子会社では、ビル内の郵便物配達・備品補充、総務・人事・経理系の事務補助など親会社の周辺業務をまとめて請け負っていることが多いのです。

つまり、省庁の「チャレンジ雇用」は「(有期雇用しか無いものの)事実上の特例子会社」ともいえます。実質特例子会社にしているならば、有期契約ではなく無期契約も結べるようにして、特例子会社の制度を公的機関も採用できるようにするのが、みんなハッピーではないかというわけです。

精神論はともかく、気持ちよく雇える仕組みになっているのか?

もちろん個人的には、前回のブログでもお伝えしたスウェーデンのサムハルのような国営会社を作ってみても面白いと思います。ただし、大きな制度の変更が必要だと思われ、ここ数年で実現することはないでしょう。だとしたら、色々な精神論や複雑な理想論はともかく、気持ちよく雇え、気持ちよく働けることが、民間である程度証明されている、かつ既にチャレンジ雇用で部分的に導入している特例子会社を省庁にも拡大すればよいのではないかと思うわけです。皆様どうお考えになりましたか?

長めな文章になってにもかかわらず、やや散漫な内容になってしまいました。そういえば、自分の事業である発達障害支援の立場からどう考えるかを書き忘れました。また、今回まだ水増しはないようですが、 教育委員会も民間よりも多くの障害者雇用が必要で、達成に向けて苦しんでいるところが多いと聞きます。 時間があれば、次回はそのあたりをまとめて論じたいと思います。

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