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シリーズ「合理的配慮」 Part 2 合理的配慮はreasonable accommodation?

2010年10月24日
 

【はじめに】 国連の「障害者の権利条約」に署名した日本。しかし批准のためには、これまでの現行法令では対応できない概念「合理的配慮」に対応する法令を整えないといけない。このため今国内的な議論が行われている。このブログでは5回シリーズで現状分析や僕の考えを書いていく。 過去のエントリはこちらから==> Part 0, Part 1

 

米国ではこんな本も出版されている。副題にはこんな言葉が。
「米国障害者法に利益を出しながら適合する方法」

【本文】 実はこのシリーズを僕が書こうと思ったのが、reasonable accommodationという言葉に出会ったから。端的に言うと、reasonable accommodationの訳として「合理的配慮」というのがあまり馴染むように感じない。違和感を覚える。じゃあ何がいいのと言われると困るのだが。。。配慮というのは誤解をあたえかねない、というのが論旨。

reasonableはいい。これは合理的と訳すのが合理的! つまり理想ではなく、あくまで雇用主にも労働者側にも経済的にも倫理的にも納得出来るところで織り合いましょうという含意があると思う。でもaccommodationを「配慮」と訳すのはどうかな?とおもって、そもそもaccommodationの意味と語源を調べると、以下のようであった。

  • accommodate 収容する、適応させる、宿泊させる
  • [語源] ac=ad(=to)+com(=together)  

配慮というのは、AからBへ一方的な働きかけを連想させる。。。けれども、accommodationというのは、上の訳や語源を見ても、もう少し双方向的な意味があると思うし、そもそもinclusion(=インクルージョン、こちらもしっくりと和訳がないが、一体化とか取り込むとかそういう意味)に近い概念である気がする。

もちろん、厚労省のウェブサイトなどにいけば、条約の原文(英語日本語(ただし日本語は仮訳))が見られるし、このPDFをみれば諸外国の「合理的配慮=reasonable accommodation」の事例が分かるので、それを参考にして考えて欲しいという主張もあるであろう。

が、多くの人は、というより99%の人は、原典にあたるなどという面倒なことはしない。「合理的配慮」という語感だけで自分で判断し行動してしまうおそれがある。

ちなみに米国の例としては以下のものが挙げられている。ただ雇用主側に「過度な負担が無い限り」においてとされているとのことである。

  1. 施設・情報へのアクセシビリティ等
  2. 職務の再編成
  3. 勤務地の変更
  4. 労働時間の変更・休暇の付与
  5. 空席の職位への配置転換
  6. 企業内外における教育訓練・試験
  7. 援助者・介助者の配置

「合理的配慮」と日本語のニュアンス通りに考えてしまうと、なんだか特別すぎることをしないといけないと雇用主が感じることがあると思う。そうするとかえって間口を狭めてしまう気がする。また、支援者としても必要以上のサポートをしてしまうことがありそうだし、当事者・本人・家族の側から見ると過度な期待をもったり、あるいは上から目線でいつまでたっても対等な扱いをしてもらえていないような気もするかもしれない。

なので極端な差別的な扱いは、今回の「合理的配慮」概念を国内法令へ導入することによって、なくなっていくであろう。が、多くの障害者手帳保有者が感じているなんとも阻害されている気分・状況は、この「合理的配慮」だけではなくならない気がする。

そのためにもKaienではしっかりとみんなのパフォーマンスをみせて、同じ土俵でも戦えますよ!という証明をして俗に言う障害に対する認知を変えていきたい。まあそれは別のエントリに譲るとして、次回は諸外国の合理的配慮(reasonable accommodation)について考えたい。

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