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Kaien創業記 第1回留学を諦める? 48時間で出した結論

2024年8月8日

Kaienは偶然の連続で出来てしまった会社です。元々私は障害福祉関係にも起業にも全く興味がありませんでした。なぜそんな私がKaienを起業するに至ったのか?このシリーズではこれから6回にわたってKaienの創業前後のストーリーをお伝えします。

なおこの創業記は10年以上前の2011年から2012年にかけて執筆したものです。出版直前まで行きましたが息子の将来を考え最終的に取りやめにしました。今回は個人情報など問題ない部分の原稿を抜粋し加筆修正したものをお読みいただきます。

私は元々NHKのアナウンサーです。MBA(経営修士号)留学のために6年勤めたNHKを退職した直後に長男の発達障害がわかりました。創業記の第1回は、2007年8月下旬。長男の診断を受け留学直前の怒涛の48時間をまとめています。

MBA留学まであと2日。当時私たち家族は実家にいました。留学の際に私だけが先遣隊として米国に行き、数ヶ月遅れて家族を呼び寄せるというのが予定でした。このため少なくとも冬まで家族と会えなくなります。私はすでに前月にNHKの職員をやめていて、それまで住んでいたマンションも引き払っていました。米国で家族が合流するまでの間、妻と子どもは実家にお世話になることにしました。息子の発達障害がわかったのは、私が仕事をやめて、米国に行くまでのわずか1ヶ月間。失業状態になっているというタイミングでわかったことです。

離れ離れになる家族と1日でも長く過ごしたいという理由で、私が米国に渡る日は授業が始まる直前の日に設定していました。つまり渡米が許される最終日にフライトの予定を組んでいたため、フライトをキャンセルしてあと数日家族で考える時間をつくる、という余裕もないスケジュールでした。わずか2日間でこれからのことを決めないといけません。

はじめに考えたのが、留学を諦めよう。仕事を日本で探そうということです。息子が発達障害ということはわかった。ただ症状がどの程度かもわからない。どのように育てていくのか、そして将来どういう大人になるのか?私が描いていた教育・子育てというのがガラガラと崩れ去っていました。米国に行っているどころじゃない。今は日本に残って、状況をまず把握しながら、と思いました。

その夜は手当たり次第に電話しました。家族や知り合い、NHK時代の同僚や先輩に電話しました。明日には解約しようと思っていた携帯電話です。これがこんなに活躍することになるとは。やるせない気持ちになりました。必死で涙をこらえ、時には息子に接してくれたことへの感謝やこれからも変わらず遊んで欲しいということを伝えたり、時には発達障害に詳しそうな人にはどのような対策があるのか、なにが予想されるのかという情報収集もしたり、人によっては留学をすべきか日本に留まって新しい職を探すべきかを聞いたりしました。

そのなかで父親の言葉が冷静にさせてくれました。「孫は将来就職できないかもしれない。その時に備えてお金を貯めておくことは必要だ。MBAに留学すれば、資金的に心配がなくなるのではないか。将来を見据えて判断し、行動すべきだ」という話でした。そのとおりです。もっともだと思いました。うちの親はすごいなぁと、彼の息子であることに感謝しました。

私が留学しようとしていたのはMBAといわれるものです。日本語では経営学修士という大学院のプログラムです。ビジネスのイロハを学ぶだけではなく、世界からビジネスエリートたちが集まってネットワークを築く場といわれています。当時でも費用は2年間で1500万円ほどもしましたが、それでも修了後は、年収1000万円が約束されていました。

私はそのMBAの中でもハーバード大学やスタンフォード大学とならんで全米トップ5といわれるノースウェスタン大学のケロッグ経営大学院への入学が決まっていました。地方のNHKアナウンサーというまったくビジネスの経験のない人間が受かるというのはとても珍しいことです。たとえ留学中はお金で困ることがあっても、このチャンスを上手に活用しなさいと言われました。そうだよな、そうしよう。私は父の一言でようやく道が少し見えた気がしました。

それでも理性と心情はそう簡単に一致してくれません。渡米までの2日間ふと気が緩むと涙がこぼれてきました。世界最高峰のMBAプログラムにこんな気持ちで過去入った人がいただろうか。でもとにかく稼ぐ人間にならないといけない。私にはビジネス経験がゼロ。しっかり2年間米国で吸収できるものを吸収しよう。その後、息子のためになるキャリアの方向性をいろいろと持てる人間になろう。当時ここまで言葉はまとまっていなかったと思いますが、涙がこぼれるたびに、そう自分に言い聞かせていました。

第2回は留学から1年。発達障害とビジネスを研究する過程で見つけたデンマークのIT企業「Specialisterne(スペシャリスタナ)」について取り上げます。

関連ページ: 代表メッセージ

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