2年前に書いた『MBAと起業(2)』
今年7月の母校ケロッグ(米国イリノイ州にあるビジネススクールのケロッグであり、コーンフレークのケロッグではない)の学校説明会に出席することになった。時間のある連休中に学生時代に何を考えていたのかなぁと当時の自分のブログを読んでいたら、予想以上に秀逸なブログに、「昔の俺、頑張ってたな」と思ったので、そのまま転記します。MBAを目指す人には良い文章だと思います。原文(といっても日本語)はこちらから。時制は2009年です。
+++5回シリーズの2回目+++
前回は私たちKaien(カイエン)が優勝できたTulane Business Plan Competitionを題材に、MBA生がビジネスプランコンペティションで戦う様子をつづりました。今回は私たちのビジネスプランがどのようなものかというのをご紹介します。
私たちのビジネスプランKaienは以下のようにまとめられます。(ウェブサイト http://www.kaien-lab.com より)
Kaien は自閉症者の類稀な能力を活かし、日本の自動車産業など組み込みソフトウェアの検証作業を行うことを目指しています。Kaien が目指す究極のゴールは、(1)自閉症者の強みを発見・活用することで、これまで雇用の機会に十分に恵まれなかった自閉症者が「普通の」生活をおくれる手助けをすること (2)経済的に持続可能なソフトウェア検証会社を自閉症者の強みによって作り出すことで、社会が持つ自閉症者の職務遂行能力に対する認識を変えること、です。
Kaien は3 つのことが重ならなければ、とても考えもつかないことでした。
1つ目は、息子が1年半ほど前に、自閉症と診断されたこと。
2つ目は、世界からビジネスエリートの卵が集まるMBAで学べていること。
3つ目は、Specialisterneというデンマークの企業を「発見」できたことです。
自閉症との出会い
当時3歳だった息子が自閉症と診断されたのは、私がKellogg留学のために渡米するたった2日前のことでした。そのときは本当にショックでした。診断当初、まず思ったことは子供の分まで稼がないといけないなぁということです。何億円かわかりませんが、息子が就職できなかったとしても不自由のないよう、とにかくお金を稼ぐことに集中しようと思っていました。
しかし数週間・数ヶ月経ち心が落ち着いてくると、なにか違うと思い始めました。お金が用意できて彼の周りに冷たい世間との「塀」を張り巡らせることが出来たとしても、本当に彼は満足できる一生がおくれるのかなぁと考えるようになりました。
社会に貢献する人間になってほしいし、なれるはず。それが息子の生きがいにつながるであろうということです。特に自閉症のことを知れば知るうちに、類まれな能力(集中力、異常発見能力、正確性、繰り返し作業への順応力)を上手く活用する手段があるはず、と感じるようになってきました。
なお自閉症を知らない方のために簡単に説明しますと、自閉症は発達障害のひとつです。医学的には脳機能障害の一種であり、自閉症の人は他の人とコミュニケーションをとったり、普通に社会的な生活をおくることが難しい場合があります。「自閉」と書きますが非常に誤った訳であり、自分の中に閉じこもるようなものではありません。
• コミュニケーション能力の弱さと、こだわりや繰り返し動作が特徴
• 150人に1人の割合で生じる
• 治すことはできないが症状を緩和させることは出来る
• 多くの場合知的障害を伴わない(アスペルガー症候群や高機能自閉症と呼ばれる人たち)
• 失業率は非常に高い。一説には80%以上
MBA学生との出会い
上にビジネスエリートの卵と書きましたが、私自身は前職がジャーナリストで、ビジネス経験はゼロ。英語も非常に不得手で、よくKelloggに受かったなぁと言うような存在です。ただ周りには30歳前後のバランスの取れたアツイ人材がたくさんいます。1年半前に入学して以来、優秀な同世代の人たちと学びあうことは本当に刺激になっています。
アメリカでは(特にこの不況下では)新しいビジネスをおこして雇用を増やす、という考えが浸透しています。こういったカルチャーの中にどっぷりつかりながら生活できていることで、「自閉症の人を活用したビジネスモデル」という、これまでの私では挑戦しようとすら思わなかったことを、本気で考え始めるようになったのだとおもいます。
「なにかヒントが無いかなぁ」といろいろな文献、ネットの資料を探すうちにたどり着いたのが、Specialisterneでした。
Specialisterneの発見
去年(2008年)5月末。HBSの資料を探していると、Specialisterneという自閉症の人を雇用した企業についての文章を発見しました。手短にこの会社を説明しますと、、、
• デンマークの営利企業 (政府からの補助金は一切無し)
• 2004年に創業
• 従業員の75%である50人以上が高機能自閉症
• ソフトウェアのバグを探すソフトウェア検証の会社
• 顧客はマイクロソフトやオラクルなど世界の名だたるIT企業
• 創業者はThorkil Sonne (息子さんが自閉症)
• 1年目から黒字経営
こんな企業が世の中に存在するのかと本当に信じられませんでした。とにかく感動して、深夜にも関わらず何度も文章を読み直したのを覚えています。世界のどこかには同じミッションを持った人がいるんだなぁとうれしくなりました。 私はまったくソフトウェアの知識は無いのですが、「これがやりたかったことだ」と感じました。すぐにThorkilにメールを打ち9月にデンマークを訪問する確約を取りました。
それ以来、Kelloggの友人のサポートを貰い半年ほどの時間をかけ、またKellogg外の様々な方々の助けを借りて30ページぐらいになる「事業計画書」が完成しました。今後もどんどんプランを実際の形にすべく、できることは全部やっていきたいと考えています。
(3回目は私たちのビジネスプランの後編です)
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