発達障害のある人は「大きな少数派」ベネッセ教育総合研究所 CO-BO 「発達障害のある人たちの就労に関わる問題」有識者レビューときっかけシート
昨年、ベネッセ教育総合研究所さんが学生向けにまとめているCO-BOの特集「発達障害のある人たちの就労に関わる問題」に協力させていただきました。この度、一年の集大成が「きっかけシート」としてまとまり、有識者の皆様のメッセージと合わせて公開されています。中高生、大学生のみなさんが発達障害の就労問題を学ぶときに、スタート地点となり得るものだと思いますので、ぜひご確認下さい。
【参考】「発達障害のある人たちの就労に関わる問題」有識者レビューときっかけシート
(これまでの有識者インタビューのリンクなどもすべて掲載されているページになります)
以下、僕が寄せたメッセージを転載しておきます。他の方のものもぜひリンクに飛んでお読みください。
CO-BOに寄せたメッセージ
きっかけシートの内容についてはわかりやすくまとめていただき、福祉業界で働く人にとってもあらためて現状を認識できる有効なまとめだと思っています。ですので、新たな指摘や補足などはありません。
個人的には問題のマグニチュードといいますか、影響の大きさが伝わればと思います。きっかけシートにあるとおり、発達障害のある大人の人口割合はわかりませんが、仮に子どもの調査の6.5%とすると非常に大きな人口です。発達障害のある人は、女性(人口の約50%)、高齢者(約20%)に次ぐ非常に大きな少数派ということになります。多様性や「一億総活躍」という言葉をさまざまな場面で目にしますが、その文脈にしっかり刻まれて良い存在のはずです。人手不足が叫ばれる日本のなかで、これだけ多くの人が仕事に困る状況は、国の活力を大きく削ぐことにつながってしまうと思います。きっかけシートを見て、多くの問題の一つという受け止め方ではなく、実は今後の日本の経済的な力の重要なレバーの一つという意識を持ってもらいたいです。
もう一つは「企業の努力不足が主要因」だと、読者に受け取って欲しくないという点です。もちろんそういう企業もあるかもしれませんが、余裕のある状態を健常、余裕のない状態を障害とすると、昨今は余裕のある”健常企業”は少なく、余裕のない”障害企業”が多いのが実際だと思います。余裕のない”障害企業”は従業員になかなか配慮ができません。何が多くの企業を”障害”に追いやっているのかは簡単な議論ではありませんが、問題の根っこは深く、発達障害のことだけを見ていても分からないということは伝わってほしいと思います。
CO-BOの読者である学生の皆さまへのメッセージ
発達障害のある人の就労問題にかかわらず、世の中の問題は多面的で複層的です。問題の全容は何年たってもわからないと思いますし、問題は日々変化していくもので掴みづらいものです。きっかけシートを読んだ学生の皆さんにはできる限り視座の高い把握をしてもらいたいのですが、他方で、ぜひ現場に飛び込んで問題にぶつかっていってほしいと思います。現場にどっぷり浸かって発達障害のある人が直面する問題を体感することで、きっかけシートの文章が実感を持って感じられるとともに、新たな気づきも生まれ、更なる疑問も出てくると思います。
発達障害のある人の就労問題は、行政・教育機関・企業・支援者などが絡み、どの現場に飛び込めばよいのかわからないかもしれませんが、私はどこでも構わないと思います。どの現場でも必ず問題の全容が隠れているものです。ただしどっぷり浸からないとつながりは見えてきません。興味関心を持ったら、本やネットに頼りすぎず、自分の身近な事例に現場で深く関わることから始めてほしいと思います。
もう一つはきっかけシートを読んで、「自分も発達障害ではないか」と思った方へ。
可能性として読者の学生の方が発達障害である確率は数%。自分も将来就職に苦しむのではないか、社会から阻害されるのではないかと怖くなっているかもしれません。たしかに今自分が思い描いている将来像ではないかもしれませんが、発達の凸凹を知ることは、自分の可能性を最大限に活かすうえでは何より重要です。診断されるレベルであろうがなかろうが、自分の得手不得手をしっかり理解し、上手に得意を活かす生き方を模索してほしいと思います。自分のことを可哀想だとか、障害がある、などと過度に悲観的にならないで欲しいです。凸凹のある自分を受け止めることが、自分の生きる道を探すうえでもっとも重要だと思います。
【再掲】「発達障害のある人たちの就労に関わる問題」有識者レビューときっかけシート
(これまでの有識者インタビューのリンクなどもすべて掲載されているページになります)