2年前に書いた『MBAと起業(3)』
今年7月の母校ケロッグ(米国イリノイ州にあるビジネススクールのケロッグであり、コーンフレークのケロッグではない)の学校説明会に出席することになった。時間のある連休中に学生時代に何を考えていたのかなぁと当時の自分のブログを読んでいたら、予想以上に秀逸なブログに、「昔の俺、頑張ってたな」と思ったので、そのまま転記します。MBAを目指す人には良い文章だと思います。原文(といっても日本語)はこちらから。時制は2009年です。
+++5回シリーズの3回目+++
前回はビジネスプランKaien(カイエン)を書き始めるきっかけとなった要素についてご説明しましたが、今回はKelloggにおいてビジネスプランを発展させている段階で私が直面した問題についてお話したいと思います。
(私たちのビジネスプランKaienについてはこちらから http://www.kaien-lab..com)
問題点
勢いでデンマークまで飛んだとはいえ本当に自分が出来るかという不安は常に頭の中にありました。というのも、
• 自分自身がITについて知らない。ソフトウェア検証についてはもっと知らない
• 既にあるモデルを日本に移管することが起業という範疇に入るのか?
という点です。
模倣はおおあり
まず2点目からですが、模倣は最も成功率の高い起業方法としてむしろ歓迎されているのがわかりました。私たちもビジネスプランの中で何度、proven model、replication という言葉を使ったかわかりません。起業は、ゼロからすべてを自分で行うことではなく、頼っていいところはすべて他人に頼ってコストを下げたり成功率を上げたりすればいいんだ、と認識してからは起業という言葉にあまり恐れを抱かなくなりました。確かに世の中を見回すと本当にゼロから立ち上げたビジネスモデルはほとんどなく、多かれ少なかれお手本があるものです。
Kelloggの授業ではコンビニやディーラーといったフランチャイズモデルを経営することも起業家として平等に扱われます。むしろそういった証明された型が既にあるほうが成功確率が上がるため、むしろ起業家としての道を選ぶならばそうした道をまず取るということが好まれているような気さえします。
ただ水曜は午後4時に全員の退社が義務づけられているというデンマークの労働モデルを日本にそのまま移管できるはずはありません。またデンマークと日本とはビジネス慣習も違います。つまり幾らまねをしようとしても、最終的にはinspiredというべきレベルで終わり、結局のところは自分たちで多くの部分を作り上げていく必要があることに徐々に気づかされました。特にKaienの顧客のターゲティングや人事構成についてはSpecialisterneのモデルから大きく変更しています。また新しい情報が入るたびに、微調整を繰り返す必要があります。「当初のブループリントとまったく変わらないプランだったらそれはおそらく失敗するビジネスプラン」とNew Venture Formulationの授業で言われましたし、その通りではないかと今感じています。
業界知識・経験・ネットワーク
そして1点目ですが、もちろん業界の経験は非常に大きな力になります。Business Plan Competitionでも経営層の業界経験、また起業経験は最も重視される項目といえます。Specialisterneが成功できたのも、創業者のThorkil Sonneがソフトウェア業界でマネージャーの経験があり顧客を知っていたうえに、息子が自閉症で自閉症の特徴について理解が深かったからだと思います。ただ今一番お世話になっているKelloggのEntrepreneurship専攻の教授Merkinからは「そもそもKaienのモデルはproven modelだから経営者は必ずしも業界出身者ではなくても良い」とアドバイスを受けましたし、他のIT企業のマネージャーからも「業界のことは勉強すればよいし、そもそもトップは経営上正しい意思決定ができればよい」というものでした。私なりに理解すると、結局は一人で出来ることは限られていて、起業家の仕事の大部分は、プランに必要なものの自分には足りないスキルを補える人間を見つけ口説くことにあるというものです。実際Kelloggで随一の授業であるEntrepreneurial Financeを担当するProfessor Rogersも「Kelloggを卒業後、もっとも役に立つのはHRの授業だ」といっているように人を見極める力、鼓舞する力、そして場合によっては関係を絶つ勇気があるかどうかが成功の鍵を握るのではないかと感じるようになりました。
結局は楽しめるか!?
いかに正しいプランを書いてもリスクは常にあります。起業が成功する確率は10%ほど。Professor Rogersは「野球と一緒で3回に1回当たれば凄いほうだ」といっています。Kaienもproven modelだからといって成功確率が極端に高くなるというわけではないのは十分理解しているつもりです。最終的にGO かNO GOになるかは起業家自身がその不安定な状況をcomfortableに感じられるかどうかにある気がしています。アメリカでこれまで何人もの起業家と会いましたが、このスリリングな状況を楽しんでいるのを強く感じました。こういう人たちが沢山いるからアメリカは色々な問題を抱えつつもInnovationを次々に生み出せているような気がします。
というようなことを考えながらビジネスプランを書き始め、そして自分自身を鼓舞しながら日々ビジネスプランを進化させています。次回、このシリーズの4回目はMBAで起業を学べるかをテーマにしようと思います。
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