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発達障害と仕事 オックスフォード大学の702職種調査『あと10年で”消える職業”』の原文を読んで

2014年11月11日

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週刊現代の記事が面白かったので、原文を読みに行きました。発達障害の人と接していると、今後無くなる職種については興味どころではない重大関心事ですので。。。

オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」702業種を徹底調査してわかった(現代ビジネス)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40925

THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOWSUSCEPTIBLE ARE JOBS TOCOMPUTERISATION?
Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne September 17, 2013
http://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf

原文は英語で40ページ強。途中数式もありますが、一方で歴史的考察も多く勉強になりました。気づいたことをいくつか。
  

■消える可能性の高い仕事 事務補助、販売補助、簡易接客、工場ラインって。。。

以下が論文から丸々もらってきた図です。これをみると、事務補助、販売補助、簡易接客、工場ラインなどがなくなる予想になっています。こうした仕事は、アルバイトやパート、また当社関連でいうと障害者雇用での主力となる職種であり、いわゆる弱者の仕事がなくなることとイコールに見えます。

論文の37ページ の図表より
FIGURE III. The distribution of BLS 2010 occupational employment over the probability of computerisation,
along with the share in low, medium and high probability categories.
Note that the total area under all curves is equal to total US employment.

実際論文でも、今でも賃金水準の高い仕事は図表の左側、つまり無くなる可能性の低い仕事として固まっています。これらの仕事は残り、そして相対的に賃金が上がっていくのでしょう。

なお個人的には公務員の仕事ってけっこう無くなりそうだな、、、と思いました。今はかなりマンパワーを割いて法令にもとづくように動いていますが、対応する職員によってルールがことなり結構住民の不満があったように思います。それがコンピュータにどんどん置き換わると効率的で(良い意味で)安い政府が仕上がりそうです。もちろん、地方の雇用を支えている公務員の職が今以上に少なくなると、失業率が高くなりそうですが。。。

■AI(人工知能)等によって消える仕事はこれまでのITや機械化による職業の変遷とは違いそう

恐ろしいことが本論文で示唆されています。これまでは機械化などが進んでも、それによって高度に属人的だった、つまり職人に任せられていた仕事が機械を使う
多くの”そこそこ熟練”、”そこそこ教育”した多数の労働者によってとってかわられるだけでした。社会的にはむしろ機械化が良かったかもしれません。が、
AIはそれとは別の変化が起こるかもしれないということです。

例えとして、車の製造は、初期は高度に”超熟練工”の
仕事だった。そのため1人の熟練職人に任されるものだったが、機械によって30人以上の”そこそこ労働者”によってとってかわられ、つまり雇用が増え、か
つ生産性も上がり、安く大量に生産できるようになったとのことです。

これが、AIの場合ですと、1人の仕事が0人によって
とって代られる、つまり人間の仕事がなくなる可能性があるわけです。AIは原子力のように人類にとって悪用される恐れがあり国際的な監視が必要、という議
論もかなり強くなってきているようですが、それ以前に雇用を奪うという点で人類にとって脅威かなと思われます。

■残りうる仕事の特徴「器用さ」「創造性」「社交性」って、発達障害の裏返し?

論文の31ページ の図表より
”O∗NETvariables that serve as indicators of bottlenecks to computerisation.”

では、702職種のうち無くならないと予想される仕事の特徴は何かというと、今賃金が高く教育レベルが必要な職種、もう少し細かく要素分解すると、「器用さ」「創造性」「社交性」と論文では考えています。

これって、実はよく言われる発達障害のマイナスの意味での特徴の裏返しであり、つまり発達障害って不器用さがあり、社交性が弱いと言われており、なんだか発達障害の人が仕事に困っていることを証明しているような印象すらあるのです。

創造性は発達障害の人むしろ有るじゃない、という議論もできます。たしかにそうなのです!!が、自分のペース、自分の価値観での創造性であり、この論文でいわれている他人のニーズに合わせて自分の創造性を調整するという機能が得意かというとやはり疑問符がつく場合もありそうです。

■それにしても今の職種って、どんなものでも社交性が求められているのですね。。。

社交性といっても、社交クラブみたいなところでの会話が上手という意味ではなく、広く人とのやり取りが上手、いわゆるコミュニケーションスキルがあるということ。それがどの職種でもそれないに求められているのが、以下の図表でわかる。

左中央のグラフがそれ。9つの特徴(社交性のほかには創造性や交渉力、手先の器用さなど)の中でも一番上下のぶれが少ない。つまりどんな仕事でも”50前後”の社交性が要求されていることがわかり、0~100まで職種によって要求度が幅広く存在するほかの要素と異なることがわかります。(例えば芸術性が要求される仕事については9つのグラフで真ん中で示されているが、ほとんどの仕事は底辺、つまり0のところに貼りついているのがわかる。)

論文の35ページ の図表より
”FIGUREII. The distribution of occupational variables as a function of probability of
computerisation; each occupation is a unique point.”

■ 発達障害の人に仕事をする未来はないのか?

発達障害の人に職業という意味での未来があるのか非常に悲観的に思えてしまう論文でありますが、それは実は発達障害の人に限りません。以前本ブログでも取り上げたように、高度な管理ができる、あるいは高度な技術を持つ人以外のほとんどの人にとって、仕事が出来なくなる将来が予想されているような気もします。

発達障害の人が今苦しみ始めているのは、炭鉱のカナリアのようなものであり、想像したよりも近い将来、多くの人に襲い掛かるストーリーかもしれないのです。。。

“空の宅配”サービス Amazon Prime Air 発達障害関連への衝撃
http://ksuzuki09.blogspot.jp/2013/12/amazon-prime-air.html

■消える仕事を予想するのは難しいが、今後増える仕事を予想するのはもっと難しい

しかし、希望もあります。論文には書いてありませんでしたが、実は以下別の文章を引用するように今後必要になる仕事を予測するのはほとんど不可能です。ですので、702職種のうち仕事が半減したとしても、全然問題ないかもしれません。

Did you know that fifty percent of the jobs in America today didn’t
exist 25 years ago? And that eighty percent of the jobs students will
fill in the future don’t exist today?

今のアメリカの仕事のうち50%は25年前には存在しなかったもの。今の学生が将来就く仕事の80%は、現時点ではまだこの世に存在しない仕事。

What We Can Do for the Next Generation
Eric A. SpiegelInfluencer  President and CEO, Siemens USA
http://www.linkedin.com/pulse/article/20140127102255-77238165-what-we-can-do-for-the-next-generation

もちろん、先に書いたようにAIによる雇用の破壊はこれまでの機械化とは違いそうで、それに備えるためには、数年ごとに進化する業界でのルールを理解し、新しい知識や技術を見につける、学び続ける労働者である必要があります。こういった働きながら学び、徐々に方向を調整する、そして時に大きな決断をして職種を変えていくというのは発達障害の人にとってはかなりチャレンジなのですが、将来は本当にわかりませんし、クレー射撃のように動く的に向かって、まっすぐにしか飛びにくい頑固な人(発達障害の人)を当てていく仕事は、より価値のある、やりがいのある仕事になっていくと思っています。

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