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一番辛い時期に力と自信を蓄えた場所~私とKaien 第14話~

2018年3月7日

 『私とKaien』は当社の就労移行支援を利用していた訓練修了生や、ガクプロやTEENSをご利用中のお子様を持つご家族など、Kaienと一緒に発達障害の魅力を世の中に広げていただいている方々へのインタビューシリーズです。

 第14話はコミュニケーションと衝動性の問題を抱えるSさんのインタビュー。子供の頃から仲間からの疎外感を感じていたというSさん。高校に入ると人目が気になってほとんど登校できなくなってしまいます。卒業したものの定職に就けぬまま、仕事を転々とする日々が続いていました。

この指で何ができるんだ、って7年間くらい思ってました

 スーパーで冷凍食品の品出しをする仕事は、5年くらい続きました。毎日別の場所に行くんです。契約したスーパーの倉庫に、今日は東京、明日は静岡、あさっては千葉、という感じで。人付き合いもなくてこの仕事は楽しかったです。通勤に往復6時間以上かかることもあって、体力的にはしんどかったけれど精神的に楽でした。

 ところが指を切断してしまって。夜中に眠れなくてバイクで走って、急に眠気が来て転倒したんです。医師から「指の血行を悪くするような仕事はダメだ」と言われて、この仕事を辞めざるを得なくなってしまいました。怪我をしたのは26歳のとき、9月12日。なぜか日付まで頭に残っています。最初の3か月くらいは外にも出られませんでした。

 友人の励ましで、少しずつ外へは出られるようになってからも、働くとなると、この指で何ができるんだろう、というのがあって。コミュニケーションの問題――雑談が苦手、というのもありました。新しい職場だと最初は皆よくしてくれるじゃないですか。近寄って来て、色々話してくれるのに、3日とか一週間経つと、相手の表情が何か拒否しているような、そんな感じを汲み取ってしまって。「ああ、やっぱこの人、自分のことこう思ってんだろうな」とか。それでもう辛くなってしまって。

 アルバイトはしましたが、2か月から半年。倉庫で1年続いたのが一番長いですかね。でもそこもやはり人間関係で――いじられる、というか、年下に馬鹿にされているような。もう行きたくない、と思って、そこを辞めてからは、精神を鍛えるために3日間お寺に入って滝に打たれたり、4年近く短期的アルバイト以外は何もやらずに過ごしました。数だけはきっと30種類以上のバイトを経験してると思います。長期契約の予定ではいったのに一日で辞めてしまったり、3時間で仕事の途中に逃げ出したり。本当に履歴書にも書けないし、Kaienのスタッフにも話せなかったようなことが沢山あります。プツンと糸が切れたように「ああ、もう帰ろう」みたいな。

発達障害は生まれつき、って…ふざけるな、って

 30歳で発達障害と診断されました。診断を受けてから2年間くらいが一番辛かった。20歳で社交不安障害と診断されたとき、自分は安堵したんです。今まで性格だとずっと思っていたものが実は病気だった、今までこの病気のせいで苦しんできたけれど、これでもう苦しみはなくなる、と。でも、社会に出たら、どんどんどんどん違う方向に行ってしまったし、最初効いていた薬も効かなくなってしまっていた。そこへ発達障害の診断を受けてガーッと地獄というか、どん底に落とされて、先が見えない、というか。自分を責めて、周りを責めて、もう負のスパイラルでした。薬を大量に飲んで自殺未遂みたいなことをしてしまったこともあります。5日間寝たきりになって。親が介抱してくれて、なんとか生き延びました。 

 自分の中で30歳という年齢は、もう社会で正社員としてしっかり働いている、というイメージ、固定観念のようなものがあって、そういう風にできないのはダメだ、なんとしてでも社会に出よう、お金を稼がなくっちゃ、という気持ちと、今のままじゃ無理だ、という気持ちがぶつかり合ってしまって。焦りというか、落ち着いていられない、というか、そんな葛藤が続きました。

 病院に行きながら横浜のサポステに通い始めて、そこで就労支援を受けるように勧められました。ネットで5か所に絞って、最後に残ったのが東京の会社とKaien横浜でした。Kaienは訓練生がパワポでスライドを見せてくれたんですが、グラフが沢山出てきて、それを全部自分で作った、っていう。レベル高いな、と思って、それで決めました。発達障害に特化している、というのもありましたね。

 でもKaienに通ってそのままスムースに就職、ってわけじゃなかったんです。当時自分は発達障害だということ自体が受け入れられませんでした。自分の何が発達障害なのかもわかりませんでした。説明を聞いても腑に落ちないというか、今でもそういうところは少しあります。今まで社交不安と診断されて治療してきて、じゃあ10年間何だったのか、っていう怒りがありました。発達障害のことを調べていたら「生まれつき」って言われて、「ふざけるな」って両親と喧嘩したり、医者にくってかかったり…。荒れてる、っていうか、そういう時期だったんです。

ノートで感情を整理しつつ通ったKaien

 Kaien横浜では最初週替わり業務のチームに入ったんですが、合わない人がいました。意思の疎通が取れない、急に怒り出したりするような人で。行けなくなっていた時期もあります。その頃書いていたのがこのノートです。Kaienの面接時にも障害に対して対策していることの例として挙げました。認知行動療法の本を参考に自分が続けやすい様に工夫しています。夜に読み返して自分がどういう思考や感情を抱いたのか、見直すんです。そうすると少し落ち着きました。

自分とKaienのつながりが表れている、と持ってきてくれたノート。感情や思考を書き留めてある。お尻のゴムで字を消せるペンで、無我夢中で書いては消し、書いては消ししていたと言う。

 楽しい思い出もあります。営業ゲームという訓練では、チームを組んで決められた品を売り、売上高を競います。自分達のチームは他チームに比べ内向的だったのですが、負けず嫌いな性格が功を奏して全拠点で1位になったんです。自信になりましたね。

 また、オンライン店舗(実際にAmazonなどに店舗を持って、古書、古着、おもちゃなどをオンラインで販売する職業訓練プログラム)で3週間連続で店長業務を任された時は、業務の振り分けや指示に苦労しながらも、やり遂げた時には営業ゲームとはまた違う達成感を得られました。今の会社に入社する事になり急に卒業が決まった時は、もっとオンライン店舗で業務をやりたかった、と感じたほどです。

ここを辞めたら次はないかな、と意識するようになりました

 今は経理の職場にいます。3月で2年になります。経理の人たちは自分の親の年代の60歳くらいの人ばかりなんですけれど。自分だけ障害者枠で30代です。本当にいい方ばかりで、偏見の目で人を見ない、というか、一人の人間として接してくれる――歓迎会までして下さって。

 簿記は独学で3級を取って、Kaienに通いながら2級を勉強しました。Kaienのパソコンを使う訓練で、タイピングとか最初は人並みの速さだったんですけど、練習するうちにどんどん速くなるじゃないですか。これだったら事務の仕事もできるかな? って自信が出てきたんです。でもスーパーの仕事には未練があって、実習に行ったりもしたんですけど、スーパーはどうしても人付き合いが発生するので、コミュニケーションが上手くないと無理だな、ってことに気づきました。で、事務一本に絞って求職することにしたんです。

 今の職場でも一回調子を崩して休職してます。賑やかな職場なので、感覚過敏なのか、話し声とかが気になってしまって。自分の他に障害者枠で3人社員がいたんですが、2人辞めてしまい、一人は全くコミュニケーションを取らないタイプの人なので、他に話をできる人がいなくなって、孤独になってしまったこともあります。

 最初は「ここがダメなら次があるさ」くらいの軽い気持ちで入ったんですが、よく考えたら「ここを辞めたら次はないよな」って、段々自分で意識し始めるようになって。「3年間はここにいよう」って決意したんです。それで、なんとか今日まで続いている、って感じですね。あと1年、って考えるととてつもなく長く、しんどくなってしまうんで、1か月、また1か月、って考えるようにしています。

 もうすぐ今の職場に就職して丸2年になります。事務も経理も全くの未経験で休職など色々ありながらも続けられているのは、1年4か月間Kaienで様々なスキルや自信を身に着けたおかげだと感じています。今後の課題は本当の意味での自立です。今は親と同居ですし。一人でしっかり暮らして行けるようになりたいですね。実はKaienの”ようこそ先輩”(就職後半年以上を経た元訓練生の話を聞く定例イベント。)にもお声がけいただいたのに、調子の悪い時期で…。そのうち出られる日が来たらいいな、って思っています。

今の職場に入ってから始めた趣味がレザークラフト。浅草橋まで出て革を買い、自分で型を取り針穴を開けて手縫いしてある。好きなことにはトコトンのめり込む、やりたくなったら止まらない、そんな自分らしさが出ている、と語る。

 

(取材 2018年2月)

Sさん: バイクや釣りを愛し、白に紺のアクセントのシャツが爽やかな青年。30歳で発達障害の診断を受けたのち、Kaien横浜での職業訓練を通して事務職の適性に目覚め簿記を勉強。現在は経理の仕事で就業中。

  • 性別: 男性
  • 年齢: 35歳
  • 診断: ADHD傾向の強い自閉症スペクトラム(2012年)
  • 業種: 通信
  • 職種: 経理
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