Kaienは日進月歩の遊園地 ~私とKaien 第2話~
『私とKaien』は当社の就労移行支援を利用していた訓練修了生や、ガクプロやTEENSをご利用中のお子様を持つご家族など、Kaienと一緒に発達障害の魅力を世の中に広げていただいている方々へのインタビューシリーズです。第2回は、TEENSやガクプロを利用し現在は大手企業の事務職で働いているご子息を持つIさんにお話しを伺いました。
Kaienは日進月歩の遊園地
ピンとくるところがあってTEENSへ
うちの子の障害が分かったのは10歳のとき。でも小学校、中学とも普通級で、毎日通いました。周囲の方のサポートに恵まれてきたのだと思います。高校は、私がいいだろうと思った方向性でいくつか選択肢を出しました。そして本人に選んでもらいました。うちは、無理はさせない、苦手なことはしない、ゆるゆるです。結局、好きな先輩がいるところで最終決定(笑)。彼は人で決めてしまうところがありますね。まあ私もなんですけど。
TEENSを始めるときもそう。鈴木さん(Kaien代表の鈴木慶太を指す)にピンと来るものがあったらしくて、「僕ここ通う」と。息子は海外のサッカーや野球の観戦が趣味で、過去の成績とか選手の身長とか客観的データが大好きなんです。そういうところは「自閉ちゃん」だなあと思います。鈴木さんも海外のスポーツに詳しくて、息子の話にうまく乗ってくれたみたい。
Kaienのことは、割と初期の頃から知っていましたよ。でも知的に高い人向けに見えた。でも、息子が高校2年生になった春に子ども向けのサービス(TEENS)開設を知って、通い始めました。CGとかアニメーションとか、当時はすんごく難しいプログラムだったんですけどね。鈴木さん会いたさに頑張って1時間以上かけて通っていました。「今日は忙しそうだった」「今日は少し話せた」って。
息子が店長をしている!!
高校時代はそれでよかったんですが、その後進路のことでいろいろ悩みました。彼のレベルでは大学・専門学校の入学は難しい。結局は星槎グループが付帯事業でしている横浜国際福祉専門学校の適応自立支援コースに入りました。2年間のプログラムなんですけど、就職したらいつでも修了できます。
TEENSは18歳までなので、星槎に通うとともにガクプロにも通い始めました。親としては「大変だろうなあ」と思っていました。大学生に交じりながらですから。
でもしばらくして、ガクプロに息子の様子を見に行ったら、びっくりしました。なんと職業訓練でオンライン店舗の店長をしていたんです。「これは○○君ね」と仕事を振ったり、学生の女の子が「やりたくない」って言って駄々をこねているのを、「それはあなたの仕事ですから私はしません」とか言っている(笑)。
見通しの立たないことが大の苦手なんですが、手順や時間がはっきりしているガクプロは、彼にちょうどよかったのだと思います。
うちの子にあったお勧め求人
いまの会社のお話があったのは、今年(2015年)のゴールデンウィークの頃。スタッフの方が「すごくいい求人があるんです」と勧めてくれました。後から、鈴木さんがうちの子に勧めてくれた求人だとわかりました。
大手小売り業の本部で、とっても体育会系。お店でもないのに「いらっしゃいませ!」と朝、チームになってあいさつ三唱がある会社です。そういうの、発達障害の子は苦手じゃないですか。でも、うちの子は素直なのでできちゃいます。仕事も希望した事務関係の軽作業や入力です。
鈴木さんによると、こちらの求人があったとき、真っ先に浮かんだのがうちの子だったそうです。ああ、うちの子分かってくれている、見ていてくれているんだなと思いましたね。
パート勤務で一日6時間。他の会社や面接会も行ったんですが、「勧めてくれたからには」と思って、こちらを最優先に動きました。面接の前日には息子と夫と私の3人で、どんな雰囲気の会社なのか偵察へ(笑)。ビルの高層階で、とても明るい感じのフロアを見て、息子がにこにこーっとしたんです。これはご縁があるかもしれないと思いました。結果、面接が通って実習が決定。実習後、10日間で内定の通知をいただきました。
親以外の誰かに頼れることの重要性
「仕事楽しい?」と息子に聞くと、「楽しくはないけど、行けてよかった」。「よかった」のは、やることがあって、見通しが立つから。そして、必要とされていて、自分の場所があるから。彼は、人の役に立つことはうれしいんです。
職場も、障害者だからといって彼に甘いわけではないと思います。ずっと普通教育できた彼には、似たような人がたくさんいる特例子会社より、そうした環境での自然なサポートが合っているでしょう。いろいろな人がいる場所で、年上の方に指導してもらいながら、自分ができる仕事をきちんとしていくのが。
障害児の親御さんには、深刻な様子の方が多いですよね。正社員じゃなきゃだめだとか、10年後もこの仕事を続けてられるか、とか。でも子供の人生であって、親の人生ではない。形にはこだわらなくていいのではと思います。納税さえしてくれれば(笑)。いくらでもいい、払うことに意義があると。
親はいずれいなくなります。でも一人で生きていけということではありません。必要な部分は福祉のお世話にもなりながら、親以外の誰かを自ら求め頼ることをしながら。そして10年後にその仕事がなくなっても、前向きに、その時いろいろなことを自ら判断できる人間に育っていてほしいって思います。それは障害があってもなくても同じことだと思うんです。
彼は双子の兄弟の兄なんです。弟は軽度の知的障害を持っています。彼ら2人には、「大学に行かないんだから、二十歳で社会人になるんだよ」と常々掲げてきました。弟は養護学校を卒業してすぐ、スポーツジムの清掃に就職。2人とも、成人前に社会人になれたので、親としては「よくやったね、えらいね」と思っています。親自身はその歳の時にはとてもできないことでしたから。
Kaienは遊園地
Kaienはいろんな可能性を形にしてくれます。どんどん行動に移す鈴木さんと皆が二人三脚している感覚。お任せじゃなくて一緒に歩んで、日々変化して、それが面白い。
そんなわけで私にとって、Kaienは遊園地(笑)。就労とか発達障害とか、テーマは重いじゃないですか。でも鈴木さんはそういう感じを漂わせない。「この人きっと何かしてくれるだろう」と思わせてくれる人です。
ガクプロの内定コースができたときもそう。就職が決まったけど、ガクプロ続けたいと鈴木さんに相談したら2日後くらいに、「使い放題で末広がりの、おめでとう8,888円!」というお得な新コースが(笑)。これに振り替えて就職後も毎週土曜に通っています。飲み会まで参加して、すごく楽しいみたい。
ガクプロに入るときは「学生の中で話合わないだろうな」とかわいそうだったんですが、皆と仲良くしています。Kaienは、19歳の彼にとっても遊園地なんです。すぐに新しいアトラクションを作ってくれるし、乗りたくなかったら乗らなくても大丈夫。彼はいま、19歳の青春を味わっているんです。
(取材 2015年12月)
Iさん: 19歳・男性のガクプロ生の母。ご子息が高校2年生のときにTEENSに通い始め、ガクプロを経て大手企業に障害者枠で就職。