「自分にウソをつかない働き方」を知ろう 〜はじめて学ぶNPO・ソーシャル企業の仕事〜認定NPO法人Teach For Japan・株式会社Kaien 共催イベント 開催前インタビュー
公立学校への教師派遣を行うTeach For Japanと発達障害のある人の就職支援を行うKaienがトークイベントを開催します。日時は2017年3月24日(金) 19:30から 会場は東京・港区の日本財団ビルです。テーマは「自分にウソをつかない働き方」。NPOやソーシャル企業に興味のある方やキャリアを考えている方向けに、社会課題と向き合う働き方をお伝えします。
イベント開催を前に総合司会のTeach For Japan代表理事の松田悠介さんと、当社代表取締役の鈴木にインタビューを行いました。イベント概要・お申込み方法も本ページ下部に記載されています。皆様のお越しを心よりお待ちしています。
インタビュー
ご経歴を教えてください。
松田: 2006年に日本大学を卒業し、中学校と高校で体育教師として勤務しました。そこでは、英語の先生と協力して、体育の授業中に英語を使う”スポーツ・イングリッシュ”の授業を展開するなどして、とてもやりがいのある毎日を過ごしていました。ただ、実際に教育現場の内側で活動する中で、さまざまな課題にも直面しました。その課題に向かい合う中で、一度、学校現場を離れて考えを深める必要があると考えるようになり、千葉県市川市教育委員会で分析官として活動させていただくことになりました。
その後、システムを動かしていくには時間がかかりそうだと思い、まずは自分が思い描く理想の学校をつくりたいという思いが強くなってきたことから、ハーバード教育大学院へ進学し教育リーダーシップの勉強をしました。留学中にTeach For Americaと出会い、非常に感銘を受けました。その後、一度、外資系のコンサルティングファームPricewaterhouseCoopersにて人材戦略に携わった後に、2010年にLearning for All という組織を立ち上げ、2012年に本格的にTeach For Japanの活動をスタートさせました。
鈴木: 東京大学経済学部卒業後、NHKアナウンサーとして鹿児島、仙台で働きました。6年間いましたが、自分はあまりアナウンサーに向いていないと。NHKの文化にもフィットしなくて。それなりに仕事が面白くなった時期もありましたが、先を考えると、アナウンサーは自分の能力を活かす職業では無いと感じたんです。
「もっと何かできることがあるのでは」と、退職してMBA取得のために留学することに。学生時代に、MBAを取得された方と授業で接する機会があって。面白そうだと思っていて。2007年にノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院に留学しました。渡米直前に長男が発達障害と診断されたこともあって、MBAでは発達障害の能力を活かしたビジネスモデルを研究することに。帰国後の2009年にKaienを設立しました。
なぜNPOやソーシャル企業を設立しようと思われたのでしょう。
松田: Teach For Japanを立ち上げようと思ったきっかけは2つあります。 1つは、中学時代の恩師・松野先生の出会いです。 中学校の頃、体が小さかっただけでなく、気も弱く、いじめられっ子でした。しかし、その状況を変えてくれたのが松野先生でした。先生は、「どうすれば強くなれるか一緒に考えよう」そう言って一緒に悩んでくれました。その後、先生は常に半歩先を照らしながら、伴走してくれて。結果的に、イジメを乗り越えることができ、厳しい学校生活を乗り越えることができました。その頃から、一人の教師が真剣に向き合うことで、人生が変わり得ることを実感し、自分がこのような教師になりたいと思うと同時に、一人でも多く、松野先生のような情熱を持った先生たちを増やしたいと思うようになりました。
もう1つは、ハーバードの大学院に留学中で出会ったTeach For Americaの存在です。Teach For Americaは教育格差の進む貧困地域や教育課題が山積している米国内の学校に、米国内の優秀な学部卒業生及び社会人を採用・育成し、二年間常勤講師として派遣させるプログラムを展開しています。二年後、プログラム卒業生は、様々な分野のリーダーとして活躍し、社会全体を巻き込みながら教育課題の解決に取り組み続けます。 この事業モデルが素晴らしいだけではありません。実際に学校で活躍している教師たちもきわめて優秀です。2010年の文系学生の就職ランキングでアップルやグーグルを抜いて一位になるなど、本当に優秀な人材が集まっているのです。現場に何度も足を運びましたが、そしてそういった人材が自分の目の前の子どもに徹底的に、真剣に、情熱を持って向き合っていました。彼らと会っているうちに、このモデルが日本にも浸透すれば、きっと日本にも大きなインパクトをもたらすことを確信し、日本でこのモデルを実現しようと決意しました。
鈴木: 元々起業しようとは全く思っていなかった。それでもしたのは「息子が発達障害と診断された」「起業精神が旺盛なアメリカのビジネススクールで学べた」「スペシャリスタナというデンマークの企業を発見できた」という3つの出来事が重なったからです。
渡米の2日前に当時3歳だった息子が自閉症と診断された時は、もの凄くショックで。フライトまでの数10時間の間、本当に留学してもよいのだろうか、と悩みました。でも急いで再就職するよりも、2年間時間を費やして勉強してから就職先を探した方が結果的に子どものためになるだろうと考え。アメリカに行くことにしました。
アメリカでは自閉症の理解がもの凄く進んでいた。自閉症の方の団体が、世の中を啓蒙している。それに比べると日本は自閉症に対する理解がまだまだ低くて。自分の子どものポテンシャルが、偏見で低く見られてしまうのは嫌だなぁと。ずっと不安でした。
最初の一年間は、日本でも同じようなことをできないかなぁと漠然と考えていました。そんな時に「スペシャリスタナ」というデンマークの企業を知って。発達障害の人を雇用して成果を上げているらしいと。他の職場では短所とみられがちな発達障害の特性を、企業の強みに変えている。しかも収益をあげていると。自分の興味・関心にドンピシャで。幸いプランに興味を持ってくれた友人も複数いた。「同じビジネスを日本でも展開できないか」と、彼らと協力してビジネスモデルを書いてみることになりました。
アメリカでは、新しいことをやる人をとにかく応援するんです。当時書いたビジネスモデルは、今考えたらボロボロでした。でも周りがすごく後押しをしてくれて。あれよあれよという間に、アメリカのビジネスコンペティションにチームで出場して優勝。帰国後にビジネススクールの学長に応援されたこともあって、Kaienを立ち上げて事業を開始しました。
「自分にウソをつかない働き方」についてどう思われますか?
松田: 自分にウソをつき続けるのって、辛いですよね。でも多くの方は「自分のやりたいことが明確になっていない」と思い込んでいるので、「仕方がない」と思って、目の前の事に背一杯になっているケースが多いように感じます。でも「やりたいことがない」わけではないと思うんですよね。最初は思い描いていた夢があったんです。人によってはその夢を持っていたのが、小学生の頃にさかのぼるかもしれない。でもそういった尊い夢を持った時に、周りの大人たちが「現実を見なさい」とか「できっこない」と言って、チャレンジせずに夢が終わってしまった経験を持っている人は少なくないように感じます。私は、その息苦しさをどうにかしたいと思っています。子どもから大人まで、自分らしく、生きられる社会を創っていきたいです。早い段階から始めていくことが大切で、教育が持っている力に大きな可能性を感じています。私は、子ども達が生まれた環境に関わらず、教育の力で自分で道を切り拓けるようにしていくという人生の目的を持っており、自分に対してウソをつかずに自分らしく生きることが教育に携わる者としてとても大切な事だと思っています。
鈴木: 20代前半で仕事を選ぶ時は、人の声を意識する人が多いだろうと思います。親の声とか先生の声とか。周囲の価値観に縛られてしまう。働き始めると、益々心の声を聞かなくなりがちです。上司や同僚の声にどうしても巻かれちゃう。それは怖いことだと思います。何か光っているなという人はもっと単純な心の声を聴いて動いている。
スティーブ・ジョブズのスピーチで、毎朝鏡の前に立ち、「今日自分がやることは、自分が本当にやりたいだろうか」と自分に尋ねるという話があるんですが。NOが続くようなら、現状を変えなければならないと。勿論あれだけ優秀な人だからできることだとも言えるけれど、逆に言うとそれだけ優秀な人でも、そういうことをしていないと心の声を聞けなくなってしまうとも言える。自分の心の声を聴く癖をつけることが大事だと思います。
NPOやソーシャル企業で働くことを考えている方に一言
鈴木: キャリアというのは、今後ますます大学までで学んだ力でそのまま滑っていけるようなものではなくなっていくでしょう。常識がどんどん変わって、求められるスキルセットも変わっていくので。常に自己投資しなければならない。「NPOやソーシャル企業に入る」と考えるよりも、今の時点でそこで働くことでレベルアップできると思うなら、選択肢として考えるのはありという感じでしょうか。
もう一つは、「NPOやソーシャル企業で働きたい人」は「良いことをやりたい、良い人になりたい人」が多いだろうと思います。でも、NPOやソーシャル企業が本当に今良いことをやれているかというと分からないと思うんです。なので、入って幻滅するなということですかね。幻滅する暇があったら自分の理想にその組織を近づけるために動いた方がいいんじゃないと。
コーティングはきれいになってるけど、現実はそれほど変わっているわけではないので。特に課題解決型の組織だったら、その組織が存在するのは、課題がまだ解決できてないということなわけで。中途半端な状況のところに入っていくことになるので幻滅することもあるだろうけど、そこで終わってはだめということですね。
松田: アメリカでは一般的ですが、これからは日本でも、やりがいや自己成長を求めてNPOやソーシャル企業で働く人が増えていくと思います。「お金」でなく、やりがいを重視して、ヒト・モノ・時間全てのリソースが不足する組織の中でどう効率を高めていくか。そんな体験が成長を加速させます。将来のキャリアを迷われている方はぜひ3月24日(金)「自分にウソをつかない働き方」に遊びにきてください。きっと私の考えや、日本財団・青柳さん、Kaien鈴木さんの考えから学びが多い時間になると思います。
イベント概要
Facebookイベントページでもご確認頂けます。
- 日時:2017年3月24日(金) 19:30〜21:30 (受付開始19:00)
- 場所:日本財団ビル 〒107−8404 東京都港区赤坂1丁目2番2号日本財団ビル (溜池山王、国会議事堂、虎ノ門駅等から徒歩約5分)
- 参加費:無料
- 定員:120名
- 主催:認定NPO法人Teach For Japan 株式会社Kaien
- 協力:公益財団法人日本財団
お申し込みフォーム
イベント詳細
- 総合司会: 松田悠介(Teach For Japan)
- 内容: 3団体からのプレゼンテーション&会場の皆様とのセッション
※会場の皆さんからSNSを使用し、リアルタイムでご質問をいただき、総合司会・松田のファシリテーションのもと登壇者や会場の皆様と対話形式でインタラクティブに楽しめればと考えています。 - プレゼンテーション内容:
日本財団 青柳様「社会課題を知って自分ごとにしよう」(仮)
Teach For Japan 松田悠介「自分らしい働き方をみつける」(仮)
Kaien 鈴木慶太「自分にウソをつかない働き方」(仮)
登壇団体・企業の紹介
- 公益財団法人 日本財団
「ソーシャルイノベーション」のハブとなり、パラリンピック支援、ハンセン病に対する差別撤廃、子どもの貧困の問題の解決、など、よりよい社会づくりを目指しています。あらゆる人や組織をつなぎ「みんながみんなを支える社会」を実現するために、様々なプロジェクト、助成、支援活動を行なっています。http://www.nippon-foundation.or.jp/ - 認定NPO法人Teach For Japan
独自に採用した人材に研修を行った上で、2年間、公立学校の教師として赴任させるフェローシップ・プログラムを運営。教師は子どもたちの人生に大きな影響を与えうる存在であり、教室こそがより多くの子どもたちに出会える場所であると捉え、さまざまな教育課題を、教師一人ひとりの手で、ほかでもない「教室」から解決していこうと考えています。 http://teachforjapan.org/ - 株式会社Kaien
Kaienは発達障害(広汎性発達障害、ADHD、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群等)の方が強み・特性を活かした仕事に就く事を応援する就労支援事業と、発達障害のある小中高生向けの放課後等デイサービス事業を行っています。 https://corp.kaien-lab.com/