Kaienの文化と社風 Q&A②鼎談『社員番号1・2・3で振り返るKaien7年史』 第4回
当社の想いや現場での働き甲斐をお伝えする『懸け橋』。5回シリーズで、社長であり社員番号1番の鈴木、2番の田中正枝、昨年末に取締役・執行役員に就任した3番の須賀智美の鼎談をお送りします。
これまで管理職がいない、完全にフラットな組織であったKaienも、スタッフが150人を超え、約700人の利用者に日々サービスを提供する規模の会社になっています。更なる成長を見越し、社長に指示系統が集中する状態から、社員一人一人がより力を発揮しやすい強固な組織作りをしている最中です。
初期から在籍するメンバーが、今までどう働き、今後を見据えているか。第4回は前回からの続きで、社長からの○×クイズでKaien文化を探ります。
本当に発達障害の強みを活かしているか?
鈴木: 次は、発達障害の強みを活かした支援に本当になっているかどうか?
(札を上げる 須賀=〇 田中=〇)
鈴木: なっている?僕はまだ数パーセントだと思っているんです。お二人とも悩んで札を出したけれどどうですか?
須賀: 凸凹が原因で起きる不都合をなるべく減らそうとはしていると思いますけれど。特性があるから配慮してくださいではなくて、特性はあって配慮も必要だけど、自分ではこういう対策をしているので、ここまでは大丈夫ですと言えるくらいの自己理解と対策を武器にしている。
鈴木: でもそれは、マイナス部分である弱みをなるべく見せないようにするという風に聞こえますね。
須賀: あ、そうですね。
鈴木: 発達障害の強みを活かすと書いていながら、「本当に活かせているの?」というのは常に命題として意識していて。Kaienの支援はどこまでできているのかなという気がしちゃうんだよね。
田中: 強みを活かした支援というのはどんなものだと思いますか?
鈴木: 僕の定義を言うと、さっきの話(注:第2回 支援者と利用者は同じ船に乗っている)のように、多くの場合、発達障害の当事者と支援者は分けて考えられる。そうじゃなくてまず彼らを一人の人間として認めることが、その人の個性や得意を活かすための前提となる。だから、まずは「受け入れる」ことが「強みを活かす」ということ。人間として平場に立つというか。
発達障害の人と接する時に、いわゆる健常者と接する時と違うアプローチをするかというと、全く一緒。もちろん一人一人に合わせて変えるけれど、そこに何か違うツールを持ち込むことは絶対ないですよ。そういう接し方が強みを活かすというか。それによって、一人の人間として認められている感覚になるというのがベースにまずある。
次に、発達障害の人の強みって、「カレンダーを覚えられる」「プログラミングが強い」とか、そういうハードスキルじゃないんですよ。彼らの強みは、Kaienの社風にすごく近いと思うんですけれど、「手を抜かない」「嘘をつかない」「本物を売りたい」「人に貢献したい」といった根っこの部分が強みなので、それを活かすのが発達障害の支援だと思っています。ADHDの人だと「発想が豊か」「視点がユニーク」とか、ASDの人は「安定を求める」とかもあるんですけれど。
須賀: Kaienでよく言う、「強みと弱みは表裏一体」というところに通じますね。きまじめで融通が利かないけど、手を抜かないし、嘘はつかないという。そういう意味での強みを活かすはできていると思います。でも、世の中はハードスキルを強みとして求めるんですよね。
鈴木: 求める。それもあって、僕も創業前後に書いたメッセージでは、発達障害の強みを活かすというのをその文脈で書いていたんですよ。でも今は、まずインクルーシブというか、受け止めるということが強みを支援することと考えています。あとは、その人の価値基準・人間性の部分が強みという理解です。そういう意味では〇。でもハードスキルの側面で、発達障害的な強みを活かせているかと言われると×です。
ワンマンか?
鈴木: Kaienはワンマン企業・ワンマン社長の会社か?〇か×か?
田中: えー、難しい…。
須賀: 実は私はあまりワンマンだと思っていないんだよね。
田中: 私も。
(札を上げる 須賀=× 田中=×)
鈴木: それじゃ話にならない(笑)。
(田中=〇×へ)
鈴木: 田中さんは△ということで。じゃあまず須賀さん。
須賀: もちろん、これまでは超フラットな組織で、鈴木さん一人だけがトップですけどね。
鈴木: 大株主で、創業者。かつ代表取締役で社長と。全部を握っている。
須賀: ワンマン社長って、私の勝手なイメージでは、社長だけが元気という会社。Kaienは全然違うじゃないですか。社長だけが元気で、皆がしらけてる感じではない。
鈴木: でもワンマン批判は常にあると思うですけれどもね。
田中: 一見すると鈴木さんは横暴に見える時もある。
鈴木: 横暴!
一同: 笑
田中: ワンマンか。横暴ではない…。
鈴木: 横暴という言葉を使ったのなら、横暴なのだと思います(笑)。
田中: 私の辞書が間違えていたということで…。色々お考えの上でそうなっているというのが良く見ているとあったりして、純粋なワンマン、独裁ではない気がします。
須賀: ワンマンの言葉の意味も人それぞれな気がしますが、超フラットといいつつ、何が鈴木さんが決めることで何が自分に任されているのかが分からないと思うことはありました。よくあるパターンは、自分で決めていいと思っていたら、「決めるのは鈴木です」と言われたことですかね、私の場合。
鈴木: 元々僕は引っ込み思案だから、会社を興した時に、先輩から「自分勝手にやったほうが良い」というアドバイスを受けたというのがあって。社長になるには、性格を変えないといけないかなと思った。それが社長なのかと思ってやってきた。それと、ちゅるさんが言っていた通り(注:Kaien共同創業者 対談シリーズ 第3回 フラットな組織原理主義)、この原理で行けば成功するという思い込みが結構強いから、それを突き進むという意味ではワンマンかもしれないですけれどもね。
会社が小さいうちは、いかに迅速に意思決定できるかが結構重要なんだよね。なので、ある程度すべての権限が自分にあったほうが良いかなぁと思っていたのは事実ですね。ただそういうやり方だと、大きくなった時に現場の細かい声が無視される可能性が強くなってきたので、今後は組織にしていくんですけれども。
須賀: それはいろんな場面で実感していました。超フラットであることのメリットがずっと大きくてここまで来たけど、ここのところメリットとデメリットがどっこいどっこい、働きやすさを考えればデメリットが増えているのだろうなと。
鈴木: あとさ、例えば孫正義さんが独裁だとか言われるけれど、独裁は独裁でもいい独裁だったら良いと誰かが言っていて。皆が納得する答えをいつも出してくれたら、それは独裁でもよいんですよ。
田中・須賀: うん。
田中: 少し前にサンテグジュペリの「夜間飛行」という物語を読んだのですが、主人公がまさにそんなイメージのリーダーです。
鈴木: 今までは、それになろうと思っていた。自分の価値基準、感情だけで意思決定するんじゃなくて、会社としての価値基準で、社員が納得することを上の人が言ってあげるというのは考えています。
ただ、それも会社が大きくなると上手に機能しない。少なくとも孫さんぐらいの影響力があるパワフルな人だったらあれだけのことを上手にまとめられるけれど、僕は社員が100人ぐらいの段階で、一人でまとめていくのはちょっと難しいと思った。だから、あとは組織化することで細かい声を拾えるようにして、現場で細かい意思決定をできるようにすることにした。それなりにビジネスモデルの形ができて、Kaienの強みができてきているから。あとは、現場を信じて現場が意思決定をする。
須賀: どんなに優秀でもどんなに効率化しても、一人の人間ができることには限界があるから。1を10にすることと10を100にすることはやはり違くて、Kaienも10を100にするために組織化するタイミングなんだよねと強く思います。同じことができる人も早く増やしていかなきゃいけない。
鈴木: じゃあ僕はこれから何をするのかというと、もっと長いスパンの意思決定をしないといけないと思っていますね。今まで、利用者にどういうメールを書くかというところまで意思決定していたから。それはちょっとやりすぎだったと思う。
鈴木: 以上で〇×クイズは終わりですけれども何か感想は?
須賀: 今のワンマンの話を聞いていて思ったのは、経営者の孤独。これまで、鈴木さんを見ていて、今葛藤しているんだろうなと感じながら、いい意味で付き合えている部分もあれば、悪い意味でひいちゃっている部分もあった。これからは自分もそういう葛藤を正面から引き受けていく立場だし、そうやって会社も自分も成長していこうと覚悟をしているところです。
鈴木: まあ常に怖いですからね。怖さを感じない経営者というのは僕は信じられないです。僕が毎朝起きてやることは、利用説明会にちゃんと申込みがあるかなってチェックすること。今までは、それくらい細かく見て意思決定しないといけないという責任感があった。けれどそれで弊害も起きているので、何回も繰り返しますけれども、現場に任せて自分はもう少し大きな舵を取るので良いのかなと思います。
鼎談『社員番号1・2・3で振り返るKaien7年史』
- 第1回 嘘は売りたくない
- 第2回 支援者と利用者は同じ船に乗っている
- 第3回 Kaienの文化と社風 Q&A①
- 第4回 Kaienの文化と社風 Q&A②
- 第5回 明日の当たり前を創る
田中正枝
Kaienの社員番号2番であり総務所属。県税事務所、メーカーでの勤務を経て、損保系会社の人事事務に。2010年にパートタイムとしてKaienに入社。翌年からフルタイムとして勤務。
須賀智美
Kaienの社員番号3番であり取締役・執行役員(経営本部担当)。大学卒業後、13年間鉄道会社に勤務。退職後、上智社会福祉専門学校、慶應義塾大学大学院へ。2010年、大学院在学中にパートタイムとしてKaienに入社。2012年、大学院修了と同時にフルタイムとして勤務。