利用者支援とスタッフ支援の違い発達障害支援企業の管理職とは 第2回
当社の想いや現場での働き甲斐をお伝えする『懸け橋』。4回シリーズで昨年末にエリアマネージャーに就任したメンバーの対談をお送りしています。今回は2回目です。
これまで管理職をおかずフラットな組織であったKaienも、スタッフが150人を超え、約700人の利用者に日々サービスを提供する規模の会社になっています。更なる成長を見越し、昨年末に、社長に指示系統が集中する状態からエリアごとにマネージャーを置く組織体制となりました。
これまでになかった新しい役職に就任し、社員一人一人がより力を発揮しやすい組織のあり方を模索し続けているエリアマネージャーに、新体制での試行錯誤に焦点を当てながら、当社で働くとは?を考えます。
現場とマネージャー業のバランス
大野)これまでの流れをぶったぎっちゃう感じだけれど、大橋さんとか、すごく現場が好きで、子どもと一緒にいたいっていう感じで入社をして、傍から見ていても現場で面白そうにしてるなぁっていう風に見えるんだけど、それで今エリアマネージャーとかって不本意じゃない?
一同)笑
大野)「え~?現場遠いじゃん」みたいな。子どもとの距離が遠くなったみたいな。そういうのは感じないの?
大橋)確かにそうですね。それはやっぱりありますね。
大野)僕もAM(注:エリアマネージャーの略称)になる時に、それを鈴木さん(注:当社代表鈴木のこと)に聞かれた。皆は聞かれなかった?
穂刈)聞かれました。そもそも現場が好きな人たちが集まっていて、現場を嫌いな人がいないんじゃないかっていうところはありますよね。今は会社の体制が変わって、現場をそこそこ離れる人も出てきたじゃないですか。私は現場がゼロじゃないので、そこがあるからすごく楽しくってエリアマネージャーもやって来られていると感じています。
大野)ゼロになってくることがもしあったら、それは不安?
穂刈)なってみないと分かんないと思っています。エリアマネージャーになると管理のところが出てくると思うんですよね。それで結果的にお子さんが喜んでくれるっていうのであれば満足するのかもしれないし、直接支援しないと満足できない自分がいるかもしれない。ちょっとそこは想像がつかなくって。「なってみないと分からないです」って鈴木さんにも言いました。
大橋)確かにそうですね。自分も週1か週2くらいは現場に入っているので、そこでの楽しみっていうのは感じられています。
穂刈)今、現場に入るのがゼロの人いらっしゃいますか?
大野)ゼロの人はいないよね。
住岡)僕は、現場で一番楽しいのはどこかなっていう話にすぐ入っちゃって。それが僕の場合はガクプロ(注:当社の大学生向けプログラム)だったんですよ。だからそこが無くならなければいいかなみたいな話をしていました。今は結局やってないんですけれど(笑)。そこの空虚さというか心のぽっかり感はありますけどね。
大野)水口さんは現場の仕事に戻ってくると生き生きしてる感じですよね。
水口)現場にいる間は楽しいし、戦力になってる感覚がすごく強いから。感謝もされるし。それは生き生きするわけですよ。でも終わってみて、夕方5~6時くらいになって、「あっ、この役割は本来は自分のではない、こういうつもりではないはずだ」と気づき。葛藤の中で考えはじめ、AMっぽい仕事を始める。なんか数字見てみたりなんか。
一同)笑
水口)取ってつけたようなAM業を始めて。自分がどうなっちゃったんだろうみたいな。分からないですね、カオスですね。
大橋)でもその気持ちすごいわかりますね。現場業務に関わってた方が、目に見えて「貢献したな」っていうのが自分も感じられるし、周りにもそれが伝わる気がするので。結局楽な方に逃げちゃってる部分があるのかなという気はしますね。現場に入るのが少なくなって寂しさもあるんですけど、その分逆に、現場に入った時の楽しみみたいなものがより感じられるようになったなと思いました。
穂刈)あ~、それはすごくあります。一回一回の現場をすごく大切にしようっていうのはすごく思いますよね。
大橋)大野さんは入社してすぐに入社時に思い描いていたことが叶ってるっていうことなんですけど、逆に「今後さらにこうしていきたい」みたいなものは何かありますか?
大野)さっきの質問に戻る感じになりますけど、僕は「現場離れることについての不全感みたいなのはないですか?」みたいなのは、変な話、すげ変わってるんですよね。というのも、利用説明会で利用者の方に話をする機会があるんですけれど、以前になんだか自分の言葉で話せてないなって感じていた時期があったんです。その時に、じゃあ僕自身の想いと会社のメッセージとが重なることの内、自分が伝えたい、僕のオリジナルと言えるメッセージって何かなと考えると、「仕事って面白い」ということなんですよ。支援を通しても、僕が利用者の方に何を伝えたいかというと、「仕事って本当は面白いんだよ」ってことをずっと伝えたくて。実際、就職後の元訓練生が楽しそうにしているのを見るのが僕の一番の幸せで。
穂刈)就労支援は、就職した後の訓練生の様子も見られますもんね。
大野)それが僕の仕事の柱だとすれば、接する対象は別に利用者にこだわらなくてもよくなっています。一緒に働いてる人たちがより楽しく仕事をする。楽しくといっても、日々へらへら面白いとかではなくて、自分が持っている力を仕事で発揮して、それに対してフィードバックを得られることだったりするじゃないですか。そういうものを作っていくっていうことが、自分の仕事の柱としてカチッとはまったので、AM業をやることについては何の違和感もないですね。自分の自己実現とかやりたいことの度合の増減みたいなのは全然なかったです。
相談にのることの難しさ
大野) 次に行きます?
穂刈)(紙をめくる)「AMになってしんどいことは?」
一同)笑
穂刈)これはきっと大橋さんの書いた質問ですね(笑)。しんどいこと?そうですねぇ。やっぱり見る範囲が広くなったので、単純に情報量が多くなりましたよね。あとは、何か起こった時にすぐ対応しなくちゃって思うので、自分の仕事を予定していた所にいきなりポンって入ってきて、急にそっちに時間を取られて予定通り進まなくなっちゃうっていうところは、まぁしんどいことはあるかなぁとは思います。
大野)単純に責任が多くなって。責任を取る範囲が広くなったから大変っていうこと?
穂刈)う~ん。今までやったことないことなので、新しいことはそこそこしんどいですね。あとこれはうまく話せるかどうか分からないですけれど、仕事で疲れてるとか負担を感じている人がいると、私は結構感情が引きずられるタイプなので。
一同)あぁ。
穂刈)本当はもっとポジティブに持って行かなきゃいけないんだろうなと思うんですけど。すごい引きづられちゃいます。一緒に暗くなっちゃうみたいな。そこがしんどいかなあ。まだポジティブに持っていくことが出来ていません。
大橋)皆さんお分かりの通り、このテーマは自分が書いたんですけど。私も穂刈さんが話したことに近い部分でしんどさを感じます。自分も「いやぁ、今しんどいですよ~、大橋さ~ん」とか言われると、「ですよねぇ」「分かりますよ」みたいな感じにどうしてもなっちゃいます。そこを「何がしんどいですか?」とか、「どうしたら解決出来ますか?」「じゃあこういう風に解決していきましょう」っていう風にしていくのが、きっとAMの役割なんだと思うんですけど。自分はそこが苦手というか、あんまり上手く出来ていないので。そこがしんどいと感じていることの一番大きな部分かもしれないなと思いますね。普通に話したりやり取りしたり、日常のコミュニケーションみたいなのは好きなんですけど、その人の大変さを取り除いてあげるとか、その人にとってのプラスとか価値とか成長を作ってあげるみたいなものはできていないです。
水口)でも、普段の仕事では、大勢の利用者の方と向き合ってるわけじゃないですか。
大橋)あぁ。
水口)それとメンバーと向き合うとは違うんですかね。
大橋)ん~。
水口)その違いてなんだろうね。
大橋)何なんでしょう。
水口)真剣に向き合う人が20人だったのが30人になりましたって話じゃないですか。そういうボリュームみたいなものだけでなく、質的に違うのかな。
大橋)どこまで質の高いことをやれてるかは置いといて、お子さんが相手だと自然とできる感じがあります。何となく経験を元にした余裕を持ってやり取りができるし、自然に「こうしたらいいんじゃない?ああしたらいいんじゃない?」って提案できるんですけど。対スタッフ、対大人になるとそこが上手く出来ないなぁっていうのを感じますね。
大野)立場の違いなんじゃないの?就労移行支援に来る人たちも、同じ土俵で走っている職業人というのは僕も同じだけれども、経験的には長く僕の方が走っている。少し先を走っているランナーだなって思えるけど。でも一緒に働いている、僕よりも支援力がものすごく高い人たちがいっぱいいる中で、その人をよりアクティベートとかね。それこそおこがましい。
穂刈)あ~、本当にそうです。おこがましい。
大橋)そうなんですよ。
大野)そこの自信のなさですよね。
大橋)そう、まさにその通りです。
水口)あとは、リソースに制約があったりとか、事業とか収益とかエリアの運営だとか、人だけを見ていればいいわけではないと感じる部分も僕の中ではありますね。一方で人をアクティベートしながら、他方で仕事のことも一緒に考えないとならないので、人だけを見てればいいっていう話でもないのかなというのが出てきちゃうのかな。本来は人をアクティベートすれば仕事は上手く進むはずなんだけど、そこに行きついてないって感じがする。
大橋)あぁ。確かに。
話を聞けば50%は解決する
大野)でも、メンバーに対して「こうあらねばならない」みたいな形は別になくて、その辺りはスミ(注:住岡のこと)とかすごく上手だよね。なんならメンバーよりも一段、二段くらい低い所からAMやってるじゃん。
住岡)そうですね。話を聞いたことに対して、「自分が解決しなきゃ」っていう気持ちを持ってても何もできないのかもっていうことに少し前に気づけたので。でも、話を聞いて行く内に解決することがほとんどだなということも最近は感じています。
穂刈)別の会議の時にも言っていましたね。「話を聞けば50%は解決する」って。
住岡)そういう個々の解決できる力に任せる。自分はしっかり聞き役としての役割を果たすことを意識すれば、多くの場合は問題が解決するのかな感じています。でも今後それでは上手くいかないことに直面するはずで、その時にどうするかは課題だと思いますけど。
大野)スミはNJ(注:Kaien新宿拠点の略称)の弟だもんね。
穂刈)キャラ的にね。
大野)それは羨ましいよ。
穂刈)私も上手くいかないことはたくさんあるんですけど、でも昨日言ってもらえて嬉しかったこととして、「その時は(私の相談に)答えられなくても、穂刈さんがすぐ反応してくれるのでそれで満足する部分もすごくあります」というのがあって。それぐらいで良いんだなっていうのはすごく思いました。よく分かんないけど取りあえず相手の話を聞きに行って、私は何も答えられないのでただのはけ口ですけど、相手からするとそこで安心感があるって言われて、「あぁ、それで良いんだ」って思えたことはあります。
大橋)今日の午前のミーティングでも話が挙がりましたけれど、相手に関心をもって話を聞くとか、何も返してあげられないかもしれないけど、本気になって真摯に聞いてあげるんで良いんだよみたいな話を聞いて、自分もようやく楽になれたというか。今後もう少し楽にやっていけるかもしれないなって思えたところがありました。
水口)意識的に相手を動かそうとかしなくても、うまくいくっていうことがあり得るっていうか。
大橋)そうですね。そこを信じるっていうか。
仕事を楽しんでる人には着いていきたくなる
大野)だけどキャラ得かどうかっていう話でいうと、二人(注:大橋、穂刈を指す)ともキャラ得だと思いますよ。穂刈さんとかさぁ、いつもすごく一生懸命っていう感じがするじゃん。穂刈さんが一生懸命やるっていったら皆やるみたいな。そういうのはあるんじゃない?
水口)仕事を楽しんでる人にはついていきたくなるし、その人に話を聞いてもらえたら嬉しいっていうのはあると思うよね。「この人だったら共感してもらえる」、「この人だったら分かってもらえる」っていう信頼とかあるでしょう。そういう信頼関係は、キャラ得というか、仕事を楽しんでる人だからできるだと思います。
大野)それで言うと、水口さんは自分のキャラとの折り合いに苦しんでるって言ってたじゃないですか。
水口)う~ん。折り合いはかなり苦しんでますね。今まで自分が前に立ってガンガン仕事してたら何となく周囲から信用してもらえたということはあるけれど、立場が変わって自分が率先すればいいだけの世界じゃなくなった時に、どうすればいいんだっけと。自分の持ち味を活かして何かマネージングするとか、そういうのが全然確立されてない。接する相手が利用者の方ではなく社員になった時に、立場も違うし同じような手が使えるわけでもないので、そこは模索中ですね。Kaienに入ってきて、AMになるまでの7カ月ぐらい必死にやってきて、その中で「あっ、面白い!」って思い始めて、自分なりの支援のスタイルみたいなものが少しずつできてきたかなぁっていう時にAMになったので。そこも何か大事なものを置き去りにして走ってるみたいな感じもあったりします。
大野)ん~、まぁ水口さんが一番戦いの前提条件が一番苦しいよね。だって入社して7カ月で、支援面で掴めたものも自分の中でまだふわっとしている中で、落下傘的に自分の全く働いていなかった場所にポンって降りて行ってるんだから。それは苦しいよね。
水口)本当は人間力でカバーするわけですよ。どんな異分野の世界でも。「この人ちゃんとしてる」とか「この人だったら問題が解決するんじゃないか」とか。そういう関係性もまだまだ持てていないので。もうちょっと頑張らないといけないなと思います。
大野)ちゃんとしすぎてて、僕には恐れ多く感じます…(笑)。
発達障害支援企業の管理職とは 4回シリーズ
- 第1回 現場が好きでKaienに入った
- 第2回 利用者支援とスタッフ支援の違い
- 第3回 自分自身の凸凹との向き合い方
- 第4回 働く楽しさを伝播するには
大野 順平
就労支援事業・神奈川エリアマネージャー。人材派遣会社にて、法人営業・登録スタッフ管理等を約10年間担当。2014年、Kaienに入社。
穂刈 久美子
教育事業・神奈川エリアマネージャー。劇団四季にて、営業・公演企画・イベント運営等を4年間担当。2014年、Kaienに入社。
大橋 完司
教育事業・東京エリアマネージャー。中学受験の塾にて教室長を担当。2014年、Kaienに入社。
住岡 弘士
就労支援事業・西東京エリアマネージャー。大学の学生課で事務職員として勤務。2014年、Kaienに入社。
水口 大悟
就労支援事業・東東京エリアマネージャー。建設会社やインターネットプロバイダにて約10年間人事を担当後、不動産サイト運営会社の管理部門責任者に。2016年、Kaienに入社。