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発達障害愛発達障害オタクトーク ~放課後等デイ・TEENSの現状と今後~ 第1回

2017年3月13日

 当社の想いや現場での働き甲斐をお伝えする『懸け橋』。今回からは5回シリーズで、昨年末(2016年12月)に教育事業部の執行役員に就任した飯島さなえと、社長の鈴木の対談をお送りします。当社の小中高生向け事業である放課後等デイサービスTEENSに焦点を当てながら、当社で働くとは?発達障害とは?を考えます。

対談:鈴木慶太(代表取締役) × 飯島さなえ (執行役員 教育事業担当)

 

発達障害オタクトーク

鈴木)今日はなんで呼ばれたと思ってます?

飯島)鈴木さんに最初に言われたのは、「オタクトークをしましょう」と。「それはいいですね」みたいな。だからテーマとかはそんなに深く聞いてないですけど。

鈴木) 確かにオタクトークをするためになんだけどね。気をつけなきゃいけないのは、発達障害のことをからかってるって思われるかもしれないこと。そこが結構難しい。

飯島)あー、それは違いますね。

鈴木)違うでしょ?でも、そういう風に受け取る人は結構いると思うんです。

飯島)いますいます。だから「語弊が生じるかもしれませんけど」って、枕言葉のようによくつけますけど。私は、発達障害の人にものすごく敬意を持っています。

鈴木)『さんまのからくりテレビ』ってあなた知ってる?

飯島) 知ってます。あの『ご長寿早押しクイズ』のですよね?あれがなんですか?

鈴木)あれも、現場の人はご長寿の人を愛していると思うんだけど。見方によっては。

飯島)高齢者を馬鹿にしているってことですか。あー、なるほど。

鈴木)うん。若干。認知症があるのかなっていう人を、笑っているとかって捉えられる可能性がある。

飯島)でも、馬鹿にしてるわけじゃないってことは、発達障害のことを本当に好きじゃない人には、結局分からないだろうなと思います。

鈴木)うん。だけどやっぱり発達障害の子どもがいる親御さんとかも、「子どもに発達障害があって良かった」って本当の意味ではなかなか思えないというか。あるいは、発達障害を抜きにして子どものことを考えるのが難しくなっている人は結構いるから。

飯島)うーん。何をどういう風に気をつけていけばいいですかね。あんまり気をつけてしゃべれる気がしないので。上手く編集してほしいなと。確かに誤解を受けるだろうなっていう気持ちはあります。

鈴木)あるよね。

飯島)私が使った言葉を他のスタッフがそのまま使っている時に、場面によっては、「あ、なんかこれちょっと危険かな。誤解されないかな。」って思うこともあります。

鈴木)面接技法の中で「自己覚知」っていうキーワードがあって。つまり「自分がどういう風に他者から見られているのか」っていうのを知らないと、同じ言葉を使ったとしても、対面している人に対する響きが違うということね。その辺をちょっと気をつけて喋っていきましょう。

あなたはなぜTEENSへ?

鈴木)まず飯島さんが入社した時に、「なぜTEENSをいいと思ったか」とか。入った時の感想から聞こうかな。どのあたりが他と違うかと思ったかとか。

飯島)私はKaienに入社する前は、大人向けの生活介護で働いていたんですけど。自閉症の重度の方が集まっている施設で。やりがいはあったんですけど、やっぱり子どもが好きなので、「子どもが見たい」と思って。発達障害の子を専門に見ているところを探していて。Kaienともう1つ別のところを受けていたんです。でも、当時のTEENSってWEBサイトに「発達障害」という言葉を載せてなかったんですよね。「発達凸凹」って書いてて。

鈴木)うん。確かに。SEO対策としては最悪。

飯島)そう。だから探すのがすごく大変で。検索して検索してやっと見つけたっていう感じ。TEENSのサイトは埋もれていたので。Kaienを先に見つけて。そこから「あれ?子ども向けもあるみたい」という感じで。もう1社受けてた会社と比較すると、Kaienは「発達障害」とも書いてないし。なんですかね。「世の中に知らしめよう」ていう感じではなくって、「自分たちがいいと思うものを自分たちのできる範囲でコツコツやってます」っていうっていう印象を受けて。子どもが読んでも大丈夫な文章というか。あれはなんで「発達凸凹」という言葉で書いてたんですか?

鈴木)うーんと、何かを始める時は偏りがあった方がいい。メッセージがすごく強い方がいい。そうじゃないと際立たないし。そこは僕の中でのこだわりで。仰る通り、子どもが見ても大丈夫なようにというのもある。言葉狩りじゃないけど、「発達障害」という言葉を使わずに表現しようっていう取り組みは常にあって、その中の一環だね。でも個人的には発達障害を障害じゃないとはやっぱり言い切れないと思うんだよね。

飯島)あぁ、障害と思っている。

鈴木)なんて言うのかな。「障害」っていう言葉自体が悪じゃなくって。だって普通に「障害」って言葉を使うから。自分の障害もあるじゃない。飯島さんの障害も。

飯島)はい。あります。

鈴木)僕自身の障害も結構ある。「あの人、大丈夫なのかな?」と思われる部分もあったりするわけじゃない?

飯島)うん。別になんていうことはないというか。誰もが障害を持っている。

鈴木)そうそう。TEENSとかKaienに通っている人もいない人も、苦手さとか障害は普通にあると思うんですよね。ただ「発達障害」ってあまりにも使われ過ぎている言葉で、レッテルを貼られやすい。「そうじゃない、新しい視点で見ています」っていうメッセージを伝えるためには「発達障害」っていう言葉を使わない方が初めは良かった。

飯島)はい。

鈴木)で、ある程度、「自分たちはこういう風にやるんだ」「こういう風に接するんだ」っていうのが固まっていくと、使い古された言葉を使ってもメッセージが弱まらないって思うようになって来た。「ある程度固まってきた」というのは、自分たちの目線からの話だけど。

飯島)今は「発達障害」という言葉を使うように変わってたっていうことですよね。

鈴木)その通りです。

飯島)当時は、TEENSは新宿拠点しかなくてひっそりやっていたので、世に知らしめる必要もそんなになかった。口コミだけで常に満員になっていたので。だからなんて言うんですかね。アウトローというのかな。なんか尖っているなっていう。ウェルカムじゃないんですよね。採用のページとかも。

鈴木)あぁ、確かに。

飯島)応募したければどうぞみたいな感じで。フォームも応募しにくいフォームで。

鈴木)そんなことないよ。そこまで難しくしてない。

飯島)でも、「電話でもメールでも受け付けますよ」っていう感じでは全然なくって。その感じがかえって良かったですね。それで選んで決めました。あと、横浜に新拠点ができますよっていうタイミングでもあったんで、楽しそうだなって。

鈴木)あぁ、なるほどね。

飯島)それが二年半前です。

お仕事体験の衝撃

鈴木)入ってみた感想は?TEENSに対するものでも会社でもいいですけど。

飯島)会社に対しては、それまで社会福祉法人という超福祉畑にいたので。シュレッダーが1つ故障して、それを買い替えるにも書類を書かなきゃいけないんですよ。「これこれこういう理由でシュレッダーが壊れて、必要なので買ってください」って。そういう「効率」っていう言葉が皆無のスピード感のところで働いていたから、最初はついていくのが大変でした。情報量も違いますし。

鈴木)TEENSのサービスについては?今考えると、なんかもうボロボロだったよね。

飯島)一番最初に入ったのが学習支援で。

鈴木)うん。

飯島)なんかまぁ、普通だなと。

鈴木)うん。

飯島)ぐらいの感じでした。正直なところ。スタッフは一流な人がちらほらいて。その人たちが接している分には、子どもたちがすごく伸びてる感じもした。でも、全員が全員そのレベルを保ててるかというと。システムがちゃんとしてなかったので、そういう感じでは全然なかった。「まぁこんな感じか。ふーん。」っていうのが正直なところでした。でも、何日か後にお仕事体験に入って。これはびっくりした。今まで色んな療育とかプログラムを見てきましたけど、お仕事体験は一番すごいなって。

鈴木)飯島さんにとって、それまでの一番はTEACCH(注:アメリカ、ノースカロライナ州の州立機関であり、個々の自閉症者とその家族にさまざまなサービスを提供している。自閉症の人は発達が遅れていたり劣っていたりするのではなく、健常発達の人と比べた場合に発達の様相が異なっていて不均衡である、という基本視点を持つ。自閉症を治す教育や支援をするのではなく、自閉症児者が自閉症のままで自立して活動し社会との共生を目指す。)だと聞いたけど。

飯島)TEACCHは私の中で土台なので。TEACCHって、プログラムというか考え方とか理念なので。ABA(注:応用行動分析学と呼ばれる科学的なヒューマン・サービスの包括的な体系。子どもの行動を、環境との相互作用の枠組みで捉える理論のこと。)を応用した手法とか、ポーテージプログラムとか色々な理論・支援法があって。子どもたちの困り感に寄り添って対処療法的に対応したり、社会性を伸ばすSSTみたいなものとか。世の中に色々な理論があったけど、「働く」っていうところに主軸を置いて、何て言うのかな、きれいごとじゃなく、現実社会で生きていくための力をつけようっていうブレのなさに…。

鈴木)でも当時のお仕事体験は、今思うとまだ甘かったと思うけどね。

飯島)今思えばまだ全然なんですけど。

鈴木)ままごとに近かったよね。

飯島)でもシステムとして、「子どもたちに働くことを教えることで、生きる力をつけていくんだよ」っていう視点が、当時他にあったんですかね。少なくとも私は知らなくて。

鈴木)今も他にはないんじゃない。

飯島)いや、今はTEACCHとか。子どもの頃から就労を視野にいれて支援しましょう、っていうのに力を入れています。でもTEENSは世界的にも先駆けでしょうね。

仕事を通じてソーシャルスキルを学ぶ 

鈴木)自分の子どもが発達障害と診断された時に、僕が一番初めに気になったのが「働けるか」ということだった。というのも僕は若干「働くオタク」なんだよね。

飯島)確かにそうじゃないと、こういう仕事をできないですよね。

鈴木)うん。自分が働くことも好きだし、人が上手に働くことを望んでいる。サッカーを好きな人がサッカーを広めたいと思うのとほとんど一緒なんだよね。

飯島)カズみたいな。キングカズ。

鈴木)こんな面白いことあるのに、なんで皆つまらなそうにやっているのかなって。

飯島)でも、NHKで働いていた時は面白くなかったって言ってたじゃないですか。

鈴木)いや、働くことは好きだった。

飯島) 働くことは好き。

鈴木)働くことは常に好きで全力でやっていたけど、自分が上手に活かされていないっていう感じが常にあって。不全感というか。もうちょっと上手く働けるはずって思った。だから転職した。というかMBAに行ったんですけど。

飯島)あ、そうですね。

鈴木)だけど「こういう風にやれば上手に働けるのにな」というのが常にあったわけね。それは発達障害の人かどうかに関わらず、周囲にも押し付けで教えてますけど。あとはなんていうかな。どうして働くのが面白いかって言ったら、感謝されるからね。感謝されてないとお金ってもらえないはずだから。

飯島)確かに。そうですよね。

鈴木)うん。だから大きな意味でのrewardっていうの?報酬が受けられるのが仕事では面白い。だから僕は働くことが趣味なんだよね。

飯島)発達障害の人たちにとって、「報酬」っていうのはすごく大きいキーワードで。

鈴木)いや、どんな人でもそうでしょ。

飯島)まぁそうですけど。発達障害の人には特にそうかなって。なので、「働く」っていう枠組みの中で成長していくというプログラムにしたのは、すごく理に叶ってると思ったんです。

鈴木)お仕事体験というプログラムは、論理で考えていって積み上げた上での発想というよりは、たまたま親御さんと話していて浮かんだものなんだけどね。

飯島)そうなんですか。

鈴木)初めの内は、TEENSで何をすればいいのか分からなかった。何をしたら子どもたちが働けるようになるのかなって、すごく悩んでたわけ。

飯島)はぁ。

鈴木)ある時に親御さんと話していて、ちょっと待てよと。「Kaienにはもう就労支援のプログラムあるよね」と。「それを子どもにやればいいんじゃないの?」と思ったわけ。「ヘッドフェイクラーニング」って言ってるけど。

飯島)ヘッド…

鈴木)ヘッドフェイクラーニング(注:その体験に直接的に必要となる知識の習得を目的にするだけでなく、体験を通して得られるソフトスキルを学ぶことを目的とした学習方法のこと)。子どもたちは、「お仕事」っていうちょっと大人っぽい感覚で、大人の世界に半分足を突っ込んだような感じになる。だけど、実はそこで学んでいるのは仕事のノウハウというよりも、より広く、いわゆるソフトスキル・ソーシャルスキルというか。「チームワーク」「協調性」「役割分担」「コミュニケーション」とか。その辺を学ぶことができるよねと。

僕は子どもの頃、野球や音楽をやってて。その時に「プロ野球の選手になりたい」とか「プロのオーケストラで吹きたい」と思っていたかというと、思っていた時もあったかもしれないけど、基本的にはそうじゃない。ただ、そこから学んだことは多い。でも発達障害の子って、集団で何かをする場になかなか行けない。じゃあ、どうやったら、そういうチームワークを体験できる場を発達障害の子に与えられるかと考えると、仕事の現場ってまさにそういう場なので。だから仕事を面白く、楽しく体験できる場があればいいなっていう発想かな。TEENSのお仕事体験が生まれたのはね。

飯島)はい。

発達障害オタクトーク ~放課後等デイ・TEENSの現状と今後~

飯島さなえ

大学卒業後、成人の自閉・知的障害者の通所施設(生活介護・就労継続B型)で 3年間勤務。 2014年Kaienに入社。TEENS横浜・TEENS川崎で勤務後、2016年に執行役員(教育事業部)就任。

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