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息子に感謝することKaien共同創業者 対談シリーズ 第2回

2017年1月3日

 当社の想いや現場での働き甲斐をお伝えする『懸け橋』。前回からは5回シリーズでKaienの共同創業者であり、社外取締役である徐勝徹(ソ・スンチョル 通称ちゅるさん)と、社長の鈴木の対談をお送りしています。

 2009年に鈴木たった一人でスタートした当社も、今ではスタッフが150人を超える会社になりました。更なる成長を見越し、社長に指示系統が集中する状態から、社員一人一人がより力を発揮しやすい強固な組織作りをしている最中です。

 社外取締役として年に数回の会議・スタッフ合宿に参加する立場だった徐も、この半年は月の半分ほどの時間を当社の組織構築のために費やしています。共同創業者2人の対談を通じて、Kaienが生まれる前から今まで、どのようなことを考えて何をしてきたのか、これから何を目指していくのかを皆さんにお伝えできればと思います。

  第2回はKaienの経営方針などについてです。

まじめに働きたい人が働けるように

鈴木慶太(以下K): Kaienの目指すものは起業時から変わっていない。MBA時代に考えたビジネスモデルと、今のビジネスモデルを比べても、目指すものは基本的に一緒で。行きたいところへ別の角度からアプローチする感じ。

 あっ、でもちょっと変わってきた部分もあります。今は発達障害と言う単語にあんまりこだわりを感じていないかな。むしろまじめに働きたい人が働けるようサポートしたいというか。まじめに働きたい人って、社会貢献したい、かつ嘘をつかない人で、結局発達障害の傾向が強い人が多いという関連性がある感じで日々仕事をしています。

徐勝徹(以下C): 対象を広げることで、発達障害の人の就労に特化しているというKaienの特色が薄まらないかが少し気がかりだけど・・・。

K: 薄まるというのはたぶんなくって。発達障害というコアに取り組んでいくと、知的障害・精神障害・貧困層の人が見えてきて、その辺りに結構関心を抱くんだよね。発達障害が原点であることは変わらない。ただし、発達障害だけへのこだわりではなくなってきたという感じかな。

C: 発達障害に接点がないところまで手を広げるつもりはないけど、接点がある部分はやっていこうよということ?

K: そうだね。今のKaienのプログラムは発達障害の人にすごく響きやすい。例えば利用説明会の後、個別相談に来てもらえる割合はすごく高いし、体験セッションで満足度を調査するとすごく高い。なぜかっていうと発達障害の芯の部分にドンピシャで当てられているからだと思う。Kaienのプログラムの力と、発達障害の人の特性との二つが絡まないといけないと思うんだよね。だから発達障害と関連が薄い層に当社のサービスは響かせようにも今の段階では響かないだろうなと思っています。

全員向けのサービスは誰向けでもない

C: 慶太さんの一つの特徴でもあって、場合によっては弱点になりえるところが、言葉をすごく自分の言語感覚で話すんだよね。

K: コピーライターみたいなもの?

C: コピーライターって、特殊な言語感覚だけでなくそれを伝えたいという意志がセットにならないとコピーライターにならない。

K: OK…。じゃあ僕は残念ながら違うわけだ…。

C: 慶太さんは自分の腹にすとんと落ちる言葉だと、それが大好き。

K: はいはい。伝わろうが伝わるまいがね。

C: 伝わらなくてもその言葉を使いたいというこだわりが強いと思うんだよね。なんでこんな話をするかと言うと、ホームページや行動指針の文章も、僕が同じことを説明しようとしたらこうは言わないだろうなというのがいっぱい入っている。それは弱点でもあり特徴でもあって、Kaienのメッセージが発達障害の人に刺さりやすい理由はそこにもあるかも。誰にでも理解されるような言葉にしようとすると、万人に薄く伝わるかもしれないけど、コアに伝えたい人に刺さらないかもしれない。

 読んで癖があると感じたとしても、一般的な言葉じゃないから腹の底から出ている感じ。「これを伝えたい、これを言いたい」という思いが先にあって、言葉を探している感じがにじみ出ているんだよね。便利な言葉に飛びついている感じがしないのがKaienのメッセージのいいところだなと。

K: NHKで働いていた時は万人に伝わる表現をしないといけない。そこに気持ち悪さもあった。だけど、一度そこに染まってみると使える言語が広がることも感じて。だからNHKで勤務させてもらえたことに感謝はもちろんあります。うちのウェブサイトや僕の講演にしても、全部が全部こだわりの言葉ではないわけで。

C: そうだったら宇宙人語みたいななっちゃうからね(笑)。

K: ベーグルみたいに、基本はプレーンだけど時々ブルーベリーの味が効いている感じというか。

C: キーワード的なものがね。

K: 他にNHKで学んだのは、全員向けのサービスというのは誰向けでもないということ。NHKでは、マスに伝える方法をまず習うんですけど、その時に思ったのがターゲットを絞って伝えないと何も伝えたことにならないなって。実際、自分が作った番組で一番うまくいったのが、この人に伝えたいという人がいて、その人だけに向けて作った時で。実は1人向けの番組が他の大勢の人にも感動を呼んで、反響が大きかった。

 全体に向けて作ろうと思ってもダメ。マーケティング用語でいうと、ペルソナを作ってそこに届けようとすると響くみたいな。そこの原体験はNHK時代にある。Kaienの場合、取り組む分野が福祉の中でも発達障害だけ。しかも働くことに関係することだけというニッチの中のニッチ。だからこそ、とがった感を出したほうがいいかなというのはずっと思っていて、その信念は変わらないかな。

息子に感謝すること

K: 自分自身はどんどん変わってきているつもりなんだけど、ちゅるさんから見てどうでしょう?10年ぐらい前と比べて鈴木慶太は変わってきていますか?成長していますか?。

C: 自信はついてきているよね。特に発達障害に関する自信。慶太さん自身は経営には自信がないって言っているけど、発達障害に関する自信がコアになって、支えてくれているんだろうな。

K: 本当に運が良かったのは、発達障害のオタクになれたことだよね。つらいことやうまくいかない時もあるけど、基本的に発達障害のことをずーっと考えていられる。だから自分の息子に何を感謝するかというと、この世界に引き込んでくれたこと。そうでなかったら、自分が発達障害のオタクになれるなんて全然思わない。ただのNHKの職員だったし、MBA後も息子のことがなかったら普通の会社員になっていただろうし。

C: 発達障害に限らず、自分が経営している企業の領域に、起業した後からそんなにはまるのは相当稀有だよね。

K: そうなんだよね、起業前に発達障害にはまっていたわけではないからね。発達障害は自分との共通点を感じる部分もあるかもしれないけど、自分の人生にはなかった新しいものとしても面白い。しかもただ単に発達障害に関する知識をつけたいだけでなく、その人たちに関わったり、その人たちが次のステップに進めるようにプログラムを作るのも得意というか好き。なんでこんなに好きになったのかなぁと。正直わかりません。運が良かった、たまたま天職だったとしか言いようがない。

C: プログラムを作った時に、それがいいプログラムだという判断はどこからくるの?自分のアセスメントが正しかったって言える根拠というか。

K: うーん、そうですね。「初めて分かってもらえた」と言って泣く人とか、「どうして一瞬で見抜けるんですか」といい意味で驚いてくれる人が多い。今までの人生で、そんなことを人から言われたことは一度もないんだよね。発達障害の人と接していると自分が価値があるのかもと感じることができる。

C: この仕事していなかったら、どこかで発達障害と関わることがあってもそんなに興味を感じなかったかもしれないね。

K: NHK時代に何度も福祉の取材をしてたけど、当時は発達障害の人に特別興味を持つということはなかったわけで…。

C: やっぱり人間って単純なもんで、フィードバックを受けて褒められるとやる気が出てくる。やる気が出てくるともっとできるようになるし、面白くなってくる。そういうスパイラルだと思うけどね。感謝とか周りの人からの「すごいね」という反応があってはまっていく。

K: そうなんでしょうね。アセスメントがきちんとできると、結果が出る。筋肉の例で言えば、あなたはここの筋肉が足りませんよとドンピシャで判断できると、そこをどう鍛えたらいいかと考えてプログラムに繋げられる。そうすると結果的に就職できる人もたくさん出てきて、皆上手に人生が組み立てられるようになっていく。それがとにかく面白いんだよね。

C: そこを本当に面白いと思ってやれているのが、Kaienの強みだと思うな。

 

Kaien共同創業者 対談シリーズ

徐勝徹(ソ・スンチョル)

株式会社Kaienの共同創業者であり、社外取締役。日本生まれの在日三世。早稲田大学卒業後にアメリカの大学院(ミシガン大学公共政策大学院)へ。非営利の分野にて勤務後(韓国でユネスコ、フィジー・ミャンマーで国際赤十字に所属)、日本で戦略系コンサルタントに転身。MBA留学を挟んだ後に自身の経営コンサルタント会社(株式会社プロジェティーム)を立ち上げる。Kaien代表の鈴木とはMBA(ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院)の同期。

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