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ビジネスと福祉の二刀流 Kaien共同創業者 対談シリーズ 第4回

 当社の想いや現場での働き甲斐をお伝えする『懸け橋』。5回シリーズでKaienの共同創業者であり、社外取締役である徐勝徹(ソ・スンチョル 通称ちゅるさん)と、社長の鈴木の対談をお送りしています。今回は4回目です。

 2009年に鈴木たった一人でスタートした当社も、今ではスタッフが150人を超える会社になりました。更なる成長を見越し、社長に指示系統が集中する状態から、社員一人一人がより力を発揮しやすい強固な組織作りをしている最中です。

 社外取締役として年に数回の会議・スタッフ合宿に参加する立場だった徐も、この半年は月の半分ほどの時間を当社の組織構築のために費やしています。共同創業者2人の対談を通じて、Kaienが生まれる前から今まで、どのようなことを考えて何をしてきたのか、これから何を目指していくのかを皆さんにお伝えできればと思います。

  第4回はKaienの文化・社風についてです。

左から鈴木と徐

ビジネスと福祉の二刀流

鈴木慶太(以下K): 社員のことで他に何かありますか?さっき(注:前回までの記事)話に挙がったピュアさとか、向いている方向が一緒ということの他に、たるむ人がないというか、皆頑張りすぎる感じもあると思うけど。

徐勝徹(以下C): たるむことがないというのは、ピュアさやベクトルの方向性が一緒ということの裏返しかもしれないですけどね。Kaienの本当の強さとかユニークさを出すには、上手いたるみ方を考える必要もあるよね。福祉業界って多分、そういう人が集まりやすいし。

K: 確かに。手を抜かない人が多い。

C: 皆が同じ方向を向きながらも、上手い手の抜き方ができるというか。一歩引いて大局を見たら、こっちは手を抜いて、別のところでもっと新しいことを考えたり、より良いものを作るというような頭の使い方をできる組織にしていく必要はあるだろうね。

K: 確かに現場だけに突っ込んでいくというのも、なんか違う感じですね。

C: Kaienの現場スタッフにヒアリングをさせてもらった時に、いいところでもあり諸刃の剣になりかねないと思ったのが、現場至上主義。現場にこだわりがあるのはいいし、目の前の人と向き合うのが重要じゃないというつもりは更々ないけども、はまり込みすぎる感じもあって。でも、福祉のベテランの人の方がはまり込みすぎないと言っていたかな。

K: ベテランになれるというのは、そういうことだと思うんだよね。始めのうちは、はまり込むのが重要で。Kaienの場合、大きく分けるとビジネス畑から来る人と、福祉畑から来る人がいて。福祉出身の人は、今の組織でビジネスの力を付けつつある。彼らは、初めの数年間で、転職前に福祉の苦しさを分かり、段々といい意味で力を抜いてもホームランが打てるようになっている感じ。一方、ビジネス出身者は、Kaienに入社して2,3年の人が多くて苦しんでいるな、と。

C: どういう風に?

K: 全身全霊で打ち込めば物事が前に進む。けど、どうしたら支援を自分の中で方法論化できるかというところで悩んでるところですね。ここで脱皮してくれて、ビジネス出身の人も福祉出身の人も二刀流になれると、結構強い組織だなと。皆が皆そういう風になる必要はないけど。

C: 多分、ビジネス系のスキルのほうが、一般化して学びやすいんだろうね。

K: そう。僕は1、2年前まで、ビジネス出身の人に福祉を教えたほうが簡単だと思ってた。なぜかというと僕がそうだから。でも皆がそうではないことが最近分かってきた。実際どちらのほうが二刀流になるのが早いかというと福祉出身の人。ビジネスの2,3年生で学ぶことってノウハウがあるし、見える化されている。でも発達障害の支援の方は、なかなか見える化できない。じゃあどうするかというと、さっきの話に戻る(注:前回の第3回 支援への思いがある集団は現場から学べる)と、現場から学ぶ方法を作らないといけない、ということになるよね。

C: 両方必要なんだろうけどね。現場から学んだ内容自体を、ある程度パッケージ化して見える化することも必要。だけど、それを切り売りしているだけでは続かないし、常に新しいものを作り出す力を養成、蓄積していかないと。本当に難しいけどね。

K: 難しい。

C: でも難しいからこそ、慶太さんが意識してやらないとならない。

K: そうだね。現場から学ぶ方法を作るというのが自分の中で新しい宿題になったわけで。今までは皆を現場の支援者として成長させないといけないという目標はあったけど、道が見えていなかったから現場に入ってぎゃあぎゃあいうしかなかった。けど、道が見えてきたのでだいぶ楽にできるんじゃないかな。でも数年はかかるかな。

4番打者だけじゃあ仕方ない

C: 慶太さんの期待値を、皆が100%以上超えてくる日は永遠に訪れないかもしれない。

K: 皆が超えなくてもよいだろうなとは思うけど。でも会社としては、いい意味で自分が操縦できなくなると面白いと思うけどね。

C: 本当にそうだと思う。操縦できている限りは、操縦できる枠の中に組織を押し込めちゃっている。

K: そうだよね。だからある程度大きなビジョンがあったほうがいいと思って。皆好き勝手にやっているつもりだけど、実は同じ方向に流れているのが理想で。こんなことが出来たの、そんなことも出来たのというのが多発するようにしたい。

C: 慶太さんを超える会社にならなきゃいけない。

K: 僕の軸ではないところで超えてほしいですよね。鈴木慶太軸を追求していくとそりゃあ誰も僕には勝てない。それは各人がそうなんだけど。

C: だからもっといろんな軸が出てきて、それが集合体として結果を出していくようにしないと。

K: 難しいのは、自分でいうのも何だけど、今までは悪い意味でも現場に介入していたけど、いい意味でも僕と個の契りみたいなもので動いてくれている人が多かった面もあった。今回組織化するうえで、そこの信仰をいい意味で諦めさせることも必要なのかなと感じているのですが、ちゅるさんはどう思いますか。

C: 慶太さんとの個の信頼関係は、根っこのところではすごく強みになるはずだから、それを薄めていく必要は全然ないと思う。ただ、その発揮され方に関する期待値が問題かな。それが今までは、鈴木慶太軸にはまってこいみたいな形だったから。

K: 僕はそう思っていなかったけど、社員にはそういう風に聞こえていた。

C: それが慶太さんの信頼、期待に応えることだった。けどそうじゃなくて、それぞれのこだわりをいい意味で活かしていけるといいよね。もちろんこだわりだけを追求すればよいと言っているわけではないんだけど。人それぞれ強み弱みもそれぞれ違うわけで。Kaienに100人の鈴木慶太がいればすごい会社になるかというと、それはそれでカオスの会社になる。

K: 僕は発達障害の人の支援が得意だけど、それでも6、7割の人に対してしかはまらない。心理のカウンセラーの人に聞くと、カウンセリングでリピーターになる率って2割ぐらいみたい。そう考えると僕のリピーター率は極端に高い。だけどそれでも6割どまり。

C: 一人のやり方で全員にはまることはできないんだから、やはり違う視点を持っている人がいないと強い会社にならない。4番打者ばかり集めてチームを作っても勝てないというのと同じだね。

Kaien共同創業者 対談シリーズ

徐勝徹(ソ・スンチョル)

株式会社Kaienの共同創業者であり、社外取締役。日本生まれの在日三世。早稲田大学卒業後にアメリカの大学院(ミシガン大学公共政策大学院)へ。非営利の分野にて勤務後(韓国でユネスコ、フィジー・ミャンマーで国際赤十字に所属)、日本で戦略系コンサルタントに転身。MBA留学を挟んだ後に自身の経営コンサルタント会社(株式会社プロジェティーム)を立ち上げる。Kaien代表の鈴木とはMBA(ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院)の同期。

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支援への情熱がある人は現場から学べる Kaien共同創業者 対談シリーズ 第3回

 当社の想いや現場での働き甲斐をお伝えする『懸け橋』。5回シリーズでKaienの共同創業者であり、社外取締役である徐勝徹(ソ・スンチョル 通称ちゅるさん)と、社長の鈴木の対談をお送りしています。今回は3回目です。

 2009年に鈴木たった一人でスタートした当社も、今ではスタッフが150人を超える会社になりました。更なる成長を見越し、社長に指示系統が集中する状態から、社員一人一人がより力を発揮しやすい強固な組織作りをしている最中です。

 社外取締役として年に数回の会議・スタッフ合宿に参加する立場だった徐も、この半年は月の半分ほどの時間を当社の組織構築のために費やしています。共同創業者2人の対談を通じて、Kaienが生まれる前から今まで、どのようなことを考えて何をしてきたのか、これから何を目指していくのかを皆さんにお伝えできればと思います。

  第3回はKaienの会社組織と支援者の育成法についてです。

フラットな組織原理主義

鈴木慶太(以下K): ちゅるさんは、Kaienの現状をどう評価する?これまで僕は、経営するというよりも一人の職人のように会社を大きくしてきて。でもこの前のスタッフ合宿で、「今の会社では僕なら働きたくないよ」とちゅるさんに言われて、そうだなと。ここで会社をきちんと組織化しないと皆が苦しむ気がした。これまでは、僕が現場にいることがKaienのパワーの源で。現場にいて箸の上げ下げまで監督することで、現場の力が上がるとおそらくたぶん心のどこかで思っていた。

徐勝徹(以下C): 10~20人ぐらいの職人の集団で、酒蔵の杜氏さんとかだったらそういうやり方でいいという感じかな。本当にやらなければいけないのは、慶太さんが感じている楽しさを皆に感じてもらうことで会社を強くすることだと思う。箸の上げ下げまでやられちゃうとそうはならない。慶太さん自身が誰かにそうされたら、面白いと絶対感じてないはず。

K: そうだね。

C: 株主の方々にも言っていただいているように、Kaienはここまでは思っていた以上に順調に来たけど、このままいくとこれ以上伸びないか、空中分解する可能性だってあるとすごく危機感を感じたかな。

K: 結局変なこだわりがあって、自分が教えることで皆がうまくなるんじゃないかとか、フラットな組織がいいから管理職なんてないほうがいいよね、みたいに思ってた。

C: 慶太さんの癖という意味では、それはさっきの言語感覚の話(注:第2回 全員向けのサービスは誰向けでもない)と近いものがあって。必ずしも相手に理解しやすい言葉じゃなくてもその言葉にこだわるのと一緒で、フラットな組織っていうことを原理主義的に考えているのかな?その原理が、今どういう影響を与えているかというのをずっとモニターするというよりは…。

K: そうだね、原理を信じている。でも原理主義者と分けたいのが、原理が好きなわけじゃなくて、結果を出すために、これが原理だと思ったらそこを突き進む感じ。まぁでも環境は変化するよね、と。10人20人の規模でなくて、100人200人の会社になっているのに管理職がいないなんておかしくない?と言われると確かに、と。ようやくそれに気づく、みたいな。モニタリングする頻度が少ないってことかな。

C: 突き進む力が強いという言い方もできるかもしれない。

K; 確かにね。でも修正力は重要だなと最近つくづく思うわけです。発達障害の人には散々言っているのに、結局自分もできてなかったなって。

C: それは難しいでしょ。だからこそ取締役会とかがあるんだし、それを健全に機能させていかないといけないと思う。

K: 確かに。今回、これまでのワントップの組織、全部僕が決めるというところから、一人一人が自分のポジションに集中しやすいよう、良い意味の階層化をしていて組織が変わりそうな気はしている。

C: 変わりそうだと思うし、皆で変えていかないといけない。スタッフも、誰かが変えてくれるだろうと期待するというよりは、ビジョンに共感して、「こういう風に変わっていかないといけない」と一緒に変えていってもらわないといけないよね。

K: 主語になるというか、主人公になるというかね。それが社員全員になったら強い組織になれますね。

 

畑のトマトが一番おいしい

K: 色々な企業を渡り歩いてきたちゅるさんから見て、Kaienにはどういう人が集まっていると思いますか?

C: 僕が見てる側面が限られているから思い込みがあるかもしれないけど、何ていうのかな、いい人が多いなと。そう言われちゃうと、皆さんあまり嬉しくないかもしれないけどね。Kaienのユニークなところというよりもこの業界の特徴かもしれないけど、当事者の困難さを少しでも取り除いてあげたいというところに、純粋に向いている人がすごく多い。ベクトルが揃いやすいところが特徴だよね。この会社が何をすべきかということに対して、皆の思いにそんなにブレがない。

K: 確かに。

C: 多くの場合、お金もらえればそれでいいですという人から始まって、会社のミッションや組織の方向性とは違う、自分のこだわりややりたいことを持ってしまっている人が普通の組織ではいっぱいいるわけ。もちろんKaienだって、それがゼロとは言わない。それぞれ感情もあれば、人間関係のしがらみもあるんだろうけど。とはいえ、なんでここにいるの?と聞かれた時に出てくる言葉には、すごくピュアな部分があるなって。それはすごく強みだと思うし、ちゃんと活かさないといけないよね。

K: ここ最近は、自分が教えようとしていたのはかなり馬鹿だったなという感じがしている。だって、うちのスタッフは支援の現場がそれだけ好きなんですよね。そういう現場人間がそろっているのに、僕じゃなくて現場から学べるはずとなぜ思わなかったのか。それこそ、今度はそれが新しい原理になると思うんだけど。

C: ははは。

K: もちろん知識も与えるし、研修もする。けど、やっぱり現場からどう学びとるかっていう方法を考えることが大切。畑のトマトが一番おいしいみたいな感じで。

C: 慶太さん自身が現場から学んだわけじゃないですか。今の自信って。

K: そうなの。どうしてそれを自分が教えようとしていたのか。支援への思いがある集団は現場から学べるはずなのに。それを信じられなかったのは馬鹿だったなと。

C: もちろん学び方を教えるのも手なんだけど、学び方を教えるのって学んだことを教えるよりもずっと難しいんだよね。なぜ自分はこの時これが分かったのだろうとか、どういう人だったら同じ過程でも分からなかったのだろうかとかまで掘り下げて考えないと、学び方を教えるのはできないから。今はそこの段階にいかないといけないのかなって。

K: そうだね。発達障害に関しては、知識なんて他の会社もほとんど一緒で。特にKaienは、ノウハウや気づいたところを意識的に社会に公開している。講演やウェブサイトで。だから、普通にやっていたら追いつかれちゃうしユニークさがなくなるはず。じゃあどうしたらユニークさを保てるかと言ったら、日々の最新の現場で一人一人が学べる仕組みというか、意識・文化を作っていないと、Kaienがいる意味がなくなるとは思います。真似されないぐらいのレベルに現場力を高める。現場力を高める、イコール、学ぶ力を高めるっていう感じですね。

Kaien共同創業者 対談シリーズ

徐勝徹(ソ・スンチョル)

株式会社Kaienの共同創業者であり、社外取締役。日本生まれの在日三世。早稲田大学卒業後にアメリカの大学院(ミシガン大学公共政策大学院)へ。非営利の分野にて勤務後(韓国でユネスコ、フィジー・ミャンマーで国際赤十字に所属)、日本で戦略系コンサルタントに転身。MBA留学を挟んだ後に自身の経営コンサルタント会社(株式会社プロジェティーム)を立ち上げる。Kaien代表の鈴木とはMBA(ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院)の同期。

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TEENSは今まで以上に拠点を増やしていきます 厚労省方針 放課後等デイサービスの開設要件厳格化を受けて

 厚労省の話し合いの結果。「新規事業所は立てるな」という意味だと思います。まず報道をご紹介。

日経新聞 2017年1月6日 障害児向けデイサービス、開設要件厳しく 厚労省

(厚労省は)事業所の急増に伴い、テレビを見せるだけなど質の低い事業所が増えていることに対応する。同省は省令を改正し、放課後デイの事業所の指定を行う都道府県などに対し、4月から新基準で開設の適否を判断するよう求める。 新基準では、事業所に配置する職員を児童指導員や保育士、障害福祉サービスの経験者に限定する。そのうち半数以上は児童指導員か保育士とする。事業所の管理責任者の要件には、障害児などの支援で3年以上の実務経験を新たに加える。 厚労省によると、新基準は既存の事業所についても適用するが、人材確保のため経過措置を設ける方向で検討する。開設要件を満たさないまま運営している事業所に対しては、都道府県などが行政指導するとしている。

 

今回の厳格化のポイントは?

 ポイントを見ていきましょう。個人的な賛成度合いをあわせます。

(1)児童発達支援管理責任者の要件が厳格化される(※1)

 これについては大賛成です。そもそも、児童発達支援管理責任者の研修に行くと、まったく障害分野を知らない人、子どもに接したことがない人がたくさん来ていて、グループワークすらできない状態だそうです。というのも、高齢福祉の経験を持っているだけでも管理責任者になれてしまっている状況(※1)でしたので…。元々がおかしかったわけです。制度施行直後の4年ほど前は、放デイの事業所を一気に増やしたいという魂胆だったのかもしれませんが、今回の厳格化で分かる通り、予想以上に事業所は増えているはずなので、当初の目論見を達成したということでしょう。質の担保のためには遅すぎたぐらいです。

 ただ(2)のところとも絡みますが、経験年数である程度は専門性は高まるものの、本来は試験制度にするなど、長さではなく、実力勝負にしてほしいです。期間が短くても十分に責任者になれる人は多いはずだからです。ただ、資格制度・試験制度はとても面倒で出来ないのでしょうけれども…。

※1 2017年4月追記 東京都の説明を受けてきました。それによるとたしかに介護福祉の経験はカウントされづらくなったため厳格化という意味もありますが、一方で学校など教育関係での経験年数がカウントされることになったため、むしろ門戸が広くなったとも言えるようです。

(2)現場には素人は一切入れなくなる。(※2)

 今、指導員は各事業所に2人いるところが多いと思いますが、その2人のどちらも、何らかの経験か資格(児童指導員・保育士・障害福祉での経験)が必要になるということです。しかもそのうちの半分以上が児童指導員か保育士でないといけないということ。つまるところ素人は現場支援に入れないですね(※2)。2人の現場スタッフのうち1人は児童指導員か保育士でないといけないし、もう一人も児童指導員か保育士であることが望ましいし、最低限障害福祉の経験がないといけないということでしょうから。

 他の福祉事業に比べてのこの条件は非常に厳しいです。あまり賛成はできません。「1人は資格・経験者にしてね」という部分は賛成できますが、「全員が何らかの資格・経験が必要」は、新しい考え方が福祉に入りづらくなりますし、(1)で書いたとおり素人だって意欲があって能力がある人はいるはずなので、資格・経験だけで質が高まるというわけではないと思うからです。繰り返しですが、本来は試験制度にしてほしいのですがね…。

※2 2017年4月追記 東京都の説明を受けてきました。それによると①制度で求められている「最低基準人数」について上述の資格が必要で、②そのうちの半分以上が児童指導員か保育士ということ。換言すると定員を上回って配置する従業員はこれまで通り指導員(つまり資格保有なし)でも可能だ、とのことでした。訂正して修正いたします。

(3)4月からの新規事業所は新しい基準を満たす必要がある。

 これは当社を含め、事業所を増やそうとしている人には大変な事態です。おそらく4月からスタートさせるために人を採用して、オフィスを確保して、というところが多いと思うからです。すでにヒト・モノ・カネを注いで準備しているところが、「厳格化された要件を見対していないので設置できません」という状態に陥るということです。3ヶ月前というのはあまりにも急だと思います。1年伸ばして2018年度からもうちょっとなんとかならないのかなぁと思います。つまり個人的には反対です。が、1年程度告知期間を設けてしまうと、旧基準のうちに駆け込みで事業所を立ち上げるだろうという厚労省の予想なのでしょう。やや騙し討ち的にしないといけなかった厚労省の苦悩が見てとれます。

(4)既存事業所は経過措置がある。つまり新基準を満たすまで猶予期間がある。

 経過措置があるというのはこれは利用者側からすると当たり前ですね。急に要件が厳しくなって、放デイ難民が出てしまうと厚労省も対応に苦慮するでしょう。悪徳業者の退治を考えると既存事業所も新基準にしたいのでしょうが、1年か2年かわかりませんが、猶予はあるだろうというのは予想されました。なのでもちろんこの措置には賛成です。

 

厚労省の腹のうち

 ポイントでまとめたとおりの変更を決断した厚労省。そのご担当者とはお会いしたことはありませんが、以下のようなお考えだったのでしょう。

  • 公費を年間2000億円(障害福祉予算費では2割)も使っちゃっている…。このまま増やし続けることは出来ない。
  • そもそも2000億円の価値があればよいが、元々小中高生に向けた療育の効果は経済的な説明がつきづらい。
  • 説明がつきづらいどころか、アンパンマン放デイ(アンパンマンのビデオを見せて終わりのデイサービス)など明らかに療育の効果がないサービスが蔓延している。
  • そのうち、少数かもしれないが、悪徳業者は不正請求をし始めている。
  • これ以上事業所が増えると制度自体が崩壊する。
  • まずは入り口(新規事業所)を閉めて、そして既存事業所もレベルが低いところは自動的に退出するぐらいの、達成が難しい要件にしてしまおう。

 という感じだと思います。大切なのは「予算を絞らないといけない」というメッセージだと考えず、「制度を守ります」という厚労省の担当者からのメッセージだと信じ、受け取るべきだということです。

 個人的には、放デイのレベルの低さはなんとかならないのかなぁと問題意識は共有していたものの、以下にリンクを貼るように本当は自己負担の割合を高めるという手立てを打ってほしかったのですが…。

【参考】障害児向けのサービスの経済的価値をどう考えるか? Kaienの社会的価値 ~2016年を振り返る 後編~

【参考】障害児の就学支援 障害に合わせたガイドライン作成について ガイドラインよりも市場原理では?

 ただ、少し疑問なのが、放デイと似た制度であるものの、対象が未就学児向けである「児童発達支援事業」は今まで通りの設置基準だということです。こちらも質の問題が言われていると思いますし、不正請求の件も(おそらくですがどの事業でも出る問題だと思いますので)なくはないはずです。今後、放デイに引っ張られる形で児童発達支援事業も厳格化されるのかもしれません。

 それと、事業者ばかりにお叱りが来ているようにも見えますが、上のリンクの記事でも書いたとおり、利用者側のニーズが療育ではなく、単なるお預かりにある人も多いのではないかなぁと思います。つまり利用者側にも今回の厳格化で予想される激変(利用がしづらくなる、できなくなる)の責はゼロではないのかなと思います。

じゃあTEENSはどうするの?

 当社も3ヶ月前の2016年10月に5つ目の事業所を三鷹に作り、2017年も幾つか作っていく予定でした。まだオフィスの確保はしていませんでしたが、人材の採用はすでに行っています。なので今回のニュースで、「え、新規事業所立てられないかも」と思ったのは確かです。

 でも、結論から言うと、計画通りのペースかわかりませんが、コツコツと立てていく予定です。このためスタッフ採用も今までと同じように進めていきます。むしろ他の変な放デイが少なくなって、利用者の当社へのニーズは高まると予想されるので、計画以上の新拠点を立ち上げようかなと思っています。

 積極的に考えられている要因で最も大きいのが、当社の多くの既存スタッフが実は児童指導員の資格をすでに保有しているという事実です。また、就労移行支援事業所もあるので、「児童がやりたい」と思って入ってきたスタッフが、放デイで働く前に障害福祉の経験者になるための実践フィールドがあるというのもプラスに働きそうです。採用のときに児童指導員か保育士の資格保有者のほうが受かりやすくなるかなぁとは思うのですが、まあいい人だったら資格が入社時点でなくてもこれまで通り採用していきたいと思います。

 もちろん各自治体が新基準になったものの、事実上新規設置を認めないということを言う可能性もありますので、そこに左右されますが、当社としては新基準に十分に対応できるし、今回の厚労省の決定を前向きに受け止めていきます。

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息子に感謝すること Kaien共同創業者 対談シリーズ 第2回

 当社の想いや現場での働き甲斐をお伝えする『懸け橋』。前回からは5回シリーズでKaienの共同創業者であり、社外取締役である徐勝徹(ソ・スンチョル 通称ちゅるさん)と、社長の鈴木の対談をお送りしています。

 2009年に鈴木たった一人でスタートした当社も、今ではスタッフが150人を超える会社になりました。更なる成長を見越し、社長に指示系統が集中する状態から、社員一人一人がより力を発揮しやすい強固な組織作りをしている最中です。

 社外取締役として年に数回の会議・スタッフ合宿に参加する立場だった徐も、この半年は月の半分ほどの時間を当社の組織構築のために費やしています。共同創業者2人の対談を通じて、Kaienが生まれる前から今まで、どのようなことを考えて何をしてきたのか、これから何を目指していくのかを皆さんにお伝えできればと思います。

  第2回はKaienの経営方針などについてです。

まじめに働きたい人が働けるように

鈴木慶太(以下K): Kaienの目指すものは起業時から変わっていない。MBA時代に考えたビジネスモデルと、今のビジネスモデルを比べても、目指すものは基本的に一緒で。行きたいところへ別の角度からアプローチする感じ。

 あっ、でもちょっと変わってきた部分もあります。今は発達障害と言う単語にあんまりこだわりを感じていないかな。むしろまじめに働きたい人が働けるようサポートしたいというか。まじめに働きたい人って、社会貢献したい、かつ嘘をつかない人で、結局発達障害の傾向が強い人が多いという関連性がある感じで日々仕事をしています。

徐勝徹(以下C): 対象を広げることで、発達障害の人の就労に特化しているというKaienの特色が薄まらないかが少し気がかりだけど・・・。

K: 薄まるというのはたぶんなくって。発達障害というコアに取り組んでいくと、知的障害・精神障害・貧困層の人が見えてきて、その辺りに結構関心を抱くんだよね。発達障害が原点であることは変わらない。ただし、発達障害だけへのこだわりではなくなってきたという感じかな。

C: 発達障害に接点がないところまで手を広げるつもりはないけど、接点がある部分はやっていこうよということ?

K: そうだね。今のKaienのプログラムは発達障害の人にすごく響きやすい。例えば利用説明会の後、個別相談に来てもらえる割合はすごく高いし、体験セッションで満足度を調査するとすごく高い。なぜかっていうと発達障害の芯の部分にドンピシャで当てられているからだと思う。Kaienのプログラムの力と、発達障害の人の特性との二つが絡まないといけないと思うんだよね。だから発達障害と関連が薄い層に当社のサービスは響かせようにも今の段階では響かないだろうなと思っています。

全員向けのサービスは誰向けでもない

C: 慶太さんの一つの特徴でもあって、場合によっては弱点になりえるところが、言葉をすごく自分の言語感覚で話すんだよね。

K: コピーライターみたいなもの?

C: コピーライターって、特殊な言語感覚だけでなくそれを伝えたいという意志がセットにならないとコピーライターにならない。

K: OK…。じゃあ僕は残念ながら違うわけだ…。

C: 慶太さんは自分の腹にすとんと落ちる言葉だと、それが大好き。

K: はいはい。伝わろうが伝わるまいがね。

C: 伝わらなくてもその言葉を使いたいというこだわりが強いと思うんだよね。なんでこんな話をするかと言うと、ホームページや行動指針の文章も、僕が同じことを説明しようとしたらこうは言わないだろうなというのがいっぱい入っている。それは弱点でもあり特徴でもあって、Kaienのメッセージが発達障害の人に刺さりやすい理由はそこにもあるかも。誰にでも理解されるような言葉にしようとすると、万人に薄く伝わるかもしれないけど、コアに伝えたい人に刺さらないかもしれない。

 読んで癖があると感じたとしても、一般的な言葉じゃないから腹の底から出ている感じ。「これを伝えたい、これを言いたい」という思いが先にあって、言葉を探している感じがにじみ出ているんだよね。便利な言葉に飛びついている感じがしないのがKaienのメッセージのいいところだなと。

K: NHKで働いていた時は万人に伝わる表現をしないといけない。そこに気持ち悪さもあった。だけど、一度そこに染まってみると使える言語が広がることも感じて。だからNHKで勤務させてもらえたことに感謝はもちろんあります。うちのウェブサイトや僕の講演にしても、全部が全部こだわりの言葉ではないわけで。

C: そうだったら宇宙人語みたいななっちゃうからね(笑)。

K: ベーグルみたいに、基本はプレーンだけど時々ブルーベリーの味が効いている感じというか。

C: キーワード的なものがね。

K: 他にNHKで学んだのは、全員向けのサービスというのは誰向けでもないということ。NHKでは、マスに伝える方法をまず習うんですけど、その時に思ったのがターゲットを絞って伝えないと何も伝えたことにならないなって。実際、自分が作った番組で一番うまくいったのが、この人に伝えたいという人がいて、その人だけに向けて作った時で。実は1人向けの番組が他の大勢の人にも感動を呼んで、反響が大きかった。

 全体に向けて作ろうと思ってもダメ。マーケティング用語でいうと、ペルソナを作ってそこに届けようとすると響くみたいな。そこの原体験はNHK時代にある。Kaienの場合、取り組む分野が福祉の中でも発達障害だけ。しかも働くことに関係することだけというニッチの中のニッチ。だからこそ、とがった感を出したほうがいいかなというのはずっと思っていて、その信念は変わらないかな。

息子に感謝すること

K: 自分自身はどんどん変わってきているつもりなんだけど、ちゅるさんから見てどうでしょう?10年ぐらい前と比べて鈴木慶太は変わってきていますか?成長していますか?。

C: 自信はついてきているよね。特に発達障害に関する自信。慶太さん自身は経営には自信がないって言っているけど、発達障害に関する自信がコアになって、支えてくれているんだろうな。

K: 本当に運が良かったのは、発達障害のオタクになれたことだよね。つらいことやうまくいかない時もあるけど、基本的に発達障害のことをずーっと考えていられる。だから自分の息子に何を感謝するかというと、この世界に引き込んでくれたこと。そうでなかったら、自分が発達障害のオタクになれるなんて全然思わない。ただのNHKの職員だったし、MBA後も息子のことがなかったら普通の会社員になっていただろうし。

C: 発達障害に限らず、自分が経営している企業の領域に、起業した後からそんなにはまるのは相当稀有だよね。

K: そうなんだよね、起業前に発達障害にはまっていたわけではないからね。発達障害は自分との共通点を感じる部分もあるかもしれないけど、自分の人生にはなかった新しいものとしても面白い。しかもただ単に発達障害に関する知識をつけたいだけでなく、その人たちに関わったり、その人たちが次のステップに進めるようにプログラムを作るのも得意というか好き。なんでこんなに好きになったのかなぁと。正直わかりません。運が良かった、たまたま天職だったとしか言いようがない。

C: プログラムを作った時に、それがいいプログラムだという判断はどこからくるの?自分のアセスメントが正しかったって言える根拠というか。

K: うーん、そうですね。「初めて分かってもらえた」と言って泣く人とか、「どうして一瞬で見抜けるんですか」といい意味で驚いてくれる人が多い。今までの人生で、そんなことを人から言われたことは一度もないんだよね。発達障害の人と接していると自分が価値があるのかもと感じることができる。

C: この仕事していなかったら、どこかで発達障害と関わることがあってもそんなに興味を感じなかったかもしれないね。

K: NHK時代に何度も福祉の取材をしてたけど、当時は発達障害の人に特別興味を持つということはなかったわけで…。

C: やっぱり人間って単純なもんで、フィードバックを受けて褒められるとやる気が出てくる。やる気が出てくるともっとできるようになるし、面白くなってくる。そういうスパイラルだと思うけどね。感謝とか周りの人からの「すごいね」という反応があってはまっていく。

K: そうなんでしょうね。アセスメントがきちんとできると、結果が出る。筋肉の例で言えば、あなたはここの筋肉が足りませんよとドンピシャで判断できると、そこをどう鍛えたらいいかと考えてプログラムに繋げられる。そうすると結果的に就職できる人もたくさん出てきて、皆上手に人生が組み立てられるようになっていく。それがとにかく面白いんだよね。

C: そこを本当に面白いと思ってやれているのが、Kaienの強みだと思うな。

 

Kaien共同創業者 対談シリーズ

徐勝徹(ソ・スンチョル)

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障害児向けのサービスの経済的価値をどう考えるか? Kaienの社会的価値 ~2016年を振り返る 後編~

 前回の記事「年末のKaien通信簿 今年は赤点すれすれです」では当社Kaienの社会的な貢献度(社会的価値という貨幣に置き換えた物差し)について、2015年と2016年の実績をもとに振り返りました。年を越してしまいましたが、今回は後編として、子ども向けのサービスの社会的な貢献度を考えていきたいと思います。

子ども事業(TEENS)のみの社会的価値 ▲1.2億円/年

 最初に数字をご紹介しましょう。前回の記事にある通り、当社独自開発の(そして当社以外でも障害福祉や就労支援事業で使えるであろう)社会的価値は以下から算出できます。

計算方法:会社納税額+社員納税額+Kaien経由就職者納税額(未来分も含む現在価値)+生活保護減少額(未来分も含む現在価値)ー当社に投下された税金=社会的価値

 2016年にTEENSの事業で出したグロスの価値は4000万円程度。しかし4000万円の社会的価値を出すのに1.6億円程度の税金が投入されていますので、差し引き、つまりネットでは1.2億円以上の社会的”損失”を出してしまったということです。

 どうして子ども向けの事業は”損失”を出しやすいか?考えてみれば当たり前なのですが、子どもは就職をほとんどしないからです。

 つまりTEENSの場合、『Kaien経由就職者納税額』というのがどうしても少なめに出てしまいます。というのも、当社の放課後等デイサービスには400人ぐらいが通っていますが、学年は小学1年生から高校3年生まで12学年のすべてにわたります。つまり単純計算でも30人ぐらい(400人÷12学年≒30人)しか1年に修了していきませんし、以下で触れているように首都圏では大学全入時代のため経済的に厳しさがない場合、障害のある子どもも大学や専門学校に進学しますので、なおの事、18歳の段階で就職する子どもは少ないわけです。

【参考】発達障害のある方の進学進路 「高卒で就職か?大学・専門学校に進学か?」

よくある反論と考察

 もちろん、就職させるためだけではないのが子ども向けサービスです。経済的な価値だけに重きを置いたら、極論を言うと文科省の存在意義が問われてしまうでしょう。教育にどの程度の価値を置くかは人それぞれ、国それぞれですから。

 例えばGDP比で日本は国際的に教育への投資が少ない国であるといわれていますが、予算が多ければよいというわけではないと思いますし、そもそも人材を育てることでは優等生ドイツはGDP比の教育予算は実はそれほど高くないといった側面もあります。とはいえ、少なすぎても良いわけはないです。僕個人もずっと公立で税金を使って育てられましたし、何がベストなのかは難しいところです。

【参考】図録 学校教育費の対GDP比(国際比較)

 あるいは、引きこもりを防ぐ、将来、生活保護など国の支出を増やすのを減らす、つまり納税者になるという経済的にプラスの存在にならなくても、マイナスの存在にならなければよい、あるいはそのマイナスをできるだけ減らす、という視点もあると思います。本当にその通りですが、数値だけ見ると当社の指標だと5人の就職者を出すのと、1人の生活保護の人を働かせるのが、ほぼイコールでした。

 つまり生活保護という国の支出を減らすのは非常に大きな(経済的な)価値がありますが、それでも5人働くのと一緒です。これは鈴木自身の見解ではないですが10人働かせれば2人の生活保護を受ける人を出してもよいということにもなります。放課後等デイで、将来引きこもりや生活保護を出さないと大風呂敷を広げるにせよ、ある程度の経済合理性は意識している必要はあるかもしれません。

 繰り返しますが経済的な価値だけがすべてではないのですが、この記事では経済的に見える価値に着目しています。当社がまた鈴木自身が経済的な点だけを重視しているわけではないのは、ご承知おきください。

2000億円+/年がかかっている障害児政策

 ということで、障害児に対する予算は、①そもそも(障害があるなしにかかわらず)教育にどういう価値を置くのか、②また①のためにどの程度の予算を割くのか、③全体の教育の中で程度や状況の差が多い障害のある子どもにどういうサービスが適当で、④③のためにどういう制度設計があり得るのかが議論になると思います。

 特に③が今、世論としてはほとんどないというのが実際のところかなぁというのが僕の印象です。感情論はあると思うのですが、一人の障害のある子どもの親で、障害福祉の事業者の経営者である僕個人としても、どういうものが良いのかわからないです。

 特に放課後等デイサービスについては、例えばテレビを見させただけで、1・2時間お預かりをしただけで1万円の売り上げを得られるというお金を稼ぐという視点からは美味しさ・簡単さがあり、変な業者が多いという残念さはあります。

【参考】親としてできること 支援者としてできること 経営者としてできること

 少なくとも一つ言えるのは1年で2000億円の予算を使う価値はまだ制度としては出ていないと思います。そのために以下のような記事を書いているのですが…。

【参考】障害児の就学支援 障害に合わせたガイドライン作成について ガイドラインよりも市場原理では?

 本来は、「こういう価値が出ていないから、税金を使うのではなく、消費者が負担しよう(自己負担を増やそう)」ではなく、「価値が出しているから国も予算化してほしいです」と言えるようになりたいです。いや、少し自分のやっていることを正当化させてもらうと、おそらく正しいことをしている実感は現場を見るとあるんだけれども、それをまだ言語化・数値化できていないと思う。なのでもう少し時間をくださいということになるでしょうか。

 2017年末には「こういう感じで数値化できます」「こういうサービスが国として必要です」とお伝えすることを目標にしていきたいと思います。

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発達障害が資本主義にどう向き合うか Kaien共同創業者 対談シリーズ 第1回

 当社の想いや現場での働き甲斐をお伝えする『懸け橋』。今回からは5回シリーズでKaienの共同創業者であり、社外取締役である徐勝徹(ソ・スンチョル 通称ちゅるさん)と、社長の鈴木の対談をお送りします。

 2009年にKaienが創業してから7年が経ちました(2016年12月現在)。鈴木たった一人でスタートした当社も、今ではスタッフが150人を超える会社になっています。更なる成長を見越し、社長に指示系統が集中する状態から、社員一人一人がより力を発揮しやすい強固な組織作りをしている最中です。

 社外取締役として年に数回の会議・スタッフ合宿に参加する立場だった徐も、この秋から半年程度は月の半分ほどの時間を当社の組織構築のために費やしています。共同創業者2人の対談を通じて、Kaienが生まれる前から今まで、どのようなことを考えて何をしてきたのか、これから何を目指していくのかを皆さんにお伝えできればと思います。

  第1回は起業前から変わらないKaienの軸や創業直後の生みの苦しみについてが話題です。

左から鈴木と徐

ファッションじゃない

鈴木慶太(以下K): 今日はKaienの創業前の話から、今行っている組織構築の経緯や方向性についてちゅるさんにお話を伺っていきます。早速、最初の質問。僕とちゅるさんはアメリカのMBAで同級生として出会った。数百人もいる同級生が様々なプロジェクトをしている中で、なぜちゅるさんが僕やKaienのプロジェクトに協力し始めてくれたのか?それをまず聞かせてください。

徐勝徹(以下C): なかなか難しい質問だね。初めて出会った時から、慶太さんがNHK出身でMBAに来ているけれども、将来的にはノンプロフィットというか、ソーシャルな分野に興味があると言っていたんだよね。そんな中、ちょうど僕は当時MBAでノンプロフィット系の課外プロジェクトをやっていた。そこに慶太さんが入ってきたのが最初の繋がりだね。

K: 渡米の2,3日前に子どもが発達障害だと診断されていたので混乱していたんだよね。本来ビジネスを学ぶはずのMBAの場でも、発達障害というテーマが頭を離れなくって。そんな時にちゅるさんが率いていたプロジェクトをちょうど知ったんだよね。「この人凄い、役に立つこと教えてもらえそう」と思って、チームに入れてくださいとちゅるさんに頼んだわけ。

C: そうだったよね。でも僕が始めたプロジェクトが「MBAの2年間のうちに形にするのは難しい」という話になった。僕は他のやり方で自分だけで続けようと思っていたけど、一方で集まったチームのメンバーたちをどうしようかなと話していた時に、慶太さんがスペシャリスタナ(注:発達障害者を積極的採用しつつ営利企業として商業的にも成功しているデンマークのIT企業でKaienの代表メッセージにも記載あり)をタイムリーに見つけてきたのが、協力することになったのには大きかったんじゃないかな。

K: 2008年の夏の事。「すごいの見つけた」って感じでミーティングに乗り込んでいった。

C: すごく目をキラキラさせて。「MBAの2年目は僕はこれをやる!」って。じゃあ、チーム全体がプロジェクトの内容を変更しないといけないならば、慶太さんのプロジェクトを応援するのが良いんじゃないかという流れになったわけだよね。僕じゃなくて今度は慶太さんが主導して、僕らはそれをバックアップする形で関わっていった。メンバーは最終的には10人ぐらいにはなったかな。コンペティションの決勝の会場(注:このプロジェクトは、ニューオリンズのビジネスプランコンペティションで優勝した)にも2人しか行かなかったりとメンバーごとに参加度合の濃淡はあったけど、みんなKaienのプロジェクトに惹かれるものがあったのは確かだよね。

K: それはなぜ?

C: やっぱり慶太さんが本気だったからかな。MBAには、こういうソーシャル的な事業を手慰みのようにやる人もいるじゃないですか。

K: 言っている意味は分かります。贖罪的な感じで。

C: 贖罪であり、ファッションであり・・・。

K: 一生そこに時間を費やそうとか、自分のキャリアにしようというわけではなくて、自分の5パーセントとか10パーセントの時間とかエネルギーを使って社会的に意義あることをするみたいな。そういう形で社会貢献する形も当然アリなんですけどね。僕はそうは見えなかったということか。

C: そう、それもいいんですけど。慶太さんやKaienは、そうじゃないというのにすごく惹かれたというか。これは物になる、この人なら物にするだろうなと思って。それで何かお手伝いできることはないかなという話だったな。

 

資本主義にどう向き合うか

K: MBA時代に考えたビジネスプランは、時代にも乗ったし、プレゼンも上手にできた。けど、結局そのビジネスプランはもう半年ぐらいでついえてしまった。(注:MBA時代のビジネスモデルは、IT企業を立ち上げて発達障害の人を直接雇用する=「自社雇用、IT業」だった。が、現在のKaienのビジネスモデルは発達障害の人材を育成して他の会社に雇ってもらう=「他社雇用、人材教育業」になっている。)ただ、当時のコンセプトが今のKaienに影も形もない、というわけではないと思うんだよね。ちゅるさんから見ると、何がKaienに残っているものだと思う?

C: 僕は言語化する過程に関わっていないけど、その要素が残っていると思うのは行動指針

K: あぁ、なるほどね。

C: 行動指針を見ると根っこは変わっていない。個別具体の当事者にきちんと向き合おうというところで終わらないことはブレはないよね。社会全体の気づきとか認識を変えていくところにどうにかして繋げたいという必死な思いがある。それを実現するために、Kaienに特徴的なボキャブラリーでいうと、資本主義の力という言葉を使うじゃないですか。社会の仕組みを根本から覆そうという大それたことは考えているわけではない。どうしたら資本主義の波にあらがわずに発達障害の人を活用できるかと考えていく。そこがKaienの昔も今も変わらないユニークな部分かな。

K: 企業社会から取り残された人たちの価値に企業社会に気づいてもらうためには、企業社会で勝つしかないということだよね。毒にも薬にもなるのが資本主義。なのでその力をうまく使わせてもらう必要性があるという思想はKaienには常にある。貨幣経済、グローバル経済という強い流れを個人単位や国単位では否定しづらい中で、発達障害の人が人生をどう楽しめるのかっていうと、資本主義にどう向き合うかっていうのは重要だよね。

C: 当事者を助けてあげますというよりは彼らの中にある力を引き出して、それが実際に社会や企業に伝わっていくようにハードルを取り除くという発想につながるよね。マーケット(市場経済)があるんだから、マーケット側の考えていることを彼らに伝えないとだめだよねというところと、当事者だけでなく社会全体の認識を変えるというところが、僕がずっと魅力を感じているところで、最初の頃から変わっていないな。

K: 「障害・特性を強みに、ユニバーサルな管理法、資本主義に逆らわない」といった行動指針の中の3つの役割のところですね。

真っ暗なトンネルの中で

K: そもそもKaienというのは偶然の産物で、僕はMBAが終わった後にすぐ起業するなんて全然考えてなくって。

C: え、どういうこと。起業するつもりがなかったというのは意外だけど。

K: もちろん起業するつもりはありましたよ。ビジネスプランコンペティションで優勝して、創業前の段階からウェブ上で記事を書くと協力したいという人がいてくれて。なので、何かやらなきゃいけないとは思っていた。でも、MBAで多額の借金を抱えてすぐに起業をするのはリスクがあるからね。(注:MBAの学費や生活費で2000万円程度がかかる。)2、3年は他の会社で働いてお金を貯めてからと思っていた。

C: なるほど。

K: でも、卒業後1か月ぐらいだったかな。話が急に動いて、MBAの学長も支援してくれ、内定先の経営コンサルティングファームも起業が失敗したらその時働いてもいいよと言ってくれたんだよね。そこまで周囲に期待してもらったのはうれしかったし、お膳立てをされたのに起業しませんというのも言いづらくなって、いつの間にやら起業したというのが正直なところ。

 でもその後、MBAで考えたビジネスプランは上手くいかなかった。創業後半年ぐらいですぐに分かった。そこから今のビジネスモデルが形になるまでだいぶ時間がかかった。MBAの借金もあったし、MBA直後で蓄えも戻っていなかったからお金がとにかく大変だった。結局、自分が生活保護以上のお給料をもらえたのは起業して3~4年目。それまではずっと真っ暗なトンネルで灯りがない中やっている感じだった。自分にお給料がほとんど払えないし、このまま行っても結局自分が食えるか食えないかぐらいにしかならない。そんなのやるために自分はこの世界に入ってきたのかな、何の価値も付け加えられていないなと。当時は、ちゅるさんに時々話を聞いてもらっていたね。

C: 話を聞いていて思うのは、僕も共同創業者という名前を付けさせてもらってはいるけど、結局起業って本気でフルタイムでそこに飛び込んだ人じゃないと分かんないんだろうな。その切羽詰まった感覚とかね。当時相談に乗っていても、「でも、この人大丈夫だろう」とぐらいにしか僕は思っていなかったから。

K: 精神的に辛かったですよ。一番ひどい時は親友の結婚式に行けなかったからね。人が幸せなところに行く価値が僕にあるだろうかと思って、起きられなかった。お金もない。エネルギーもない。今の仕事では日々精神的に追い詰められたり、お金がなくて困っていたりする人たちに会うので、支援をする上で当時の経験は役立っているけれども、まあ大変だった。本当に辛かったです。

 

Kaien共同創業者 対談シリーズ

徐勝徹(ソ・スンチョル)

株式会社Kaienの共同創業者であり、社外取締役。日本生まれの在日三世。早稲田大学卒業後にアメリカの大学院(ミシガン大学公共政策大学院)へ。非営利の分野にて勤務後(韓国でユネスコ、フィジー・ミャンマーで国際赤十字に所属)、日本で戦略系コンサルタントに転身。MBA留学を挟んだ後に自身の経営コンサルタント会社(株式会社プロジェティーム)を立ち上げる。Kaien代表の鈴木とはMBA(ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院)の同期。

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年末のKaien通信簿 今年は赤点すれすれです Kaienの社会的価値 ~2016年を振り返る 前編~

 毎年恒例の社会的価値の計算です。年末の12月の最後の営業日やその次の日ぐらいに行っています。いつもは結構楽しい作業です。自分の会社の価値がある程度納得感のある指標で出ますので。ただし今年は良い面も引き続きしっかりあるのですが、一方で厳しさも見える結果が出ました。計算していて年末気分が(もともと無いものの)一層冷めましたし、新たな気づきもあって身の引き締まる思いです。

 改めて去年の記事を読み直すと、能天気というか、カイゼンの意欲が低かったなぁと反省しています。次回のために下に貼り付けておきます。

福祉に税金を使うと経済的に無駄になるどころか得をする (2015年 今年のKaienの就職支援実績・社会的価値など計算しました)

 去年と同じ方式で今年を振り返りましょう。

① 当社修了生の就職者数 161人→172人/年 にアップ

 拠点数が増えたこともあり、就職者数はアップしています。これは最低限必要なところをクリアしたというような印象です。就労移行支援事業所は当社は今6か所ありますので、1か所あたり20数人の計算です。(ただし大学生向けのガクプロや、高校生も通うTEENSといったサービスも含みますので、単純に割り算はできませんが、それでも多くは就労移行支援から就職していきます。)

【参考】発達障害者向けの独自求人あり適職に就ける 対人力がつく 職業訓練プログラム
【参考】ガクプロ 発達障害(含・疑い)のある大学生向け 就活と仲間づくりのコミュニティ
【参考】TEENS 発達障害児のための放課後等デイサービス首都圏で展開中

 一拠点当たり20数名の就職者数は多いか少ないかというと、めちゃくちゃ多いです。(全国平均に比べると10倍近いとは思います。)これだけの規模で、この質を保っているのは当社だけかもしれません。後述しますが定着率は鬼の高さが続いていますので、純粋に胸を張れる数字だと思っています。就労移行支援としての矜持は保てています。

② 当社修了生の定着率 90%超(1年)を維持

 定着率は就職した後、その職場にどの程度の人が残っているか、働き続けているかという数字です。定着率の反対が離職率ですね。

 去年は95%だった(半年後ではなく)1年後の定着率。今年も90%を優にクリアして、95%に迫る勢いでした。前回もお伝えしましたが、この業界では半年後の定着率を発表するところが多く、その数字はおおむね8割前後。つまり1年後は単純計算で8割の8割は0.8×0.8=7割弱と推測されます。それに比べると20%~30%も高い定着率で、ここは本当に当社の定着支援の強さですし、定着支援が上手というよりもしっかり育てて、企業に上手に理解して人材活用をしてもらっているということなのだと思います。まとめますと定着率は花丸といえましょう。

 定着率は100%が良いわけではないです。新しい挑戦をするために転職をするなどで離職する人もいますから90%ぐらいが一般枠では普通なのだと思いますが、障害者枠ではやはり転職がそれほど簡単ではないですからやはり定着率は高いほうが良いでしょう。ちなみに冗談でよくいうのですが、うちの修了生の定着率は、スタッフの定着率よりも高いです…。というか95%に勝つのはなかなか難しいです。でもスタッフの定着率も来年こそは、当社修了生の定着率を上回るようにしたいと思います。

③ 当社修了生の平均月給 17.5万円→17万円へ微減

 この辺りからです……やや雲行きが怪しくなるのは(泣)。給与の水準が少し落ちています。ここについてはグラフを作成していませんが、元のデータを見ると高い人は順調に障害者枠であっても月給20万円を超える給与のところに就職できている傾向は続いています。

 何が変わっているのかというと、当社を利用する人で若い人が増えてきたということ、軽作業など(通常給与が低い業務)を希望したりフィットしたりする人が増えてきたということ、そしてフルタイム(つまり7.5時間/日とか8時間/日勤務)ではなく、1日6時間程度の勤務でないと体調が維持できない人が増えてきたこと、などがあり、どうしても給与が下がっていっているのがわかります。

 当社も就労移行支援を始めた4年前は、すでに一般枠での就業経験があったり、学歴が高かったり、と給与が高くなりやすい人たちの受け入れが多かったのですが、本当に利用者が多様化してきていることの表れかなと思っています。

 とはいえ、言い訳は許されません。少しでもフィット感のある職場でありながら、給与も妥協してはいけないと思っています。最低賃金もここ数年うなぎ上りですし、当社としてもしっかりボトムアップをしていきたいと思いをあらたにしました。

④ 当社修了生の就活期間 6~7か月→9~10か月と伸びる

 ここから3つ厳しいニュースが続きます。あまりこういうのを公表する会社は少ないと思うのですが、しっかりと自分たちをさらけ出していきたいと思います。

 残念ながら就活期間が延びてしまいました。平均を見ると9か月をやや上回る数字です。③でも書いた通り、これまでよりも多様な人たちが当社を利用してくれるようになっているので、かつ通常2年かかるといわれる就労移行支援業界を考えると、9か月という数字をどう読むかは、解釈が分かれるところかもしれません。でも伸びているんだよね…というのが僕の感想です。

 ⑤にも関わりますが、困難ケースといわれる二次障害があるケースや、就業意欲が低い準備性がまだまだな人が入ってきている、というスタッフの訴えは概ね正しいのだなぁというのが数字を見て思うところです。

ADHD的な”就活先延ばし癖”にどう対応するか?

 一つだけチャートで解説します。ほぼ内部資料に近いものですが、業界全体として参考になればと思い、公開してしまいます。

 まず青い棒を見てください。就職したKaienの就労移行支援修了生が、どの程度当社を活用したかというものです。前述の通り平均の利用期間は9~10か月ですが、実は最頻値は7か月にあります。また2番目も8・9か月にあり、5・6か月という数字も高めです。これを見る限り実はある程度の人は半年少しぐらいで内定を勝ち得て就職していることがわかります。

 オレンジの折れ線に解説を移します。こちらは何パーセントの人が就職していっているかという累計です。50%を超すのが8・9か月。ただそのあともじりじりと就職が出て、オレンジの線がクイッと最後に上昇するのが1年6か月以降というのがわかります。就労移行支援の利用は最大2年間が原則です。このため、最後に尻に火がついて就活をして滑り込みセーフというようなケースが多いというわけです。

 当社の支援スタッフがギリギリまで支援をすることをさぼっているのか?それはないと思います。①~③で見る通り、利用者が多様化する中でも、就職者数・定着率そして給与面と全国トップレベルの働きをしているのは明らかです。それと、現在フルタイムの採用率は2%と驚くべき水準です。100人当社で働きたいと言ってくれて実際に働いているのは2人のみという精鋭です。いい気になってはいけませんが、そのぐらい当社で働きたいという人が多くいてくれてありがたいですし、気持ちと能力がある人が現場で力を発揮してくれていることはお伝えしたいと思います。

 ただし改善の余地があるのも明らかだといえましょう。特に3か月前後の超スピード就活を手助けする仕組みがまだ当社に弱いのではないか、7・8・9か月かかっている人たちを5・6・7か月など意識改革が必要でしょう。そのためには、早めに職業適性をアセスメントしてご本人に納得して就活モードに突入させる必要があるのだと思います。(もちろんゆっくり就活をしたほうが良い人もいます。昨日インテークをした人にも初めの6か月はとにかく就活を考えずに行きましょうとアドバイスしたばかりで、本当に人それぞれではあります。)

 改善の余地の最も大きいのは1年以上かかっている層、特に1年半以上かかっている層についてです。議論の簡略のために当社の力不足を棚に上げ、発達障害の特性的に説明すると、ADHDの先送り癖、やる気スイッチが入らない特性が出ていると考えられます。ここは発達障害の支援でも難関中の難関ではあります。が、課題が難しいからこそ当社の出番と思いたいです。簡単にはいかず、来年のこの場の報告でも苦戦を強いられていることをお伝えすることになってしまうかもしれません。それでも、支援者の個の力を上げて、就活意欲を高められる就労移行支援事業所を作っていきたいと思います。

 来年は7か月ぐらいに利用月数を下げることが目標です。

⑤ 中退率が20%を超えるという事態

 今回集計していて最も悲しかったのがこの中退率です。昨年までは計算していませんでした。(社会的な価値の指標ではこの数字は直接は用いないためです。)ただし元データをいじっていると「自主退所」の文字が目立つなと思い、調べ始めました。そしてため息を何度もしてしまう状態に気づきました。

 中退率の定義は、就労移行支援に入ったものの、就職に至らず、途中で当社の訓練をやめていく人の割合です。この”中退”の中には、就労継続A型・B型に移る人が含まれています。ですがそれはごくごくわずか(5人程度)で、中退率を数パーセント変える要因にすぎません。中退のほとんどの場合は、体調不良、精神的な不調、つまり二次障害やご家庭のトラブルによって、就労移行支援に来られなくなってしまう人です。

 就労移行支援事業の”中退率”は、当社以外ではまず見たことがなく、業界の人が語っていることも聞いたことがありません。経営上、公開するのはリスクがあるので(※この支援事業所は扱いがうまくないというメッセージを与えかねないので)ある意味タブーなのかもしれません。あるいは「障害者だから、それは難しい人もいるでしょう」ということで、一定程度の人はドロップアウトするのは常識だからあまり注目されていない数字なのかもしれません。

 でも、うちの場合は、今最低でも4か月、長いと半年以上待機して、ようやく就労移行支援に入ってきてもらっています。今後事業所は引き続き増やす計画をしています。ですので、待期の期間は縮まる予定ですし、それでも短期的には、かなりお待ちいただいた後、ようやく待ちかねて利用を始めていただく状態に大きく変わりはないでしょう。

 それが途中で辞めざるを得ないのはやはり忍びない、もう少し何かできないのかと思ってしまいます。以前はこの数字は15%を少し超えるぐらいでした。今年は25%です。4人に一人です。多いですよね。本当に申し訳ありません。個人的にとても残念で、悔しいです。

 言い訳をさせていただくと、中退率が0%というのもややおかしいと思うのです。挑戦させていないということですから。実際、発達障害の人の中には、「本当にこの人就職できるかなぁ」という人が少なくないのは事実です。また繰り返しになりますが、当社を頼ってくれる人が本当に多様化していて、以前よりも難しい応対が増えているのは確かです。

 なので確実に就職につなげられる人だけを支援していけばもちろん数字は改善するでしょう。でもそれでは福祉の意味がない。やはりしっかりと下支えをするという理念は保っていたいものです。ですので、厳しい戦いになることを理解したうえで就労移行支援で頑張っていこう、という姿勢は堅持していきたいと思います。

二次障害への対応力を高める Kaienとしてのコミットメント

 じゃあ、どうすんのよ、ということですが、まだわかりません。少し考えたいですし、当社内でほかのスタッフにも知恵を絞って、行動につなげてもらおうと思います。

 困難ケースへの対応は、この業界で5年・10年と重ねないと対応力がつかないという現実もあります。当社の現在の最大の経営テーマは現場の支援力の向上です。図らずも経営方針は正しいのが今回の中退率の上昇で浮き彫りになりました。5・10年を2・3年で学べないか、スタッフの成長速度と成長の深さを手助けする経営をしないといけません。

 当社は相談支援事業も持っています。事前にあるいは利用開始後に困難性が予想される利用者については、通常の体制だけではなく、経験豊富なスタッフがつく体制を整えているのですが、それもまだ不十分なのだと思います。一人一人が支援の力をつけていく必要が本当にあるなと思いますし、早めに本人の異変に気付き、介入の手段を当社のシステムにいくつか用意しておく必要があるのだと思います。

 この中退率は業界はどのぐらいなのでしょうか?そういえば某企業が一人就職すると2人利用者の呼びかけをすると聞いたことがあります。普通に考えるとその会社は50%の中退率を予想しているということになります。そのぐらいなのでしょうか?25%という今年の当社の数字はかなりまともと言えるのでしょうか?来年またご報告させてください。

⑥ 当社の今年の社会的価値 2.7億円/年→1,700万円/年

 さて、そもそもこのブログは当社の社会的価値がどのぐらいあったのかをお伝えするために書き始めたものでした。この社会的価値は当社オリジナルの計算方法です。当社や修了生、スタッフが税金などで収めたり、修了生が生活保護を脱して国庫の負担が減ったりして社会に貢献した額から、当社が税金を使わせてもらった部分(当社の主力は障害福祉事業でそれらの売り上げは自治体に請求している)を差し引いた額です。当社のウェブサイトにも掲載しています。

 計算方法:会社納税額+社員納税額+Kaien経由就職者納税額(未来分も含む現在価値)+生活保護減少額(未来分も含む現在価値)ー当社に投下された税金=社会的価値

 それがなんと10分の一以下になったのが今年です。理由は、①では就職者数が増えているとお伝えしましたが1拠点当たりの就職者数はわずかに落ちています。つまり効率が下がってしまったわけです。また、就職した人の給与が下がったのもわずかですが影響しています。こちらも彼らが払う税金の見込みが下がるからです。

 ただ何よりも大きなインパクトがあったのが、今年から子ども向けサービスの税金投下分も計算に入れたことがあります。自分で計算式を変えたというのが理由です。

 発達障害のある子どもへの支援である放課後等デイサービスは明確な成果をとらえづらいんです。具体的に言うと当社には400人余りの小中高生が通っていますが、そのうちこの1年で就職したのは10人ぐらいです。就職だけを成果とみる(今の当社の)社会的価値の算出方法だと、圧倒的に税金を食いつぶすサービスとなってしまっています。

 念のため付け加えると当社の創業以来の社会的価値の累計額6.1億円から5.6億円に下がりました。なんだかおかしく感じられるかもしれませんが、割引という将来にわたって就職した人が払うであろう税金などを割引率で現在価値で戻しているので過去の分も影響を受けてしまいます。非常にアカデミックというか数学的というかで申し訳ないですが、式に入れるとこのような結果となったわけです。

 ブログを書き始めてからおそらく2時間か3時間がたちました。この後は、2段落上に書いた子どものサービスの価値をどう捉えればよいかを書こうと思うのですが(放課後等デイサービスにこの勢いで税金を投入してよいのか、よいならばどういうことを放デイは目指すべきかのか、やはり税金の投入が過度ならばどのような政策をとってほしいかなど)、さすがにこの記事が重くなってきたので、いったん前編として切り、~2016年を振り返る 後編~として(元気があったら)明日続きとして書きたいと思います。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

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インターンシップを活用したキャリア支援の可能性は? 発達障害のある大学生・院生の就活支援

 昨日の『50%の内定獲得は高いか低いか? 発達障害のある大学生の 「2016 就活戦線」』のスタッフブログに続いて、発達障害のある大学生ネタの連投です。

 先日、筑波大学と日本学生支援機構が主催した「大学における発達障害学生への修学支援とコンプライアンスについて考える」が、なぜか(つくばから遠い)大阪で開かれて、日ごろのお付き合いもあり、鈴木が招かれて登壇してきたのですが、その時の資料が早くも学生支援機構のウェブサイトにアップされています。→ こちら

 僕は分科会①のAにお邪魔したのですが、こちらが伝える内容よりも、参加いただいた全国の大学の職員の方の視点や実話がとても参考になり、勉強になった時間でした。それにしても『「十分満足した」が46.0%、「概ね満足した」が53.2%で全体の満足度は99.2%にのぼった。』ということで、満足度がとても高いイベントだったようで、驚きです。

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Kaienの新取締役・執行役員 ”ウルトラフラット”から”会社組織”への脱皮 あわせて就労支援事業の責任者(執行役員候補)も募集

 今日は株主総会でした。

 創業以来7年間、正式な管理職を置かず、社長の僕以外は超フラットな組織で事業を展開してきました。が、すでに社員は170人近く。毎月の利用者は1000人に迫ってきています。会社としてより成長し、良いサービスを深く広く伝えるには、そろそろ会社の組織化をすべきだと気づきました。

 そこで今回の株主総会で新しい取締役を選び、同時に執行役員も任命。形として鈴木商店から卒業です。今後は形だけではなく実も入れていきます。

 会社概要 → https://corp.kaien-lab.com/company/profile

 これまで取締役は僕と、社外取締役2人の合計3名でした。今日からは経営本部を担当する須賀が取締役と執行役員を兼ねる形に、またTEENS(教育事業) の担当は飯島が執行役員として舵を取ります。

 本来ならば新役員との写真がここであるべきですが用意できず・・・でも今後、当社サイトのインタビューコーナー「懸け橋」で対談・鼎談を予定しています。

 なお、執行役員の中でも発達障害のある大人向けの就労支援事業 はしばらく僕が兼ねる形に。ただしこれは一時的な措置で事業の責任者(就労支援事業の執行役員候補)を今探しています。自薦他薦問いませんのでぜひご一報ください。今後当社が大きく飛躍するうえで、核となる存在になってもらいたいと思います。

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全国一の発達障害者支援センター 島根県東部発達障害者支援センター ウィッシュさんの講演にお呼ばれしました。

 人前でしゃべる機会がめっきり減りました…。以前は年間20~30ぐらいの講演を頼まれていましたが、今は年間数えるほどになりました。講演依頼があっても社員が行きたいと言ってくれるからということもありますが、発達障害のブームがある程度落ち着いたのだと感じています。

それでもなお、発達障害の関連の講演依頼がありましたら、当社までお尋ねください!!僕が伺えるかもしれませんし、当社の社員が喋ってくれるかもしれません。 → https://corp.kaien-lab.com/lecture

島根初上陸

 そんな中、だいぶ前(半年ぐらい前でしたか…)からアポを取っていただいていた島根県東部発達障害者支援センター ウィッシュさんの講演会にお呼ばれして日帰り(のはずだったのですが…)に行ってきました。島根初上陸です!

 個人的には高校野球の知識しかなく、ソフトバンクの和田投手の出身って島根ですよね!とか、江の川高校ってありましたよね、とか、そういう話題しかなかったのですが…。

 写真は往復で利用した(島根ではなく鳥取の)米子鬼太郎空港に行くための電車の車内です。早朝ですので誰もいませんでしたので、ねずみ男が何人もお出迎えしてくれました。鳥取と島根は関東の人間からするとなかなか判別が難儀です(ゴメンナサイ)。

発達障害者支援センターがカバーする人口はかなり異なる

 聞くところによると、カバーしている島根県の東部(島根は東西に長く約200キロなので、2つの支援センターがある)は人口40万人ほど。東京は1つの支援センター(TOSCA)で1000万人以上を担当していて苦しそうですし、首都圏で人口比としては充実しているなと思う川崎の支援センターでも担当地域の人口は100万人います。センター当たりのスタッフ数はそれほど変わりませんので、センター毎に担当する人口によって支援の充実度はどうしても影響を受けます。

 一方で、地方に行くと支援者を育成する機関が少なく、都会ほど人員の確保が容易ではありません。例えば都内ではたくさんの福祉関係の大学や専門学校がありますが、ほとんどない県も少なくありません。そんな中40万の人口をカバーする島根東部のセンターがどの程度地域のニーズにこたえられているのか…と思っていたのですが、講演の前後で様々な人に会い、大変充実した支援で驚きました。

 もしかしたら全国一かもしれない、そのぐらい際立った良質な支援だと思います。

 ウィッシュさんの場合は正直なところ働いているセンター長やスタッフが優秀という部分が大きいと思ったのですが(※福祉もほかの業界と同じく人材不足でして…)、数十万人に一つの支援センターという人口比もうらやましく感じました。このぐらいがちょうど良い塩梅なのかもしれません。首都圏もこのぐらいの人口比で支援センターがあると目が届きやすいのでしょうね。

地方の発達障害児者の支援

 帰りの飛行機が、数十年に一度の豪雪に見舞われた北海道・千歳からの便を利用するはずだった関係で、残念ながら欠航となってしまい、日帰り出張のはずが、空港にほど近い境港市(こちらも島根ではなく鳥取)で夜2時の露天風呂と、港に映える美しい朝焼けを拝むという予想外の展開。睡眠不足を強いられましたが、思いのほか楽しめました。

 個人的にはNHK時代に首都圏以外(鹿児島・仙台)に6年住まわせてもらった経験などのため、地方の問題解決には都内在住者としては関心が高いのです。”過疎化”という言葉が次第に死語になり、”人口減”というより切迫感のある言葉で語られる中、地方でも人数が増えているのが”発達障害児者”。当社も何らかの貢献ができればなと再確認させられる出張でした。

採用説明会を開催 発達障害の「強み」を生かすインターン! (三鷹・御茶ノ水勤務可の方を歓迎します)

TEENSのインターンは、発達に凸凹のあるお子様の学習支援や生活支援に入るだけではなく、お仕事体験での上司役や、プログラム作成、営業など、個々の興味・能力に応じてビジネスと福祉の両方の最前線を体験できる、要求度の高いインターンです。お客様を「満足」させるだけではなく、「感動」レベルまで高めることを目指す学生を募集しています。特に三鷹・御茶ノ水拠点で働ける方を歓迎します。

インターンへの応募はオンラインフォームから随時可能ですが、応募の前にまずしっかり話を聞きたい、現場を見たいという声にお答えし、インターン採用説明会を開催します。インターンから正社員への採用も毎年複数名行っていますので、将来TEENSでフルタイムで働きたいという方は特にこの機会にご参加ください。

図1

インターン採用説明会 2017年2月

  • 日 時: 2017年2月12日 (日曜) 10:30~12:00
  • 場 所: Kaien新宿 (アクセス地図) 
    ※新宿には当社事業所が3つあります。間違えないようにお越しください。
  • 内 容:
     Kaienの会社説明、TEENSのサービス説明(20分)
     発達障害体験ゲーム(30分)
     現インターンとの座談会など(30分)
     質疑応答・面接の日取り決め(希望者のみ)
  • お申込みフォーム: こちら

TEENSインターンで得られる経験

  • 発達障害支援の最前線に携われる経験
  • 子ども達の成長を間近で見られる経験
  • ソーシャルベンチャーの中で0から1を作り上げる経験
  • 基本的なビジネススキルが身につけられる経験
  • ビジネスと福祉のバランス感覚を感じられる経験
  • 試行錯誤(トライアンドエラー)しながら事業を作り上げる経験
  • ソーシャルベンチャーの第一線で活躍する上司と一緒に働ける経験

内容・条件

詳しい職務内容は採用サイトのインターン特集をぜひご覧ください。

  • 内容:平日の学習支援 週末の”お仕事体験”アシスタント 経営企画他
  • 給与:1,000円〜1,500円/時(※実績に応じて変化します) 交通費支給
  • シフト:平日15:00〜20:00 休日9:00〜18:00 
  • 歓迎:週1以上シフトに入れる方 半年以上勤務できる方 を特に募集しています
  • その他:インターンを経て正社員への登用制度あり

再掲 ご応募

  • 今回のインターン採用説明会へのご参加 → こちら
  • 説明会を経由せず、直接インターンにご応募 → こちら
  • その他、TEENSの採用情報(含・フルタイム情報) → こちら

障害児の就学支援 障害に合わせたガイドライン作成について ガイドラインよりも市場原理では?

2000億円の税投入の価値があるのか?

 厚労省が、各地の行政が、障害児に向けたサービスの質の悪化について懸念を抱いているようです。

 障害児支援の在り方に関する検討会も2年前に開かれましたし、昨年は障害児通所支援に関するガイドライン策定検討会が開かれてガイドラインが策定されました。ここ最近もNHKで『障害児の就学支援 障害に合わせたガイドライン作成へ』というニュースが出ています。厚労省が行った「第1回児童発達支援に関するガイドライン策定検討会」(2016年11月28日開催)についてです。検討会で配布された資料はこちらです。

 資料を見ればわかりますが、障害児向けに税金が(自己負担を1割程度だとしても)2000億円ほど投入されているものの、他方で障害児支援がどのように価値ある税金の使い方になっているかが制度創設以来の課題なのだと思います。

児童発達支援
クリックで拡大します(厚労省資料より)

 以前も書いた通り、当社も放課後等デイサービスをしています。個人的にも税金をいかに使っている業界なのかは説明責任があると思っていますし、厚労省と同じように業界が変なサービスによって席巻されそうな危機感があるのは確かです。(参考:親としてできること 支援者としてできること 経営者としてできること

 ただ個人的には厚労省や検討会の方向とは違うほうになってほしいなと思っています。

そもそも何が問題か?経営者と支援者だけが悪いのか?

 今問題が何なのかは明らかです。①障害福祉の意義を理解していない経営者が多く、②支援の力を育む環境がないなかで支援者が雇われ続け、③お預かり程度で良しとする保護者が多い中で、レベルの低いサービスが放置されている、ということだと思います。

 とくに①・②への批判が強いことがわかります。実際資料を見ても、ガイドラインを見ても、そして報道を見ても、”株式会社”など拝金主義の経営によって崇高な福祉の世界が汚されているのではないか? きちんとした支援というのがわからない中で現場で働かないといけない人が支援者として育っていないのではないか?、ということが直接・間接的に書かれているように思います。

 ただ僕が思うのは上述の③もかなり多いと思います。つまり(専門家が見ると)レベルの低いサービス(つまり障害の特性を理解してその子の力を伸ばしてくれるようなサービスではなく、単なるお預かりの機能)で良しとする人が多いのだと思います。障害のある子どもがいても、じゃあこの子の人生のためにできる限りをしようと思える親は実は少数で、ご自身の生活が精いっぱいということもあって子どものことまで気持ちが追いつかず、数時間預けられればそれが良い(むしろそれが第一の希望)という人が多いのだと思います。

ガイドラインよりも制度設計では?

 ただし個人的には①・②を補正しようとしたり、③を教化しようとしても難しいのではないかという感覚です。むしろそもそも制度設計に仕掛けが必要なのではないかと思います。つまりガイドラインではなく、報酬単価をいじくってほしいということです。

 以下僕の考えのまとめです。

 なぜ①が出るのかというと、素人でも簡単に儲かるからです。実際「放デイ」「フランチャイズ」とGoogle検索をしてみてください。たちまち様々なフランチャイズ経営が出てくると思います。

 つまり「自分、経営したいな、金持ちになりたいな、社長になりたいな」と思う人が、カラオケボックスしようか、コンビニしようか、居酒屋しようか、というときに、放デイしようかという選択肢がある時代になっているのです。

 フランチャイズを募集するページには「どれだけ有望な市場か、儲かるか、初期投資が少ないか、リスクが少ないか」という、御幣を恐れずに言うと金儲け目線で彩られています。そういう条件に惹かれる人が、福祉事業所を経営するとそれは今までの福祉系とは違ったカラーになるでしょうということです。

 だが、さすがに「なので儲からないようにしてください」とは、福祉の経営者としては言えません。じゃあどうしてほしいのかというと、「いいサービスじゃないと参入できないようにしてほしい」というのが僕のメッセージです。だから「ガイドラインなんですよ!!鈴木さん!!」と思われるかもしれませんが、ガイドラインを伝えて素直に従うような事業者だったらすでにしているはず。対策はそうじゃないと思うのです。

 簡単に言うと僕は価格をいじればよいと思っています。

放デイや児童発達支援の”経済学”を理解した「毒を以て毒を制す」作戦

 今はお子様が通うと1回ごとに1万円が事業者に入ります。ただし1万円のうち税金は9千円、自己負担は1割ですので、つまり親の負担は1千円のみです。通常、障害のない子のお預かりでは1日に数千円はかかると思います。それが何時間居ても1千円なのですから、やはりどんな劣悪なサービスでも、一般の学童保育を使うよりも、放デイを使うという選択肢が親としては魅力的に見えるでしょう。なにせ圧倒的に安いですから。。。かつ一般の学童保育などよりも放デイのほうが障害を最低限は理解してくれるというところもあるでしょうから。。。

 そこで僕の提言は自己負担を上げるということです。

 例えば保護者の負担を3割負担とか5割負担にすればどうでしょうか?そうすれば(A)税金の負担も減りますし、(B)事業者の売り上げも減りません。保護者の負担は増えるわけですが、1千円ぐらいの質ではサービスを使わなくなり、3千円や5千円の価値のあるサービスじゃないと、子どもを任せるということはなくなるでしょう。

 つまり消費者からの目が厳しくなります。そうすれば市場原理に生き残れる質の高いサービスだけが業界に残ると思います。この市場原理に任せることこそが、小泉政権のころに大変革をした自立支援法の精神に基づく部分だと思いますし、専門家や厚労省の人が求める質の高い支援が残ると個人的には思います。

 一部の方は低所得層の人が障害福祉サービスを使えなくなるのではという懸念を抱く方もいると思いますが、実はそれはそれほど心配ありません。というのも所得に応じて、今の制度でも、上限制限があります。つまり1回あたり3千円になったとしても、ある一定の所得以下の人は、月額○○円以上は払わなくてもよいですよという上限があるのです。(つまり上限に一度達すると、その月の中ではそれ以上は何回福祉サービスを使っても追加料金なしという制度です。)

 自己負担を上げるというのは決して奇想天外な考えではありません。すでに高齢者の医療費の自己負担を増やそうという動きは厚労省で出ていて、自己負担+税金+(保険料)の仕組みである医療・福祉の世界では自己負担のパーセンテージを変えるというのは、今後の税金負担を減らす一つの方策であるのは事実です。(参考:高齢者の医療費 自己負担上限引き上げ措置示す

 悪質経営者が市場の原理の抜け穴を活用して儲けていて、厚労省の意図を崩すのならば、その市場原理という”毒を以て毒を制す”ではないですがそういう刀の返し方が有効なのではないかなと思っている次第です。

岐阜市の放デイ”いろえんぴつ” TEENSのパートナーに

 岩手一関・仙台・熊本で受けられるTEENSのプログラム。2016年12月からは岐阜で参加団体が増えることになりました。特定非営利活動法人きらきら が運営する放課後等デイサービス ”いろえんぴつ” です。詳しくは関連サイトをご確認ください。

関連サイト

グリービジネスオペレーションズ社での雇用管理に見る大人の発達障害の応用行動分析学 褒めて伸ばすは大人の発達障害、特例子会社にも有効だった

 ガクプロblank_blueTEENSblank_blueの親御さんと行く特例子会社。前回は六本木の特例子会社に訪問しました。その時のレポートはこちら

 第2弾の今回は横浜へ。当社が創業当初からお付き合いしている、今年度障害者雇用の世界で「優秀賞」を獲得したGBOことグリービジネスオペレーションズ社(グリーの特例子会社)を訪問しました。

 福田社長自らが1時間たっぷり説明いただきました。立ち上げ当時から現場責任者である竹内様にもアテンドいただいたほか、当社出身の2人のスタッフによる業務説明もあり2時間があっという間に過ぎ去りました。たった10人の参加者にも関わらず大盤振る舞いをしていただき深謝です <(_ _)>

 なお、今回は当社に通う利用者の親御様限定イベントでしたが約100人の希望が殺到しました。それを福田社長に伝えると、「じゃあ10回やりましょう!!」と言っていただき、リップサービスだとしても、ポジティブにさくっと応じられるところに尊敬を感じました。

 それにしても、GBO社に行くたびに思いますが、本当にきれいなオフィスなんですよね。特例子会社では日本一の美しさかもしれません。

gbo

 

 以下今回参加したみなさんや僕自身の感想も交えながら簡単に振り返ります。

 グリーさんのイメージが変わりました。(保護者)

 グリー社に限らないと思いますが、スマホのゲーム会社というと、どこかチャラチャラした感じとか、まじめさがない感じとか、短期的な視野で社会を見ているとか、拝金主義とか、ネガティブなイメージを感じる方は多いと思います。特にコンプガチャの一件では業界がかなり傷つきました。

 それらを否定するわけではないですが、今回参加した親御様の中では大きくグリー社のイメージが変わったようです。なぜかというと、障害にしっかり向き合って、彼らの良さを引き出そうと社長も真剣だし、現場担当者もやる気をもって動いているし、なにより当事者たちが生き生きして未来を語っている姿を目の当たりにしたからだと思います。

 こういう会社が悪いわけないよね・・・。テレビCMやネットニュースだけではわからないグリー社や(その特例子会社である)グリービジネスオペレーションズ社の一面が、社員を通して、現場を見られてわかったということだと思います。そしてそれがおそらく参加いただいた10人の参加者によってちょっとずつ社会に伝播していく。というのがGBO社にとってもよかったと思います。

うちの子には無理・・・ 。(保護者)

 GBO社の業務は設立された4年前から見ていますが、本当に大きく発展しています。今回参加した親御さんたちは、「清掃」「データ入力」「封入作業」「組立作業」などを予想していた方が多いようなのですが、「私(親)でも出来ない・・・」というような高度な業務が多く、圧倒され、打ちのめされたようです。

 僕としても「販売前ゲームのデバッグ」などグリー社っぽい部分は想定内でしたが、「アバターのアイテムのネーミング」(何言っているかわからないかもしれませんが、かなりクリエイティブな作業でした)とか、「デザイナーさんに発注するシートにイメージ画を張り付ける」(これも結構根気がいるし、想像力が必要な業務)があったりして、マジで・・・、という感じがありました。

 ガクプロやTEENSに通うお子さんは日々の勉強にも四苦八苦する子が多く、とてもうちの子にはと思われた親御さんばかりだったようです。たしかに知的能力がある程度左右するところもあり、すべてのお子さんが将来できるかというとわかりませんが、働いている人たちが自分たちでも言っていた通り、「多くの人が数週間や数か月でできる業務が多い」ということだと思います。

 実際当社で行っている就労移行支援blank_blueのレベルと極端に違うわけではありません。むしろGBO社の皆さんが強調されていた通り、やる気があるかとか、成長する気持ちがあるか、という働く意欲が重要だろうなと思いました。

やりたいと思った業務を、上司が取ってきてくれる。(社員)

 正直、これに一番感動しました。そうなんだ、みんなやる気持って働いているのは、自分がやりたいな、と思った業務ができているからなんだ、ということですね。特例子会社での仕事は親会社の業務から切り出している場合が多いのですが、先に書いた通り「データ入力」や「封入作業」、「メール配送」などが多く付加価値が低めです。

 でもGBO社では本社で行っている業務で「これって外部の業者に出しているけどGBOでできない?」、「これってアルバイト雇ってやっているけど非効率じゃない」というのを(本社に基本的には属している)GBO社の社長が取ってきてくれるそうなのです。そりゃ社員のやる気も上がるよな、という感じでした。

要は応用行動分析だな (鈴木)

 最後は僕の感想です。

 今日の訪問までGBO社が職場改善の優秀賞を取ったのは「障害の弱みを補正する」という部分なのかなぁと勝手に思っていました。でもそれが間違えであることに気づきました。

 古典的な障害者雇用というのは「どうしたら離職率を下げられるか」「どうしたらパニックを防げるか」「どうしたらミスを減らせるか」「どうしたら数少ないできることを見つけられるか」みたいなネガティブな面を少なくするというアプローチが多かったように思います。でもGBO社は違うんだなと。

 もちろん、これまでうまくいっている特例子会社というのは「ほめて伸ばす」が得意だったはずです。でもIT・ゲームという優秀な技術者を確保し定着させる、つまり人材戦略で世界としのぎを削っているグリー社が親会社だからこそ、短い間でその人をやる気にさせて、一人だけではなく組織として目標をもって、ポジティブなオーラで職場を包んで革新を生む、というような業界に蓄えられた人材戦略が洗練されているはず。そして親会社の人材管理術が特例子会社にも確実に落ちているというのをビンビンに感じました。

 で、「ははぁ、これって、応用行動分析(ABA)だ」と今日気づいたわけです。以下図を借用した(児童発達支援をしている)NPO法人ADDSさんのウェブサイトにもありますが、応用行動分析(ABA)というのは「発達障害児」以外にも幅広く人や組織の行動を良質なものにするために科学的に証明された方法です。

 でもなんで「発達障害児」の文脈でよく出てくるのか、「発達障害児」に効きやすいかというと、この仕組み(刺激・反応・強化子等)が入りやすい『素直』で『染まりやすい』傾向が発達障害の特性としてあるからなんじゃないかと思ったわけです。

 で、GBO社で思ったのは、大人の発達障害の人も応用行動分析(ABA)がはまりやすい。つまり褒められてある特定の行動がどんどん強化されていく、という仕組みに乗りやすい特徴があるので、普通の企業よりもモチベーションアップの仕組みが組織的に導入しやすく、ネガティブな面を気にするよりも、いかにスモールステップでポジティブな行動を増やしていくかを仕組化したほうが良いのではないかということに気づきました。

 例えばGBOでは勤怠を上げるために、3か月皆勤賞だと皆勤賞カードを配っているそうで、しかも4つ溜まるとゴールドカード(簡単なトークンですね)になり、かつ正社員化にも組み込まれているということで、まさに強化子バリバリ活用されているという印象です。これって普通の会社だと「馬鹿らしくない?」とか言われそうですが、発達障害の人だからこそ、素直に入っていってくれる気がしました。

NPO法人ADDSさんによる応用行動分析(ABA)の説明 

 当たり前のようなことを書いているように聞こえるかもしれませんが、発達障害の人だからこそ、子どもでも大人でも応用行動分析(ABA)が効きやすく、ネガティブなことが語られやすい障害者雇用の分野で「ほめて伸ばす」という理論を実践の場から教えられた気がしてとても有意義な時間でした。さすが受賞企業は違います。

 明日は大阪で講演です。山手線はまだまだ大丈夫ですが、これから帰って5時起きです。今日の発見を大阪でも早速伝えていきたいと思います。

関連ページ

 

「なんだこれ!?」と驚いたKaienの支援 ~懸け橋 第3回~ TEENS川崎 エイブルシーカー 大嶺あきな

 お子さんがTEENSに来て、いやな気持ちで時間を過ごすのはもったいないと思うんです。だから、少しでもモチベーションをあげて取り組んでいけるのかいつも考えています。支援の中でハッとひらめいた方法で、お子さんが積極的に課題に取り組めるようになると自分がいる意味があるんだなと思います。

 インタビューシリーズ”懸け橋”。3回目は放課後等デイサービス TEENSのエイブルシーカー 大嶺あきなさんにお話を伺いました。

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自分の見立てや支援に悩んだ言語聴覚士時代

 言語聴覚士として8年間、北海道の病院で、未就学から低学年のお子さんの療育に関わっていました。私のところに来るお子さんの親御さんは発達障害に詳しいわけではなかったです。だから、療育を通して伝えたことを自宅でも一生懸命取り組んでもらって、それが目に見える効果となって表われることはとてもうれしかったです。

 でも、ほとんどのお子さんが通って来るのは月に1回とか2回。だから、本当に私の見立てや支援がどのくらい効果的だったかというと自信は持てませんでした。また、自分一人で見立てて支援策を考えるので、本当にこれで効果のある支援ができるのかと悩むことも多かったですね。

 30歳くらいになって、周りが結婚・出産をしていく中で自分の生き方について考えました。そう考えた時、私は家族のためにお金を稼ぐ必要もないし、引っ越しだって自由にできる。だから働く場所もこだわらなくていいし、資格にこだわらない支援の仕事も選べるんだと思うようになりました。そんな自由な気持ちの中で見つけたのが、東京にあるKaienでした。

「なんだこれ!?」と驚いたKaienの支援

 一番惹かれたのは「お仕事体験」でした。今までは「遊び」を通じて楽しく学ぶ支援だったので、全然違う視点に興味がわきました。

 実際に働きだしたら、これまで私がおこなってきた「支援」という枠組みとは全く逆のアプローチで子ども達に接していることにとても驚きました。前職ではそれぞれのお子さんの課題に合わせたオーダーメイドの訓練をする、という流れでしたが、ここでは「お仕事体験」「学習支援」などの枠組みが最初にあって、そこから支援が始まります。よく言われる「構造化(見てわかる支援)」もそれほど強調されていなかったり、「楽しく学ぶ」ではなく「よりリアルな社会」を体現できるようにカチッキチッとした緊張感がありました。

 最初はこのようなアプローチに戸惑ったのが正直なところです。前職は早いうちに診断を受けていて、本人も家族も「障害児」として受け止めている人たちが多かったので。でも、TEENSのお子さんたちの多くは「通常級」にいて、いわゆるグレーゾーンにいる子たちが多い。つまりTEENSのお子さんたちは、将来必ずしも発達障害に詳しい人たちばかりではない環境、完全に構造化されていない社会で働くことがあるんです。だから「あ、そっか。だからこういう支援が必要なんだ」とストンと落ちました。

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閃いた方法が上手くいくと、自分がいる意味があるんだなと感じる

 TEENSには「勉強がイヤだ!」と言って来る子が多いです。学校では「いつもみんなよりできない」、家でも勉強ができなくてしかられる、そういう苦手なことをしにくるわけですから、イヤですよね(笑) でも、せっかく来るんだったらイヤな気持ちで過ごすのってもったいないなって思うんです。だから、少しでもやる気になってもらえるようにしたくて、どうしたらモチベーションが上がってやる気になるのか、常に考えてます。

 先日も、市販の教材では全然取り組めないお子さんに対して、「書く教材」ではなく「手を動かして並べ替える教材」をその場で一緒に作ったら、積極的に問題を解くようになったんです。ちょっと視点を変えて閃いた方法で、お子さんがやる気になったり、積極的に取り組めるようになったりすると、自分がいる意味があるんだなと思います。

 

同じ拠点で相談出来たり、助け合ったりできるのは働きやすいと思う

 私は遊ぶのが好きだし、一緒に楽しみたいと思っちゃうんです。だから、小さいお子さんはうまく気持ちを乗せて、課題に取り組んでもらえるように工夫をしていけるんです。でも、中学生・高校生のお子さんの中には淡々とした口調で接する必要のある子もいたり、私自身もその子の人生に必要かわからない勉強の意味を問われたりすると上手に答えられなかったり、戸惑ってしまうことがあります。そんな私を見てか、あるお子さんは別のスタッフにはピシっと背筋を伸ばして話すのに、私の前ではふざけてしまうんです。そんなふうに困ったなという状況にもなると、拠点のみんなで話し合って、その子の支援において自分の役割を確認するようにしています。みんなが無理に一つの支援をするのではなく、みんなでそれぞれの強みを活かしながら支援ができるのはとてもやりやすいです。

大嶺あきな TEENS川崎 エイブルシーカー

  • 出身 北海道北見市
  • 幼少期 4人きょうだいと10数人のいとこに囲まれ、にぎやかな環境で遊びながら育つ。
  • 小学時代 将来なりたい職業は「小学校の先生」。一番身近な職業人だったのかもしれない。
  • 高校時代 作業療法士をしていた姉の影響で医療や福祉の分野にも関心を持つようになり言語聴覚士の道を選ぶ。
  • 専門学校修了後 言語聴覚士として北海道の病院に8年勤務。

ガクプロ・TEENSの親御さんと特例子会社見学ツアー Kaienとお付き合いのある発達障害の人が働く職場訪問

 KaienではMeetup(ミートアップ)というセミナーを不定期に開催しています。

 昨日金曜はガクプロblank_blue(発達障害のある大学生・専門学校生向けの就活サークル)とTEENSblank_blue(発達凸凹のあるお子様向けの学習支援&お仕事体験)の親御様限定のイベントである『特例子会社 見学ツアー』の第1弾で六本木まで行ってきました。

 具体的な企業名は公開してよいか確認し漏れてしまいましたが、当社の就労移行支援blank_blueの修了生が相当数になっている企業さんです。1,2年前に修了した懐かしい顔に会えて、かつ彼らが成長していて感慨深いものがありました。

 この仕事をしていて一番うれしいことは何ですかと聞かれることがありますが、就職した時よりも、その後に会ったときに成長を見られる時がやはり良いです。山谷ありながら目的や楽しみをもって一日一日働くのは就活で内定もらうよりも難しいですからね。

 それにしても単なる特例子会社の訪問ではなく、さすがに急成長されている会社で(障害や特例という言葉を抜きにして)経営や人材育成、一人一人とのコミュニケーションというあたりでとても参考になりました。

 帰りは創業の地、麻布十番によって帰りました。個人的には発達障害に関する啓発はこういうブログなどよりも一人一人社会で(御幣を恐れずに言うと普通に)活躍する人をコツコツ増やしていくことが一番効くと思い続けています。特例子会社ではその”作品集”を見ることが出来ましたし、その出発点となった麻布十番に寄って初志を確認できたのもあり、収穫の多い一日でした。

麻布十番 Kaien
このビルの一室でKaienは始まりました。

 

 さて、この「特例子会社見学ツアー」は第2弾もすでに満席になっています。そもそも満席を超えて、応募倍率が10倍近くに達してしまいました。保護者の方が(通常なかなか見学できない)特例子会社を見てみたい、うちの子が働く様子をイメージしたい、というニーズは強いなと感じています。先方企業の方の負担が大きいのでちょっとずつですが、今後も少しずつ開催していく予定です。

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自閉症のサル 人間に懐かなかったり、自分の爪を頻繁にかんだりする研究用のニホンザルに着目

遺伝子操作ではない自閉症のサル

 ふと仕事の合間にネット記事を見ていたら見つけました。自閉症のサルだそうです。

 研究用に埼玉の和光市で飼われていたニホンザルに注目してということから始まったとのことですから、”研究”というよりも”観察”から始まったもののようです。今後リンクが無効になっちゃうかもしれないので、見つけられた記事をできるだけ貼り付けておきます。

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 日経の記事(もともとは共同の配信のようですが)によると

遺伝子操作をされていない動物での報告例はなく、世界で初めての確認とみられる。

ということで世界に先駆けた日本の発見であり、これは発達障害の研究面では結構珍しいことです。また、

脳の働きを詳しく調べると、他者の行動情報を処理する神経細胞が他のサルに比べ、非常に少なかった。また遺伝子解析では、自閉スペクトラム症と関連するとされる2つの遺伝子に変異があった。

 ということで、人の発症事例との関連もみられるということです。人間の自閉症の人の脳も、かなり深いところで(つまり他の動物との分化の前と思われる)違いがあるので、動物でもあるだろうなとは思っていましたが、こういう風に科学的に解明の端緒が見いだされると今後の医学や福祉の進歩にも影響してくるだろうなというリアル感があります。

遺伝子操作されたサルはすでに中国で

 なお、少しネットを調べてみたところ、中国では遺伝子を操作して自閉症のサルを作り出しているということが報道されています。

動物実験による自閉症の研究はこれまで、遺伝子、行動、生理機能の面で人間からかけ離れた動物種の実験用マウスに主に依存してきた。

遺伝子操作されたのはマカクザル。このサルは、同じジェスチャーを繰り返す常同行動や、不安を表す行動、社会的相互作用の欠如などの、人間の自閉症でみられるものと同様の行動を示すと、研究チームは論文に記している。

 動物になんてひどいことをという印象もなくはないですが、上に引用した通り、これまでもマウスではさんざん自閉症の解明のために行われてきているようで、医学的にはサルというのは自然な実験の流れなのでしょう。調査結果も非常に示唆的です。

調査の結果「円を描くように移動運動を繰り返す頻度の増加、不安の増大、社会的相互作用の低下」などの行動が観察された。また、調査対象のうちの1匹で、人為的に導入されたMECP2トランス遺伝子が子孫に伝えられ、子でも自閉症の行動がみられた。これは、遺伝子に自閉症の根源があるとする仮説の裏付けとなる結果だと、論文の執筆者らは指摘している。

 発達障害支援の世界にも、こうした遺伝子研究やAI、ARなどの新技術・最新研究がどんどん影響を及ぼすことになりそうです。

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発達障害のある大学生向け ”合理的配慮”の解説記事

 現在、大人の発達障害者向けサービスのウェブサイトにコツコツと新しい記事をアップしています。昨日今日で2つ記事をアップしました。

 ちょうど障害のある学生の修学支援に関する検討会blank_blueに委員として参加させていただいていることもあり、またガクプロという大学生・専門学校生向けのサービスの現場に携わっていることもあり、そして何よりも発達障害の大学生に関する情報は(だいぶ多くなってきた発達障害界隈の情報の中でも)圧倒的に不足しているため、個人的に大学に関する情報発信は力を入れています。

 今日アップしたのは「発達障害のある大学生向けの合理的配慮」についての記事。急に言われだした概念で、いったい何が変わって何が変わらないのかわからない方が多いと思います。自分での権利擁護というのがポイントであることをわかっていただきたいのですが、詳しくはぜひ記事を読んでください。渾身の力を込めて、綺麗な秋晴れにもかかわらず祝日の日中の時間を使って書きましたので、そのあたりも加味しながら読んでいただけるとありがたいです。。。

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大学生の発達障害blank_blue
学生生活・就職活動での困り感とその対応法をまとめました

合理的配慮とは 大学編blank_blue
発達障害のある大学生・院生の入試・学業・就活を合理的配慮の観点から考えます

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チームKaien @障害者就職面接会を引率 東京のハローワークで開催される一大イベントに久しぶりに参加しました

 おそらく3年ぶりぐらいだと思います。障害者就職面接会に行ってきました。

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 4カ月に一度、都内では大きな就職面接会が開催されます。ハローワークが主催する障害者枠の面接会です。後日、Kaienスタッフブログblank_blue で詳しい解説が記事にされると思いますが、とりあえず僕も行ってきました、という報告です。

 今回の役回りは基地担当。Kaienは都内に4拠点あり、大学生向けのガクプロblank_blue や、神奈川県の拠点の参加者・見学者もいるので、100人とは言わないまでも数十人の大所帯です。その人たちが最初と最後に報告をしてくれたり、何かあった時に緊急サポートをするための要員として働きました。忙しいのは始めと終わりだけかなと思ったのですが、ひっきりなしに訓練生が報告に来るので、トイレにもなかなか行けず…。あっという間に3時間の面接会が終わっていました。

 久方ぶりの参加での感想は、とても良かったというもの。発達障害の人はやはり純粋で一人一人必死にアピールをしているので、そういう一番美しい部分を見られたと思ったからです。発達障害の人の長所は、論理性とか、発想力とか言われますが、やはり僕はこういう真摯な純朴なところが良いと思いますし、労働者としても優秀なのはそういう特性ゆえだと思っています。

 最後に(一部の人は特性上忘れて帰ってしまうという予想通りの展開ではありましたが…)ほとんどの人はルール通り僕のところに報告に来てくれて、何が上手く行ったとか、何が意外だったかとか、次へ行かせることは何かを伝えてくれました。報告内容は、発達障害の特性を知らない人からすると、またその本人の苦労を知らないと、些細な事で、「え、そんなことが学び」とかのレベルではあるかもしれませんが、各人が報告してくれた一つ一つの気づきとか発見を素直に褒められたのは、自分としてもとても楽しかったです。

 ガクプロは現場に出ることが多いのですが、久しぶりに就労移行支援blank_blue の訓練生と密に接した気がします。 いつもはケース会議で1ヵ月の就活や就労移行支援の訓練の様子を聞いている(160人分です…)ので、名前を顔を見れば概ねどういう経歴かとかどういう課題かとかは頭に入っているのですが、実際にああこういう声で話すんだとか、表情ってこういう感じの幅がある人なんだとか、そういう言語になりにくい細かな情報があると一人一人がやっぱり可愛くなるというか、生き生きと自分の中で感じられます。

 「リーダーにとって現場は実情を知り、アイディアと情熱が湧く場所だけではなく、隠れて傷を癒す場所でもある。」 (宋文洲)というのを改めて実感しました。

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よっちゃんへの鎮魂歌 ~私とKaien 第11話~

 『私とKaien』は当社の就労移行支援を利用していた訓練修了生や、ガクプロやTEENSをご利用中のお子様を持つご家族など、Kaienと一緒に発達障害の魅力を世の中に広げていただいている方々へのインタビューシリーズです。

 第11話は、大学院修了後にKaienを利用し、就職したものの、その3か月後に自宅で心不全。27歳で帰らぬ人となった男性のお母さまにお話を伺いました。

何を感じているか、考えているか しゃべってくれない

 私もはじめは公務員だったんです。お父さんと一緒の職場。でも私も完璧にやりたいほうで、よっちゃんが2歳の時、専業主婦になりました。

 よっちゃんが小さい頃ですか。他のお子さんを避けているような。私に喜びを与えてくれないというのかな。動物が好きだったので、私が動物の絵を描いてトイレに貼っても、ミニ四駆が流行ったので夫婦で5時間かけて作ってあげても、いつも反応が乏しい。本当に喜んでいるのかな、と思いましたね。弟が6年後に生まれました。弟は嫌なことが言えたんです。でもよっちゃんはなかなか嫌と言わない。ああ違うんだなと思いました。

 塾に入ったら、受験のプレッシャーで円形に髪が抜けて。100円玉ぐらいです。学校でも、落ち着かない。急に席を立ったりする。手癖も悪くて、いつも手がおなかのあたりでもじもじしている。小学校の先生からは親の愛情が足りないといわれました。17年も前のことですけれどもね。友達に誘われて出たのが天才クイズというテレビ番組。殊勲賞をとったんです。脚光を浴びて、画面でも落ち着きのないのが見えましたけれども(笑)。なにかスイッチが入ったというのか、それから雷に当たったみたいにクイズにはまりましたね。

 数学に関しては割と答えがはっきり出るので、100点をとったりとか、天才と言われたりしてました。そこからそういう自分を守らないといけないと感じたんでしょうね。でも中3の時に周囲が勉強し始めて、どんどん抜かされる。本人は精神不安定になっていきました。

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すったもんだ 毎朝4時からの家族会議

 その頃カウンセリングに通い始めました。親子ではなく私だけです。よっちゃんは自分のことを語ってくれないし、父親はそれが個性じゃないかというし。でも私は正体がわからなくって。相談した内容は、子どもの考えがわからない時に、どういう言葉をかけたらよいのか、とかですね。私はいまだにカウンセリングに2週に1度は通っています。

 様子を見ていて中学生の弟が「にいちゃんて絶対変だけれども、僕も将来ああいうふうになるの?」の聞いてきたこともありました。兄弟ってそういう風に考えるんだなぁと。その時は、良いとも悪いとも、そうだとも、違うとも説明せず、人に多かれ少なかれ重なるところはあるよね、という話をしたと思います。

 大学は絶対に外に出ると頑として聞かない。うちにいると好きなクイズが出来ないということなのでしょう。でも親としては薬物とか宗教とかお金とかが心配。浪人もしましたし、私が癌がわかって将来がわからなくなった時と重なって、すったもんだ。家がめちゃくちゃになりかけました。毎朝夫婦で4時ぐらいに起きて話し合いです。私はいつ死ぬかわからない。夫が好きなことをやらせてやろうといってくれて。それで自分も気持ちがまとまりました。

 結局大学は千葉のほうへ。その頃には発達障害だろうなというのは私もわかっていたので、事前に名古屋大学の発達心理学の相談室に行かせました。本人も親もいけるところです。時間帯をかえて通いました。うちを出る条件としてですね。すこし気づいてほしいなと。でも、障害は認めないし、相談員からも告知は今は無理だという話になりました。

 で一生懸命マニュアルを作ったんです。宗教には入ってはいけませんとか、薬は病院でしかもらってはいけませんとか、お金は無駄に使っちゃいけないけれども、どうしても必要な時はお父さんとお母さんに相談しなさいとか、そういうマニュアルです。お金がなかったらいうんだよ。きちんと発信するというのをやってほしかった。結果、大学時代、人にお金を借りることもなかったですし、それだけは守ってあげたかな。クイズが思う存分できたようで、いい仲間ができたようです。告別式にも、それが終わってからも、たくさんのクイズ仲間がお参りに来てくれましたから。大学院は地元名古屋に戻ってきました。

クイズ仲間と
クイズ仲間と

 

進まない障害の受け止め

 修士2年目、修論と就活をして倒れたんです。救急車で運ばれました。脳波を調べたんですが、それでもはっきりわからなくて。10月にまた2回倒れました。いっぺんに二つはできないからと就活は中止です。私は倒れたことは、発達障害につながるかもしれないと思ったので、名古屋の中で発達障害を診断してくれる病院をあたりました。3月に診断を受けて、自閉症スペクトラムでした。本人も倒れたので不安があったのか診断は初めて受け止めたようでした。

 結局就職が決まったのは6月。東京にあるSE派遣のIT企業でした。9月に採用されて、働き始めたんですが、すぐに親が呼ばれました。会社に行ったら、よっちゃんは、掃除をしていた。長靴はいて。なんで親が呼ばれたかを正面からも受け止めていないようでした。会ってくれたのは、会社のナンバー2の人と直属の上司の方。解雇と言われてすぐだったので、こっちも気が動転していましたが、父親が障害者枠がないかと聞いたら会社が調べてくれて。また2週間後に会社を訪れました。

 今度は会社の社長が、「あの子は本当に、愛情に飢えている。一緒にデッキブラシを買いにホームセンターに行くのだが、デッキブラシがどういうものかわからない。一緒に上野動物園に行った時に、動物が好きだといった。動物が好きだということは人間が嫌いだということだ。ヘレンケラーの、サリバン先生はそうやって愛情をかけて子どもを育てた。でも僕はあの子を障害者枠で面倒を見ます。」と言ってくれたんですね。わたしとお父さんは、立って涙を流してありがとうございます、と言って名古屋に帰りました。

 今度は「よっちゃんの社会人マニュアル」の作成です。苦手なところ。お金の使い方とか、お父さんと二人で作って、それを受け入れると思っていたら、1週間ぐらいしてメールに、「お母さん、僕はあのXさん(社長のこと)がああいうひどいことをしたから許さない。」といって、結局、入社から半年ぐらいしか持たず、4月に退職することになりました。

 障害が受け止められなかったんでしょうね。障害者枠を使って僕を当て馬にしているんだ。僕が障害者にされるのは、数学検定が準1級で1級じゃないからだ。クイズが1位じゃなく20位だったとか、いろいろな理由を付けていました。実はその間にも数回倒れていました。やっぱりいっぱいいっぱいだったんでしょう。

Kaienでは今まで習えなかったことを教えてもらえている

 よっちゃんが倒れて、上京した時にKaienの資料を渡していたんです。2月ぐらいに「安心した、僕はKaienに行きます」と。Kaienの説明会で社長さんにお会いした時に、今の病院よりも、てんかんの病院に行ったほうが良い、とアドバイスを受けてクリニックを移りました。その病院は亡くなった時もご挨拶をしたら非常に驚かれて丁寧に説明を頂きました。

 順番待ちがあってKaienに正式に通い始めたのは9月。Kaienで何をしているかは、自分が解雇された直後で後ろめたい気持ちがあったから、そんなに積極的にはしゃべってくれなかったです。訓練では古着の店舗をしていたらしいです。自分の服を送った時に、「お母さんありがとう。店長が喜んでいました。」とメールがありました。そうやって店長とか言っているんだなと思いましたね。「Kaienでは僕が今まで習えなかったことを教えてもらえている」と言っていました。「むずかしくもなく、簡単でもなく、ちょうどいい感じ」だったそうです。

 でも、なかなか障害者枠への踏ん切りはつかなかったようです。11月の帰省の時もその話ばかり。ちょっとお父さんが席を立った時に、私を呼ぶので何かと思ったら、自分が出場したクイズ大会の映像を見せられました。「こんな時になんでそんな話を持ち出すの!」と心の中では思ったんですが、勝ち抜けの時に一か八かで早押しをする場面でした。「よっちゃん凄いね、勝負したんだね」といったら「うんそうだよ」とうれしそうで。私に認めて欲しかったんでしょうね。あれが実家で過ごした最後の時間でしたから、あそこで受け止めてあげなかったら私すごく後悔していると思います。

 東京に帰った後、最終的にスタッフの高橋さんの説得も効いて、ようやく1月の面接会に参加することになりました。そうしたらグリーの特例子会社から内定をもらえて、2月16日に働き始めたんです。

よっちゃんマニュアル①
よっちゃんマニュアル①
よっちゃんマニュアル②
よっちゃんマニュアル②

 

諦めない にいちゃんはすごいね

 文京区から横浜市まで弟が引っ越しを手伝いました。最後に弟にメールがあって「新しいスタートが切れそうです、ありがとう。」と。弟も「にいちゃん良かったね。」と言っていました。「お兄ちゃんね、いろんなことがあって、お盆もお正月も家に帰ってこなかったけれども、Kaienで訓練していて、障害者枠で入ったんだよ」って。私が説明したら、弟も「にいちゃんえらいよね、そこで諦めなかったんだね。諦めなかったにいちゃんはすごいね」って。

 体力がないことを知っていて、プールに行こうとしていました。「度付きのゴーグルはないですか?プールのバッグはないですか?」って。お金をいくらか送ったら「ありがとうございます。」といつもなんですけれども、硬い文章でメールが来ました。強くなりたいとか、体を丈夫にしたいというのは自分の中では思っていたらしいですね。

 亡くなったのは5月7日(土)未明のことです。毎日メールのやり取りはあって、仕事は順調で体調も問題ないとのことで安心していたのですけれども部屋で一人でなくなっていました。死因は心不全。休み明けの月曜日の朝、Kaienより無断欠勤していて本人との連絡もつかないとの知らせを受けて夫と二人が駆け付けた時は、苦しんだ様子もなく、静かにベッドにうつぶせになっていました。

 てんかんの発作だったのかどうかはわかりませんけど、突然逝ったのはたしかです。扇風機を付けて、額にひえぴたをつけて。3カ月の試用期間ももうすぐ終わり、継続雇用の約束も頂いて、前日に新しい通勤定期も買っていましたし。短かったけれどもグリービジネスオペレーションズさんはありがたかったです。クイズ以外で自分の居場所を見つけたんだと思います。お笑いのライブを見る約束も友達としていたみたいですし。

 今天国からどう言うかな。離れたところで。本音を言えば、少しずつ自分自身を受け入れていく姿を観たかったなと、親としては思いますね。努力でカバーできると思って、あの子はそれで貫いて逝っちゃったかんじ。あの子らしいのかなぁ。

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ご本人がつけていた社会人ノート

 

(取材:2016年9月)

 

Fさん:Kaienの就労移行支援を利用し、障害者枠で今年2月に就職したものの、3か月後に自宅で心不全で亡くなった享年27歳・男性のお母さま。名古屋に在住しながらKaienのイベントにも顔を出している。

  • 性別: 男性
  • 年齢: 享年27歳(2016年)
  • 診断: 自閉症スペクトラム症(2014年)
  • 業種: インターネット
  • 職種: 事務