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グリービジネスオペレーションズ社での雇用管理に見る大人の発達障害の応用行動分析学褒めて伸ばすは大人の発達障害、特例子会社にも有効だった

2016年11月30日

 ガクプロblank_blueTEENSblank_blueの親御さんと行く特例子会社。前回は六本木の特例子会社に訪問しました。その時のレポートはこちら

 第2弾の今回は横浜へ。当社が創業当初からお付き合いしている、今年度障害者雇用の世界で「優秀賞」を獲得したGBOことグリービジネスオペレーションズ社(グリーの特例子会社)を訪問しました。

 福田社長自らが1時間たっぷり説明いただきました。立ち上げ当時から現場責任者である竹内様にもアテンドいただいたほか、当社出身の2人のスタッフによる業務説明もあり2時間があっという間に過ぎ去りました。たった10人の参加者にも関わらず大盤振る舞いをしていただき深謝です <(_ _)>

 なお、今回は当社に通う利用者の親御様限定イベントでしたが約100人の希望が殺到しました。それを福田社長に伝えると、「じゃあ10回やりましょう!!」と言っていただき、リップサービスだとしても、ポジティブにさくっと応じられるところに尊敬を感じました。

 それにしても、GBO社に行くたびに思いますが、本当にきれいなオフィスなんですよね。特例子会社では日本一の美しさかもしれません。

gbo

 

 以下今回参加したみなさんや僕自身の感想も交えながら簡単に振り返ります。

 グリーさんのイメージが変わりました。(保護者)

 グリー社に限らないと思いますが、スマホのゲーム会社というと、どこかチャラチャラした感じとか、まじめさがない感じとか、短期的な視野で社会を見ているとか、拝金主義とか、ネガティブなイメージを感じる方は多いと思います。特にコンプガチャの一件では業界がかなり傷つきました。

 それらを否定するわけではないですが、今回参加した親御様の中では大きくグリー社のイメージが変わったようです。なぜかというと、障害にしっかり向き合って、彼らの良さを引き出そうと社長も真剣だし、現場担当者もやる気をもって動いているし、なにより当事者たちが生き生きして未来を語っている姿を目の当たりにしたからだと思います。

 こういう会社が悪いわけないよね・・・。テレビCMやネットニュースだけではわからないグリー社や(その特例子会社である)グリービジネスオペレーションズ社の一面が、社員を通して、現場を見られてわかったということだと思います。そしてそれがおそらく参加いただいた10人の参加者によってちょっとずつ社会に伝播していく。というのがGBO社にとってもよかったと思います。

うちの子には無理・・・ 。(保護者)

 GBO社の業務は設立された4年前から見ていますが、本当に大きく発展しています。今回参加した親御さんたちは、「清掃」「データ入力」「封入作業」「組立作業」などを予想していた方が多いようなのですが、「私(親)でも出来ない・・・」というような高度な業務が多く、圧倒され、打ちのめされたようです。

 僕としても「販売前ゲームのデバッグ」などグリー社っぽい部分は想定内でしたが、「アバターのアイテムのネーミング」(何言っているかわからないかもしれませんが、かなりクリエイティブな作業でした)とか、「デザイナーさんに発注するシートにイメージ画を張り付ける」(これも結構根気がいるし、想像力が必要な業務)があったりして、マジで・・・、という感じがありました。

 ガクプロやTEENSに通うお子さんは日々の勉強にも四苦八苦する子が多く、とてもうちの子にはと思われた親御さんばかりだったようです。たしかに知的能力がある程度左右するところもあり、すべてのお子さんが将来できるかというとわかりませんが、働いている人たちが自分たちでも言っていた通り、「多くの人が数週間や数か月でできる業務が多い」ということだと思います。

 実際当社で行っている就労移行支援blank_blueのレベルと極端に違うわけではありません。むしろGBO社の皆さんが強調されていた通り、やる気があるかとか、成長する気持ちがあるか、という働く意欲が重要だろうなと思いました。

やりたいと思った業務を、上司が取ってきてくれる。(社員)

 正直、これに一番感動しました。そうなんだ、みんなやる気持って働いているのは、自分がやりたいな、と思った業務ができているからなんだ、ということですね。特例子会社での仕事は親会社の業務から切り出している場合が多いのですが、先に書いた通り「データ入力」や「封入作業」、「メール配送」などが多く付加価値が低めです。

 でもGBO社では本社で行っている業務で「これって外部の業者に出しているけどGBOでできない?」、「これってアルバイト雇ってやっているけど非効率じゃない」というのを(本社に基本的には属している)GBO社の社長が取ってきてくれるそうなのです。そりゃ社員のやる気も上がるよな、という感じでした。

要は応用行動分析だな (鈴木)

 最後は僕の感想です。

 今日の訪問までGBO社が職場改善の優秀賞を取ったのは「障害の弱みを補正する」という部分なのかなぁと勝手に思っていました。でもそれが間違えであることに気づきました。

 古典的な障害者雇用というのは「どうしたら離職率を下げられるか」「どうしたらパニックを防げるか」「どうしたらミスを減らせるか」「どうしたら数少ないできることを見つけられるか」みたいなネガティブな面を少なくするというアプローチが多かったように思います。でもGBO社は違うんだなと。

 もちろん、これまでうまくいっている特例子会社というのは「ほめて伸ばす」が得意だったはずです。でもIT・ゲームという優秀な技術者を確保し定着させる、つまり人材戦略で世界としのぎを削っているグリー社が親会社だからこそ、短い間でその人をやる気にさせて、一人だけではなく組織として目標をもって、ポジティブなオーラで職場を包んで革新を生む、というような業界に蓄えられた人材戦略が洗練されているはず。そして親会社の人材管理術が特例子会社にも確実に落ちているというのをビンビンに感じました。

 で、「ははぁ、これって、応用行動分析(ABA)だ」と今日気づいたわけです。以下図を借用した(児童発達支援をしている)NPO法人ADDSさんのウェブサイトにもありますが、応用行動分析(ABA)というのは「発達障害児」以外にも幅広く人や組織の行動を良質なものにするために科学的に証明された方法です。

 でもなんで「発達障害児」の文脈でよく出てくるのか、「発達障害児」に効きやすいかというと、この仕組み(刺激・反応・強化子等)が入りやすい『素直』で『染まりやすい』傾向が発達障害の特性としてあるからなんじゃないかと思ったわけです。

 で、GBO社で思ったのは、大人の発達障害の人も応用行動分析(ABA)がはまりやすい。つまり褒められてある特定の行動がどんどん強化されていく、という仕組みに乗りやすい特徴があるので、普通の企業よりもモチベーションアップの仕組みが組織的に導入しやすく、ネガティブな面を気にするよりも、いかにスモールステップでポジティブな行動を増やしていくかを仕組化したほうが良いのではないかということに気づきました。

 例えばGBOでは勤怠を上げるために、3か月皆勤賞だと皆勤賞カードを配っているそうで、しかも4つ溜まるとゴールドカード(簡単なトークンですね)になり、かつ正社員化にも組み込まれているということで、まさに強化子バリバリ活用されているという印象です。これって普通の会社だと「馬鹿らしくない?」とか言われそうですが、発達障害の人だからこそ、素直に入っていってくれる気がしました。

NPO法人ADDSさんによる応用行動分析(ABA)の説明 

 当たり前のようなことを書いているように聞こえるかもしれませんが、発達障害の人だからこそ、子どもでも大人でも応用行動分析(ABA)が効きやすく、ネガティブなことが語られやすい障害者雇用の分野で「ほめて伸ばす」という理論を実践の場から教えられた気がしてとても有意義な時間でした。さすが受賞企業は違います。

 明日は大阪で講演です。山手線はまだまだ大丈夫ですが、これから帰って5時起きです。今日の発見を大阪でも早速伝えていきたいと思います。

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