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「社会を変える」勇ましさの残酷さと、「社会を受け止める」力のパラドクス

2014年2月4日

夏目漱石の初期の名作「草枕」。冒頭部分から。

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。  住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。  人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。 

世に住むこと二十年にして、住むに甲斐ある世と知った。二十五年にして明暗は表裏のごとく、日のあたる所にはきっと影がさすと悟った。三十の今日はこう思うている。――喜びの深きとき憂いよいよ深く、楽みの大いなるほど苦しみも大きい。これを切り放そうとすると身が持てぬ。片づけようとすれば世が立たぬ。

僕は「社会を変える」という若者や起業家があまり理解できず、遠巻きに見ている。「社会を変える」ことなど神かカエサルでない限り無理であり、人間には社会を受け入れることしかできないと思うからである。「社会を変える」というと威勢は良いが不遜な気がするということである。

また僕らが携わる発達障害の人たちは変化が苦手である。元気な若者が「社会を変えた」結果、規範がなくなりルールがなくなり変化が多くなり、それでついていけていない人たちともいえる。社会を変えられて、まさに「人でなしの国」に連れてこられたような感じに思えている。

社会は勝手に変わってしまう。止めることはできない。しかもどう変わるかは予想できない。偉い人でもわかっていない。例えば世界経済の心肺機能ともいえるFRBの議長が代わったばかりだが、異次元の金融緩和政策をとり続けた前バーナンキ議長時代の金融政策すらまだ評価が固まっていない。

バーナンキ議長の「遺産はまだ固まっていない」とし、「われわれは生き延びた。それによってどんな結果がもたらされるのかは、まだ分からない」と述べた。~モルガン・スタンレー チーフエコノミスト~

誰も彼も明日がどうなるかわかっていない時代。僕は、変えられるとしたら一人一人の価値観をコツコツと変えていくことだけなのではないかと考えている。変化が避けがたいものだとしたら、それを受け入れる力しかない。心理学の世界ではレジリエンス(「抵抗力」「復元力」「耐久力」)だろうか。冒頭の「草枕」でいうと、喜びや憂い、楽しみや苦しみを切り離さず受け入れる力、片づけず世の中を渡っていく力のように思う。

このレジリエンスという力が、レジリエンスとは心理学で完全な対極にある「脆弱性」によってもたらされるというパラドクスが、以下のTEDの動画であり、TEDの中でも再生回数の上位にくる動画である。当社はこういった脆弱性に向かい合いレジリエンスを獲得することで、変わりやすい世の中に適合するという価値観を提示できればと思う。

 

本当はもっと簡単に書きたかったが、なんだか難しくなった。最終的には「草枕」を読み、TED動画「傷つく心の力」を見てください。

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