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DSM-5 英・エコノミスト誌の考察

2013年5月18日

挿絵もThe Economistから

今月の(少なくともAsia-Pacific版の)The Economistは、日本の「アベノミクス」がトップ記事。しかし、政治・経済についての話題が多いThe Economistにも関わらず、そこそこの大きさの記事となっていたのが、「DSM-5」についてである。

DSMはアメリカ精神医学会の診断基準。この最新版(ちょうど5月18日土曜日にリリースらしいDSM-5)は主要メディアでも取り上げられている。賛否両論が沸騰している。ある医師のグループは嘆願書すら出したほど(こちら)。

このブログに関係する所で言うと、アスペルガー症候群という診断名がなくなり、自閉症スペクトラムに統一されるというところが大きいかなと思う。(※なお、The Economistが発行されるイギリスはWHOが使うICDという基準を使っているが、ICDもDSMの変更の影響を大きく受けると言われているらしい。)

The Economistの記事では、診断の有無・程度は、各国で健康保険の基準になったり、学校での支援に影響したり、障害の認定に大きく影響する。が、今回はそれぞれの症状などの境界「あいまい」な状態であるのにも関わらず、サイロのように一つ一つの診断名に格納する状態にしてしまうことを懸念している。

例えば、ADHD、自閉症、うつ、双極性障害、統合失調症の類似点を指摘している。実際、以下の英文のように、DSM-5のタスクフォースにいた人も、「基本的に言うと、私たちは人工の線を引いた。体や心はそのようには動いていないが」と言っているそうである。 As Dan Blazer of Duke University, who served on DSM-5’s task-force, puts it, “We’re basically drawing artificial lines, and the body and the mind do not work like that.”

加えて、どこまでを精神的な病気として診断とするか、という点もDSM-5では解決されていないとしている。あまりに一般的な状態でも診断に結びついてしまうと指摘している。

その例としてADHDが上げられている。記事によると、米国の子どもは10%以上の割合でADHDと診断され、その3分の2が薬物投与を受けているという。日本もかなり薬を飲んでいるお子さんが多いなぁというのを日々実感している。投薬の良し悪しは別にして、たしかに診断が変わることによって、製薬業界は大きな影響を受けると思われる。

More than one American child in ten has been diagnosed, using the DSM’s definition, with ADHD—and about two-thirds of those so diagnosed are now prescribed drugs.

もちろん、DSM-5で一朝一夕に診断が変わるとは、僕は思っていない。実際のところ、現在の10数年以上使われていたDSM-4の基準でも、クリニックや医師によって診断の基準は驚くほど異なる。基準が変わったからといって多くの医師が自分の基準をすぐに変えるとはとても思えない。例えばA医師が統合失調症といった人が、B医師では不安障害になり、C医師では発達障害になる、というケースは少なくない。(ただし、DSM本は、約2万円もしながら、世界で100万部の売上を誇るベストセラーらしく、精神医学の医療関係者はみんな読んでいるはずだが。。。)

当社の方針は診断は非重視。個別相談も説明会も診断なしで参加できる。また学生向けなど、診断がない人が参加できるプログラムも有る。が、行政の仕組みをつかったプログラムのほうが正直多い。

各医師の診断基準は、すぐではなくても、徐々に変わっていくであろう。当社も当然影響を受けると思われる。実際の運用が、特に日本でどうなっていくのか、これからじっくりと医療関係者や福祉関係者の方々から教えてもらおうと思う。

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