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ニュースの裏 「障害者の雇用率 2%に引き上げへ」

2012年5月19日

NHKを始めマスコミ各社が今週「障害者雇用率 2%に引き上げへ」を流した。厚労省の発表をそのまま書いたような内容ばかり。実際のところはどう読むのか、ニュースの裏(というか、知っている人には至極当然のことだが)を書いていきたい。

まずはNHKのニュースを転記。

  • 就職を希望する障害者が増え続けていることから、厚生労働省は、企業に義務づけている障害者の雇用率を現在の1.8%から15年ぶりに引き上げて2%とする方針を固めました。企業に対し、障害者を雇用した際に支払われる助成金の制度の活用を呼びかけるなどして雇用を確保していく方針です。
  • 障害者の雇用を巡っては、現在、従業員が56人以上いる企業に対し、全体の1.8%以上の障害者を雇用するよう法律で義務づけています。障害者の社会参加が進むなか、自立を求め、仕事を探す障害者は年々増え、昨年度の求職者は18万2000人余りと、5年前よりおよそ20%増加しています。
  • このため、厚生労働省は企業に義務づけている雇用率を1.8%から2%に、また、国や自治体は2.1%から2.3%に、そして、都道府県の教育委員会は2%から2.2%に、来年度からそれぞれ引き上げる方針を固めました。障害者の雇用率が引き上げられるのは平成10年以来、15年ぶりです。
  • 一方で、義務づけられた雇用率を達成している企業は去年6月の時点で45%と半数以下にとどまっていることから、厚生労働省は、企業に対し、障害者を雇用した際に支払われる助成金の制度の活用を呼びかけるなどして雇用を確保していく方針です。

【表】 就職を希望する障害者が増えて続けていることから
【裏】 一般枠での就職が厳しく障害者手帳を取得しての就労を始めたり、一般枠でうつ等のメンタルの問題から働けなくなり障害者手帳を取得し再スタートを切らざるをえない人が急増していることから

【表】 コメント無し
【裏】 障害者雇用率が未達の企業から徴収した資金で、新たに障害者雇用を始める企業などへの助成金を出す財源が徐々に枯渇していることから、(もっというと、2014年度から雇用率未達の場合に”罰金”を徴収される企業の規模が、現行の従業員201人から101人へと拡大されることを鑑みても、財源の枯渇が見込まれることから)

【表】 障害者を雇用した際に支払われる助成金の制度の活用を呼びかける・・・
【裏】 (これは僕の肌感覚だが助成金目当てに障害者雇用をする企業はほとんど無いと思う。雇うならばきちんと矜持ある雇い方をしたい、働かせ方をしたいという企業が多いと思うので、お金で釣るような理由が一番目に来るのはどうかと思うのだが・・・) それにそもそも基本的には雇いはじめの段階で100万円程度の助成金が出ても、雇用は数年、数十年続くのである。数千万円、場合によっては億単位の「買い物」が雇用であるので当初の100万円程度は冷静に考えるとあまり意味はないと言い切っても良いと思う。

【表】 障害者の社会参加が進むなか、自立を求め、仕事を探す障害者は年々増え、
【裏】 世界的に国家財政や通貨の方向性が見えなくなり、自分の将来を自分で守らなければと思う人が障害者と言われる層でも当然に増えてきていることから

以上が表と裏でした。

助成金の財源不足はかなり切羽詰まったことになってきたとあちらこちらから聞こえてくるので2.0%とした判断には少なからず影響していると思われる。また助成金の制度も雇用率とセットでこれまで政策を推進してきたので、いきなり無にするとかはできないのであろう。

ただ、厚労省が本当にこの2つのレバーしか無いのかというとそうでもないと思う。

本当に社会参加を促すのであれば、例えば短い時間でも働きやすく、雇いやすくする制度(※短時間労働で生活しきれない部分は国・行政が金銭的にマッチアップする)や在宅での勤務を奨励するなど多様な働き方ができるようにするべきかと思う。もちろん行なっているのであろうが、雇用率と助成金ほど明確に目標にしにくいためか、まだまだ浸透していないように思う。

あるいは重度と言われる身体障害者を除いては、どの障害者を雇っても1ポイント(※ポイントという表現ももちろん色々と感じるところがあるが今日のところはスルーして)にしかならない。そこで、困難さ・困り感の程度に応じて、0~1まで複数段階にわけるような制度を導入するという改善案もあるであろう。0か1かの世界だと、職業人として人はそもそもそういうふうに(つまり健常者と障がい者の2つしかないようなシンプルな)分布はしていないので、どうしても制度の歪みが出てくるからである。

たとえば、障害者の中でも(今まで一般枠で働いていたような)より働きやすい人、うっすらとした人が就労マーケットを抑え始め、障害者の中でもより弱者の部類に属する人たちが働きにくくなるような気がする。正直Kaienもうっすらとした層がどうしても就職支援をしやすく雇われやすいので、もうちょっと違った形で就労支援ができないかと思っているのである。

弱音を吐いても行けないが、こういう企業が動きにくい部分こそ国が動いてほしいなと思う。

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