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福祉の経営者を目指す方へ ”福祉事業の特殊性” ‐ お金まわり発達障害支援会社の創業・経営を通じて 第2章 第1節

法人を立ち上げ、経営していく時に注意しないといけないことは山ほどあります。それのチェック項目を論理的に捉えることも出来ますし、より感覚的に捉える方法もあるでしょう。最終的にビジネスというのは勝てば官軍負ければ賊軍というところは否めず、うまくいっている経営者が大手を振れるのですが、そうはいっても幾つか気をつけたほうが良いところは共通しています。このシリーズでは個人的な意見は述べながらも、基本的には誰もが反対しない基礎の基礎をまとめていきます。(ただし網羅的に書くことが目的ではないので抜け漏れや偏りはあることはご承知おきください。)

どの業界も特殊といえば特殊ですが、福祉業界は国・地方自治体の法令やその運用方針に大きく影響を受けますので、経営者としてその独自性を理解しておく必要があります。また行政だけではなく、利用する人、働く人など、福祉事業には門外漢だった私からすると、不思議さ意外さが満載の業界でもあります。あまりMBA(経営学修士)でも学ばないレベルのことに目を配っていないと行けないのは当初は気づけていませんでした。

この第2章では、お金の回り方、自社らしさと同業他社との関係、働く人の特徴(現場と組織運営)、利用者との関係性、リスク管理などから福祉業界を考えていきましょう。

なぜ”営利企業”が福祉をできるのか?

日本での福祉は、行政と社会福祉法人が長年担ってきました。徐々にその時の現状を受け入れる形で法令も整備され、地域ごとに社会福祉法人が育つことで福祉の底上げが図られてきたと思います。国が順調で経済が伸びている間や働ける若者が国の厚生の大部分を占めるうちはそれでよかったのかもしれませんが、徐々に経済力が落ち、また労働者が少なく支えられるべき高齢者などが増える段階になって、これまでと違う発想で福祉を運営しようという流れになりました。それが障害福祉で言うと、小泉政権下で行われた障害者自立支援法(今の障害者総合支援法)の導入であり、民間の力を入れて、また市場原理を入れて、福祉を効率的に効果的にしていこうという流れです。長くなりましたが、このような背景で当社のような株式会社が福祉の業界に入ることが出来たわけであり、福祉事業体の経営というのはまだまだ日が浅い、10数年程度の長さでしか無いことがわかります。

とはいえ、営利企業が国や地方自治体からお金を受け取るのはそれほど珍しいことではありません。例えば建設業界は公共事業を国土交通省などから受注して道路や橋を建設しているわけですが、それによって利益を上げていることにあまり異を唱える人を見たことがありません。あまりにも当たり前になったからでしょうか。もちろん建設業界は民間の建物も受注していますが、土木といわれる公共事業からの売上は数割はあることが一般的です。(かつほとんどのゼネコンは資本主義の中枢である上場企業です。)

ですので営利企業として福祉をすることをそれほど特殊に考えなくて良いでしょう。道路や橋の工事と同じく適正な利益であれば社会は受け入れてくれますし、もっと重要なのは道路や橋が安全を提供しているように、福祉が国民に安全を提供する、結果を残していくことなのだと思います。

公費に頼る事情

ただ福祉事業体は売上のほとんどを公費に頼っていることは事実です。現に当社もそうですし、障害福祉業界のガリバーとも言えるリタリコ社(上場しているので財務諸表で中身はかなりわかります)も売上のほとんどはまだ公費に頼っており、福祉で稼いだお金を使い、上場で資金を手にすることで、福祉以外の事業を育てようと頑張っていることがわかります。

なぜ福祉は公費に頼らないといけないのか。答えは明白で、受益者と呼ばれる人たちがお金がないことが圧倒的に多いからでしょう。当社の例でも、発達障害の人の就労支援をする際に、仕事がない人をサポートするわけですから、当然ご本人たちにサービスを利用する経済的な力がないことがほとんどになります。特に障害福祉は保険制度がない(このあたりはややこんがりやすいですし、シリーズの中で今後触れられたら触れます)ために、税金に多くを頼る構造にならざるを得ないといえます。

このため、福祉事業をする上では、行政との付き合いは必須ですし、法律が変わったり、運用方針が変わったりすると、売上に大きく影響を受ける事業です。”公共事業”に頼る業界の中でも、その割合が高いことは意識しておく必要があります。福祉をする事業所が、当社もそうですが、福祉以外の事業を育てたいと思うのはごく自然な流れです。当社もガクプロという大学生向けのセッションを行っています。これは「発達障害(含・傾向)の学生向けの内定塾」であり、100%親御様からお代を頂いていますので、福祉予算とは切り離されたビジネスです。とはいえ、利益を出せているかというとそうでもないのですが・・・。

では福祉事業は危ないかというとそんなことはありません。全く逆と言えましょう。例えば介護事業を行っている営利企業というと、ニチイ学館、ベネッセ、損保ジャパン、セコム、パナソニック、イオンなど、錚々たる企業群が運営しています。残念ながらという面もあるかもしれませんが、生活に困っただったり、支援が必要になったりする人は、一定数社会には存在し、その割合は今後高くなることが容易に予想されますので、ある意味安定した業界でもあるということです。このため、事業の安定性と成長性、それからブランドイメージ向上に魅力を感じた有名な企業が参入してくるわけです。問題なのは、福祉事業の一本足打法になっている場合であり、それは福祉をしたい!という小規模事業所の性でもありましょう。当社も例外ではないのです。福祉事業がなくなること自体は考えにくいですが、お上の考え一つで、利益率が減ったり、既存のスタッフや施設では運営が難しくなる場合があるリスクは常にあります。

まとめますと、営利企業が公費をもらう事業をするのは特に悪いことではなく結果が何より重要であること、売上の見込みとしては安定した公費を頼れるが、行政の方針一つで事業計画の大きな変更を迫られる場合があるということになります。

お金の回り方については、経営の肝でもありますので、今後の章でも度々触れていくと思います。

【リンク】福祉の経営者を目指す方へ 目次

 

(文:Kaien代表取締役 鈴木慶太 2017年9月)

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