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福祉の支援者になりたい方へ ”支援者としての心構え” – 二人分泳げること発達障害支援の現場から 第3章 第1節

福祉の世界に入った時に私が一番ショックを受けたのは、職業人としての心構えが他の業界とだいぶ違うというものです。多くの会社では常識とされているものが福祉の世界では非常識だったり、その逆もたくさんあります。当社は福祉の出身者が3割程度、残りは違う業界から集まっていますので、文化を一致させることにいつも困難が有ります。今後、福祉の世界が、とりわけ発達障害や就労支援の現場では、福祉の常識にとらわれない支援が必要になり、心構えも新しい考えが必要になってくるでしょう。今回は当社が考える支援者としての心構えをまとめていきます。

二人分泳げること

当社では社員の行動指針を決めています。健康/真摯/多彩/現場の声/明日の常識 という5つのキーワードです。なかでも”健康”が最初に来るのは理由があります。それは福祉の支援にいる人に健康でない人が多いという事実です。

共依存(きょういぞん)という言葉をご存知でしょうか。自分への評価が低いため、他人から求められることで心の隙間を埋めることです。自分が無くてはならない存在にさせる(依存させる)ことで自分の安定が得られるため、結局は自己都合で自分にとっても他者にとっても望ましい結果にはなりません。残念ながら福祉の支援者にはこの共依存に陥りがちな人が多く、つまり自己肯定感・自尊心が低い人が多く、問題になりがちです。

どう問題になるかというと、支援を途中で投げ出し、辞めてしまう例が多いということです。福祉は低賃金のため離職率が高い、きつい労働のため他の業界に流れるという側面も否定はできません。ただし私はそもそも共依存になりやすいタイプの人が福祉には多くて、自分一人分の人生をおくりきれていないために、離転職が多いのだと思っています。結局誰のためにもなりません。

【参考】 行動指針

当社の言葉で言うと「二人分泳げる必要がある」と思っています。いまの世の中、まず自分が自分らしく生きることはなかなか難しいことであり、つまり自分一人分泳ぐことで精一杯ということは十分に理解できます。ただ支援をしたいのであれば、自分の人生だけではなく他人の人生も一定程度背負うわけですから、もう一人分は泳げる精神や身体の余力・健康度が必要になるわけです。

これは福祉だけではなく、社会貢献が高い業界には有りがちだと私は思っています。自分の不全感を埋めるために人の役に立ちたいという若者にたくさん会ってきました。ただ私は、もっとも重要な社会貢献は「他人に迷惑をかけず自分の人生を送ること」だと思っています。この第一の社会貢献をできる人が、はじめて第二の社会貢献である「他人の人生に貢献する」ことができると思っています。

小異を捨てて大同につく

資本主義・営利企業の目標は明確です。お金を稼ぐことです。「いやいや、会社も社会の公器であり、社会貢献が企業の役割」という方もいるでしょうし、私もその考えに共感しますが、営利企業というのはやはりお金を稼いでなんぼであり、それが出来た上でそれ以外の役割や目標が正当化されることは否定しきれない資本主義の根幹だと思います。つまりどんな企業であっても「お金を稼ぐ」という共通目標が立てられるわけで、組織に所属する以上そこから大きく外れることは出来ません。

これはとても大きな制約ではありますが、一方で多少の違いを乗り越えて、組織がまとまりやすいともいえます。いくらいい意見をいっても、素晴らしい行動をしても、お金につながらないと、組織が続かないのです。結果を測る物差しが明確であることは、組織を束ねる求心力になります。

一方で、福祉はなかなか共通の指標が見えづらい業界です。「人生を楽しくおくってもらう」とか「人間らしい生活をしてもらう」とか、みんなが賛成する目標があるではないかと思われるかもしれません。しかしこれらは数字など明確に大小が示しづらく、共通の指標にはなりづらいと思われます。

実際、福祉の現場では、「これは間違え」という支援は有りますが、多くの場合は「正解の支援はなく」、「いくつかの支援の選択肢があり得る」場面です。例えば、発達障害の特性でどうしても多動が収まらず、椅子に座っていられない、このため勉強がはかどらないお子さんがいるとします。お薬で多動を抑えるという方法もあるかもしれませんし、勉強の中に本人が好きなものを取り入れて集中力をできる限り上げる方法もあると思いますし、アメとムチでいうとムチを多めにして強引にでも座らせるというのも最終的にはご本人にプラスになるという支援者もいるかもしれません。あるいはそもそも勉強を頑張らせないでも良い、この子はこの子の生き方があるという考えもあるでしょうし、動き回った中で勉強をできるような仕組み(例えば立ちながら歩きながら勉強をするような治具を取り入れる)もあるでしょう。どれも絶対に間違えとは言い切れず、支援としては状況に応じてどれもありかもしれません。

複数の解釈があり得ると、組織はバラバラになりますし、支援の方向性もずれが生じがちです。支援を受ける側にもマイナスにもなりますが、支援者の方でも不協和音になりやすくなるでしょう。最終的には、「やっぱりあいつとは一緒に支援ができない」、「この組織は自分には向いていない」と離転職が多くなってしまう可能性もあります。大体の方向性や想いは一緒なのに、細かなところで一致できず、という場面は私自身色々と見てきました。

現場の支援者が自分の考えを持ち、貫くことはとても大事ですが、やはり同じ方針で、同じ解釈で支援をすることの大きな果実を支援者には忘れてほしくないということです。組織である以上は、自分の意見は持ちつつも、最終的には組織で大切にしていることを理解し、その思想の中で支援の解をさぐるという癖を従業員としては持つ必要があるでしょう。

福祉は数日で結果が出ることは少なく、多くは年月が必要とされます。数年単位で結果がうっすら見えてくる世界ですので、より支援方法や方向性のすり合わせが難しくなってきます。私は決して自分の考えを押し殺して組織のルールに従えと行っているわけではありません。しかし小さな違いで自分が正しいということだけを行っている支援者だと誰も最終的には得をしないと思っているということです。組織で支援をする以上は議論を繰り返す中で自分の意見と組織の考えをなじませていくのが理想です。小異を捨てて大同につく。これが福祉の組織で働くためには必要だと思っています。

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少し長くなりましたので、「福祉の支援者としての心構え」は記事を分けて2回で述べることにしました。次回は下記をお話していきます。今回は「福祉全体」に当てはまるところでしたが、次回は「発達障害支援」の時に特に必要と思われる点について述べていきたいと思います。

【次回】共感・傾聴は必要か?
【次回】福祉の資格をどう活かす?
【次回】営利企業の常識で使える部分

【リンク】福祉の支援者になりたい方へ シリーズ目次

(文:Kaien代表取締役 鈴木慶太 2017年9月)

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