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事業内容とその背景

最も難しい障害と言われた発達障害

起業から9年(2018年の執筆当時)。これまで職業訓練のプログラムに入った発達障害者の、実に8割以上が就職しました。登録者はまもなく7,000人。この9年間で大人だけでなく大学生・専門学校生や小中高生までサービスを広げており、定期的に1,000人以上の人が利用しています。

発達障害の持つ力に着目し、十人単位で発達障害の雇用を続けている企業も複数あります。本当に嬉しい限りです。ただ私たちの力不足で、就職に繋げられる能力を持つ多くの人をまだ支援しきれていません。本音ではこの10倍ぐらい就職し活躍できても良いと思っています。まだ世の中に発達障害の人の才能を伝えきれておらず、毎日毎日、自分たちの不甲斐なさに苛立っています。

一方で「最も難しい障害」と言われた発達障害への支援状況を知る福祉関係者からすると、Kaienの就職成功率は驚異的な数字のようです。発達障害は一人ひとり特性が広すぎ、画一的な方法論が通用しないと多くの福祉の人から思われていたからです。実際事業を始める前に発達障害の研究者や、ハローワークなど既存の就労支援の職員などから「絶対無理」と言われていました。

業界の常識を変える

そうした当時の常識を覆し、ある程度画一化したプログラムの中で各人の力を見極め、弱みを見えづらくし強みを浮き立たせることに取り組んだのが当社Kaienです。今でも発達障害×仕事×強みの視点から社会への切込みを続けています。

主力事業は4つに分けられます

就労支援事業 大人向け就労移行支援事業・就労定着支援事業(Kaien)、大学生向け就職支援事業(ガクプロ)
人材紹介事業 発達障害の方向け転職サイト(マイナーリーグ)運営、人事コンサルティング事業
教育事業 放課後等デイサービス事業(ティーンズ)
啓発事業 発達障害の可能性や魅力を広く社会に伝える講演/研修研究/出版

何がこれまでの取り組みと違うのか?当社もきちんと分析しきれているわけではないですが、見学の際には当社が大事にしている3つの特徴をお伝えしています。おそらくこの3つの信条がこれまでの支援では欠けていた、そして当社が業界に持ち込んだフレッシュな発想だと思っています。

【1】 障害・特性を強みに

1つ目は、「障害の弱みを強みに変える」ということにこだわっている点です。KaienのenがEnabling Excellence(優れたところを可能にする)のenであるようにKaienのプランを作り始めた時からの大事な思想です。

通常、発達障害の医学的な立場は、社会性の問題やコミュニケーションの問題など「弱み」があることが診断の要件です。医学の世界ではそれで良いでしょう。ただ資本主義社会の企業の現場では出来ない人を受け入れるほど余裕はありません。お金をもらってもできない人は受け入れたくないという声すら聞こえます。企業としては、雇用した以上はなにかしら戦力になってもらえないと、無為にお金を費やしていることになってしまいます。

発達障害の場合も弱みの部分だけをみるとなかなか雇用に結びつきません。しかし見方を変えると特性は強みにもなります。障害者を受け入れる、マイナスを受け入れるという考えではなく、発達障害特有の特性を強みとして際立たせることができれば、企業で戦力化されるチャンスが高まります。それをとことん信じているところが、Kaienが他と違うところだと思います。 

【2】 ユニバーサルな管理法

2つ目は、「ユニバーサルな管理法」を受け入れ企業に伝えることです。発達障害の人はなにか特別な技法がないと受け入れができないのではないかと思っている企業の人事担当者がまだまだ多いのが現状です。福祉や医療の力をかりないと就業は難しいのではないかと・・・。しかし発達障害は心の病ではありません。先天的に脳機能がことなる、情報の脳内での処理方法が異なる特性です。優しさは不要とは言いませんが、受け入れのための絶対条件ではありません。むしろ、論理的にコミュニケーション方法の違いを理解し、発達障害の特性にあった方法で情報のインプット・アウトプットを行うことが重要になってきます。

ヒントはMBAとITにありました。創業者である鈴木がMBAで学んだ、合理的で末端の社員まで届くシンプルさを追求した管理方法。あるいはKaienが得意としているIT業界での定量的・構造的なコミュニケーションやタスク管理。これらは、そのまま発達障害の人たちとのコミュニケーションで活用できる優れた手法であることに、私たちは早くから気づけました。

この考え方を企業の受け入れ担当者に繰り返しお伝えすることによって、Kaien修了生が9割を越える定着率で仕事を続けている安定感につながっています。ビジネスで良いとされているコミュニケーション方法やタスク管理方法を徹底してもらえれば、福祉的な新しい発想や方法論を学ぶ必要は基本的にないわけです。発達障害者に合わせた特別な管理法・コミュニケーション法があるわけではなく、だれにでも有難い、わかりやすい管理法・伝達方法です。ですので、多くの人が喜ぶ管理方法という意味でKaienでは「ユニバーサルな管理法」と呼んでいます。

【3】 資本主義に逆らわない

3つめが、「資本主義に逆らわない」ということです。民主主義では人は平等です。でも働くという資本主義の場ではやはり弱肉強食です。人としては発達障害であってもなくても当然対等ですが、ビジネスの世界では資本の論理で上司と部下は文字通り上下関係です。そして多くの労働者は、語弊を恐れずに言うと、資本主義の奴隷として働いているわけです。発達障害の人であっても、働く以上はその資本の論理を受け入れる必要があります。福祉の人の多くが受け付けにくい考えである「資本主義に合わせる=企業組織のパーツになる」という考えを徹底していることにあると思います。

冷たい考えと思われるかも知れません。しかし、Kaienが多くの発達障害の人に受け入れられるのかというと、福祉的なお情けで付き合っている雰囲気がしないからだと思います。多くの発達障害の人はこれまで普通級に通い、大学にも行き、一般の社会で暮らしてきました。それが発達障害という診断を受けたからといって、完全に庇護される立場になるのは違和感を覚えるケースが多いのです。働くためには資本主義を受け入れることが必要だということをど真ん中にストレートを投げ込むようにお伝えすることが、「普通に対等に接してもらえる」、「本音で付き合ってくれる」、「上から目線で接されたり、かわいそうな存在と思われたりしていない」と当事者に感じてもらっているのだと思います。

当事者から学ぶ

「障害の弱みを強みに変える」、「ユニバーサルな管理法」、「資本主義に逆らわない」。この3原則は、はじめからKaienにあったわけではありません。また言うは易く行うは難し、です。しかし発達障害の人たちと向き合い、成功事例を見ていく中で、徐々に方法論として培ってきました。Kaienの価値観は発達障害の人達と触れ合う時間をもち、一緒に苦しむことで獲得してきたものです。

これまでもこれからも、現場の声を聴き、ヒントを得ることで、理想と現実、福祉と企業、当事者や家族と社会の橋渡しをするのが私たちの役割です。

※当社は国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)優先8課題 のうち「1 あらゆる人々の活躍」の推進に、17ゴールのうち「8. 働きがいも経済成長も」の達成などに取り組んでいます。くわしくはこちらから。

 

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