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発達障害の人に尊敬されたい発達障害オタクトーク ~放課後等デイ・TEENSの現状と今後~ 第3回

2017年4月10日

 当社の想いや現場での働き甲斐をお伝えする『懸け橋』。5回シリーズで、昨年末(2016年12月)に教育事業部の執行役員に就任した飯島さなえと、社長の鈴木の対談をお送りしています。当社の小中高生向け事業である放課後等デイサービスTEENSに焦点を当てながら、当社で働くとは?発達障害とは?を考えます。

似た者同士

鈴木)飯島さんは2ヶ月ほど前に執行役員に就任したわけで、上の立場になればなるほど、やっぱり人事のことを考える。人の気持ちを考える時間は増えると思うけど、実際はどうですか。執行役員になってから増えた?

飯島)増えてますよ。皆、実感ありますかね?すごく増えてるんですけど。あとは教えるようになりました。

鈴木)今まで教えてなかったの?ひどいね。

飯島)いや、教えてたつもりはあるんですけど。ただ、この間ちゅるさん(※Kaienの社外取締役)に言われたのは、あなたの方法は、パターゴルフだったら芝目を読まずに「これが最短距離です」と言ってカーンって真っすぐ打つ感じだねって。意味分かります?

鈴木)うん。

飯島)確かにと思いました。私はそれが一番早いんです。教える相手のことも信頼しているので、それが一番仕事を進めていく上で成果が上がるだろうと思ってやっていたんですけどね。でも世の中、色んな人がいるよねって。

鈴木)うんうん。

飯島)それは結局支援でやっていたことと同じなんです。色んな人にスモールステップでと言うのは。どうして子ども向けの支援で意識できていたのに、スタッフに対してできなかったんだろうと思った時に、「スタッフ皆が同じ土俵にいる」と考えていたことに気づいたんです。

鈴木)その辺が、飯島さんが僕と似てるって言われるところなんだろうね。

飯島)そうですね。もう言われました。ちゅるさんに。「そっくりだよ。同じこと言ってたよ」って。「訓練生とか子どもにはできるんですけど」と言ったら「同じこと言ってたよ」って。「あー」ってなりました。

鈴木)そう。支援にいる側は、皆自分と同じくらいの支援武器や理解・情熱を持っているていう前提についついなっちゃうのだよね。

飯島)そうなんですよね。

鈴木)採用の時点で、「Kaienの価値観に合う人」で「能力がある人」を雇っているから、そんなにズレはないはずなんだけど。それでもやっぱり一人一人違うのでね。支援者はね。

飯島)能力云々ではなくて。なんというか情熱とか、その仕事にかけられる時間とか。年齢的、体力的な話とかもそれぞれ違うと思うんですけど。そういうのも全然考えてなくて、仕事で出したい成果像は皆同じだと思っていたんです。でもそんなの気持ち悪いですよね。やっぱりそうはならないんだなという。

鈴木)あなたはなんで仕事が楽しいの?

飯島)発達障害の人が好きです。

鈴木)じゃあ、他の仕事だとこんなに情熱はなかったのかな。

飯島)あー、イメージがつかないですね。だって私、就職活動とかすごく適当にやっていたので。

鈴木)なんで?

飯島)別になんでもいいかなって。たまたま障害福祉の分野に入って。

鈴木)他にどこを受けてたの?

飯島)普通の、不動産とかです。三井不動産とか。その時不動産屋さんでアルバイトしていたので就活でも受けました。でも、あんまり良くない物件も良いようにお客さんに言ってみたりして、言ってしまえばだまして売ってたのを見ていたんですけれどもね。

鈴木)不動産屋で「あと何戸」なんて言ってるのは嘘に近い情報が多いよ。

飯島)そうそう。そうなんです。「今だけ割引き」とかも。日当たり良好とか「いやいやいや」って感じで。徒歩10分とか。それで売っていかないといけない。でも、まぁ売れる。売れてはいたんですよ。でもやっぱり気持ちが悪くって、嘘を言ってるのが。じゃあ、嘘をつかなくて良いところで働こうって思ったら、福祉の世界があったわけです。というのも、母子家庭や親御さんが共働きの子どもたちを夜預かるアルバイトも同時にしていたので、そこで発達障害だったのかな? 障害のある子もいて。その子たちとの関りは楽しいなという感じで福祉も受けました。

鈴木)うん。

飯島)でも、別に強い信念があったわけではなかったです。

鈴木)大学では何を勉強してたんだっけ?

飯島)社会学です。仕事とは全然関係ないですね。

鈴木)まぁ学生時代の専攻と仕事ってあんまり関係ないよね。障害福祉に行ったのは、なんとなく分かった。

飯島)これ以上就活したくないって感じでした。面接とかダメです。緊張しちゃうじゃないですか。

鈴木)ほんと?僕は面接が好きで好きでたまらなくて。毎回わくわくしてたもん。

飯島)だってエントリーシートとかも結局。

鈴木)僕は適当に書いてたから。

飯島)そう、適当じゃないですか。それが苦痛でした。

鈴木)適当にさ、その辺のおじさんおばさんと話してればいいだけでしょ。

飯島)それが苦痛でした。

鈴木)そっか。僕は結構好きだったんだけどな。自分が知らない世界が知れるじゃない。

飯島)自分の知らない世界はあんまり知りたくなかったです。こじんまり生きてた。アルバイトの延長線上の業界しか受けてない。

鈴木)でも、障害福祉に入って面白いなと思ったわけね。

発達障害の人の魅力

鈴木)でも、失敗したっていうか、難しかったんだっけ。最初は。

飯島)そう。すごく難しくって・・・。私の支援が下手すぎたんですね。腕とか噛まれて全治何週間みたいになってました。「これじゃまずい」と思って最初に行ったのが、TEACCHの基礎研修です。今でも内容覚えています。

鈴木)ふーん。

飯島)「構造化とは」「スケジュールとは」「ワークシステムとは」みたいな、超基礎的な内容だったんです。でも、それを実践してみたら、相手がすごく真摯に応えてくれたわけです。それまでは、自閉症の方たちの文化とか慣習とかマナーとかを全く知らないところに、私が土足でずかずかと踏み込んでたんでしょうね。後から考えれば、そりゃ怒るよねっていう感じです。そこのルールをちゃんと知った上で、マナーを守って接したらちゃんと応えてくれて、なにより達成感がありました。面白くなったのはそこからです。

鈴木)そこから面白くなって。今まで何万円くらい使っているの?

飯島)研修とかですか?200万は使ってると思います。

鈴木)1回5万円とかね・・・。

飯島)あぁ、そうですね。数えてないですけど。

鈴木)信じられない。

飯島)そうですね。だから社会人1年目なんかは、ほとんどのお金を研修と本に費やしました。

鈴木)親は何か言わなかった?「どうしたのかしら。うちの娘、憑りつかれたんじゃないかしら」とか。

飯島)特に何も言ってなかったです。働き始めてちょっとしたくらいの頃、身内で発達障害の診断を受けた人がいたのも追い風というか、なんかすごく運命的な感じでした。じゃあ、もっと必死になろうかなっていう風にはなりました。

鈴木)今はまぁ、都会に住んでたら10人に1人くらい診断されてもおかしくないからねぇ。

飯島)あー、そうそう。そうなんですよね。だから別に特別なことでは、今思えばなかったんですけど。

鈴木)ないけどね。

飯島)でも、当時の自分にとってはすごく運命的でした。自分が今勉強している支援の能力を持った人が、今まさに家庭内でも必要だっていうのが見えてきました。

鈴木)ふーん。

飯島)だから、「なんでこの仕事始めたんですか」っていうの聞かれた時に、めんどくさくなるとその出来事を先に持ってきて説明しゃうんですけど。実は順序は逆なんです。

鈴木)なんで飯島さんは発達障害に惹かれたんでしょうかね?

飯島)こっちがきちんと対応したら、相手から応えてもらえたっていうのが一番大きかったです。失敗続きだったところに、成功体験を積めたっていうのが、振り返れば、多分一番大きかったんだと思うんですね。

鈴木)うん。

飯島)発達障害の方自体の魅力としては、すごく真摯ですよね。「嘘をつかない」ってよく言われますが、実は嘘はつくんです。嘘つかないって言うと、親御さんからは「うちの子は嘘つくんですけど」って。すごく追い詰められちゃう親御さんがいるから語弊がないように言うと、「嘘をつかない」んではなく、「嘘をつけない」。嘘をついたとしてもすぐバレちゃう。

鈴木)まぁ、そうだね。

飯島)そんなのすぐ嘘って分かるよ、みたいな嘘をつく。でもなんていうか、自分には正直なんです。そういうところは、接していて楽ですよね。どういう裏があるんだろうっていうのを、全然やきもきしないっていうか。そこの楽さがあるのが一つです。あとは、発達障害の人の慣習とか文化をこっちが理解して接したらそれに応えてくれるっていうことですね。

鈴木)どういうこと?

飯島)別に発達障害の人が、皆が皆がすごく真摯でというわけでなく、色んな人がいるんですけど。

鈴木)うん。色んな人がいる。むかつく時もある。

飯島)色んな人がいるんですけど。でも色々ひっくるめて、その文化とか風土とかが、好き。すごく尊敬している。

鈴木)そういう民族の文化や風土をね。

飯島)そう。そうなんです。だからこれは、誤解されないといいなと思う説明だけど。すごく尊敬しているから。なので尊敬している人たちに好かれたいので、なんか役に立っていることをしていたいっていう。

鈴木)うんうん。なるほど。それは僕もあるな。真っ直ぐな人から信頼されるって自分の価値が上がった気がするからね。

飯島)私はそういう感じです。鈴木さんは?

鈴木)僕はさっきの話に通じますけど、ベースに「上手に働きたい」っていう人に興味があるんです。で、発達障害の人って「これがとても重要だよ」って言うとちゃんとやるじゃないですか。

飯島)はい。

鈴木)面白くない筋トレも一生懸命してくれる。馬鹿らしいと思わず。Kaienの就労移行支援でいうと、営業ゲーム(注:数人のチームに分かれて、架空の企業の営業活動や購買業務を体験するプログラム)も、別に自分に何の経済的な利益も生まれない、仮想の世界での”仕事”だけど、うまくいかないと怒ってたりするわけね。世界観に入りこんじゃってるわけ。

飯島)TEENSでのお仕事体験とかもそうですけどね。

鈴木)そう。お仕事体験とかも。カフェTEENS(注:架空のカフェの従業員として、飲み物づくりや接客を体験するプログラム)とかでさ、泣いてたりするじゃん。上手くできなくて。

飯島)手が震えて。

鈴木)笑っちゃいけないけど。そういうなんかすごく真面目にやっていくっていう。こちらのプログラムをきちんとやってくれる。だからこそ、伸びてくれるっていう面白さが発達障害の人には有りますよね。僕は発達障害の多寡に関わらず、誰に対しても働くことの面白さは教えたいけど、大抵、いわゆる定型発達の人は皆すれちゃってるからさ。変な価値観が入ってて教えに背くわけだよね。こういう風にやればせっかく上手く働けるのにな、みたいなことがあるんです。

飯島)ちゃんと愚直に繰り返していけば身につくのに。

鈴木)そうですそうです。それが発達障害の人と接していて飽きないというか楽しみを感じられるところですね。

飯島)確かに。それはTEENSのお仕事体験も本当にそうです。これは普通級でやったら絶対上手くいかないだろうなっていうような単純な設定とかでも、皆すごい本気でやってくれますからね。素晴らしいですよ。

凸凹があるのは発達障害の人だけではない

飯島)あとは、発達障害そのものの面白さっていうよりは、発達障害を勉強することの面白さかもしれないですけど。自分と重なる部分を見つけると面白くないですか?「うわー、それ私だ。」みたいな。

鈴木)それは僕はあんまり思わない。

飯島)え、なんでですか?鈴木さんだって、当てはまることいっぱいあります。

鈴木)発達障害のチェックポイントを見ると?

飯島)はい。

鈴木)あぁ。もちろん。でも、全部のチェックポイントに当てはまる人はいない。全く当てはまらない人もいない。

飯島)まぁそうです。でも、そもそも自分にそういう発達の凸凹とか偏りがあるっていうことをきちんと自覚していなかったので、一番最初は、「これ、自分も同じじゃん」って思いました。発達障害の人だけが特別じゃないんだ、一緒じゃんって。

鈴木)たしかにね。でも僕には発達障害という概念についてはあまり鮮度はなかったのね。僕は、元々そういう風に人を見てたからかな。人間をちょっと機能的に見ていたという感じだと思います。知らないうちからWAIS(注:ウェクスラー式知能検査という知能検査の一種)的に人を見てる感じだった。ゲームで「戦闘力がこのくらい」とか見るみたいに、「この人、しゃべる力はこのくらいだな」とか、「聞く力はこのくらいだな」とか、「頭の回転は数字が絡むとこのぐらいだな」とか。元々そういうふうに人を判断していたんだよね。もちろん自分のこともそういう風に判断してたわけ。なので自分との重なりを見つけると新発見という感じではなく、今まで知っていたことって発達障害的にも考えるとこうなるのね、ぐらいですかね。

飯島)自分のこの項目はこのぐらいできてるな、とか。凸凹を理解していたんですね。

鈴木)そうですね。人を凸凹で見るのは結構好きです。だから発達障害のアセスメントっていうのは、すごく納得しやすい論理だった。一方で鬱とかは、あんまり考えてなかった。人間の心は案外強靭だと思っていたから。

飯島)あー。それは勘違いです。

鈴木)勘違いだよね。自分って踏まれてもラッキーって思うというか、そういうタイプですね。雑草魂というか、ゴキブリ的な人間だね。批判されても、自分の伸ばす部分がちゃんと分かって良かった、って思うタイプですから。あとね、アメリカで暮らした(注:鈴木は経営大学院の2年間を米国で過ごしている)のはすごく良かったです。

飯島)どういう意味でですか?

鈴木)自分ができないことがいっぱいあるのが、すごく良く分かったから。

飯島)ふーん。どこで困りました?

鈴木)英語でのコミュニケーション。米国のビジネスエリートの常識感の理解。言語の理解と、常識の理解が弱いから全てが遅れる。ミスも大きくなる。会話についていけない。冗談がわからない、わかっても笑うまでに時間がかかる。聞いていてわかったような気がするけれどもあとで振り返ると全部忘れている、とか。そういう疑似発達障害体験をしたので、ああいう感じかってね。自分がアメリカで感じた英語で感じたものが、日本で母語でも発生しているんだなぁと。だから発達障害を知ったことで、何かシンパシーみたいなものがあるとしたらアメリカ時代の体験ですかね。

飯島)それは鈴木さんが独特なのか。男性的な考え方かなと言えば男性的な感じもします。なんかそういう、理論的にじゃないですけど。

鈴木)人間を構造的に見るってこと?

飯島)はい。私はもっと、なんていうか包括的に大体で見てます。全体像というか。

鈴木)僕がやや特殊なのかもね。

飯島)だからこそ、インテーク(注:相談にきた人から事情を聞く最初の面接のこと)は鈴木さんお得意だと思うんですけど。

鈴木)うん。得意というか好き。あまりエネルギーを使わないでできる。この人こういう感じかなって。

飯島)それが結局大きく外れないんですもんね。実際の支援に入って。

鈴木)そんなに外れてないんじゃないかな?子どもは難しいですけどね。大人の方は簡単かな。

飯島)そこの違いはなんで出ますか?

鈴木)子どもは情報量が少ない。過去の。

飯島)あー、なるほど。

鈴木)なによりちゃんと分化してなくて、一人一人の違いが少ないんですよね。大人になると人によって育った環境や知的な水準で成長段階が大きく離れちゃってるから、大人の方がアセスメントはしやすいんですよね。子どもは発達段階だから、通常は何歳でどのくらい発達しているか、ある程度の成長の相場感ってやつを理解しないといけないですよね。あとで「こういうふうに成長したのか!」といい意味で驚くのは子どもの方が圧倒的に多いです。

発達障害オタクトーク ~放課後等デイ・TEENSの現状と今後~

飯島さなえ

大学卒業後、成人の自閉・知的障害者の通所施設(生活介護・就労継続B型)で 3年間勤務。 2014年Kaienに入社。TEENS横浜・TEENS川崎で勤務後、2016年に執行役員(教育事業部)就任。

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