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発達障害児に必要なのは学習支援かSSTか発達障害オタクトーク ~放課後等デイ・TEENSの現状と今後~ 第2回

 当社の想いや現場での働き甲斐をお伝えする『懸け橋』。5回シリーズで、昨年末(2016年12月)に教育事業部の執行役員に就任した飯島さなえと、社長の鈴木の対談をお送りしています。当社の小中高生向け事業である放課後等デイサービスTEENSに焦点を当てながら、当社で働くとは?発達障害とは?を考えます。

 

勉強と自尊心の関係

鈴木)飯島さんの話に戻ると、初めてのお仕事体験でなるほどと思ったと。で、いきなり時代が飛んで、今みたいな感じだけど。

飯島)すごい飛びましたね。TEENSでは、結局その「働く力をつける」っていうのがずっとキーワードで。「段取り力」「コミュニケーション力」「自尊心」の3つのキーワードを挙げていて。私も常にそれを念頭にやってきんですけど。あ、学習支援が良くなったていう話をしてもいいですか?

鈴木)もちろん。

飯島)TEENSでは、平日は「学習支援」。休日は「お仕事体験」をやっています。「学習支援」って呼んでるけど、目的としては「学力を上げる」というよりは、「勉強をツールとして、3つの働く力を伸ばすんですよ」という風にこれまでやってきました。私もそれでいいと思っていたんです。割り算ができないなら電卓を使えばいいし、文字が書けないならタイピングを使えばいいと。それこそTEACCH的な考えですけど。「代替機能を持つものがあるんだったらそれでやればいいし、環境の方を変えればいい」っていう考え方でずっとやっていたんです。

でも、困り感を抱えている子どもたちや保護者の方と接していく中で、「勉強ができない」というのは結構大変なことですよね。TEENSでソフトスキルを伸ばしたり、羽を伸ばして過ごしてもらえたとしても、お子さんたちは多くの時間は学校で過ごしているわけです。学校ですごく大きな柱である「勉強」っていうものができない状態のままでいさせることは、結局「働く力」の3つ目の「自尊心」を損なうことになってしまう。なのでやっぱり学力は無視できない、という想いがここ一年くらいあって。今学習教材の開発を進めています。

鈴木)まぁ神学論争だよね。前提として、多くの子はASD、ADHD、LDのどれか一つだけに当てはまるわけではなくて、それぞれの特性が重なっているから。これまでのASD、ADHD的なアプローチというのは、「できないものはできないままでいいじゃん」、「苦手なものには得意なところでカバーしよう」っていうアプローチですよね。TEENSとかKaienもそういうアプローチではあるんだよね。表向きは。

飯島)そうです。

鈴木)だけど苦手なところとか、本人が自尊心を落としているようなところ、LDに該当する部分は高めてあげなきゃいけないなと思い始めています。「苦手なものは得意でカバーすべき」というのと、「苦手なところを高めるべき」という二つの神学論を両方ともやっていこうということです。

飯島)そうですね。元々ADHD、ASD的な子への対応の方に比重をすごく傾けていました。これから数年は、学力の方。LDの子に対する支援の方に注力していく時かなと。別に他の部分を捨てるわけじゃないんですけど。両方をバランス良く高めていきたいです。

勉強ができないつらさ

鈴木)偉そうなことを言うと、ようやく飯島さんが追いついてきたなって感じになっちゃうけど。

飯島)何にですか。鈴木さんにですか?世の中に?

鈴木)僕に。まぁ、これから追い越されると思うけど。だって、そもそもなんで学習支援やってると思う?僕も初めはお仕事体験だけで行きたかったんだよね。

飯島)そうなんですか。

鈴木)最終的に学習支援をなんでプログラムに入れたかっていうと、全く同じなんですよ。理由が。要は、本人の苦手なところの中で、無理にやらせるのが馬鹿らしいことって学校では確かにたくさんあります。そんなのはさせなくていいし、それができなくてもちゃんと働けるような人間に育てればいいじゃんと思っていました。最低限の部分はできるようになった方がいいかもしれないけど。基本的にはASD、ADHDに対するように、LDの人にも特性を自分で理解してもらって、能力を上手に発揮できるようにしてもらえればいいんじゃないかなという感じでした。それなら、お仕事体験だけでいいんじゃないかなって思ったんです。だけど飯島さんの仰る通りで、自分の子ども時代を振り返っても、学校でなんでいばっていられたかというと。

飯島)はい。

鈴木)勉強ができたからに決まってるじゃないですか。

飯島)そうなんですよね。

鈴木)勉強ができなかったらいばれなかったですよ。自尊心も保てなかった。

飯島)確かに。

鈴木)絶対そうです。だって勉強を教わる場っていうのが学校じゃないですか。そうじゃないかもしれないけど。テストでいい点取ってる奴はやっぱり鼻が高いし。

飯島)居場所がちゃんとあります。

鈴木)うん。先生も認めてくれるし、皆も認めてくれる。そうすると、学校にいるほとんどの時間、「自分はできないんだ」って思わせたままっていうのは。やっぱりつらいよね。「いや、勉強できなくても、将来問題ないよ」って言われたって、つらいよね。

飯島)そうなんですよね。大人になったら別に関係ないよということでも、子どもにはものすごいことで。それが全部なんですよね。

鈴木)子どもの価値観が「学校の勉強ができるかできないか」で結構占められている中で、そこに全く手をつけないというのはおかしいと思って。だから、TEENSは初めから学習支援を平日に入れているわけ。

飯島)はい。

学習障害の難しさ

鈴木)だけど、学習支援は今も上手に完成していない。お仕事体験に比べると完成度が低くなっちゃうのは、やっぱり難しいんだよね。学習障害は難しい。大人になって「自分がLDっぽいな」っていうのが分かってそれを言葉にできている人相手ですら、教えるのは難しい。なぜLDが難しいかというと、大人になって自覚がある人は「自分が何が苦手か」をようやく言葉にできているんだけど、子どもの場合はそれができてない。

飯島)はいはい。

鈴木)この前話を聞いた人は、数が「1、2、3」って上がっていくのは分かるし、「-3、-2、-1」ってあがっていくのもわかるんだけど、「-1から0になる」ところが分からなかったって言ってました。そっか。そうなのか。-1は分かるみたいなんだよね。だけど0っていう概念が分かってないのかな。相手がそういう風に言語化できると、こちらもじゃあそこをどうしようかってなる。だけど、単に算数の問題で、実は-1とか0とかの概念が分かっていないから問題が解けていない子が、自分が何を分かっていないかを説明できない時にどうやってその子にヘルプを出せるか、支援できるかを考えるとすごく難しい。

飯島)そこは、今はスタッフ一人一人の力量頼みになってしまってますね。

鈴木)学習障害の支援って、最終的にはそういうところが大きいと思うから、お仕事体験が型通りにできているのに比べて難しい。キッチンホール制度(注:学習支援の空間を「キッチン」と「ホール」という2つのスペースに分けた制度。「キッチン」は分からないことを個別に教えてもらえるスペースで、「ホール」は自習スペース。)を作ってから、だいぶ変わったけどね。それまでは、利用説明会で「どっちを使いたいですか?」って聞いた時に、学習支援を希望する親御さんはもちろんいたけど、お仕事体験の方が人気があった。1対2くらいで。

飯島)そうでしたね。

鈴木)今は、ほぼ同数。両方使いたいって言ってもらっています。潜在的なニーズとして、学習障害への対応って、親御さんからするとやっぱり大きい問題だからでしょうね。

飯島)今いま困っているのは勉強の方ですよね。

鈴木)うん。学習支援のプログラムは、今後よりよくなるとは思いますけどね。今のレベルでも誇れるとは思うんだけど。皆それなりに頑張ってるからね。だけどもうちょっとパッケージ化してあげて、教材を作ってできると確かにいいですね。

飯島)今の学習支援はあった方がいいし、必要な子たちもたくさんいる。一定以上の成果も上がっているとは思いますけど、革命的に良いものがありますって感じにはまだですね。

鈴木)まだですね。学習支援の方は。頑張ってますし、まぁまぁいいですよっていう感じで受け止めていただいているのでしょうね。

飯島)そうですね。勉強を教えているところは他にもいっぱいありますから。

鈴木)どこも別レベルではまだないから。そこは、当社は別レベルに持っていきたい。

飯島)今は「丁寧にやってます」っていう段階ですね。

鈴木)うん。学習障害を理解するのは難しい。僕も順番で言うと、最初にASDがある程度理解でき、次にADHDが理解でき。ようやく最近LDを理解し始めたっていう感じなので。

飯島)それは興味の順番ですか?

鈴木)ううん。ASDが一番違和感を感じるし、自分から遠い。あなたが目線が合ってないことが相手にどういう意味を与えるか、なんで分からないのかなとか。

飯島)はいはい。

鈴木)初めはそれが衝撃で。二つ目に理解できたのがADHD。衝動性とかミスとか、こういう風な仕組みで起きているんだ、みたいなのが分かってきて。

飯島)で、最近LD。

鈴木)はいLDです。

飯島)私も最近LDです。

鈴木)学習支援をホール・キッチン制度にしてからは、子どもが動きやすいし、スタッフも動きやすい。しかも視覚化ができている。というような、構造化、視覚化、単純化みたいなのを、一応運営できてきています。まぁまぁ良くなって、今度はアセスメントツールを作って、教材を作ろうとしているわけです。だから、学習支援のレベルは段々上がっていくけど。でもやっぱり、支援を5年10年とやっていかないと、学習障害の意味とか難しさが分かってこないだろうな。

飯島)それはスタッフの側が?

鈴木)うん、スタッフの側。だから学習支援は、逆に言うとまだまだ伸びる可能性が高いよね。

飯島)あぁ、そうですね。昨日外回りで、LD学会で知り合った某私立のLDマニアの先生とお話したんですけど、その先生は、一人一人の認知処理の状態に合わせて教材をカスタマイズしているんです。個別指導をされているわけです。やっぱり本当にやるとなるとそこまでしなきゃいけないとおっしゃっていました。じゃあ、TEENSでその教材を作れるかっていうと、教材を作る前にアセスメントをきちんと取れているかってところがまだまだ。そこがやっぱり難しいですから。

鈴木)「-1から0になるのが分からない」というのを、スタッフ側が「ここの概念で躓いているんだな」って見極めてあげないといけないわけだよね。

飯島)というのと、言語的に説明した方がいいのか、図示的に示した方がいいのかっていうのも一人一人違う。それによって伝える情報量から変えていかなきゃいけないので、実は教材って、本当は一つ一つ違わないといけない。でも現実的にそれを世界中でやるのは難しいから。ある程度パターンとかを作って、教材の開発ができたらいいんだろうなって思っています。

鈴木)ASDやADHDって、ある程度アセスメントの方法も確立しているし、対応法も考え方としてある。だから飯島さんが言ったようにTEACCHみたいな考え方があって、様々な考え方がある。そこにプログラムが色々乗っかっている感じ。Kaienも多分そこに乗っかっている内の一つなんだけど。だけど学習障害って、アセスメントが多分星の数ほどあって、プログラムが星の数ほどあるからなかなか難しいよね。

飯島)色んな方向性からアセスメントを取らないと。

鈴木)難しいね。そこにASD、ADHDの特性も絡んでくるからね。実際にお子さんと対応する時には。

飯島)本当にそうなんですよね。

発達障害オタクトーク ~放課後等デイ・TEENSの現状と今後~

飯島さなえ

大学卒業後、成人の自閉・知的障害者の通所施設(生活介護・就労継続B型)で 3年間勤務。 2014年Kaienに入社。TEENS横浜・TEENS川崎で勤務後、2016年に執行役員(教育事業部)就任。

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